1.はじめに
P/LやB/Sなどの決算書を分析する上で、決算書に実際に載っている数値自体を分析(前期の数値と比較するなど)することはもちろん重要ですが、それだけでは課題に気付きにくいことがあります。そんなとき、「経営指標」を使えば、課題なども浮き彫りになりやすくなります。そこで、本稿「公認会計士が伝える! 中小企業の経営指標の活用術」では、いろいろな経営指標を取り上げながら、その活用について考えていこうと思います。
本稿では現在、収益性に関連する経営指標のうち売上高経常利益率を取り上げ、業種別に年度別推移などの分析を進めています。自社の属する業種の特徴を踏まえながら、自社の指標と業種平均との比較などを行っていただければと思います。
2.中小企業の売上高経常利益率を業種別に分析してみよう(続き)
【図表8】は、業種別の売上総利益率・売上高営業利益率・売上高経常利益率を示したものであり、全業種平均との比較による特徴から、それぞれの業種をA~Dにグルーピングしました。

前回はグルーピングAについて、該当する業種ごとに詳しく分析しました。今回はグルーピングBについて該当する業種ごとに詳しく分析することにします。
(6) 売上総利益率はやや低めだが、営業利益率・経常利益率はやや高めの業種
売上高経常利益率が全業種平均と比べて高めの業種には、大きく分けて2つのタイプの業種があります。1つは、「売上総利益率・売上高営業利益率とも高めの業種」(「学術研究、専門・技術サービス業」「不動産業、物品賃貸業」「情報通信業」など)で、もう1つが「売上総利益率はやや低めだが、営業利益率はやや高めの業種」(「建設業」「製造業」)です。
以下、後者のタイプについて、業種ごとに分析していきます。
■建設業
「建設業」では、売上総利益率が23.0%(全業種平均の0.9倍)とやや低めとなっている一方、売上高営業利益率が4.0%(平均の1.4倍)、売上高経常利益率が4.9%(平均の1.3倍)と全業種平均を上回っています。
参考までに、2023年度実績(単年度)で売上高に対する比率を算出したところ、【図表9】のとおりとなっています。売上原価率は76.6%と全業種平均(74.4%)よりもやや高くなっています。売上原価の内訳を見てみると、商品仕入原価・材料費の比率が全業種平均と比べてとても低くなっているのに対して、外注費の比率がとても高くなっています。「建設業」は商品の転売をするような業種ではないため、商品仕入原価・材料費の比率が低くなるものと想定されます。また、工種ごとに必要な技能や人員が大きく変わるため、協力会社への作業発注が中心となり、外注費の比率が高くなるものと想定されます。
一方、販管費率は19.4%と全業種平均(22.3%)よりもやや低くなっています。これは、人件費やOthersの比率がやや低くなっていることなどによりますが、顕著な特徴は見られません。売上原価と販管費のTotalで見ると、全業種平均よりやや低く、売上高営業利益率がやや高くなっていることが分かります。

■製造業
「製造業」では、売上総利益率が20.7%(全業種平均の0.8倍)とやや低めとなっている一方、売上高営業利益率が3.5%(平均の1.2倍)、売上高経常利益率が4.6%(平均の1.2倍)と全業種平均を上回っています。
参考までに、2023年度実績(単年度)で売上高に対する比率を算出したところ、【図表10】のとおりとなっています。売上原価率は79.4%と全業種平均(74.4%)よりもやや高くなっています。売上原価の内訳を見てみると、労務費(11.9%)や減価償却費(2.3%)、Others(12.7%)が全業種平均を上回っており、内製や設備への依存度の高さが現れているとも言えそうですが、顕著な特徴は見られません。一方、販管費率は16.9%と全業種平均(22.3%)よりも低くなっています。これは、販管費の内訳費目が人件費を始めそれぞれがやや低くなっていることによりますが、製造原価(売上原価)の比重がやや重い代わりに販管費は抑えられていると言えそうです。売上原価と販管費のTotalで見ると、全業種平均よりもやや低く、売上高営業利益率がやや高くなっていることが分かります。

3.おわりに
本稿では、中小企業の「売上高経常利益率」について取り上げて分析をしています。今回は“全業種平均と比較して売上総利益率はやや低めだが、営業利益率・経常利益率はやや高めの業種”に着目し、これに該当する「建設業」と「製造業」について、売上総利益率や売上高営業利益率の状況にブレイクダウンして分析を進めました。その結果、これらの業種に見られる損益構造の特徴が見て取れました。自社の業種特性を正しく理解し、それに即した経営指標を活用することは、経営改善や持続的成長のために有用です。業種ごと・企業ごとに損益構造や課題は大きく異なるため、単に平均値と比較するだけでなく、自社の強みや弱みを的確に把握し、指標を経営判断や改善活動に活かすことが、実践的な経営管理につながるでしょう。
次回以降も引き続き、「中小企業実態基本調査」(中小企業庁)を活用しながら、経営指標の活用法を考えていきたいと思いますので、そちらも併せてお読みいただき、実務上の参考にしていただければ幸いです。




