税務情報レポート
MJS税経システム研究所・税務システム研究会の顧問・客員研究員による租税を中心とした多彩な研究成果および最新の税制改正および制度や動向、判例研究等に関するリポートです。
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2025/05/14 相続・贈与税
相続税の重要テーマポイント解説26(暦年課税と精算課税がある場合の相続税の課税価格の加算)
QA及びBは相続開始前7年以内に300万円を被相続人から贈与を受け、暦年課税で申告した。3年後1,000万円の贈与を受けたので相続時精算課税で申告した。なお、Aは相続財産を取得したが、Bは取得していない。相続財産の加算はどうすればいいか。【ポイント】被相続人から生前に贈与を受け、受贈金額が110万円を超えた場合、暦年課税の贈与税の申告と納税をします。贈与を受けた財産の価額をとめどもなく加算することは、実務的に大変困難です。そこで、相続開始前7年以内(以下「加算対象期間」といいます。)の贈与財産の価額(以下「加算対象贈与財産」といいます。)及び相続時精算課税の適用を受けた価額を加算することにしています。加算するのは、贈与を受けた時の価額です。【解説】1原則加算対象財産の価額は、暦年課税で申告している場合、相続財産の取得の有無に応じて加算の態様が異なります。適用の概要は次の通りです。課税方式相続財産の取得の有無課税価格に加算の有無2024年以後相法暦年課税有加算する相続開始前3年を超え前7年以内については、合計額から100万円を控除する19①無加算しない-相続時精算課税有加算する各年分の贈与について110万円の基礎控除がある21の15①無加算する21の16①2相続時精算課税適用者が、相続開始前7年以内の贈与財産がある場合(1)加算対象期間内の贈与財産があり、相続財産を取得している場合相続時精算課税適用者であっても、適用を受ける以前に贈与を受けた財産が加算対象期間内に取得した財産に該当する場合は、相続財産に加算します。相続開始前3年を超え前7年以内の期間に贈与を受けた金額の合計額から100万円を控除した金額を加算します。贈与税の申告の有無には関係がありません。基礎控除以下であっても加算となることに留意します(相基通19-1)。(2)加算対象期間内の贈与財産があり、相続財産を取得していない場合相続開始前7年以内の贈与加算は、相続又は遺贈により相続財産を取得した者に適用されます(相法19)。相続時精算課税の適用を受けた財産は、相続税の課税価格に加算する若しくは相続等により取得したものとみなされることから、相続時精算課税適用者が、適用を受ける前に贈与により取得し、加算対象期間内に該当する財産は、特定贈与者の相続税の課税価格に加算する必要があります。3相続時精算課税の適用を受けた財産が基礎控除以下の場合相続時精算課税適用者が特定贈与者からの贈与により取得した相続時精算課税の適用を受ける財産が、相続税法第21条の16第3項第2号の規定の適用により相続税の課税価格に算入する金額がない場合(基礎控除110万円を適用した場合)においても、加算対象期間内に贈与により取得した財産があるときは、加算対象期間の贈与財産を加算します(相基通19-11)。この取扱いは、相続時精算課税を選択した場合、その後の贈与は全て相続時精算課税となり、受贈財産価額が110万円以下で特定贈与者の相続財産に加算する金額がなくても、すべて相続時精算課税の適用を受けることとなります。そのため相続時精算課税適用前の加算対象期間内の贈与財産は相続税の課税価格に加算することになります。4事例の回答相続時精算課税適用者は特定贈与者の相続財産の取得の有無にかかわらず、相続財産を取得したとされます。相続開始前7年以内の暦年課税適用財産についても加算の対象となります。提供:税経システム研究所
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2025/05/07 法人税
為替予約の取扱い(法人税)
1.概要ここのところ円安の状況が続いていますが、為替相場の変動は輸出入を行う企業を中心に企業経営において重要な問題となります。為替変動のリスクヘッジのために、「為替予約」を検討する企業も増えてきているように思われます。今回は法人税における「為替予約」の取扱いについてみていきたいと思います。外貨で物を売り買いするような場合、売上・仕入などの収益・費用科目については取引時に金額が確定しますが、売掛金・買掛金等の資産・負債科目は取引から入金・支払いまでの間に為替変動の影響を受ける場合があります。このような為替変動リスクをヘッジする手段として「為替予約」があります。為替予約は予め金融機関との間で決済時の為替レートを取り決めておく方法です。予約実行時点で取引採算が確定できるというメリットがありますが、一度予約すると原則、取消ができず期日に受け渡しの義務が生じる等留意点もございます。2.為替予約の税務上の取扱い(1)外貨建取引の円換算の原則内国法人が外貨建取引を行った場合の円換算額は、外貨建取引を行った時における外国為替の売買相場により換算した金額とされています。また期末に保有する外貨建債権・債務については期末時換算法か発生時換算法により評価しますが、売掛金や買掛金等の短期外貨建債権・債務については、法定換算方法が期末時換算法とされているため、実務上、期末時換算法で評価している会社が多いと思います。(法法61条の8①、法法61条の9①、②)短期外貨建債権外国通貨を受け取る期限が当該事業年度終了の日の翌日から1年以内に到来するものをいいます。短期外貨建債務外国通貨を支払う期限が当該事業年度終了の日の翌日から1年以内に到来するものをいいます。発生時換算法外貨建資産等の取得又は発生の基因となった外貨建取引の円換算に用いた外国為替の売買相場により換算した金額をもって期末時の円換算額とする方法をいいます。期末時換算法期末時の外国為替の売買相場により換算した円換算額をもって期末時の円換算額とする方法をいいます。(2)為替予約等の先物外国為替契約等を締結している場合の円換算内国法人が為替予約等の先物外国為替契約等により外貨建取引によって取得等した外貨建資産等の円換算額を確定させた場合において、先物外国為替契約等の締結の日においてその旨を帳簿書類に記載したときは、その外貨建資産負債の円換算額はその確定した換算額によります。(法法61条の8②)為替予約等を行った場合の売掛金・買掛金などの外貨建資産負債は、為替予約により確定した円換算額で評価することになります。(3)為替予約差額の配分について(原則)法人が期末に有する外貨建資産等につき上記(2)の適用を受けたときは、先物外国為替契約等の締結の日(その日が外貨建資産等の取得又は発生の基因となった外貨建取引を行った日前である場合には、外貨建取引を行った日)の属する事業年度から外貨建資産等の決済等の日の属する事業年度までの各事業年度に為替予約差額を配分し、益金の額又は損金の額に算入することになります(法法61の10①、法令122の9)。期間配分は日数按分によるほか、月数按分によることも可能です(1月に満たない端数は1月とする)期末に為替予約等をしている外貨建資産等を有している場合には、為替予約差額について期間配分を行うことになります。外貨建取引後に為替予約をした場合と外貨建取引前に為替予約をしている場合で処理に違いがありますので、下記で見ていきたいと思います。(処理方法については様々な会計処理が想定されますので、下記はその中での1つの例示となることや説明の便宜上省略している部分もありますのでご留意下さい)為替予約差額外貨建資産等の金額を先物外国為替契約等により確定させた円換算額と、外貨建資産等の金額を外貨建資産等の取得又は発生の基因となった外貨建取引を行った時の外国為替の売買相場により換算した金額との差額をいう。①外貨建取引後に為替予約する場合イ)令和7年3月1日:商品仕入(50,000ドル)直物為替相場:1ドル=150円借方金額貸方金額仕入7,500,000円買掛金7,500,000円ロ)令和7年3月10日:為替予約契約締結直物為替相場:1ドル=152円先物為替相場(予約レート):1ドル=155円直々差額(取引日から予約締結日までの直物為替相場の差額)は予約契約締結事業年度に帰属(152円-150円)×50,000ドル=100,000円借方金額貸方金額為替差損100,000円買掛金100,000円先物為替相場(予約レート)で買掛金の円換算額を確定させる(155円-152円)×50,000ドル=150,000円借方金額貸方金額前払費用150,000円買掛金150,000円ハ)令和7年3月31日(決算日)為替予約差額(直先差額)の配分を行う(155円-152円)×50,000ドル×1ヶ月/2ヶ月=75,000円※月数按分を採用借方金額貸方金額為替差損75,000円前払費用75,000円ニ)令和7年4月30日:買掛金支払いと残りの為替予約差額の配分買掛金の支払い(予約レートで確定)借方金額貸方金額買掛金7,750,000円現金預金7,750,000円残りの為替予約差額(直先差額)の配分を行う(155円-152円)×50,000ドル-75,000円=75,000円借方金額貸方金額為替差損75,000円前払費用75,000円②外貨建取引前に為替予約する場合先物為替相場(予約レート):1ドル=155円を既に締結済みイ)令和7年3月1日:商品仕入(50,000ドル)為替:1ドル=150円借方金額貸方金額仕入7,500,000円買掛金7,500,000円取引前予約の場合は仕入時に予約レートで計上することも可能である(法基通13の2-1-4)先物為替相場(予約レート)で買掛金の円換算額を確定させる(155円-150円)×50,000ドル=250,000円借方金額貸方金額前払費用250,000円買掛金250,000円ロ)令和7年3月31日(決算日)為替予約差額の配分(155円-150円)×50,000ドル×1ヶ月/2ヶ月=125,000円※月数按分を採用借方金額貸方金額為替差損125,000円前払費用125,000円ハ)令和7年4月30日:買掛金支払いと残りの為替予約差額の配分買掛金の支払い(予約レートで確定)借方金額貸方金額買掛金7,750,000円現金預金7,750,000円残りの為替予約差額(直先差額)の配分を行う(155円-150円)×50,000ドル-125,000=125,000円借方金額貸方金額為替差損125,000円前払費用125,000円(4)短期外貨建資産等に係る為替予約差額の配分方法の特例について外貨建資産等が、短期外貨建資産等である場合には、為替予約差額を一括してその事業年度に係る益金の額又は損金の額に算入することができます。(法法61の10③)選択の方法は、外国通貨の種類を異にする短期外貨建資産等ごとに選定することができます。手続きこの一括計上を選択する場合には、選択しようとする事業年度の確定申告書の提出期限までに、外国通貨の種類を異にする短期外貨建資産等ごとに、書面により納税地の所轄税務署長に届出が必要となります。変更手続き変更をする場合には、変更する事業年度開始の日の前日までに納税地の所轄税務署長に変更承認申請書を提出し、その承認を受ける必要があります。提供:税経システム研究所
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2025/04/30 法人税事業承継
組織再編税制(会社分割)を利用した事業承継(2)
前回(2025年1月15日掲載)では、組織再編税制が個人や中小企業の事業承継にも利用できる制度であることの例として「相続が生じる前」に会社分割の事例を紹介し、その際、相続後においても会社分割により同様のことが可能であることを述べました。そこで、今回は「『相続後』の会社分割と株式譲渡による円滑な事業承継」が可能であることを事例(注1)を用いて確認したいと思います。(1)事例の概要X社は、もともと創業者甲の100%出資により設立された株式会社ですが、甲の死亡(相続)により甲の子供である乙と丙がそれぞれX社株式の50%ずつを承継しました。X社において乙と丙はそれぞれ異なる事業の経営を行っています。また、当社全体の経営方針等を巡って乙と丙で対立しています。そこで、乙と丙が互いに独立して事業を進めるために、X社を2つに分割して乙がX社を100%保有し、丙が新会社を100%保有する形態にすることを考えています。まず、X社は、新設分割(分割型分割)を行って新会社を設立し、新会社株式を直ちに乙と丙にそれぞれに交付します。そして、乙は交付を受けた新会社株式の全部を丙に譲渡し、丙は保有するX社株式の全部を乙に譲渡します。その結果、乙はX社株式の100%を保有し、丙は新会社株式の100%保有することとなります。(2)X社の課税関係イ適格要件分割が適格分割となる場合とは、①完全支配関係の場合、②支配関係の場合、③共同事業を行う場合、④事業を独立して行う場合(分割型分割の場合のみ)の4つの類型に分かれます。この事例の場合、乙と丙の兄弟で100%保有していますので、「①完全支配関係の場合」の要件に該当するか否かをまず検討することになり、この場合の適格要件は、①金銭等不交付要件と②完全支配関係継続要件の2つになります(法人税法2条12号の11イ、法人税法施行令4条の3第6項他)。①金銭等不交付要件金銭等不交付要件とは、分割対価資産として分割承継法人又は分割承継親法人(注2)のうちいずれか一の法人の株式以外の資産が交付されないこと(株式が交付される分割型分割にあっては、その株式が分割法人の発行済株式(自己株式を除きます。)の総数のうちに占める分割法人の各株主の有する分割法人の株式の数の割合に応じて交付されるもの(按分型の分割型分割)に限ります。)をいいます(法人税法2条12号の11、法人税法施行令4条の3第5項)。この事例の場合、新設分割において新会社の株式のみが分割対価資産としていったんⅩ社に交付され、それが直ちにⅩ社の株主である乙及び丙に全部交付されます。分割対価資産として分割承継法人(新会社)の株式以外の資産は交付されず、分割承継法人(新会社)の株式は、分割法人(Ⅹ社)の100%株主である乙及び丙に全部交付されることで按分型の分割型分割に該当します。したがって、金銭等不交付要件を満たすことになります。②完全支配関係継続要件単独新設分割である分割型分割に該当するこの事例の場合、その分割後に分割法人(Ⅹ社)と分割承継法人(新会社)との間に同一の者(乙及び丙)(注3)による完全支配関係が生ずることになりますが、完全支配関係の継続が見込まれることが求められるのは、乙及び丙と分割承継法人(新会社)との間の完全支配関係となります(注4)。この事例の場合、乙は、交付を受けた分割承継法人(新会社)の株式の全部を丙に譲渡して分割承継法人(新会社)の株式を保有しなくなりますが、同一の者の中での譲渡であり、乙及び丙という同一の者による分割承継法人(新会社)の完全支配関係には影響を及ぼしません。丙は、乙から譲渡を受けた分を含めて分割承継法人(新会社)の株式の100%を保有し続ける見込みですから、同一の者(乙及び丙)と分割承継法人(新会社)との間の完全支配関係の継続が見込まれるため、完全支配関係継続要件を満たすことになります。ロ事例の適格性この分割は、金銭等不交付要件及び完全支配関係継続要件を満たしますので、適格分割に該当することになります。ハ資産及び負債の移転価額適格分割により、資産及び負債を移転した場合には、帳簿価額による引継ぎをしたものとして所得の計算をすることとされています(法人税法62条の2第2項)。したがって、分割に係る資産及び負債の移転に関する譲渡損益は生じません。移転するこれらの含み損益は、新会社においてその譲渡等が行われたときに新会社において課税されます。(3)個人株主(親族)の課税関係イ分割後の株式の取得価額分割型分割により分割承継法人の株式のみを取得した場合、旧株の従前の取得価額のうち純資産移転割合(注5)を乗じて計算した部分の金額をその分割承継法人の株式に引き継ぐこととされ(所得税法施行令113条1項)、分割型分割後の旧株の取得価額は、旧株の従前の取得価額のうち、純資産移転割合を乗じて計算した部分以外の部分の金額を付け替えることとされています(同令113条3項)。ロ分割後の株式の譲渡の課税関係乙が行う丙に対する新会社株式の譲渡、丙が行う乙に対する貴社株式の譲渡は、いずれも一般株式等の譲渡として申告分離課税20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)によりが行われることとなります(措法37の10①、復興財源確保法13、地法附則35の2①⑤)。(4)まとめこの事例の場合には、法人税の課税は生じることはなく、乙と丙との株式の譲渡に関する課税(申告分離課税、上記(2)ロ)が生じることになります。なお、消費税等についても非課税や軽減措置が認められています(注6)。前回及び今回取り上げたように、いわゆる「事業承継税制」以外の税制(制度、手法)を用いることで、円滑な事業承継が可能になるのではないかと考えています。<注釈>この事例も、平成27年10月21日開催の九州北部税理士会「事業承継のための新たな手法」で解説した事例の一つで、その後もいくつかの税理士会で内容等を修正等して解説しており、直近では昨年5月に東京税理士会第7回会員研修会でも取り上げています。書籍としては、本職事務所客員税理士の小松誠志氏が『事例検討法人税の視点からみた事業承継・M&Aの実務ポイント』(大蔵財務協会、令和3年)等に取りまとめています。基本的に分割の直前に分割承継法人と分割承継法人以外の法人との間にその法人による完全支配関係(「直前完全支配関係」といいます。)があり、かつ、分割後に分割承継法人とその法人との間にその法人による完全支配関係が継続することが見込まれている場合におけるその直前完全支配関係がある法人をいいます。一の者が個人の場合には、その者と親族等の特殊の関係のある個人を含むこととされています(法人税法施行令4条1項、4条の2第2項)。乙と丙は兄弟(親族)の間柄ですので、乙と丙で同一の者と判定されます。乙及び丙と分割法人(X社)との間の完全支配関係が継続することが見込まれているとしても適格性に影響はありません。仮に分割後に分割法人(X社)株式を第三者に譲渡することが見込まれている(乙及び丙と分割法人(X社)との間の完全支配関係が継続することが見込まれていない)としても、この事例の場合の適格性には影響はありません。純資産移転割合は、原則として、「分割型分割の直前の移転資産の簿価純資産価額」の「分割法人の分割型分割の日の属する事業年度の前事業年度の簿価純資産価額」に占める割合をいいます(所得税法施行令61条2項2号)。消費税は、法人税法上の適格又は非適格に係わらず、分割が合併の場合と同様に権利義務の包括承継であることから資産の譲渡等に該当せず、不課税取引とされています(『平成13年改正税法のすべて』(国税庁・511、512頁)、末安直貴『回答実例消費税質疑応答事例集』18頁(大蔵財務協会、令和3年)。登録免許税は、一定の軽減はあるものの課税され(登録免許税法別表1二十四(一)ト、同表一(二)イ・ハ、租税特別措置法80条1項3号、同条1項6号)、不動産取得税は、一定の形式移転と認められるものは非課税とされています(地方税法73条の7第2号、同法施行令37条の14)。提供:税経システム研究所
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2025/04/23 所得税法人税医療業務
クリニックの窓口収入管理方法
1.医療機関の収入医療機関の収入には患者から徴収した収入レセプト(診療報酬明細書)による社会保険診療報酬支払基金及び国民健康保険連合会への保険診療報酬の請求収入予防接種や健診等の実施による自治体や医師会から振り込まれる自由診療収入などがあります。これらの収入のうち②や③の収入は振込みによりますから収入の把握においては特段難しいことはありませんが、①の患者から徴収した収入の管理が医療機関においては(会計事務所においてはと言い換えることができます)一番難しい問題です。なぜ難しいのか、それは徴収した金額には保険診療と保険外収入とがあり、保険診療は消費税が非課税(事業税においても非課税)という扱いのため、区分して経理処理しておかないと消費税や事業税の計算ができない最近では患者の支払手段がPayPayなどによる電子決済、クレジットによる支払、それからオンライン診療においてはシステム会社を通してのクレジット決済、とキャッシュレス決済が多くなっているということがあげられます。特に②のキャッシュレス決済による窓口における収入をどのように管理・集計するかが、医療機関の経理事務を煩雑にしてきています。2.現場での作業診療報酬の領収書は、レセプトコンピュータからプリントしたものを患者に渡していますが、そこには現金なのかキャッシュレス支払なのかの記載はありません。そこで医療機関によっては余白に「クレジット決済」などのゴム印を押して患者に渡しています。更に、医療機関側では集計を管理するために領収証の控えの余白に「クレジット」や「PayPay」や「オンライン診療」などのゴム印を使い、決済手段ごとに領収証控えをまとめ、決済手段ごとに1日の集計をしています。3.会計事務所側の問題会計事務所においても、現金での収入はいくらだったのか、キャッシュレス決済による収入はいくらだったのかを把握しなければなりません。上述したように、保険診療収入は消費税や事業税の計算において非課税扱いになっているため、キャッシュレス決済による収入についても保険診療はいくらか保険以外の診療はいくらだったのかを把握する必要があります。また、クレジットやPayPayによる決済の場合手数料を引かれて振込まれ、オンライン診療にいたってはシステム会社が利用料を差引きます。また医療機関によって金額は異なりますが患者からオンライン診療利用料(保険診療以外の収入)を徴収しています。これらの金額を処理しないと、正確な収入金額が計算されないことになってしまいます。社会においてキャッシュレス決済が普及していっているのに、医療機関の事務処理はかえって地味な作業を強いられています。4.窓口における収入管理表の作成医療機関側では、窓口の収入を集計管理するためにエクセルで日計表や月計表を作成しています。基本のフォームは、「保険診療」と「保険外の収入」とを区分して集計できるようにしていますが、以前のように決済手段が現金だけならば、フォームも単純です。しかし、決済手段の多様化により、決済手段ごとに保険診療と保険外の収入の区分を設ける必要が生じました。保険診療も消費税や事業税の課税対象とされていれば、このような区分など必要ないのですが、税額計算上、区分を設けた管理表を作成せざるを得ないのです。参考までに、管理表フォームを最後に示してあります。5.日本医師会ORCA(オルカ)管理機構によるキャッシュレスサービス日本医師会ORCA(オルカ)管理機構は、医療機関のIT化を促進するため種々のサービスを提供していますが、そのうちの1つにクレジット決済サービスがあります。クレジット決済の他に電子決済にも対応(日本医師会会員限定)しています。窓口収入管理表の項目を1つ減らすことができるかもしれません。6.収入管理表の自動化はできないものかレセプトコンピュータやクレジット等の決済端末機から窓口の収入管理表へのデータ転送はできないものか、更には収入管理表のデータを会計システム(入力システム)に連動させるようなソフトはできないものか、おそらく多くの会計事務所が医療機関の処理実務をやりながら思っているのではないでしょうか。そのくらい医療機関における事務のIT化は遅れています。医療技術においてはあれほどIT化が進んでいるのにです。医療機関の事務においても、作業効率化のためにぜひ実現してもらいたいものです。7.追加情報:保険診療決定通知書のペーパーレス化昨年7月より、社会保険診療報酬支払基金(支払基金)及び国民健康保険連合会(国保連合会)からの診療報酬決定通知書が、これまでの紙媒体による郵送から、レセプトコンピュータへの配信通知に変更されました(プリントしなければ入手できなくなった)。顧問先に医療機関がある会計事務所にとっては知っておきたい知識です。なお、支払基金からの診療報酬額について、個人開業医の場合には源泉徴収税額が徴収されています。その源泉徴収税額の計算方法は(診療報酬決定額-200,000)×0.1021=源泉徴収税額です。この算式も知っておきたい知識です。ちなみに、上記の算式から、支払基金からの決定通知書が手元にない場合に報酬決定額を把握するための算式を求めることができます。報酬決定額をXとするととなります。そして源泉徴収税額はX-振込額で求めることができます。なぜ支払基金からの診療報酬について源泉徴収され、国保連合会からの診療報酬については源泉徴収されないのか、換言すれば、所得税法において「報酬・料金等の支払いを受ける者が個人の場合の源泉徴収の対象となる範囲」に「社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬」だけが該当しているのはなぜなのか、ということについては、おそらく国保連合会は国民健康保険法に基づき会員である保険者(都道府県、市町村及び国保組合)が共同して設立した公法人であるのに対し、支払基金は社会保険診療報酬支払基金法に基づき設立された法人(特別の法律に基づき設立された法人としての民間法人)であるという法人の性格(地位)によるのではないかと思われます。【参考:窓口収入管理表】提供:税経システム研究所
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2025/04/16 その他の税・法令等
不動産の取得に係る税金(登記と登録免許税)
不動産を取得した場合などには、通常は法務局で登記をしますが、このとき登録免許税が課税されます。登記をする際に安易に考えて、資金を出していない人を登記名義人としたり、出した資金よりも多い割合で登記したりすると、原則として贈与税が課税されます。資金を出した割合で登記することが大切です。1.登記と登録免許税不動産を取得した場合には、通常は法務局で所有権移転登記や保存登記、抵当権設定登記をしますが、このとき登録免許税が課税されます。登録免許税は、次のように定められています。2.土地の価額の特例登録免許税は固定資産税の評価額に税率を掛けて計算しますが、土地に対する登録免許税については、平成11年4月1日から平成15年3月31日までは固定資産税の評価額に3分の1の割合を掛けた価格に税率を掛けて計算する特例がありましたが平成15年3月31日をもって廃止されました。3.自己の居住用の家屋の特例一定の自己の居住用の家屋については、前記1.のように登録免許税が軽減される特例があります。この特例が受けられる一定の自己居住用の家屋は、平成11年4月1日以後に新築する次のような要件を満たす家屋です。所有者自身が住むためのものであること家屋の床面積(マンションの場合には専有部分の床面積)が50㎡以上であること新築住宅ならびに中古住宅の場合、新耐震基準に適合している住宅用家屋(登記簿上の建築日付が昭和57年1月1日以降の家屋については、新耐震基準に適合している住宅用家屋とみなす。)であること新築または取得後1年以内に登記すること登記申請書にその家屋所在地の市町村長の証明書類を添付することなお、この特例は敷地には適用がありません。また、法人にも適用しません。4.司法書士の手数料通常は司法書士に登記手続きを依頼しますが、その手数料もかかります。5.登記名義、親族からの借入と贈与税マイホームを購入したり新築したりすると、あとで税務署から「お買いになった資産の買入価額などについてのお尋ね」が送られてきて資金の出所などが質問されます。登記をする際に安易に考えて、資金を出していない人を登記名義人としたり、出した資金よりも多い割合で登記したりすると、原則として贈与税が課税されます。したがって資金を出した割合で登記することが大切です。また、親族から資金を借りる場合には、贈与とみなされて贈与税が課税されることがありますので、金銭消費貸借契約書を取り交わし、きちんと返済期日や利息などを定めておき、これに基づいて実際に返済することが大切です。提供:税経システム研究所
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2025/04/09 会計制度経営・運営公益法人
新公益法人制度と会計(第3回)
新公益法人制度と会計について、前回は制度改正等に伴うスケジュールの前半部分を記載させて頂きました。第3回では、引続き令和7年度以降の制度改正等のスケジュールを把握して、公益法人制度がどのように変貌するのかを考察したいと思います。(1)新公益法人制度と会計に関するスケジュールと概要⑤公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行令の一部を改正する政令(第323号)→令和6年10月30日公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号。以下「認定法」という。)により委任された事項を定める公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行令(平成19年政令第276号。以下「認定令」という。)について、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第29号。以下「改正法」という。)の施行に伴い、理事の構成の特例の基準等について定めるほか、公益目的取得財産残額に相当する額の財産の贈与を受けることができる法人に係る規定の見直しを行うため、改正するものです。特別利害関係(認定法第5条第10号関係)【改正】会計監査人設置義務適用除外(認定法第5条第13号関係)【改正】外部理事設置義務適用除外(認定法第5条第15号関係)【新設】公益目的取得財産残額贈与先(認定法第5条第20号関係)【改正】⑥公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則の一部を改正する内閣府令(第87号)令和6年10月30日改正される内閣府令では、公益認定の基準及び変更の認定の対象の見直し、公益目的事業の収入、遊休財産額の保有の制限及び区分経理に関する規定の見直し等について定めており、内閣府令案は、これらの見直し等について内閣府令に委任されている事項について定めるほか、所要の改正を行うものです。主な事項は以下のとおりです。外部理事・監事(改正法第5条第15号及び第16号)関係変更認定対象の届出化(改正法第11条及び第13条)関係公益目的事業の収入及び費用(改正法第14条)関係使途不特定財産額の保有の制限(改正法第16条)関係公益目的事業財産(改正法第18条)関係区分経理(改正法第19条)等関係公益目的取得財産残額(改正法第30条)関係財産目録等(改正法第21条及び第22条)関係経過措置について⑦一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律施行規則の一部を改正する内閣府令(第88号)→令和6年10月30日改正法される内閣府令では、整備法施行規則第45条においてインターネット上で閲覧に供することができる旨を定めるほか、所要の改正を行うものです。⑧公益認定等ガイドラインの制定→令和6年12月20日新しい「公益認定等に関する運用について」(公益認定等ガイドライン)が、令和6年12月20日に内閣府公益認定等委員会・内閣府大臣官房公益法人行政担当室で決定されました。本ガイドラインは、公益法人認定法令の運用に当たり留意すべき事項(法令等の解釈・運用)及び審査・処分の基準・考え方を示すものです。⑨公益法人会計基準及び運用指針の制定→令和6年12月20日新しい「公益法人会計基準」及び「公益法人会計基準の運用指針」が令和6年12月20日に内閣府公益認定等委員会で決定されました。本会計基準等は、今般の公益法人制度改革を受けた必要な見直しを行うとともに「わかりやすい財務情報の開示」を実現するため制定されたものです。また、本会計基準等の検討に当たり、公益法人の会計に関する研究会で特に議論になった事項については、その結論の背景を明らかにするため公益法人の会計に関する研究会において「公益法人会計基準の検討経過」を取りまとめられました。次回より、新公益法人制度と会計の各論についてご説明させて頂きます。提供:税経システム研究所
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2025/03/31 消費税
消費税の納税義務判定のポイント解説(第24回) 新設法人の納税義務の免除の特例③ 調整対象固定資産の取得
1.新設法人の納税義務の免除の特例とは新設法人の納税義務の免除の特例(以下「新設法人の特例」といいます。)とは、基準期間のない事業年度の期首資本金が1,000万円以上の新設法人(社会福祉法人を除きます。)について、消費税の納税義務を免除しないとする特例です(消法12の2①)。この特例の概要は、消費税の納税義務判定のポイント解説(第22回)「新設法人の納税義務の免除の特例①」を参照してください。今回は、この特例の対象となる新設法人が調整対象固定資産を取得した場合の取扱いを解説します。2.調整対象固定資産とは調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の次の資産のうち一の取引の単位(通常一組又は一式で取引の単位とされるものは一組又は一式)に係る税抜対価の額が100万円以上のものをいいます(消法2①十六、消令5)。<調整対象固定資産の範囲>建物及びその附属設備構築物機械及び装置船舶航空機車両及び運搬具工具、器具及び備品無形固定資産(例:営業権、商標権など)ゴルフ場利用株式生物(例:牛、豚、馬、果樹など)上記の資産に準ずるもの3.新設法人の特例と調整対象固定資産の取得との関係「新設法人の特例」の対象となる新設法人が、基準期間がない事業年度に含まれる各課税期間(通常は設立1期目・2期目)中に調整対象固定資産の仕入れ等をし、かつ、その仕入れ等をした課税期間の申告を「一般課税」で行った場合には、その調整対象固定資産の仕入れ等を行った日の属する課税期間からその課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間にも「新設法人の特例」が適用されます(消法12の2②)。これにより、調整対象固定資産の仕入れ等をした課税期間を含めた3期は課税事業者であることが強制されるため「新設法人の3年縛り」と呼ばれています。具体例で、取扱いを確認してみましょう。【前提条件】X3年4月1日に資本金1,000万円で設立(設立後に減資は行っていない)「課税事業者選択届出書」は提出していないX5年3月期(設立2期目)に調整対象固定資産を取得したX4年3月期(設立1期目)・X5年3月期(設立2期目)の申告を「一般課税」で行った基準期間のないX4年3月期(設立1期目)とX5年3月期(設立2期目)は、いずれもその事業年度開始の日の資本金の額が1,000万円以上であるため、「新設法人の特例」の適用により課税事業者になります(消法12の2①)。このうち、X5年3月期(設立2期目)中に調整対象固定資産の仕入れ等を行い、かつ、その課税期間の申告を「一般課税」で行っているため、「新設法人の3年縛り」が適用されることになります。具体的には、調整対象固定資産の仕入れ等を行った日の属する課税期間(X5年3月期)からその課税期間の初日(X5年3月期の初日であるX4年4月1日)以後3年を経過する日(X7年3月31日)の属する課税期間(X7年3月期)までの各課税期間にも「新設法人の特例」が適用されます(消法12の2②)。ただし、X5年3月期(設立2期目)は、期首資本金が1,000万円以上であることにより既に「新設法人の特例」の適用を受けているため、調整対象固定資産を取得したことにより追加で「新設法人の特例」が適用されるのは、X6年3月期(設立3期目)とX7年3月期(設立4期目)になります。4.「新設法人の特例」の適用を受けない場合の「3年縛り」の適用の有無「新設法人の3年縛り」が適用される新設法人は、基準期間のない事業年度の期首資本金が1,000万円以上である全ての新設法人であることに注意が必要です。これは、その新設法人が基準期間のない課税期間に「新設法人の特例」の適用を受けて課税事業者になったかどうかは問わないということです(消基通1-5-21)。例えば、上記の事例において、X5年3月期(設立2期目)の特定期間であるX3年4月1日から9月30日までの期間の課税売上高と給与等の金額のいずれもが1,000万円を超えていたとします。この場合、X5年3月期(設立2期目)は「新設法人の特例」ではなく、「特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例」(以下「特定期間の特例」といいます。)の適用により課税事業者になります。これは、このように2つ以上の規定の適用が想定される場合には、法律の適用が重複しないように、どちらの規定を優先して適用するかが定められていて、「新設法人の特例」と「特定期間の特例」とでは「特定期間の特例」を優先して適用することになっているからです(消法9の2①、消法12の2①)。X5年3月期(設立2期目)に「新設法人の特例」が適用されないのであれば、この期間中に調整対象固定資産の仕入れ等を行ったとしても「新設法人の3年縛り」は適用されないのではないか?と考えそうですが、ここが要注意ポイントです!「新設法人の3年縛り」が適用される新設法人は、基準期間のない事業年度の期首資本金が1,000万円以上である全ての新設法人であることは先ほど述べた通りです。事例の法人は、X5年3月期(設立2期目)は「新設法人の特例」は適用されませんが、基準期間のない事業年度(X5年3月期)の期首資本金が1,000万円以上である新設法人であることに変わりありません。したがって、X5年3月期(設立2期目)中に調整対象固定資産の仕入れ等をし、かつ、「一般課税」で申告を行った場合には、X6年3月期(設立3期目)とX7年3月期(設立4期目)には「新設法人の特例」が追加で適用されることになります。このように、調整対象固定資産の仕入れ等を行った課税期間が「新設法人の特例」の適用を受けなかったとしても、「新設法人の3年縛り」が適用されることがあるため注意が必要です。提供:税経システム研究所
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2025/03/31 所得税
相続と所得税 第28回 NISA(少額投資非課税制度)と相続
NISA(ニーサ)とは、少額からの投資を行う「少額投資非課税制度」で、2014年より導入されたが、2024年より新たな制度がスタートしている。イギリスのISA(IndividualSavingsAccount=個人貯蓄口座)をモデルにした日本版ISAとしてNISA(NipponIndividualSavingsAccount)という愛称がつけられている。NISA口座に国内株式など、資産を所有している人が死亡した場合の税務上の取引についてみていく。1.NISA制度の概要(1)NISA口座とは株式、投資信託などの売買や配当等の受取りなど金融商品の取引を行う証券口座がある。口座の種類によって税金などの取扱い方法は異なっている。株式などの売却時の譲渡益、配当等は所得税や住民税の課税対象となるが、証券口座のうちNISA口座で投資した一定の購入分については、その譲渡益、配当等が非課税となる。NISAを利用するためには、証券会社や銀行、郵便局などの金融商品取引業者等(金融機関)において「NISA口座」を開設する必要がある。〔証券口座の主な種類〕(2)NISA制度の概要2024年よりスタートした新しいNISA制度の概要は次のとおりである。〔NISA制度の概要〕(2024年~)出典:『政府広報オンライン(2024年9月30日「NISA」って何?わかりやすく解説』より表をアレンジして掲載①年間の投資上限額「つみたて投資枠」(年間120万円)と「成長投資枠」(年間240万円)の2つの枠があり、一つの口座で併用することができる。②非課税保有期間無期限であり、生涯を通じて投資することができる。③非課税保有限度額非課税保有限度額1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)である。非課税保有限度額(総枠1,800万円)は簿価(取得価額)によって管理される。売却した分についてはその枠を翌年以降に再利用することが可能である。また、口座開設期間や非課税保有期間に制限は設けられておらず、いつでもNISAの利用をはじめることができ、非課税保有限度額の範囲内であれば、何度でも新規投資することができる。④投資対象商品金融機関によって購入できる商品が異なるため、NISA口座の開設に当たっては、投資したい金融商品を検討し、金融機関を選ぶとよい。(3)NISAの利用にあたって新たにNISA口座を開設するには、居住者等で、その年1月1日において18歳以上である者に限り、一定の事項を記載した「非課税口座開設届出書」を金融機関へ提出をし、一人一口座開設することができる。(4)NISAにおける税務NISA口座を開設した日以後支払を受けるべき、NISA口座内の上場株式等の配当等については所得税と住民税は課税されない。また、NISA口座を開設した日以後にNISA口座内の上場株式等を譲渡した場合には、その譲渡による所得については所得税と住民税を課税されない。口座の開設者がNISA口座内の上場株式等と課税口座(一般口座や特定口座)内の上場株式等の両方を持っているときは、NISA口座内の上場株式等による所得と、課税口座(一般口座や特定口座)内の上場株式等による所得の金額は区分して、計算する。そのため、課税口座(一般口座や特定口座)で、既に保有している商品を、NISA口座に移管することはできない。したがって、商品の買付時にNISA口座を利用するか否かを決める必要がある。NISA口座で取得した上場株式等の売却により生じた損失はないものとみなされる。したがって、NISA口座で生じた売買による損益は、課税口座(一般口座や特定口座)の損益とは通算することができない。また、NISA口座で取得した上場株式等の売却により生じた損失の繰越控除もできない。2.NISA口座の開設者が死亡した場合の所得税の取扱い(1)死亡した開設者のNISA口座の上場株式等の払出し①非課税口座開設者死亡届出書NISA口座の開設者が死亡した場合には、その相続人は、死亡したことを知った日以後、遅滞なく「非課税口座開設者死亡届出書」をNISA口座が開設されている金融機関に提出をしなくてはいけない。②死亡した時までの含み益に対する非課税措置の適用NISA口座の開設者が死亡した日以後、そのNISA口座で支払われるべき配当等がある場合にはその配当等には、非課税措置の適用はない。NISA口座の開設者が死亡した時は、NISA口座に受け入れていた上場株式等はNISA口座より払出される。この際、NISA口座の開設者が死亡した時に、その日の終値に相当する金額により上場株式等を売却したものとみなされる。この場合、NISA口座の開設者が死亡した時までの含み益については、非課税措置の適用がある(譲渡損失についてはなかったものとみなされる)。贈与又は、相続若しくは遺贈により、NISA口座内の上場株式等の払出しがあった場合には、その払出しがあったNISA口座内の上場株式等に、贈与又は相続若しくは遺贈の事由が生じた時に、その払出たときの金額により、NISA制度に基づく譲渡があったものとみなして、このNISA制度その他の所得税に関する法令の規定を適用することとされている(措法37の14④)。(2)死亡した開設者のNISA口座より払出された上場株式等の相続による取得①相続上場株式等移管依頼書死亡した者のNISA口座における上場株式等を、相続人が相続人の口座へ移管する場合には、「相続上場株式等移管依頼書」を金融機関へ提出する。死亡した開設者のNISA口座と相続人の課税口座(特定口座や一般口座)は必ず同一金融機関とする。②相続人が相続した上場株式等の取得価額相続人が取得した死亡した者のNISA口座に受入れられていた上場株式等は、NISA口座の開設者が死亡した時に、死亡した日の終値に相当する金額で相続人が取得したものとみなして、相続人の課税口座(特定口座や一般口座)に移管される。個人が相続(限定承認に係るものを除く)や遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く)により取得した資産については、その資産を取得した人が初めから引続き所有していたものとみなして、その取得費を計算することとなっている(所法60①)。しかし、死亡した開設者のNISA口座の上場株式等を相続人が、相続人の課税口座(特定口座や一般口座)に移管する場合には、受入れる上場株式等の取得価額は、死亡した日の終値に相当する金額となる。3.死亡したNISA口座の上場株式等における相続税の取扱い死亡した開設者のNISA口座内の上場株式等は、被相続人の相続財産であり、相続税の課税対象である。相続税の計算における相続財産の評価は、原則として相続開始日の時価で行うが、国税庁から公表されている「財産評価基本通達」による評価基準に従って評価することとされている。したがって、原則として、死亡した開設者のNISA口座内の上場株式等については、「財産評価基本通達」による評価基準に従って評価する。【参考文献】金融庁HP「NISAを知る」他国税庁HP政府広報オンライン「「NISAって何?わかりやすく解説」他提供:税経システム研究所
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2025/03/12 所得税税制改正
特定の事業用資産の買換えの特例は個人の場合でも事前の届出が必要
令和5年度税制改正により、「特定の事業用資産の買換えの特例」については、令和6年4月1日以後に譲渡資産の譲渡をし、かつ、令和6年4月1日以後に買換資産の取得をする場合、事前に届出を行う必要が生じました。法人における「特定資産の買換えの場合の課税の特例」のみならず、個人についてもこの届出書を提出期限内に提出していなかった場合は、適用を受けることができないという厳しい取扱いになっています。そこで今回は、令和6年分の確定申告における届出の再確認とともに、令和7年分以降に適用を受けようとする際の手続きについて、概要を確認していきたいと思います。1届出の期間この届出は、資産の譲渡の日(同日前に買換資産の取得(建設・製作を含む)をした場合(先行取得の場合)には、その資産の取得の日)を含む三月期間の末日の翌日から2か月以内に行わなければならないこととされています(措令25③)。この場合の「三月期間」とは、1月1日から3月31日まで、4月1日から6月30日まで、7月1日から9月30日まで及び10月1日から12月31日までの各期間をいいます。【国税庁資料】2届出事項届出書の記載事項は次のとおりとなります(措令25③)。①届出者の氏名及び住所②譲渡資産及び買換資産に関する次の事項その譲渡をした譲渡資産及びその三月期間内に取得をした買換資産の種類、構造又は用途、規模(土地等の場合はその面積)、所在地並びに譲渡年月日及び取得年月日譲渡した譲渡資産の価額及び取得費の額その三月期間の末日の翌日以後に取得をする見込みである買換資産の種類、所在地及び取得予定年月日ただし、先行取得の場合においては次の事項となります。その三月期間内に譲渡をした資産及びその取得をした買換資産の種類、構造又は用途、規模(土地等の場合はその面積)、所在地並びに譲渡年月日及び取得年月日取得した買換資産の取得価額その三月期間の末日の翌日以後に譲渡をする見込みである譲渡資産の種類、所在地及び譲渡予定年月日③買換資産のその適用に係る租税特別措置法第37条第1項の表の各号の区分④その他参考となるべき事項なお、この届出書を提出した場合であっても、譲渡資産の譲渡と買換資産の取得を同一年中に行わなかった場合は、「買換(代替)資産の明細書の提出手続」や「先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出」の別途手続きが必要となりますのでご注意ください。3おわりにこの届出は令和5年度税制改正により導入され、令和6年4月1日以後の譲渡資産の譲渡等から適用されていますが、実務上の手間が増加するだけであり、この改正の趣旨を理解することができませんでした。当時の財務省の「税制改正の解説」を見ても改正の理由についての記載はなかったのですが、一方で同様に届出が導入された、法人の「特定資産の買換えの場合の課税の特例(圧縮記帳)」では、次のような記載がされていました。本制度は、土地政策又は国土政策の観点から、特定の地域からの追い出し促進や、土地の有効利用促進といった政策目的を達成するための買換えについて課税の特例を認めるものですが、土地等の売買取引を多く行う大企業等において、申告時にその売買取引を並べた上で各措置の要件に合致する譲渡資産と買換資産の組み合わせを事後的に作成し、適用を受けるという実態があることが指摘されていました。制度の適用期限を延長するに当たっては、このような状況を是正し、本制度をインセンティブ措置として適切に機能させる必要があることから、令和5年度税制改正では、譲渡(又は取得)後一定期間内に本制度の適用及び適用を受ける買換え(譲渡資産と買換資産の組み合わせ)に関する事項の届出を適用要件とすることとされました。【財務省ホームページ令和5年度税制改正の解説詳細402頁。下線は筆者による。】個人の場合は、前述の改正の理由のように「申告時にその売買取引を並べた上で各措置の要件に合致する譲渡資産と買換資産の組み合わせを事後的に作成し、適用を受ける」ことは通常あり得ないと思われますが、法人の制度と同様に届出が必要になったことは説明のとおりです。国税庁は昨年の6月にパンフレットを作成し公表していますが(「特定の事業用資産の買換えの特例の適用を受けるためには事前に届出が必要です」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/joto-sanrin/0024005-147.pdf)、令和6年分の確定申告において万が一提出期限内の届出を失念していた場合は、申告直前になって適用不可であることが判明するケースや、適用を受けて申告した後、税務署より照会がかかるケースも想定されます。この買換えの特例は令和5年度税制改正により、原則として令和8年12月31日までの譲渡について適用が可能となっています。令和6年分はともかく、令和7年分以降の譲渡に係る届出については充分に注意したいと思います。提供:税経システム研究所
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2025/03/05 消費税その他の税・法令等国際税務
トランプ関税なんて怖くない?
はじめに去る1月20日、米国第47代大統領としてドナルド・トランプ氏が再任されました。予想通り、この1か月間、世界はトランプ大統領に振り回されてきました。特に、昨年の選挙期間中から主張していた「関税」の発動を続々と表明してきました。最初は、国際緊急経済権限法に基づき、2月4日より隣国のカナダとメキシコからの輸入貨物に25%の関税、中国には10%の追加関税を課すとしました。その後、カナダとメキシコについては、その実施が1か月間延期されました。その後、石破首相との首脳会談では波風が立たなかったにもかかわらず、相互関税のほか、鉄鋼・アルミニウムへの25%関税(3月12日以降)、そして、自動車・自動車部品へも25%を課す(こちらは4月2日に具体案を公表)、と立て続けに表明しました。報道でも明らかなように、これにより日本企業に大きな動揺が広がっています。そこで、今回はトランプ関税について、2025年2月20日現在の情報に基づいて、解説することにします。なお、本文に米ドルが度々登場しますが、ご容赦ください。1ドル=100円又は150円と割り切って換算していただければ幸いです。1.日本の関税とは関税とは、外国から輸入される貨物に対して課される租税をいいます。そして、「その性格は消費税」と言われています(有斐閣『法律学小辞典(第6版)』177頁)。財務省のウェブサイトによると、「関税が課せられると、その分だけコストが増加し、国産品に対して競争力が低下することから、関税の国内産業保護という機能が生まれます。現在では、この産業保護が重要な関税の機能となっています。」とのことです。日本の関税は、関税法によって輸入貨物を輸入する者を納税義務者としていますが、関税の対象となる輸入貨物については、別途関税定率法に定められています。日本で関税を賦課徴収する部署は税関であり、税関を所掌するのは財務省関税局です。令和7年度予算案において、関税収入は9,890億円を見込んでおり、税収全体78.4兆円に占める割合は約1.3%です。2.米国の関税とは(1)第1次トランプ政権以降の中国への制裁関税米国において関税は、通商代表部(USTR)が所掌していますが、関税の賦課徴収は税関国境警備局が担当します。これ以外に、国家安全保障や反ダンピングについては商務省が、貿易調査や救済措置は国際貿易委員会が、さらには経済政策や財政措置の面で財務省が、それぞれ担当しており、かなり複雑なものとなっています。第1次トランプ政権時、米国通商代表部(USTR)のライトハイザー代表が中国に高率の制裁関税を課したことを思い出す読者も多いと思います。米国は中国との貿易赤字が巨額であり、これを「不公正」と断じることで多くの輸入貨物に25%の関税を発動しました。その後、バイデン政権は、そのほとんどを引き継いだだけでなく、2024年5月に電気自動車(EV)や半導体などに高率の関税を中国に課しました。このうち、電気自動車については中国政府からの多大な補助金のために「不公正」とされた一方、半導体については、米国の国際競争力の維持(中国の台頭を許さない)に加えて、IT製品を通じて中国への情報漏洩を防止する目的、つまり国家安全保障を重視したものとされます。バイデン政権までの中国への制裁関税を簡単にまとめたのが、図表1です。【図表1:米国による中国への制裁関税】発動日関税率対象額主な対象品目2018.7.625%340億ドル産業機械、半導体、自動車部品2018.8.2325%160億ドル電子部品、鉄鋼、化学品2018.9.2425%2,000億ドル家具、家電、食品、衣類2019.9.115%→(その後)7.5%1,200億ドル衣類、食品、玩具2024.5.14100%(電気自動車)、50%(太陽電池、半導体)、25%(アルミ、バッテリー、重要鉱物、クレーン、医薬品)(出典:日本経済新聞等から筆者作成)(2)米国の関税収入の推移それでは、第1次トランプ政権以降、米国が中国に制裁関税を課したことで、関税収入がどのように推移していったのか、米国統計局の資料で見ていきましょう。【図表2:米国関税収入の推移】(出典:米国統計局資料より筆者作成。2024年は見積額。)図表2を見ると、中国への制裁関税が本格化した2019年には710億ドルと2015~2017年の2倍程度になり、その後は800~1,000億ドル(1ドル=100円換算で8~10兆円)の間で推移しています。対中制裁関税だけで、450~650億ドルの歳入が増加したことになります。このように、第1次政権での制裁関税に一定の効果はあったのかもしれません。(3)2025年2月20日現在の状況第2次トランプ政権では、さらなる関税の拡大を目指しています。2月20日現在、図表3のようになっています。【図表3:第2次トランプ政権の関税政策】(出典:日本経済新聞電子版2025年2月20日)これに対して、日本政府としては鉄鋼・アルミニウム及び自動車・自動車部品の適用除外を要請しています。また、経済産業大臣は、自動車について「日米政府間で協議を始めた。」とも述べています。さて、たくさんの関税政策を発表してきたトランプ関税ですが、さすがに一段落するようです。日本時間2月20日午前、トランプ大統領は、「今後、議会で税制改正法案を審理してもらう。米国で製造する企業を現在の21%から15%まで引き下げたい。」と表明しました。関税政策から租税政策への転換、特に税制改正法案は大統領の一存では決められません。そこで、現在、上下両院で多数を握る共和党に呼びかけて法人税減税法案を成立させたいと理解できるように思います。(4)相互関税の見方日米貿易については、以前よりたくさんの議論がありました。特に、米国政府は自国に有利な条件を突き付けて、「カリフォルニア米やオレンジ、小麦などをもっと買え。」と要求してきました。今後も同じような話をする可能性はあるでしょう。というのは、日本は米や小麦などの一部を除いて、関税の税率は低いです。ということは、相互関税を仕掛けられたとしても、あまり影響はないと考えられます。ですから、農産物や非関税障壁とされる事項について、以前と似たような議論が交わされることになるでしょう。ただし、トランプ大統領は関税と消費税(欧州の付加価値税)とを同じように見ているので、日本の消費税率10%(食料品は8%)を問題視するかもしれません。トランプ大統領は、Xに次のように投稿しました。「私は相互関税を課税することを決定した。米国政策上、我々は、関税よりもはるかに懲罰的な付加価値税(消費税を含みます)制度を使用する国を、関税のそれと類似しているとみなす。米国は、長年に渡り敵味方を問わず、他の国々から不公平な扱いを受けてきた。相互関税は、複雑で不公平な貿易制度に、公正と繁栄を直ちにもたらすことになる。」少しわかりにくいかもしれませんが、外国からの輸入貨物に対して、多くの国により付加価値税や消費税が課されることは米国の輸出への不当差別であること、米国が同率の関税を課すことで諸外国との間で「公平になるだけでなく、米国の繁栄をもたらす」という主張です。3.消費税としての関税の考え方ここで、関税と消費税を同じと考えるトランプ大統領の真意を探っていきましょう。1で述べたように、関税は消費税と同じ性格を有しています。米国において、関税の納税義務者は輸入者=米国事業者ですが、これは消費税と同じです。また、納税額を製品価格に転嫁することで関税や消費税を最終的に負担するのは最終消費者である米国国民になります。これを示したのが図表4です。【図表4:日米欧の消費税のイメージ図】(出典:筆者作成)図表4に記載したように、米国は輸入する際、輸入消費税・輸入付加価値税が課されていません。現状、中国からの輸入貨物のみ、関税が課されています。これに対して、日本では輸入消費税が10%、ヨーロッパでは輸入付加価値税が英独仏といった主要国で20%、高率の国では25%や27%が課されています。そして、それぞれ若干の関税がプラスして課されています。つまり、米国は国レベルでの消費税・付加価値税を有していないので、その分関税を課する余地があることになります。トランプ大統領は、このことを述べたことになります。4.米国の新たな取り組みはどうなるかトランプ大統領が矢継ぎ早に繰り出す関税政策は、消費税の代わりに(主要製品など)25%といった高率で課するものです。この関税は、最終的には米国民が負担しますが、明らかな保護政策ですので日本や中国からの輸入に大きな影響を与えるかもしれません。ここで、税金の専門家として興味深いのは、関税と消費税を一体化して政策に反映させることです。これまで、米国は消費税については、地方税(州税)とすることで連邦として力を入れてきませんでした。今回、自国産業保護の観点から高率の関税を課して、これを国民に負担させようという新たな取り組みを始めるということです。別の言葉で言えば、長い間自由貿易を進めてきた米国をはじめとする先進国の低関税政策を、一気に保護貿易(反自由貿易)を進めるという時代に逆行した政策の始まりです。国際課税の専門家から言わせると、従来の発想にはない新しい政策、つまり関税を消費税と同じように捉えるという新しい政策を見ることは非常に興味深いことです。しかし、日本の米や小麦、そして、米国の自動車産業などを見ていると、保護政策を取っても長期的に見れば衰退していくように思われます。また、第1次トランプ政権で敵視していた中国のIT企業のファーウェイの業績が良くなったという報道もあります。米国などから締め出されたとしても、自社で優良な製品を生み出すことに成功することができているということを知らされています。このほか、関税は消費税とは異なり、仕入税額控除ができないということがあります。日本やヨーロッパが採用している消費税や付加価値税では仕入税額控除という制度があるので、付加価値の分のみの負担となり、輸出免税もあります。米国が発動しようとしている追加関税や米国の多くの州にある売上税・使用税といった消費税に類似した地方税には、仕入税額控除という制度はありません。そこで、関税+売上税・使用税について、米国事業者はこれらの税を取引価格に上乗せしなければなりません。関税や売上税等を負担するのは米国の最終消費者です。そこで、米国の物価上昇圧力は仕入税額控除のある消費税・付加価値税を採用する日欧に比べると格段に上がります。このようなことは、トランプ政権は百も承知でしょう。高率の関税を、主に取引(ディール)に使用しているのは、そのためだと思います。5.「アメリカ・ファースト」の意味トランプ大統領が盛んに主張する「アメリカ・ファースト」と発言する真意を探ってみましょう。米国は世界一のGDP、軍事力などを持っています。米国金融市場は圧倒的存在感ですし、GAFAMなどのIT企業も絶好調です。しかし、USスチールに代表されるような実物経済は世界では競争力を失っています。米国社会で格差が拡大して、貧困層が増加していることも事実でしょう。そこで、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」発言の背景には、このような実物経済における米国の競争力の明らかな低下があると考えるべきでしょう。ある意味では、トランプ大統領は米国の雇用を生み出すことや貧困層の生活保障のため必死に取り組んでいるのではないでしょうか。第2次トランプ政権の関税政策の背景には、このような米国の国際競争力の低下があると思います。おわりに本稿では、トランプ大統領が主張する高率の制裁関税の背後には、消費税としての性格、米国の国際競争力の低下などがあることを述べました。このような中、日本の企業は何をすべきでしょうか。トランプ大統領の機嫌を取るべきでしょうか。そうではありません。日本は、これまで以上に国際競争力のある商品や製品を生み出して、それを世界に提供することです。天然資源に乏しい日本は、高度な技術に裏打ちされた商品や製品を米国をはじめとする各国に提供することで、外貨を獲得しなければなりません。そして、それを元手に米国をはじめとする各国に投資していく必要があります。トランプ大統領の言動にビビる必要はないのです。なお、2(3)で述べたように、今年は米国で大きな税制改正があるようです。こちらについても、日本企業に関係する部分について、今後解説していきたいと思います。提供:税経システム研究所
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