税務情報レポート
MJS税経システム研究所・税務システム研究会の顧問・客員研究員による租税を中心とした多彩な研究成果および最新の税制改正および制度や動向、判例研究等に関するリポートです。
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2025/02/12 所得税
過年度に上場株式等の譲渡損失の申告がなかった場合の救済
❶上場株式等の譲渡損失については、次の2つの特例が認められている上場株式等に係る配当所得等との損益通算譲渡損失の3年間の繰越控除❷上記❶の特例を受けるには、明細の添付等の申告要件が設けられている。❸上記❷の要件には宥恕規定が設けられていないので、この要件を満たしていなければ損益通算や繰越控除が認められず、不測の事態が生じる。❹ただし源泉徴収なしの特定口座の場合は、❷の要件を満たしていなかった場合でも、一定の手続きを取ると上記❶の特例の適用が可能になる1.上場株式等に係る譲渡損失の配当所得等との損益通算上場株式等に係る譲渡損失の金額は、同年分の上場株式等に係る配当所得等の金額と損益通算が認められます(措法37の12の2①)。2.上場株式等に係る譲渡損失の3年間の繰越控除その年の前年以前3年内の各年から繰り越された上場株式等に係る譲渡損失の金額は、その年における上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得等の金額から繰越控除が認められます(措法37の12の2⑤)。3.対象となる上場株式等の範囲特例の対象となる上場株式等とは、金融商品取引所に上場されている株式等、投資信託の受益権で一定の公募によって募集されているもの、国債、地方債及び公社債で一定の公募によって募集されているものなどをいいます。4.対象となる譲渡損失の要件特例の対象となる上場株式等に係る譲渡損失は、金融商品取引業者への売委託による譲渡によって生じたものや金融商品取引業者に対する譲渡によって生じたものなどに限られ、個人間の譲渡による損失は対象になりません(措法37の12の2②)。5.配当所得等との損益通算を受ける場合の申告要件上記1の同年分の配当所得等との損益通算を受けるためには、次の要件が設けられています(措法37の12の2③)。確定申告書にこの規定の適用を受けようとする旨の記載があること上場株式等に係る譲渡損失の金額の計算明細書等が添付されていること6.繰越控除を受ける場合の申告要件上記2の上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除を受けるためには、次の要件が設けられています(措法37の12の2⑦)。譲渡損失が生じた年分の申告書に、上場株式等に係る譲渡損失の金額の計算明細書等が添付されていることその後において連続して確定申告書を提出されていること繰越控除の適用を受けようとする年分の確定申告書に、繰越控除を受ける金額の計算明細書等が添付されていること7.上記5又は6の申告要件を満たさなかった場合上記5又は6の申告要件を満たさなかった場合には、これらの譲渡損失に係る特例を受けることができません。従前は、これらの申告要件を満たしていないことについて、税務署長がやむを得ない事情があると認める場合には適用を受けることができるとの宥恕規定が設けられていましたが、平成25年改正によって削除され、平成28年分から適用されています。8.上場株式等に係る譲渡損失の有無についての確認が肝要したがって、税理士が確定申告の依頼を受ける際には、上場株式等の譲渡損の有無について確認しておくことが非常に重要になります。このため、下記のような確認書を受け取っておくのも有効かと思われます。上記の書式は非常に簡単で、特例の対象となる上場株式等に該当するかどうかにも触れていませんが、上場株式等の範囲は非常に複雑で、その上場株式等の範囲を紙面に記載するとかえって煩雑になることから、単に損失の有無だけを尋ね、後は税理士が上場株式等に係る譲渡損失に該当するかどうかを判断すればよいとの発想でまとめています。9.源泉徴収なしの特定口座の場合は後から更正の請求をして救済できる源泉徴収なしの特定口座は、もともと確定申告を行うことが必要とされています。したがって、この特定口座の内容を確定申告に組み入れていなかった場合は、誤りのある申告になって、譲渡益が発生していた場合には修正申告が必要になります。逆に譲渡損失が発生している場合であれば、損失の額が申告書に記載されていませんので、更正の請求を行って損失の額を復活させることになります(通法23①二)。更正の請求が認められて損失の額が復活すると、その申告書には損失の額に関する明細書等の添付があった申告書を提出したこととして扱われます(措通37の12の2-5)。源泉徴収なしの特定口座について、確定申告から漏れていた場合には、上記のプロセスによって、損益通算や繰越控除を後からさかのぼって受けることができるようになります。なお、繰越控除を受ける際には、控除を受ける年分の確定申告書を提出するまで(同日可)に過年分の更正の請求をしておく必要があるとされています。10.なぜ源泉徴収ありの特定口座は更正の請求ができないのか源泉徴収ありの特定口座は、申告分離課税によって申告するほか、申告不要を選択することができ、源泉分離課税と同様の効果が生じます(措法37の11の5)。この申告不要を選択するには特別の手続きが要らず、単に確定申告書に記載しなかった場合には、申告不要を選択したものとされます。更正の請求は、元の確定申告における課税標準や税額の計算が、法律の規定に従っていなかった場合か計算に誤りのある場合に適用され(通法23)、単なる選択違いの場合は、法律に別段の規定がないかぎり行うことができません。過年度の確定申告において源泉徴収ありの特定口座による取引が申告分離課税の計算に含まれていなかった場合には、それは申告不要を選択したものと解され、法律の規定に従った申告であることなりますので、更正の請求を行うことはできないと解されています。提供:税経システム研究所
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2025/02/05 その他の税・法令等
不動産の取得に係る税金(契約書と印紙税)
不動産の売買契約書や建物の建築工事請負契約書、借入れをする際の金銭消費貸借契約書には印紙税が課税されます。1.売買契約書と印紙税不動産の売買契約書を作成したときは印紙税が課税されます。印紙税は契約書に印紙を貼って印鑑で消印して納めます。契約書を複数作成したときはそれぞれに貼る必要があります。印紙を貼らなかった場合には、過怠税を含めてその3倍が課税されます。印紙は貼ってあるが消印がされていない場合には、その印紙と同額の過怠税が課税されます。平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される不動産売買契約書に係る印紙税の税率は、次表のように引き下げられています。2.請負契約書と印紙税建築工事の請負契約書を作成したときは印紙税が課税されます。平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される工事請負契約に係る印紙税の税率は前表のように引き下げられています。3.金銭消費貸借契約書と印紙税不動産を購入するにあたって借入れをする場合、借入れをする際の金銭消費貸借契約書には印紙税が課税されます。印紙税の金額は、前記1の売買契約書の軽減前(カッコ内)の税率と同じ税率です。4.印紙税と消費税印紙税の金額は前記のように売買契約書や請負契約書に記載された金額によって変わりますが、消費税が売買金額や請負金額と区別して記載されているときは消費税を含めない売買金額や請負金額によって印紙税の金額が計算され、消費税を含めた売買金額や請負金額が記載されているときは消費税を含めた売買金額や請負金額によって印紙税の金額が計算されます。提供:税経システム研究所
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2025/01/29 経営・運営医療業務
医療法人機関シリーズ(第19回)
医療(学)区分―医療についての基本知識です。基礎医学医学の研究・教育で患者の診療に携わらない臨床医学⇒患者の診療に携わる⇒通常税務・会計の顧問をしている部門Ⅰ.医療法人制度で理解しておく必要がある事項第五次医療法改正(平成19年4月施行)で制度の大改正が次のように行われました。∴社団医療法人は出資持分ありか出資持分なしに区分され、平成26年度税制改正で中間法人的考えで認定医療法人が創設されました。(注)種類別の割合は、厚生労働省「医療法人数の推移」令和6年の数値をもとに計算しています。〔社団医療法人の相続税・贈与税の納税猶予〕主旨出資持分あり医療法人の経営者の死亡による相続の発生で持分なし医療法人への移行について支障が生じないよう、計画的な取り組みを行う医療法人を国が認定する仕組みを導入します。認定を受けた医療法人は移行期間中の相続税を猶予し、移行後に免除する措置です。(検討)医療法附則第2条政府は、この法律の施行後5年を目途として、この法律の施行の状況等を勘案し、この法律により改正された医療法等の規定に基づく規制の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。(残余財産に関する経過措置)医療法附則第10条新医療法第44条第4項(残余財産の帰属すべき者)の規定は、施行日以後に申請された同条第1項(設立許可、知事)の認可について適用し、施行日前に申請された同項の認可については、なお従前の例による。2施行日の前に設立された医療法人又は施行日前に医療法第44条第1項の規定による認可の申請をし、施行日以後に設立の認可を受けた医療法人であって、施行日において、その定款又は寄付行為に残余財産の帰属すべき者に関する規定を設けていないもの又は残余財産の帰属すべき者として新医療法第44条第4項に規定する者以外の者を規定しているものについては、当分の間(当該医療法人が、施行日以後に、残余財産の帰属すべき者として、同項に規定する者を定めることを内容とする定款又は寄附行為の変更をした場合には、当該定款又は寄附行為の変更につき医療法第50条第1項(変更)の認可を受けるまでの間)、新医療法第50条第4項(定款等の変更)の規定は適用せず、旧医療法第56条(残余財産の帰属処分)の規定は、なおその効力を有する。医療法附則(新医療法人への円滑な移行)第十条の二政府は、地域において必要とされる医療を確保するため、経過措置医療法人(施行日前に設立された社団たる医療法人又は施行日前に医療法第四十四条第一項の規定による認可の申請をし、施行日以後に設立の認可を受けた社団たる医療法人であって、その定款に残余財産の帰属すべき者に関する規定を設けていないもの及び残余財産の帰属すべき者として同条第五項に規定する者以外の者を規定しているものをいう。次条及び附則第十条の四において同じ。)の新医療法人(社団たる医療法人であって、その定款に残余財産の帰属すべき者として同法第四十四条第五項に規定する者を規定しているものをいう。以下同じ。)への移行が促進されるよう必要な施策の推進に努めるものとする。(移行計画の認定)第十条の三経過措置医療法人であって、新医療法人への移行をしようとするものは、その移行に関する計画(以下「移行計画」という。)を作成し、これを厚生労働大臣に提出して、その移行計画が適当である旨の認定を受けることができる。2移行計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。一新医療法人であって、次に掲げる医療法人のうち移行をしようとするものイ医療法第四十二条の二第一項に規定する社会医療法人ロ特定の医療法人(租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)第六十七条の二第一項の規定による国税庁長官の承認を受けた医療法人をいう。)ハ基金拠出型医療法人(その定款に基金(社団たる医療法人に拠出された金銭その他の財産であって、当該社団たる医療法人が当該拠出をした者に対して返還義務(金銭以外の財産については、当該拠出をした時の当該財産の価額に相当する金銭の返還義務)を負うものをいう。)を引き受ける者の募集をすることができる旨を定めた医療法人をいう。)ニイからハまでに掲げる医療法人以外の医療法人(移行計画の変更等)第十条の四前条第一項の規定による移行計画の認定を受けた経過措置医療法人(以下「認定医療法人」という。)は、当該認定に係る移行計画を変更しようとするときは、厚生労働大臣の認定を受けなければならない。2厚生労働大臣は、認定医療法人が前条第一項の認定に係る移行計画(前項の認定があったときは、その変更後のもの。以下「認定移行計画」という。)に従って新医療法人への移行に向けた取組を行っていないと認めるとき、その他厚生労働省令で定めるときは、その認定を取り消すことができる。3厚生労働大臣は、認定医療法人が認定移行計画に記載された前条第二項第四号の移行の期限までに新医療法人にならなかったときは、その認定を取り消すものとする。4前二項の規定により認定を取り消された経過措置医療法人は、更に前条第一項の認定を受けることができない。5前条第四項の規定は、第一項の認定について準用する。Ⅱ.新医療法人への移行経過措置医療法人(平成19年3月31日前に知事に設立・申請された社団医療法人をいう)で、新医療法人(定款に残余財産の帰属すべき者として、国又は地方公共団体等を規定しているもの)への移行をしようとするものは、移行計画を作成し、厚生労働大臣に提出して、まず認定を受けることができます。次に、厚生労働大臣は移行計画が一定の要件を満たすときに、その認定をします。この認定を受けた経過措置医療法人を認定医療法人といいます。認定医療法人は、厚生労働大臣の認定であり、法第54条の9第3項の都道府県知事の認可を受けた医療法人ではありません。よって、厚生労働大臣の認定を受けた認定医療法人では、未だ経過措置医療法人すなわち出資持分有り社団医療法人のままです。次に、厚生労働大臣は、認定医療法人が移行計画に従って、新医療法人への移行に向けた取組を行っていない、又は移行計画に記載された移行期限までに新医療法人にならなかったときは、その認定を取り消します。よって、この場合の認定医療法人は、経過措置医療法人に戻ることとなり、再度の認定申請はできません。最後に、新医療法人は定款に残余財産の帰属すべき者の変更がされたものであり、定款の変更は知事の認可を受けた出資持分なしとして、規則30条の39により、組織変更が行われたものをいいます。〔「出資持分なし」へ移行への判断〕次の判断が必要です。将来解散して残余財産を受け取る要望がある場合将来医療法人を売却する希望がある場合これは出資者に十分確認を要します。移行期限内で、かつ、移行が完了するまでの間、認定日から1年を経過するごとに、3か月以内に厚生労働大臣に移行計画の進捗状況を報告する。移行期限内で、かつ、移行が完了するまでの間、出資者に持分の処分(放棄、払戻、譲渡、相続、贈与等)があった場合、3か月以内に厚生労働大臣に出資の状況を報告する。移行期限までに、残余財産の帰属先に関する定款変更の認可を受け、持分の定めのない医療法人への移行完了後、3か月以内に厚生労働大臣に定款変更の認可を受けた報告を行う。移行完了後、5年を経過するまでの間…1年を経過するごとに、3か月以内に厚生労働大臣に運営状況を報告する。5年を経過してから6年を経過するまでの間…5年10か月を経過する日までに厚生労働大臣に運営状況を報告する。〔医療法附則第2条の考え方〕医療計画医療計画の基本的な役割は、供給目標の設定と連携体制の確保であり、医療計画の役割は、まず、病床規制です。医療法による規制病床数は地域の入院需要に見合って整備されるべきであり、医療計画では病院の計画的整備や、地域配置を実現していく必要があるものと考えます。地域医療連携推進法人―新設医療法附則第10条1項によると施行日前に申請された定款についてはなお従前の例によることとなり、すなわち、現在のモデル定款に記載のとおり、「本社団が解散した場合の残余財産は払込済出資額に応じて分配するものとする。」とされ、そうすると、第54条(剰余金の配当の禁止)にかかわらず、退社社員に対する持分の払戻は、退社当時当該医療法人が有する財産の総額を基準として、当該社員の出資額に応じて払戻すこととなり、昭54.4.17東京高裁53行コ35号においては、「払戻しを請求された持分との比重が大きいため払戻し原資に不足し解散のやむなきに至るということはありうることのように思われるが、そのことによって医療法人が解散のやむなきに至ったとしても……」と判示しています。医療法附則第10条2項に関しては、当分の間、医療法第54条の9第6項(定款又は寄付行為の変更)、は残余財産の帰属すべき者を国若しくは地方公共団体等とされていることの規定は適用せずとしており、よって、施行日以後に設立された医療法人又は、施行日以後に知事に設立認可の申請をした医療法人以外は、原則として、旧定款(1項の事項)が続くこととなります。すなわち、法第54条の9第6項の制限が設けられないこととなりました。何故そのようになったかというと、強制的に法第54条の9第6項の規定を適用することは憲法29条(財産権)の侵害行為の恐れありと考えられたのでしょう、そのように考えると、当該当分の間とは、「ずーっと(半永久的)」と読むことになります。当分の間の解釈で租税特別措置法においての「当分の間」を考えている場合は、まったく関係ありません。税法は政策的なものの法律で、本来税法の「当分の間」は、「遅滞なく」と解釈すべきです。医療法附則の「当分の間」は憲法29条「財産権」の没収の話であり、このように「当分の間」の解釈はまったく異なります。最高裁では次のように述べています。「持分あり社団」を一気に「持分なし社団」等に移行することは財産権を一挙に剥奪するという重大問題を孕んでいるといわなければなりません。出資持分という財産権を不当に侵害する結果になって、何人もこれを納得させることができないといわなければなりません。ここに、附則第2条(検討)の解釈で誤解があるようであるので注意して下さい。さて、ここで問題となるのは、法第54条の9第6項による定款変更をする場合の、定款変更を反対する出資社員の出資持分の処分である。当該社員が退社する場合の出資持分は誰が購入するのか。ちなみに医療法人は原則として、自己資本の取得は禁止されているものと解します。そうすると、相対取引で他の出資社員が購入せざるを得なくなります。この場合の価格はいくらにするのかも問題が生じます。次に、反対する出資社員について出資持分は財産権に関することなので強制的に法第54条の9第6項により定款変更することは、憲法違反になるのではないかと考えられます。いずれにしても、当分の間の意味は記載のとおり重要であると思料します。〔脱退社員の財産権(出資持分)について〕医療法人社団にあっては、出資をした社員は出資額に応じた法人の資産に対する分け前としての財産権(出資持分)を有するものとし、出資持分を有する社員が退会したときその他社員資格を喪失した場合においては定款において、当該社員に対して出資持分に相当する資産の払戻しを請求することができるとされており、このように定款の定めは、社員資格を喪失した社員(脱退社員)に対して財産権としての出資持分の払戻しを認めるものであって、一部清算としての実質を持つものであります。(東京高裁平7.6.14判決)次に平15.3.25裁決の判断においても、次のように解釈されています。すなわち、出資持分の定めがある社団医療法人の社員は、出資に対する持分権を有し、その持分は譲渡や相続又は贈与の対象となり、ひとつの財産権と解されると判断されています。尚、反対する出資社員への対策は、定款において、社員の退社は、社員総会の承認を要するとして社員の任意退社を拒否する方法があります。医療法第四十四条医療法人は、その主たる事務所の所在地の都道府県知事(以下この章(第三項及び第六十六条の三を除く。)において単に「都道府県知事」という。)の認可を受けなければ、これを設立することができない。2医療法人を設立しようとする者は、定款又は寄附行為をもつて、少なくとも次に掲げる事項を定めなければならない。一目的二名称三その開設しようとする病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院(地方自治法第二百四十四条の二第三項に規定する指定管理者として管理しようとする公の施設である病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院を含む。)の名称及び開設場所四事務所の所在地五資産及び会計に関する規定六役員に関する規定七理事会に関する規定八社団たる医療法人にあつては、社員総会及び社員たる資格の得喪に関する規定九財団たる医療法人にあつては、評議員会及び評議員に関する規定十解散に関する規定十一定款又は寄附行為の変更に関する規定十二公告の方法3財団たる医療法人を設立しようとする者が、その名称、事務所の所在地又は理事の任免の方法を定めないで死亡したときは、都道府県知事は、利害関係人の請求により又は職権で、これを定めなければならない。4医療法人の設立当初の役員は、定款又は寄附行為をもつて定めなければならない。5第二項第十号に掲げる事項中に、残余財産の帰属すべき者に関する規定を設ける場合には、その者は、国若しくは地方公共団体又は医療法人その他の医療を提供する者であつて厚生労働省令で定めるもののうちから選定されるようにしなければならない。6この節に定めるもののほか、医療法人の設立認可の申請に関して必要な事項は、厚生労働省令で定める。医療法第54条の9第3項定款又は寄附行為の変更(厚生労働省令で定める事項に係るものを除く。)は、都道府県知事の認可を受けなければ、その効力を生じない。第4項都道府県知事は、前項の規定による認可の申請があった場合には、第45条に規定する事項及び定款又は寄附行為の変更の手続が法令又は定款若しくは寄附行為に違反していないかどうかを審査した上で、その認可を決定しなければならない。医療法第54条の9第4項により、都道府県知事は定款変更の手続が法令等に違反していないかどうかを審査した上で、定款変更の認可を決定しなければならず、その定款変更の内容(法令違反を除く。)について審査するものではありません。すなわち、定款の私的自治(自律)の原則があります。ただし、新医療法適用法人については、医療法第54条の9第6項(残余財産の帰属者)の縛りがあることはいうまでもありません。なお、旧法による経過措置型医療法人である場合、定款の内容に法令違反がある場合は、(定款の私的自治(自律)の原則があるといっても)定款変更の認可を受けられないことは勿論です。例えば、医療法人運営管理指導要綱の資産管理に基本財産と運用財産を明確に区分し、定款において仮に基本財産の処分を禁じていても、いつでも再度定款変更により処分可能とすることについては、知事の定款認可が受けられないものではありません。ここに、今回のテーマの場合には、医療法54条の9第3項、4項を十分理解する必要があります。したがって定款内容の変更は、法令違反がない限り、知事の定款認可を受けることが可能です。医療法施行規則30条の39(持分の定めのある医療法人から持分の定めのない医療法人への移行)第三十条の三十九社団である医療法人で持分の定めのあるものは、定款を変更して、社団である医療法人で持分の定めのないものに移行することができる。2社団である医療法人で持分の定めのないものは、社団である医療法人で持分の定めのあるものへ移行できないものとする。〔出資持分なしへ移行の方法〕出資持分なしへの移行には次の3つが考えられます。相続税法66条④により課税を選択する相令33③保証基準は除く相法66④親族経営OK相令33③親族経営を廃除が条件認定医療法人化から新医療法人化へ将来において「国・地方公共団体」に帰属されることが医療機関にとって本当に「ためになるのか」を検討してほしい。相令33③より選択し易いのでは?6年間の堅実経営ができないのでは?個別通達の活用最後に今回で、この連載は最後となります。長い間拙い文章に付き合って戴き感謝いたします。提供:税経システム研究所
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2025/01/24 会計制度経営・運営公益法人
新公益法人制度と会計(第2回)
新公益法人制度と会計について、前回は特に実務上重要論点となる新公益法人会計制度についての検討状況を記載させて頂きました。但し、この会計制度は、新公益法人制度の法改正をベースに構成されているため、改正法の生成過程を把握しなければ理解が深まりません。そのため、第2回では、令和7年度以降の改正等のスケジュールを把握して、公益法人制度がどのように変貌するのかを考察したいと思います。(1)新公益法人制度と会計に関するスケジュールと概要①改正法公布→令和6年5月22日この改正の趣旨は、公益法人は、民間公益を担う主体として大きな潜在力を有していますが(法人数9700、職員数約29万人、公益目的事業費年間5兆円、総資産31兆円)、現行制度の財務規律や手続の下では、その潜在力を発揮しにくいとの声がありました。そのため、①財務規律等を見直し、法人の経営判断で社会的課題への機動的な取組を可能にするとともに、②法人自らの透明性向上やガバナンス充実に向けた取組を促し、国民からの信頼・支援を得やすくすることにより、より使いやすい制度へと見直しを行い、民間公益の活性化を図ることになりました。②会計研究会(※)報告書→令和6年5月24日公益法人の会計に関する研究会(平成25年8月5日から令和6年11月27日までの全72回で引続き開催中)会計研究会は、公益法人の会計に関する実務上の課題、公益法人を取り巻く新たな環境変化に伴う会計事象等に的確に対応するため、平成25年8月から、内閣府公益認定等委員会の下に開催しています。現在、「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」の最終報告(令和5年6月2日。以下「最終報告」という。)を踏まえた公益法人制度改革(以下「制度改革」という。)が進められており、公益認定法の改正法(以下「改正法」という。)が国会で成立しました。今後は、新制度の施行に向け、政令や内閣府令、ガイドライン等の見直しが進められています。公益法人会計基準についても、新制度に整合したものとする必要があるほか、最終報告において掲げられた「わかりやすい財務情報の開示」の具体的な在り方を検討し、見直しを進めていくことになります。③有識者会議(※)最終報告→令和5年6月2日新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議(令和4年10月4日から令和5年5月30日までの全11回)この会議は、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(令和4年6月7日閣議決定)及び「経済財政運営と改革の基本方針2022」(令和4年6月7日閣議決定)に基づき、民間による社会的課題解決に向けた公益的活動を一層活性化し「新しい資本主義」の実現に資する観点から、公益認定の基準を始め現行の公益法人制度の在り方を見直し、制度改正及び運用改善の方向性について検討を行うため、内閣府特命担当大臣(経済財政政策)の下、令和4年10月4日に第1回を開催し、法人の実情に関するヒアリングや国民からの幅広い意見募集を行いつつ、合計11回にわたり議論を重ねてきたものです。④公益認定等ガイドライン検討会開催→令和6年6月6日(引続き開催中)このガイドラインは、法令の適用に当たり留意すべき事項(法令等の解釈・運用)及び審査・処分の基準・考え方を示すものであり、以下の3点を活用することを想定しています。公益法人(公益認定を検討する者を含む。)が、法人自治の下で、各種申請や事業遂行を行う際の参考(行政庁の対応についての予見可能性の向上)となるもの。行政庁である内閣総理大臣(公益法人行政担当室職員を含む。)及び公益認定等委員会(事務局職員を含む。)が職務を遂行する上での指針となるもの。公益法人の活動を支援し、チェックする国民の物差しとして使用されること。また、本ガイドラインは、技術的助言として都道府県知事に通知することも想定しており、行政庁である都道府県知事(職員を含む。)及び合議制機関(その庶務を司る職員を含む。)の指針として活用されることを期待されています。具体的には、以下の3点を想定しています。行政庁及び公益認定等委員会は、ガイドラインを踏まえた判断を行うことが求められる。これは、杓子定規の取扱いを求めるものではない。法令の規定及び趣旨を勘案した上で、個別の事情に応じて、又は社会経済の変化を踏まえ、柔軟な対応を行うことは当然であり、合議制機関を置くこととした制度の趣旨に合致する取扱いといえる。ガイドラインは、社会情勢の変化、判断の蓄積、関係者(公益法人、都道府県、国民・企業等)の要望等を踏まえ、少なくとも年に1回は見直しを検討するものとする。また、法運用の透明性を確保し、正確な理解を促進する観点から、具体的事情を踏まえた判断事例を明らかにすることが重要であることを踏まえ、認定法等に係る各種判断について、「事例集」を作成し、ガイドラインの付属資料として位置づけるものとする。次回も引き続き、新公益法人制度と会計についてご説明させて頂きます。提供:税経システム研究所
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2025/01/21 相続・贈与税医療業務
社団医療法人の出資社員が死亡した場合の払戻し請求権に対する課税への疑問
1.問題点ほとんどの社団医療法人は、厚生労働省の定款作成例(いわゆるモデル定款)に従って定款を作成しており、その定款において「社員資格を喪失した者は、その出資額に応じて払戻しを請求することができる」と定めています。出資持分とは、出資者が当該法人の財産について出資額に応じて有する財産権をいい、この財産権について、社員資格を喪失した時に払戻請求をすることができると定款で定められているということです。では、死亡した場合、この財産権は当然のことながら相続財産となるが、その財産の払戻し請求権(及びそこに含まれるみなし配当所得)というのは、どのタイミングで認識されるのでしょうか(あるいはされるべきなのでしょうか)。2.みなし配当所得は死亡した時点で被相続人に帰属する?出資社員の払戻し請求権は、その者が死亡により退社した時点で、具体的な金銭債権として確定した請求権であるとすれば、その確定した金銭債権の額のうち出資額を超える部分はみなし配当所得となるのであるから、退社した時点(死亡した時点)において死亡した社員つまり被相続人の所得として認識されることになります。そうするとこの配当とみなされる部分については被相続人の所得として準確定申告をしなければなりません。遺産分割協議がなされているかいないかには関係なく、ということになります。もちろんこの場合には、準確定申告において配当控除の適用を受けることができ、さらに配当に係る源泉徴収税額は相続税の申告において債務控除することができることになります。3.配当所得に係る源泉徴収税額の納付時期はいつか?医療法人には源泉徴収税額を納付する義務が生じますが、その納付のタイミングはいつなのでしょうか。通常ならば払戻しを行った翌月10日が納付期限と定められていますが、配当所得が認識された時点(死亡した時点)ではまだ払戻しは行われていません。もし、「確定した金銭債権である払戻し請求権」を相続により取得した相続人が、この請求権をずっと行使しなかった場合はどうなるのでしょうか。金銭債権の時効は10年(権利を行使することができることを「知った時」からは5年)ですから、10年又は5年を超えると請求権は消滅することになりますが、源泉徴収税額の納付はどうなるのでしょうか。上記2.の解釈に従えば、死亡した時点で被相続人の所得と認識される訳ですが、それでも源泉徴収税額の納付期限は、払戻しがあった日の翌月10日と考えていいのでしょうか。あるいは分割協議が成立し、相続により取得した者が確定した日の翌月10日と考えるのでしょうか。あるいは、死亡した日(確定した日)の翌月10日とされてしまうのでしょうか。4.死亡後相当期間経過後に払戻があった場合の取扱いは?では死亡後相当期間経過後に払戻しがあった場合、取扱いはどうすべきなのでしょうか。この場合には、相続人が被相続人の社員としての地位を事実上承継していると認められる場合は、その相続人に対する配当所得として取り扱う、との解釈があるようですが、「事実上承継していると認められる」とはいったいどういうことなのでしょうか。そもそも社員としての地位は一身専属であり、相続により承継することはありません。社員としての地位を「引き継ぐ」ならば、相続人は社員総会において自らが社員となることの承認を受けなければなりません(もしくは既に社員である必要があります)。そして、払戻しを受けることができるのは「社員資格を喪失した者」に限られるのであって、社員である者が退社した時に初めて払戻し請求権を取得し、みなし配当所得もその退社した社員の所得として認識されると考えるならば、相続人が払戻しを請求するのは、単に相続した金銭債権の法人への支払い請求にすぎないと考えるべきではないのでしょうか。「事実上承継していると認められる者が払戻しを受けたのだからその者の配当所得とする」解釈は法理的に整合性がないように思えます。「事実上承継していると認められる者」とは、社員でない相続人のことを指していると思われますが、定款の定めを無視した解釈と言わざるを得ません。それとも定款に定められていても、例外として取り扱っていいということなのでしょうか。とはいえ、実際に払戻しを受けた時に、その者の配当所得として課税するほうが、よほどすっきりするとは言えますが。5.払戻しを受けず出資を引継ぐとした場合の取扱いは?では、相続人がもともと法人の社員、もしくは相続開始後に法人の社員総会で社員として承認された者であり、相続により取得した払戻し請求権を行使せず、自分の持分とした(出資を承継した)場合はどういう扱いになるのでしょうか。この場合には、相続時には被相続人に対する準確定申告によるみなし配当課税は強いて行わないという取扱いになっているようですが、これは社員である相続人が将来、社員資格を喪失した時(退社あるいは死亡等の時)に、その者に発生する「退社の時点での具体的な金銭債権として確定した」払戻請求権について出資額を超える部分をみなし配当所得として課税すればよいという考え方(ある意味課税の繰り延べ)に拠っているものと思われます。しかし、それで被相続人に帰属する配当所得に対する課税の整合性がとれるのでしょうか。当初から、みなし配当所得は、払戻しがあった時点でその払戻しを受けた者の所得として課税する、ということで統一されていれば問題はありませんが、出資社員の払戻請求権は、その者の死亡による退社の時点で、具体的な金銭債権として確定した請求権であるとの考え方からすれば、あくまでもみなし配当所得は被相続人の所得であって、相続により取得した相続人の所得ではないのであるけれども、払戻しを受けない(出資のまま引き継ぐ)場合には、例外として取り扱うということなのでしょうか。しかし出資の評価は法人の経営状況により刻々と変化します。被相続人の死亡時には1億円(例えば出資金1千万円+配当とみなされる部分9千万円)と評価されたものが、将来相続人が退社した時は2千万円(出資金1千万円+配当とみなされる部分1千万円)の評価に下がっているということもあり得ます。そういう場合であっても、相続時には被相続人に9千万円の配当所得課税をし、例外として上記4や上記5の場合のように払戻しが長期間行われず、あるいは相続人が法人を退社した時にはその者に1千万円の配当所得課税をする、という取扱いでよいのでしょうか。また、法人が納付すべき源泉徴収税額の納付時期と金額はどうなるのでしょうか。「相続時においては強いて課税しない」という例外的取り扱いは、このような問題を含んでいるのではないかと思います。とはいえ、課税実務から考えると、将来相続人が退社により払戻し請求権を取得した時に出資額を超える部分を配当所得として取り扱ったほうが計算しやすい、ということは言えると思いますが。6.まとめ出資社員が死亡した時の「社員資格を喪失した者は、その出資額に応じて払戻しを請求することができる」という払戻し請求権とは、その者の死亡による退社の時点で、具体的な金銭債権として確定した請求権である。この金銭債権の額は出資額と配当とみなされる部分との合計額である。したがって配当とみなされる部分の所得は被相続人に帰属し、準確定申告するとともに、相続税申告においてはその所得に係る源泉徴収税額は債務控除の対象となる。法人が納付すべき源泉徴収税額は、払戻しが行われた時に、その翌月10日を納付期限として納付される。払い戻しが行われるまでは納付しなくてよいということか。払戻し請求がずっと行使されなかった場合は時効となり、権利は消滅する。時効の期限は10年又は権利を行使することができることを「知った時」からは5年である。時効で権利が消滅した場合、残存出資者の出資の評価はどうなるのか。みなし贈与課税の問題が出てくるのではないか。法人に「免除益」が生ずるのではないか。死亡後相当の期間経過した後に(時効成立までの期間内で)、払戻しが行われた場合であっても、行使した相続人の行為は、金銭債権の回収にすぎないと考えるべきではないか。払戻し請求権が発生するのは、出資社員が社員資格を喪失した時であり、だからこそみなし配当部分はその社員に帰属すべきものとして確定申告(死亡を原因とする場合は準確定申告)が必要となるのである。法人の社員である相続人が、払戻し請求をせずに、その出資持分という財産を引継いだ場合には、相続時には強いて課税せず、その相続人が将来「社員資格を喪失した時」に、みなし配当課税するという取扱いのようだが、それでよいのか。既に準確定申告をしているのだから、更正の請求をすることになるだろうが。最後に、出資持分には払戻し請求権と解散した時に受ける残余財産分配請求権という2つの権利がありますが、死亡した出資社員がもつ出資持分には払戻し請求権があるのみです。なぜなら解散前に社員資格を喪失したのですから、権利は払戻し請求権しか存在しません。ということは、社員でない相続人が払戻しを請求しないまま、法人が解散した時、その相続人は残余財産の分配を受けることはできないことになります。しかし実際には、解散とわかれば払戻しを請求するであろうし、法人は払戻しをした後の残余財産を出資社員に分配することになると思われます。この時の払戻しすべき金額は、相続時に確定した金銭債権としての金額ですから、果たして額面どおりの額を払えるかという、実務上大きな問題が出てきます。提供:税経システム研究所
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2025/01/15 法人税事業承継
組織再編税制(会社分割)を利用した事業承継
組織再編税制については、大企業を対象とするものであり、中小企業には関係のない税制であるといった話を耳にすることがあります。しかし、この組織再編税制が個人や中小企業の事業の承継にも利用できる制度であることを相続が生じる前の会社分割の事例(注1)に基づき確認したいと思います。1.事例の概要Ⅹ社は、甲(個人)の100%出資により設立された株式会社です。Ⅹ社においては、次の図のように甲の長男乙と次男丙がそれぞれ異なる事業(A部門とB部門)の経営を担っています。また、Ⅹ社全体の経営方針等を巡って乙と丙が対立しています。このような場合、将来、乙と丙が互いに独立して事業を進めることができるように、Ⅹ社のB部門について新設分割(分割型分割)を行って新会社を設立し、新会社株式を直ちに甲に交付します。いずれの会社も甲が100%保有する形態にしておくことによって、相続時に分割後のⅩ社株式を乙に、新会社株式を丙に承継させることで円滑に事業承継ができます。2.Ⅹ社の課税関係(1)適格要件分割が適格分割となる場合とは、①完全支配関係の場合、②支配関係の場合、③共同事業を行う場合、④事業を独立して行う場合(分割型分割の場合のみ)の4つの類型に分かれます。この事例の場合、「①完全支配関係の場合」の要件に該当するか否かをまず検討することになり、この場合の適格要件は、①金銭等不交付要件と②完全支配関係継続要件の2つになります(法人税法2条12号の11イ、法人税法施行令4条の3第6項他)。(2)金銭等不交付要件金銭等不交付要件とは、分割対価資産として分割承継法人又は分割承継親法人(注2)のうちいずれか一の法人の株式以外の資産が交付されないこと(株式が交付される分割型分割にあっては、その株式が分割法人の発行済株式(自己株式を除きます。)の総数のうちに占める分割法人の各株主の有する分割法人の株式の数の割合に応じて交付されるもの(按分型の分割型分割)に限ります。)をいいます(法人税法2条12号の11、法人税法施行令4条の3第5項)。この事例の場合、新設分割において新会社の株式のみが分割対価資産としていったんⅩ社に交付され、それが直ちにⅩ社の株主である甲に全部交付されます。分割対価資産として分割承継法人(新会社)の株式以外の資産は交付されず、分割承継法人(新会社)の株式は、分割法人(Ⅹ社)の100%株主である甲に全部交付されることで按分型の分割型分割に該当します。したがって、金銭等不交付要件を満たすことになります。(3)完全支配関係継続要件イ基本的な取扱い完全支配関係継続要件は、①当事者間の完全支配関係の場合と②同一の者による完全支配関係(法人相互の完全支配関係)の場合の2つに区分されます。この事例では、「②同一の者による完全支配関係(法人相互の完全支配関係)の場合」が対象となります。基本的には分割前に分割法人と分割承継法人との間に同一の者による完全支配関係があり、かつ、分割後に分割法人と分割承継法人との間に同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれている(注3)ことをいいます(法人税法施行令4条の3第6項2号)(注4)。単独新設分割の場合には、分割前に分割承継法人は存在しないため、基本的に分割後に分割法人と分割承継法人との間に同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれていることをいいます(法人税法施行令4条の3第6項2号ハ(2))。ロ分割型分割の場合の例外分割型分割(注5)の場合には、上記「イ基本的な取扱い」に対する例外が規定されており、単独新設分割である分割型分割が行われた場合には、分割型分割後に同一の者と分割承継法人との間に同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれていることが完全支配関係継続要件とされ、同一の者と分割法人との間に同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれていることが不要とされています(法人税法施行令4条の3第6項2号ハ(1)(注6))。(4)事例の適格性この事例の場合、分割対価として新会社の株式以外の資産が交付されませんので、金銭等不交付要件を満たします。また、単独新設分割である分割型分割に該当するこの事例の場合、その分割後に分割法人(Ⅹ社)と分割承継法人(新会社)との間に同一の者(甲)による完全支配関係が生ずることになりますが、完全支配関係の継続が見込まれることが求められるのは、甲と分割承継法人(新会社)との間の完全支配関係となります(注7)。また、同一の者の範囲には、甲自身以外にその親族等の特殊関係者が含まれます(法人税法施行令4条1項、4条の2第2項)。甲がいずれ分割承継法人(新会社)の株式を丙に承継させることを想定しているため、仮に甲と分割承継法人(新会社)との間の完全支配関係の継続が見込まれないとしても、同一の者には丙も含まれるため、同一の者(甲と丙)と分割承継法人(新会社)との間の完全支配関係の継続が見込まれるため、完全支配関係継続要件を満たすことになります。したがって、この分割は適格分割に該当することになります。(5)資産及び負債の移転価額適格分割により、資産及び負債を移転した場合には、帳簿価額による引継ぎをしたものとして所得の計算をすることとされています(法人税法62条の2第2項)。したがって、B部門の分割に係る資産及び負債の移転に関する譲渡損益は生じません。移転するこれらの含み損益は、新会社においてその譲渡等が行われたときに新会社において課税されます。3.個人株主(甲)の課税関係株式以外の資産の交付がされなかった場合には、一般株式等に係る譲渡所得は生じません(租税特別措置法37条の10第3項2号)。また、分割承継法人(新会社)の株式の取得価額は、分割法人(X社)の株式の取得価額に分割法人(Ⅹ社)の前期末の簿価純資産価額のうちに分割により移転する簿価純資産価額の占める割合を乗じた金額となります(所得税法施行令113条1項、3項)。4.参考ここでは相続前における会社分割での事業承継を解説しましたが、相続後においても会社分割により、この事例と同様なことが可能となります(注8)。<注釈>この事例は、平成27年10月21日開催の九州北部税理士会「事業承継のための新たな手法」で解説した事例の一つで、その後もいくつかの税理士会で内容等を修正等して解説しており、直近では本年5月に東京税理士会第7回会員研修会でも取り上げています。書籍としては、本職事務所客員税理士の小松誠志氏が『事例検討法人税の視点からみた事業承継・M&Aの実務ポイント』(大蔵財務協会、令和3年)に取りまとめています。基本的に分割の直前に分割承継法人と分割承継法人以外の法人との間にその法人による完全支配関係(「直前完全支配関係」といいます。)があり、かつ、分割後に分割承継法人とその法人との間にその法人による完全支配関係が継続することが見込まれている場合におけるその直前完全支配関係がある法人をいいます。IDCF事件(東京地判平成26年3月18日(税務訴訟資料第264号-順号12436))において「見込まれている」の解釈を「これらの規定(編注:法人税法2条12号の11、法人税法施行令4条の3第6項)は、分割の時点で、分割後に当事者間の完全支配関係等が継続することが見込まれていれば、『移転資産に対する支配』が分割後も継続していると認められることから、そのような分割を適格分割として取り扱うものとしたものと解される。そうすると、法人税法施行令4条の2第6項にいう『見込まれている』とは、当事者間の完全支配関係等が継続することが具体的に予定されていることをいうと解することが相当である。」と判示しています。分割後に適格合併等が行われることが見込まれている場合には一定の特例があります。分割対価を分割法人の株主と分割法人に交付する中間型の分割を除きます。平成29年度税制改正において、このような適格要件の見直しがされました。甲と分割法人(X社)との間の完全支配関係が継続することが見込まれているとしても適格性に影響はありません。詳細をお知りになりたい方は、前掲注1の東京税理士会第7回会員研修会資料(24頁)又は書籍(162頁)を参照ください。提供:税経システム研究所
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2025/01/08 所得税国際税務
国外源泉所得における人的役務提供の規定は意外に奥深い
はじめに所得税法161条1項は、国内源泉所得として、6号で「人的役務提供事業の対価」(以下、「6号所得」といいます。)を、12号イで「人的役務提供に対する報酬」(以下、「12号所得」といいます。)をそれぞれ定めています。この2つを見比べていただくと、人的役務提供は全く同じですが、6号所得では「対価」と、12号所得では「報酬」という箇所が異なっています。また、6号所得には「事業」という用語が使われていますが、12号には使用されていません。これまで、多くの方から「6号所得と12号所得の違いがわからない。」というお尋ねをいただいてきました。そこで、国内源泉所得の規定を調べてみると、意外に奥が深いことがわかりました。今回は、これら2つの所得がどのように異なっているかについて、ご説明します。1.所得税法の規定内容に入る前に所得税法161条1項に規定する6号所得と12号所得の条文を確認しておきます。六国内において人的役務の提供を主たる内容とする事業で政令で定めるものを行う者が受ける当該人的役務の提供に係る対価十二次に掲げる給与、報酬又は年金イ俸給、給料、賃金、歳費、賞与又はこれらの性質を有する給与その他人的役務の提供に対する報酬のうち、国内において行う勤務その他の人的役務の提供(内国法人の役員として国外において行う勤務その他の政令で定める人的役務の提供を含む。)に基因するもの次に、6号所得にある政令(所得税法施行令282条)をご紹介します。(人的役務の提供を主たる内容とする事業の範囲)第282条法第161条第1項第6号(国内源泉所得)に規定する政令で定める事業は、次に掲げる事業とする。一映画若しくは演劇の俳優、音楽家その他の芸能人又は職業運動家の役務の提供を主たる内容とする事業二弁護士、公認会計士、建築士その他の自由職業者の役務の提供を主たる内容とする事業三科学技術、経営管理その他の分野に関する専門的知識又は特別の技能を有する者の当該知識又は技能を活用して行う役務の提供を主たる内容とする事業(機械設備の販売その他事業を行う者の主たる業務に付随して行われる場合における当該事業及び法第2条第1項第八号の四ロ(定義)に規定する建設又は据付けの工事の指揮監督の役務の提供を主たる内容とする事業を除く。)所得税法の規定を見ると、6号所得は事業所得、12号所得は給与所得のように見えます。次に、6号所得と12号所得は、ともに「国内において」とあり、これが国内に源泉を有する所得(国内源泉所得)とされ、日本で課税を受ける理由になると考えられます。あらためて条文を見ていただくと、(見る人によって異なるものの)2つの条文がある程度類似していることがわかります。2.外国芸能法人に支払う外国音楽家の渡航費等をめぐる裁判例(1)東京地裁令和4年9月14日判決の概要この事件は、イベントプロモート事業を営む内国法人Xが、平成27年2月から平成30年10月までの間、外国音楽家を国内で行われる公演に招いた際に、これらの外国音楽家の出演に関する契約をXとの間で締結するなどしてその音楽活動のマネジメントを行っていた国外芸能法人に対し、外国音楽家の出演料とは別に、同出演のために要した渡航費、機材の運送費その他の諸雑費(以下、「渡航費等」といいます)を支払った(以下、「本件各支払」といいます。)ことに原因があります。本件は、Xが、本件各支払を行った際、いずれも所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」といいます。)の源泉徴収をしなかったところ、川崎南税務署長から、本件各支払額は「国内において人的役務の提供を主たる内容とする事業で政令で定めるものを行う者が受ける当該人的役務の提供に係る対価」(所得税法161条1項6号)に該当するとの理由により、本件各支払額についての源泉所得税等の納税告知処分(以下「本件各納税告知処分」といいます。)及び不納付加算税の賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」といい、本件各納税告知処分と併せて「本件各処分」といいます。)をそれぞれ受けたため、本件各処分はいずれも所得税法の解釈及び適用を誤った違法な処分であると主張して、その各取消しを求める事案です。これをイメージ図で示すと、次のとおりです。【本件イメージ図】(出典:筆者作成)(2)人的役務提供における支払の流れ上のイメージ図に基づいて、人的役務提供の支払いの流れを確認します。まず、Xが外国芸能法人に出演料と渡航費等を支払います。これを受領した外国芸能法人は、外国音楽家に対して出演料を支払う一方、渡航費等を航空会社等に支払います。受領した金額の一部は手数料として、外国芸能法人自身が収益として計上することになるでしょう。これを別の角度から見ると、現実に人的役務提供を行った外国音楽家は、日本で源泉徴収をされていないことになります。外国音楽家は、日本のファンのために音楽を提供したのですが、その対価は外国芸能法人から受け取ります。そして、日本で外国音楽家に直接課税されてはいません。つまり、日本で課税されるのは、人的役務提供をした外国音楽家ではなく、その仲介(又はあっせん)をした外国芸能法人ということになります。これはどういうことなのでしょう。(3)人的役務提供事業の対価に出演料が含まれることここで先のイメージ図を再度確認します。Xから受領した出演料は、いずれかの時期に外国芸能法人から外国音楽家に支払われます。国内で人的役務提供をした外国音楽家は、直接日本から課税されるわけではありません。所在地国において、その国の税法により課税されることになります。上述したように、外国音楽家が国内において提供した人的役務提供に関しては、外国芸能法人に対価が支払われるときに源泉徴収されます。ということは、外国芸能法人に支払われる対価(特に、出演料)の中に、最終的に外国音楽家が受領する報酬が含まれているので、その報酬に対していわば間接的に日本で課税を行うことができている、と理解することができます。3.芸能法人への源泉徴収に外国音楽家への課税が含まれていること日本の国内源泉所得の規定は、昭和37年に整備されました。国内源泉所得の基本的な考え方は、現行法にも生きています。当時の立法者の解説を見てみると、次のように記述されています。「源泉徴収そのものを芸能法人にたいし、日本のスポンサーが支払う段階で一括源泉徴収しよう、つまり、源泉徴収の対象になるのは、芸能法人そのものの所得だけでなくて芸能法人を通じて支払われる個々の芸能を提供する非居住者にたいする報酬相当分、これも同時にスポンサーの支払い段階で源泉徴収の対象になるというところに意味があるわけです。」(国税庁「非居住者、外国法人及び外国税額控除に関する改正税法の解説(昭和37年5月1日)」15頁)立法担当者の解説では、スポンサーという用語が用いられていますが、今回の裁判例ではイベント・プロモーターXを指します。いずれにしても、当時の立法者としては、現実に役務提供を行う芸能人などの人的役務提供を行う者への課税を含めて、6号所得の課税対象を考えていたことがわかります。4.渡航費等への課税はどのように考えるべきか今回紹介した東京地判令和4年9月14日では、渡航費等への源泉徴収に不服を持ったXが出訴したものです。裁判所は、Xの主張を斥けて「渡航費等は、6号所得の対価に含むべき」と判断を下しました。理由は、対価という用語はいわゆる収入概念だからということ、昭和40年に全文改正された所得税法の趣旨目的からそのように解釈できること、などとしました。つまり、人的役務提供に付随する費用についても、人的役務提供事業の対価に含まれるという判断です。本判決は控訴されたものの、納税者の主張は棄却されたとのことです。おわりに今回は、国内源泉所得における6号所得と12号所得の文言が類似することで、差異が明らかではないという疑問について、規程の創設趣旨を確認しました。その結果、6号所得では、直接的に課税できない12号所得を含んで源泉徴収の対象とすることが明らかになりました。実務上、これら2つの区分がわかりにくいことはありますが、創設趣旨に基づいて考えることができるかもしれません。条文の創設趣旨に遡ると、当時から外国芸能法人を通じて来日していた音楽家がいることもわかりました。個人的には、税法の奥深さを確認することができ、税法の面白さが少し理解できたような気がしています。提供:税経システム研究所
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2024/12/25 所得税
相続と所得税 第27回 令和6年分の所得税の定額減税(扶養親族等が死亡した場合)
令和6年分所得税について、定額による所得税額の(特別控除)定額減税が実施されている。この令和6年分所得税の定額減税と、減税対象者である納税者の扶養親族などが令和6年中に死亡した場合の取扱いをみていく。1.所得税の定額減税定額減税とは、納税者と納税者の扶養親族などの人数により算出される定額減税額を所得税額及び個人住民税所得割額から差し引くことにより、所得税及び個人住民税の負担を軽減する特例措置をいう。(1)所得税の定額減税額の計算定額減税の対象となる人は、令和6年の所得税の納税者である居住者で、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下の人である。所得税の定額減税額は次の金額の合計である。ただし、その合計額が納税者の所得税額を超える場合には、控除される金額はその所得税額が限度となる。納税者本人(居住者に限る)30,000円同一生計配偶者及び扶養親族(いずれも居住者に限る)1人につき30,000円(2)同一生計配偶者と扶養親族とは①同一生計配偶者その年の12月31日(納税者が年の途中で死亡した場合はその死亡の時、出国(注)する場合には出国の時)の現況で、次の4つの要件すべてに当てはまる人をいう。(注)出国とは、納税管理人の届出をしないで国内に住所および居所を有しないこととなることをいう。以下同じ民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しない)。納税者と生計を一にしていること。年間の合計所得金額が48万円以下であること青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、また白色申告者の事業専従者でないこと。②扶養親族(居住者)その年の12月31日(納税者が年の途中で死亡した場合には死亡の時、出国する場合には出国の時)の現況で、次の4つの要件すべてに当てはまる人をいう。配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人。納税者と生計を一にしていること。年間の合計所得金額が48万円以下であること青色申告者の事業専従者としてその年を通じで一度も給与の支払を受けていないこと、また白色申告者の事業専従者でないこと。同一生計配偶者や扶養親族が定額減税額の計算対象となるか否かは、「12月31日における現況」、それらの人が死亡した場合には「死亡の日の現況」において判定する。それぞれの時に、同一生計配偶者や扶養親族となる要件を満たしていれば定額減税額の計算対象となる。2.給与所得者の所得税の定額減税(1)月次減税事務と年調減税事務による定額減税の手続き給与所得者については、その給与の支払者が行う月次減税事務と年調減税事務によって、対象となる人について、所得税の定額減税が実施される。月次減税事務は、令和6年6月1日現在、基準日在職者(給与の支払者に「扶養控除等申告書」を提出している居住者)について、その給与の支払者のもとで、令和6年6月1日以後に支払う給与等の源泉徴収税額から月次減税額(注)を控除する方法で、行われている。(注)月次減税額…令和6年6月以後に支払う給与等に対する源泉徴収税額から控除する定額減税額をいう。月次減税額は、令和6年6月1日以後最初の月次減税事務を行うときまでに提出された「扶養控除等申告書」や「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」の記載内容に基づいて計算される。そして、年調減税事務において、年末調整の対象となる人について、その給与の支払者のもとで、年末調整の際、年末調整時点の年調減税額(注)に基づき、年間の所得税額との精算を行うことになる。なお、年末調整の対象となる人のうち、給与所得以外の所得を含めた合計所得金額が1,805万円を超えると見込まれる人については、年調減税額を控除しないで年末調整を行う。(注)年調減税額…年末調整時に年調所得税額から控除する定額減税額をいう。年末調整を行うときの現況において「配偶者控除等申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書」や「扶養控除等申告書」などに、計算対象となる同一生計配偶者や扶養親族が記載され、それらに基づいて年調減税額は、計算される。令和6年6月1日以後の最初の給与等の支払日以後に、定額減税額の計算の基となった同一生計配偶者や扶養親族の数に異動が生じても、月次減税額は変わらないが、それらの情報の異動は、年末調整で調整が行われることになる。つまり、年末調整時を行うときの現況で同一生計配偶者の有無及び扶養親族の人数に基づいて計算された年調減税額よって、最終的に精算が行われる。なお、年末調整を行った後、12月31日までに定額減税額の計算対象となる人数に異動があった場合には、年末調整のやり直しをすることができる。(2)年の途中で死亡した扶養親族など①月次減税事務令和6年6月1日以後最初の給与等の支給日の前日までに死亡した令和6年分の扶養親族についても、その親族の死亡の日の現況で扶養親族と判定されるのであれば、月次減税額の計算に含める。したがって、令和6年1月1日の時点で扶養親族であった親族が、令和6年5月に死亡した場合は月次減税額の計算に含まれる。また、令和6年6月の時点で扶養親族であった親族が、その後、その年の途中で死亡しても、つまり、令和6年6月1日以後の最初の給与等の支払日以後に、定額減税額の計算の基となった扶養親族の数に異動が生じても、月次減税額は変わらないことになっている。②年調減税事務扶養親族が年の途中で死亡した場合は、その親族の死亡の日の現況で扶養親族であると判定されるのであれば、年調減税額の計算に含まれる。たとえば、令和6年6月の時点では扶養親族であった親族が、その後に死亡をしていても、死亡の日の現況で扶養親族と判定されるのであれば、年調減税額の計算に含めて計算をする。同一生計配偶者の場合、令和6年中に配偶者が死亡し、同年中に納税者が再婚をした場合、定額減税額の計算に含めることができる同一生計配偶者は、その死亡した配偶者又は再婚した配偶者のいずれか1人に限られる。3.不動産所得者や事業所得者等の所得税の定額減税(1)確定申告による定額減税の手続き事業所得者や不動産所得者等は、原則として、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)の際に、所得税額から定額減税額を控除する。予定納税の対象となる人は予定納税額より、定額減税額に相当する金額を控除されている場合もある。所得税の定額減税の対象者は、令和6年分の所得税の納税者である居住者で、合計所得金額が1,805万円以下の人である。(2)年の途中で死亡した扶養親族など定額減税額の計算対象となる同一生計配偶者や扶養親族に該当するか否かは、令和6年12月31日の時(注)現況により判定する。(注)納税者本人が年の途中で死亡した場合にはその死亡の時、出国する場合には出国の時現況により判定する。同一生計配偶者や扶養親族が死亡をしている場合には、その死亡の時の現況で同一生計配偶者や扶養親族と判定されるのであれば、定額減税額の計算対象となる。給与所得者の定額減税と同様に、同一生計配偶者の場合、令和6年中に配偶者が死亡し、同年中に納税者が再婚をした場合、定額減税額の計算に含めることができる同一生計配偶者は、その死亡した配偶者又は再婚した配偶者のいずれか1人に限られる。提供:税経システム研究所
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2024/12/20 消費税
消費税の納税義務判定のポイント解説(第23回) 新設法人の納税義務の免除の特例② 増減資と令和6年度改正
1.新設法人の納税義務の免除の特例とは新設法人の納税義務の免除の特例とは、基準期間のない事業年度の期首資本金が1,000万円以上の新設法人(社会福祉法人を除きます。)について、消費税の納税義務を免除しないとする特例です(消法12の2①)。この特例の概要は、「消費税の納税義務判定のポイント解説(第22回)新設法人の納税義務の免除の特例①」を参照してください。今回は、事業年度の中途において資本金の増減(増資・減資)があった場合の留意点と令和6年度改正について解説します。2.資本金の増減があった場合の留意点新設法人の特例は、基準期間のない事業年度の期首資本金での判定であるため、事業年度の中途で資本金の増減があったとしても、その増減があった事業年度の納税義務の判定に影響を及ぼすことはありません。次の2つの例で確認してみましょう。いずれもインボイス登録をしてない3月決算法人で「課税事業者選択届出書」を提出していないことを前提とします。この特例は、期首の資本金で判定をするため、設立1期目の中途で減資をしたとしても、設立1期目の期首資本金が1,000万円であることにかわりありません。したがって、設立1期目は特例が適用され課税事業者になります。これに対して設立2期目は、期首資本金は減資後の900万円であり、特例が適用されない1,000万円未満となります。したがって、設立2期目は特例が適用されないため、「特定新規設立法人の納税義務の免除の特例」が適用されない場合には免税事業者になります。設立1期目の中途で増資をしたとしても、設立1期目の期首資本金が900万円であることにかわりはないため、設立1期目はこの特例の適用はありません。「特定新規設立法人の納税義務の免除の特例」が適用されない場合には免税事業者になります。これに対して設立2期目は、期首資本金は増資後の1,000万円であり、特例が適用される1,000万円以上となります。したがって、設立2期目は特例が適用され課税事業者になります。3.令和6年度改正による影響新設法人の特例の判定は、基準期間のない事業年度のみで行うため、一般的には、法人の設立1期目と2期目が判定の対象になります。外国法人が日本に進出した時点で海外での設立から一定の期間を経過している場合には基準期間が存在するため、この特例の判定を行うことができません。この場合、基準期間における課税売上高により判定を行うことになりますが、その基準期間は日本に進出する前の期間になるため、日本における課税売上高が生じておらず結果として免税事業者になります。(出典)「消費税法等改正のお知らせ」令和6年4月国税庁https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/pdf/r06kaisei.pdfそこで令和6年度改正では、その事業年度の基準期間がある外国法人が、基準期間の末日の翌日以後に、国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した場合には、その事業年度は基準期間がないものとみなすこととされました(消法12の2③)。これにより、日本への進出1期目と2期目は、この特例を適用して資本金により納税義務判定を行うことになります。この改正は、令和6年10月1日以後に開始する事業年度から適用されます(改正法附則1三ロ、13②)。提供:税経システム研究所
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2024/12/17 法人税税制改正
賃上げ促進税制~中堅・中小企業のくるみん、えるぼし認定等取得要件は要注意~
令和6年度税制改正により、賃上げ促進税制において、仕事と子育てとの両立や女性活躍への支援に積極的な企業への上乗せ措置(5%上乗せ)が追加されました。具体的には、「次世代育成支援対策推進法」に基づく「くるみん認定等」、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」に基づく「えるぼし認定等」の取得が要件とされています。【経済産業省資料】上記のとおり各認定には段階があり、それぞれ認定基準が定められていますが、全企業(大企業)向け、中堅企業向け、中小企業向けのそれぞれの制度によって、要件となる認定の段階のみならず、求められる認定の取得時期が異なっています。ところが、この取得時期の要件については条文の規定が読みづらいところがあり、また、計算明細書(別表6(24))の記載欄を見ただけでは判断を誤る危険があります。そこで今回は、特に中堅企業向け・中小企業向け制度における適用誤りのないよう、改めて確認していきたいと思います。1全企業(大企業)向けの適用要件租税特別措置法第42条の12の5第1項第3号では、次のように要件が定められています。三当該事業年度終了の時において次に掲げる者のいずれかに該当することイ次世代育成支援対策推進法第15条の3第1項に規定する特例認定一般事業主ロ女性の職業生活における活躍の推進に関する法律第13条第1項に規定する特例認定一般事業主(下線筆者)具体的には、適用事業年度終了の時において、「プラチナくるみん認定(プラチナくるみんプラス認定を含む)」又は「プラチナえるぼし認定」を取得している場合に要件を満たすことになります。したがって、適用事業年度よりも前に認定を取得していた場合も適用が可能となります。2中堅企業向けの適用要件租税特別措置法第42条の12の5第2項第3号では、次のように要件が定められています。三次に掲げる要件のいずれかを満たすことイ当該事業年度終了の時において次世代育成支援対策推進法第15条の3第1項に規定する特例認定一般事業主に該当すること。ロ当該事業年度において女性の職業生活における活躍の推進に関する法律第9条の認定を受けたこと(同法第4条の女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供及び同条の雇用環境の整備の状況が特に良好な場合として財務省令で定める場合に限る)。ハ当該事業年度終了の時において女性の職業生活における活躍の推進に関する法律第13条第1項に規定する特例認定一般事業主に該当すること。(下線筆者)上記1の全企業(大企業)向けと比較すると、イ及びハの要件は同様となっています。したがって、プラチナくるみん認定(プラチナくるみんプラス認定を含む)又はプラチナえるぼし認定については、適用事業年度よりも前に認定を取得していた場合も適用が可能となります。問題はロです。これは「えるぼし3段階目」の認定の取得が要件となるのですが、イ及びハとは違い、「当該事業年度終了の時において」ではなく、「当該事業年度において」と規定されています。具体的には、適用事業年度中に認定を取得した場合に要件を満たすことになり、適用事業年度よりも前に認定を取得していた場合は適用不可となります。ところが、計算明細書である別表6(24)の35欄を見ると、「プラチナくるみん又はえるぼし3段階目以上を取得している場合」とのみ記載されています。これだけでは、前事業年度以前にえるぼし3段階目を取得していた場合であっても、適用可能であると解釈するケースが生ずると考えられますので注意が必要です。【経済産業省資料】3中小企業向けの適用要件租税特別措置法第42条の12の5第3項第3号では、次のように要件が定められています。次に掲げる要件のいずれかを満たすことイ当該事業年度において次世代育成支援対策推進法第13条の認定を受けたこと(同法第2条に規定する次世代育成支援対策の実施の状況が良好な場合として財務省令で定める場合に限る)。ロ当該事業年度終了の時において次世代育成支援対策推進法第15条の3第1項に規定する特例認定一般事業主に該当すること。ハ当該事業年度において女性の職業生活における活躍の推進に関する法律第9条の認定を受けたこと(同法第4条の女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供及び同条の雇用環境の整備の状況が良好な場合として財務省令で定める場合に限る。)。ニ当該事業年度終了の時において女性の職業生活における活躍の推進に関する法律第13条第1項に規定する特例認定一般事業主に該当すること。(下線筆者)上記1の全企業(大企業)向けと比較すると、ロ及びニの要件は同様となっています。したがって、プラチナくるみん認定(プラチナくるみんプラス認定を含む)又はプラチナえるぼし認定については、適用事業年度よりも前に認定を取得していた場合も適用が可能となります。問題はイ及びハです。イは「くるみん認定」、ハは「えるぼし2段階目」の認定の取得が要件となるのですが、ロ及びニとは違い、「当該事業年度終了の時において」ではなく、「当該事業年度において」と規定されています。具体的には、適用事業年度中に認定を取得した場合に要件を満たすことになり、適用事業年度よりも前に認定を取得していた場合は適用不可となります。ところが、計算明細書である別表6(24)の39欄を見ると、「くるみん又はえるぼし2段階目以上を取得している場合」とのみ記載されています。これだけでは、前事業年度以前にくるみん認定又はえるぼし2段階目を取得していた場合であっても、適用可能であると解釈するケースが生ずると考えられますので、中堅企業向け同様、注意が必要です。提供:税経システム研究所
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