税務情報レポート
MJS税経システム研究所・税務システム研究会の顧問・客員研究員による租税を中心とした多彩な研究成果および最新の税制改正および制度や動向、判例研究等に関するリポートです。
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2026/03/19 法人税
令和8年度税制改正大綱で導入される「企業グループ間の取引に係る書類保存の特例の創設」の解説
はじめに昨年末に閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」(以下、「令和8年度大綱」といいます。)70ページに、「企業グループ間の取引に係る書類保存の特例の創設」(以下、「本特例」といいます。)という耳慣れない改正項目があります。これは、令和8年度税制改正大綱の法人税法改正部分の「4公平かつ円滑な納税のための環境整備」の一環として創設されるものです。この制度は、中小企業であっても親会社や子会社を持つ法人には対象となる制度であり、場合によっては青色申告の承認取消のリスクがあります。なお、本特例は、実質的には国際課税の中の移転価格税制から多くの考え方を借用する制度であり、多くの税理士には馴染みのないものです。以下、概略を説明いたします。1.企業グループ間の取引に係る書類保存の特例の創設の趣旨近年、企業活動のグローバル化やグループ経営の深化に伴い、企業グループ内で行われる取引は複雑化しています。特に、無形資産の利用や役務提供(サービス)といった取引においては、形のある物品の売買とは異なり、その実態や対価の妥当性を外部から検証することが容易ではありません。これを簡単に言い換えると、次のようになります。昨今、いわゆるシェアードサービス会社を設置して、経理、人事、給与などの管理業務を専門に担わせる会社が増えています。一方、これまでの法人税法では、会社法に基づいて「各法人がそれぞれの拠点で書類を保存する」ことが原則でした。また、電子データの場合も、各法人が管理権限を持つ形で保存・運用することが求められ、システム構築や運用コストが各社に分散して発生していました。各子会社にITリテラシーや設備投資の差がある場合、グループ全体でのDX推進の足かせとなっていた可能性があります。本特例の目的は、企業グループ間で行われる特定の取引について、その実態と対価の算定根拠を明確化することにあります。具体的には、通常の取引書類に上記の明細が記載されていない場合に、それを補完する書類の作成と保存を義務付けることで、取引の透明性を確保し、適正な申告と納税を担保することを目的としています。これにより、税務当局が取引の実態を正確に把握できる環境を整備し、公平な課税を実現しようとするものです。2.本特例の概要(1)制度の基本構造内国法人が、その「関連者」との間で「特定取引」を行った場合において、その取引に関して保存されている「取引関連書類等」に、以下の事項の記載や記録がないときは、その記載又は記録がない事項を明らかにする書類(電磁的記録を含む)を取得又は作成し、かつ、これを保存しなければならないこととされます。不足している場合に補充が必要な事項:その取引に関する資産又は役務の提供の明細その取引において内国法人が支払うこととなる対価の額の計算の明細その他、その取引に係る対価の額を算定するために必要な事項(2)関連者とは誰のことを言うのか「関連者」とは、移転価格税制における関連者と同様の基準により判定する、とされています。移転価格税制は、内国法人が国外関連者との間で行う取引の価格が独立当事者間における価格と同じであるか否かをチェックする税制です。要するに、これまで国外関連者に適用していた制度を国内関連者にも適用しようとするものです。そこで、出資割合が50パーセント以上の子会社などを持っていれば、中小企業でも本特例の対象になる場合が出てきます。(3)特定取引とはどのような取引を言うのか本特例の対象となる「特定取引」とは、関連者が内国法人に対して行う取引のうち、販売費及び一般管理費その他の費用の額の基因となるもの(つまり、内国法人側で費用計上されるもの)に限られます。具体的には以下の取引が該当します。①工業所有権等の譲渡又は貸付け関連者が内国法人に対して、以下の資産(工業所有権等)の譲渡、貸付け、または使用させる行為を行う場合。工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式又はこれらに準ずるもの著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む)プログラムの著作物工業所有権等に係る権利の設定など、内国法人にこれらを使用させる行為も含まれます。②役務の提供(サービス)関連者が内国法人に対して行う役務提供のうち、以下のものが対象となります。関連者の経営資源を活用する事業活動内国法人と関連者との契約や協定に基づき、関連者が行う以下の活動。関連者が有する産業、商業又は学術に関する知識経験等の経営資源を活用して行われる研究開発、広告宣伝等の事業活動関連者が有する「専用資産」(専らその内国法人及び関連者の事業の用に供することを目的とする資産)を内国法人に使用させる行為、およびその専用資産の維持・管理経営管理・指導、情報提供関連者が内国法人に対して行う経営の管理や指導、情報の提供等の役務提供であって、関連者が有する産業、商業又は学術に関する知識経験に基づいて行われるもの。上記に類する役務提供上記イおよびロの役務の提供に類するもの。(4)対象となる「取引関連書類等」とは本特例で保存状況が問われる「取引関連書類等」とは、取引に関して受領または交付する以下の書類、またはこれらに通常記載される事項が記録された電磁的記録を指します。注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類これらは、法人税法および法人税に関する法令の規定により保存義務があるものに限られます。(5)違反時のペナルティ(青色申告の承認の取消し)本特例の最も重要な点は、この義務違反に対する制裁措置です。本特例により求められる「記載のない事項を明らかにする書類」の保存が、法令の定めに従って行われていない場合は、「青色申告の承認の取消事由」等となります。青色申告の承認が取り消されると、欠損金の繰越控除や各種の税額控除など、青色申告法人に認められている税制上の特典が受けられなくなるため、企業にとっては極めて重大な影響が生じます。したがって、企業グループにおいては、グループ内取引に係る文書化のルールを再確認し、必要な明細が不足している場合には、速やかに補足資料を作成・保存する体制の整備が求められることになります。3.本特例の特徴と移転価格税制の知識令和8年度大綱を読むと、本特例と移転価格税制との密接な関係を示す記述が確認できます。具体的には、以下の点において移転価格税制の考え方がベースになっている、あるいは強く意識されていると言えます。(1)「関連者」の定義が同一であること本特例の対象となる「関連者」の判定について、令和8年度大綱には明確に「移転価格税制における関連者と同様の基準により判定する」と記載されています。これは、本制度が移転価格税制と同じ枠組み(資本関係や支配関係)にあるグループ企業間取引をターゲットにしていることを直接的に示しています。(2)対象取引の性質(無形資産・役務提供)本特例が対象とする「特定取引」は、工業所有権等の譲渡・貸付けや、経営指導・技術活用などの役務提供(サービス)です。これらは、移転価格税制の実務において、対価の適正性(独立企業間価格)の算定が特に難しく、課税上の論点になりやすい分野と一致しています。(3)求められる書類の内容(対価の算定根拠)保存が義務付けられる内容として、「対価の額の計算の明細」や「対価の額を算定するために必要な事項」が挙げられています。これは、その取引価格がどのように決定されたかを説明するためのものであり、移転価格税制において価格の妥当性を検証するために求められる情報と軌を一にするものです。おわりに本特例は、これまで問題になっていなかった国内関連者を持つ企業であっても、また、中小企業であっても、移転価格税制の適用対象となるグループ内取引について、その実態や対価設定の根拠となる基礎資料の保存を求める制度となっています。そして、青色申告の承認取消しというペナルティを背景に担保させようとする強力な措置であると理解できます。なお、令和8年度大綱では、本特例の適用時期は明示されていません。令和8年度税制改正法案が公表された段階で明らかになると思われます。提供:税経システム研究所
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2026/03/13 法人税税制改正
賃上げ促進税制の改正とその影響~令和8年度税制改正の確認~
賃上げ促進税制は令和6年度に改正が行われ、その適用期限は令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度、つまり3年間の措置とされていました。ところが、昨年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正大綱において、更なる改正が行われています。今回はその改正の内容とその影響を確認していきたいと思います。1令和6年度の改正の概要令和6年度においては、構造的・持続的な賃上げを実現するため、次のような改正が行われています。大企業向けについては、賃上げ率の要件を維持しつつ、更に高い賃上げ率の要件の創設地域において賃上げと経済の好循環の担い手として期待される中堅企業(原則として従業員数2,000人以下の企業)向け制度の創設中小企業向けについては、5年間の税額控除の繰越措置の創設教育訓練費を増やす企業への上乗せ措置の要件の緩和子育てとの両立支援、女性活躍支援に積極的な企業への上乗せ措置の創設(くるみん、えるぼし認定)2令和8年度改正の内容今回の大綱では、賃上げ促進税制の改正の内容について、以下の記載があります。給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度について、次の措置を講ずる(所得税についても同様とする)。全法人向けの措置は、令和8年3月31日をもって廃止する。常時使用する従業員の数が2,000人以下である法人向けの措置は、適用期限(令和9年3月31日)の到来をもって廃止することとし、令和8年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度について、次の見直しを行う。イ原則の税額控除率(10%)が適用できる場合を、継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が4%以上(現行:3%以上)である場合とする。ロ継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が4%以上である場合に税額控除率に15%を加算する措置を、その増加割合が5%以上である場合に税額控除率に5%(その増加割合が6%以上である場合には、15%)を加算する措置とする。ハ教育訓練費に係る上乗せ措置は、廃止する。中小企業向けの措置における教育訓練費に係る上乗せ措置は、廃止する。3改正の経緯(基本的考え方)自由民主党・日本維新の会による与党税制改正大綱には、冒頭に「改正の基本的考え方」が示されています。その中で、賃上げ促進税制に係る部分については、次のような記載があります。物価高に負けない構造的・持続的な賃上げを強化する観点から、令和6年度税制改正において、賃上げ促進税制を抜本的に強化した。一方、足元では賃金上昇率がバブル期以来の水準となる高い伸びを示しており、本税制の要件となる水準を大きく上回る状況にある。このように、企業の賃上げをめぐる状況は令和6年度税制改正当時と大いに様変わりしている。こうした状況に鑑み、コーポレートガバナンス改革に基づく人的資本への投資促進の要請や、税制が生産性の高い分野への労働移動を阻害する可能性、中小企業の人手不足感が大企業よりも強い状況等を踏まえ、大企業向け措置については適用期限を待たずに廃止する。中堅企業向け措置については、令和8年度においてはより高い賃上げを促す方向で要件を強化しつつ継続し、適用期限をもって廃止する。一方、中小企業向け措置については、人材獲得競争の中で防衛的賃上げに取り組む企業にも配慮し、令和8年度は現行制度を維持することとし、期限到来時に適用状況等を踏まえ、必要な見直しを検討する。なお、教育訓練費を増加させた場合の上乗せ要件については、教育訓練費の増加額を税額控除額が上回る場合があるという会計検査院の指摘を踏まえ、廃止する。4改正の影響(1)大企業向け措置今回の改正により、令和8年度は制度自体が廃止され、適用が受けられないことになります。自民党税制調査会の資料によれば、令和5年度の大法人の適用件数は5,268件、適用金額は3,337億円となっています。単純に適用金額を適用件数で除して計算すると、1件当たりの税額控除額は約6,334万円となり、金額の大きさがわかります。(2)中堅企業向け措置従業員数が原則2,000人以下の中堅企業向け措置については、適用期限の到来をもって廃止ということですが適用要件が厳しくなります。現行では継続雇用者給与等支給額の増加割合が3%以上であれば適用され、また、4%以上の場合はプラス15%の上乗せ措置が受けられるところ、改正後は4%以上で初めて適用が可能となり、上乗せ措置は5%、6%以上の増加が必要となります。令和6年度において現段階ではどの程度の適用件数、適用金額があったかは不明ですが、いずれにせよ減少するものと考えられます。(3)中小企業向け措置教育訓練費に係る上乗せ措置については、以前は、例えば比較年度の支出がなく、適用年度に1,000円支出があれば適用を受けることができたため、令和6年度改正において、比較年度からの増加割合の要件を緩和する一方で、適用年度の支出額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であることが新たに要件に加えられました(大企業、中堅企業も同様)。しかし、今回の改正により、中堅企業のみならず、中小企業向けについても廃止されています。前述の資料における令和5年度の中小法人等の適用件数は249,215件、適用金額は3,941億円となっており、単純に適用金額を適用件数で除して計算すると、1件当たりの税額控除額は約158万円となります。また、令和6年度改正で5年間の繰越控除措置も創設され、適用件数はますます増加すると考えられますが、前述の「基本的な考え方」によれば、令和8年度も現行制度を維持し、期限到来時に適用状況等を踏まえ、必要な見直しを検討することとされています。提供:税経システム研究所
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2026/03/10 法人税税務争訟
同族会社の行為計算の否認規定の解釈適用を巡る課税の混迷とその実相(Ⅰ)~個人(株主)の同族会社に対する無利息融資は異常不合理か?~[
1.問題の所在~同族会社の経済的合理的な行為計算の否認を適法とした裁決の法理の問題認識の欠如~税務の専門誌に、個人(株主)が同族会社に対して多額な資金を無利息又は低利息融資(以下「無利息融資等」という。)した事例について、所得税法157条1項が適用されて、適正利率による利息収入が雑所得として課税された課税処分における3件の裁決が紹介されている。いずれの裁決もほぼ同様の理由で、納税者の審査請求が棄却されている。このような事例は多くの税務専門家は承知していると思われるが、、かかる個人(株主)の同族会社に対する無利息融資等のようなケースはかなりあるようで、筆者もその裁決が明かになった後に、税理士から質問を受けたところである。その裁決は、その無利息等の貸付金は81億円の事例と20億円台の事例が2件である。しかしながら、課税処分を適法とした裁決の法理は、同族会社の行為計算の否認の創設の経緯と理由に関しての検証は皆無であり、また、多くの論理的矛盾を来していることについての判断は意図的かどうかはともかく閑却されているということを指摘しておきたい(後述参照)。そこで、ここでは問題の所在に関して簡潔に指摘した上で、本題において具体的な論点の検証を行うこととする。まず、指摘しておきたいことは次の点である。営利法人とは異なり、自然人の個人は消費生活主体と業務生活主体の二つの生活主体を有しているが、いずれの主体においても、個人の情感(感情)に左右され行動する「自然人」としての属性に鑑みれば、構成員(株主)の営利を追求する営利法人とは基本的に異なるという原点の相違があること(「個人的情感による行動」)個人(株主)と同族会社との間の取引のみが否認の対象とされる所得税法157条1項適用は、不平等課税を招来していること(無利息貸付等の利息収入認定の不平等課税の実相)個人(株主)は同族会社を支配管理している当事者であり、同族会社の利益は全て個人(株主)に帰属する関係にあること(同族会社の利益と個人(株主)の利益帰属の同一性)最近の同族会社の行為計算の否認規定による課税処分は、「租税回避の意義」の学説判例を逸脱し、かつ、未発生の要件事実を擬制して措定し課税することは(後述の平和事件判決参照)、実質課税の原則に違背し、かつ、租税負担能力に欠ける実体があること(私法上の法的経済的成果とは異なる要件事実を措定して課税することの疑問)以上簡潔に指摘した問題点は、本裁決事例のような個人(株主)の同族会社に対する無利息融資等に関して、所得税法157条1項を適用し、当該株主は利息収入を得ているとフィクション(擬制)して、雑所得課税の是非の検討における基本的出発点の問題であるにもかかわらず、上記裁決事例はそのほとんどの論点についての検証が欠落している。本稿では、この点にフォーカスして検討を進めたい。そこで、先ず、この論点の内、多くの課税事例の裁決及び判決が犯している④の論点について検証しておきたい。それは私法上の事実認定と税法の解釈適用の原理、原則の原点の問題認識と考えているからである。ちなみに、以上のような問題の課税事例は、個人(株主)が自ら支配する同族会社に対する3,455億円の無利息貸付の利息相当額を雑所得として課税した平和事件判決が原点と考えている。それ以前は、個人に対する私法上発生していない収入に課税するという事例は発生していなかったといってよい。ただ、過大管理料の必要経費控除が所得税法157条1項により否認されたことを受けて、それを回避するために転貸方式が考えられたことから、過大管理料の否認に類似する方法で、株主の同族会社への低額賃料の支払いを適正賃料にまで引き上げて家賃収入を認定した事例の発生が見られる時期でもあった。しかし、いずれの事例も所得税法157条1項が適用される事例でないことは、平和事件判決及びここで取り上げる無利息融資等に対する利息認定と同様に許されないと思料するものである。その理由は後述する。2.事実認定と税法の解釈適用のプロセス(構造)とその誤解~「租税回避」の学説と課税及び裁判実務との齟齬の視座からの検証~税法の解釈適用は、先ず、私法上の法律行為及びそれにより発生した法的、経済的意義(実質・成果)を認定して「事実の確定」が行われ、次に、確定した当該事実に適合する税法の規定を発見又は検認しその税法規定を解釈して確定した課税要件規定に適用するという次の作業が行われる。ここで問題となるのは、この事実認定に基づく「事実の確定」の私法上の事実認定の作業において、税法固有の「租税回避」の意思の存在をどのように位置づけるべきかということである。この点については、「税法上の実質主義・租税回避防止等如何なる理由からでも、私法上全く有効に形成された法律効果自体はこれを絶対に否定できない」(注1)ということに留意すべきである。また、「私法上の法形成を無視して課税を行うことはできない。」、「私法上の取引があり、その後の課税がある。要するに、これだけです。」と論じられているが、これも同旨である(注2)。それは、私法上の法形式が租税負担減少(回避)を意図して選択したものであるとしても、そのことにより、私法上の領域において、納税者が選択した法律行為、経済的成果等が他の法形式又は経済的成果に変動するというものではないということである。それが許される場合があるとすれば、その私法上選択した法律行為等が異常不合理な行為計算である場合であり、その不合理な行為計算を税法上の領域においてのみ、現実に発生している私法上の法的、経済的成果(事実の確定)を得ることができる他の法形式を選択したものと擬制して課税関係を形成する、「租税回避行為の否認」の場合に限定されるということである。それが、ここで論ずる「同族会社の行為計算の否認」規定の適用の原点である。これを図解すると、次のとおりである。ここで、学説の租税回避の意義を紹介しておこう。まず、ドイツ租税法の研究者の清永先生の説を紹介する。<清永敬次京都大学名誉教授説>「税法上①通常のものと考えられている法形式(取引形式)を納税者が選択せず、これとは異なる法形式を選択することによって、②通常の法形式を選択した場合と基本的には同一の経済的効果ないし法的効果を達成しながら、③通常の法形式に結び付けられている租税法上の負担を軽減又は排除するという形をとる。」かかる理解は、金子宏東大名誉教授も同旨である。昭和36年国税通則法税制調査会答申では、「租税回避」とは、このようなう回行為又は多段階行為により租税負担を軽減回避することを租税回避行為と呼ぶこととするとし、「このような場合には、仮装のために採られた法形式にとらわれることなく、通常あるべき取引行為によって得られる経済的実質、しかも、その法形式がどのようなものであれ、その通常生ずべき経済的実質と同じ実体として現に生じているところに即して課税が行なわれるべきこととなる。」と明示している。さらに、ドイツ租税基本法42条では、「(1)法の形成可能性の濫用により租税法律を回避することはできない。(略)第2項に規定する濫用が存在するときは、経済事象に相応する法的形成をした場合に発生するのと同じように、租税請求権が発生する。」とされている。ここで明らかなことは、①合理的行為による経済的成果と、➁異常不合理な行為の経済的成果はほぼ同様の成果を得ていること、➁の不合理な行為計算を選択した納税者の租税負担が、①の合理的な行為計算を選択した納税者の租税負担よりも減免されている場合を「不当に減少している」ということを意味しているということである。けっして、租税負担軽減(租税回避)の意思の存在によって判断されるというものではないことに注意しなければならない(注3)。その上で、かかる「租税回避行為を否認して課税するという意味」は、上記➁の異常不合理な行為計算を選択した納税者に対して、「税務署長の認めるところにより」、「①の合理的行為計算を採用して、現実に顕現されている経済的成果を獲得した」という行為に引き直し」た上で、税法の規定を解釈適用して課税関係が形成されるということである。つまり、納税者が選択した異常不合理な行為計算を他の合理的な行為計算を採用したとフィクションして課税する権限を税務署長に認めたというのが、同族会社の行為計算の否認規定である。しかるに現実の課税実務並びに裁決及び判決はかかる課税関係の法理を放擲し、租税負担減少に着目して、租税負担減少のための行為を否認するという課税が行なわれている。そして、その裁決及び判決はこれを支持するという実体が定着しつつあるというのが悲劇的現象である。このような典型的な事例を取り合えず二つ紹介する。「グループ法人税制外し」を企図して、株式発行会社の総務部長に5%の第三者割当増資を行い、100%支配関係を解消した後、含み損のある保有土地等を譲渡して譲渡損を計上した事案につき、平成28年1月8日裁決は法人税法132条1項を適用して、第三者割当増資を否認して100%支配関係に引き直した上で、その譲渡損の損金算入を否認したものである。地主の個人(株主)が同族会社に相当地代による地上権の設定を行い、その後の相続開始に伴うその相続財産の地上権設定の底地の評価につき、地上権の残存期間が50年を超えていたことから、地上権法定評価額は更地価額の90%相当額、したがって、底地評価額は10%として相続税申告をしたところ、相続税法64条1項を適用して、最近の土地使用は地上権設定は異常であり、賃借権(借地権)が通常であると認定され、「借地権の相当地代通達」により、その底地の評価額は更地価額の80%相当額として否認された平成15年7月30日判決(タインズZ888-0841)。①の裁決は、第三者割当増資が異常不合理であるということについての合理的説示はなく、租税負担軽減のための割当増資であるという視点から現実に発生している法的効果自体の行為の否認である。私法上の法的形成は100%支配から95%支配に変化したものであるから、本来、法人税法132条1項の適用事例ではないことの認識が欠如しているということである。すでに述べたところから明らかなように、第三者割当増資により親子会社の支配関係は100%から95%に変化したものであり、それを租税負担が回避されたという理由で、その真の支配関係95%を100%の支配関係と虚構の法律関係に引き直すことは、同族会社の行為計算の否認規定の射程外であることは、前述した租税回避の学説等からも明白であろう。それを否定するのが正義であるとして裁決するのであれば、上述した疑問点の指摘を払拭した上で合理的根拠を示して判断すべきである。その説示がない限り到底容認することはできない。しかして、これを否認するためには、個別規定を創設して対応する以外にはないということである。現在の裁決及び判決は、このような租税回避の学説とは異なる意味合いとして理解されているというのが、筆者の認識である。そのために、「税務署長は何でもできる」として、現行の同族会社の行為計算の否認規定を批判しておられた右山昌一郎先生のことが思い出される。そして、実際に、かかる裁決及び判決の公開により、本来、課税してはならない事件が判決等により支持されることにより、課税当局はさらに強引な税務執行を実践して課税が行なわれ、税務判決等がこれを支持するという「屋上屋を架す」悪循環が現在の税務争訟の実相である。➁の判決は、すでに論じたことから明らかなように、私法上の法律行為は「相当地代による地上権の設定」であり、それが相続税法64条の行為計算の否認規定により賃借権の設定であると引き直されたものであり、これも地上権の設定が異常不合理とする根拠が不明であることを筆者の鑑定意見書で指摘したところ、国側は、今日では土地使用は賃借権(借地権)の設定が通常であり、地上権の設定は不合理という意味不明の噴飯ものの主張が展開されたのである。この判決は、「租税回避」の意味さえ理解していないものであり、もはや司法における判決とも言い難い内容の判示と言わざるを得ない。3.同族会社の行為計算の否認規定の創設の経緯と趣旨目的(1)所得税・法人税の同族会社の行為計算の否認規定の創設の趣旨目的わが国の税制上、現行税制の所得税法及び法人税法における同族会社の行為計算の否認規定に相当する規定が創設されたのは大正12年の所得税法一部改正においてである。その創設と合わせて、さらに、同族会社と株主等との間における行為の否認規定が創設された(注4)。かかる留保金課税や行為計算の否認規定の創設は、大正9年の所得税法改正により、それまで非課税とされていた配当所得が個人の段階で総合課税の対象とされることとなったことに伴い、その総合課税による配当所得の所得税負担を回避するため、同族関係者からなる家族的な会社(財産保全会社)を組織し、その財産保全会社に利益を留保して配当を行わないこととする事例が続出したほか、財産保全会社と株主等との間に、財産保全会社であるがゆえに行われやすい税負担の軽減を意図とした種々の形態の恣意的な取引(隠れたる利益処分)が見受けられるようになってきた、という当時の状況を背景とするもので、同族会社の留保金課税制度とともに、これらの租税回避行為を防止・是正するための措置として法制化されたものといわれている(注5)。かかる創設の趣旨について、当時の立法当局者の解説では、次のように述べられている。「同族会社の租税回避の常套手段は、個人と法人との所得の計算方法の相違する点を逆用することにあるやに認められる。即ち個人の営利に属せざる一時の所得が非課税とせらるるにかかわらず法人の所得計算上普通所得を構成し、個人の所得計算に於いては所得を得るに必要なる経費の範囲が限定せらるるに反し、法人の所得計算に於てはその範囲が制限せられない等の故に、法人をして積極的又は消極的に、個人に一時的利益を与ふる目的を以て、出捐又は犠牲を為さしむること-最も単純な例を挙ぐれば贈与其の他の無償の行為を以て、事ある毎に法人の利益の減殺を図り、因って個人に利益を与ふる等、容易に租税の回避が企図せらるるのである。茲に於て、税務執行官庁に対し行為計算の否認権が付与せられ、其の否認権運用の目標は専ら此等の贈与又は贈与類似の利益供与の関係を客観的照準に依り是正せんとするにある。」(注6)。このような立法の経緯と趣旨からすれば、同族会社の行為計算の否認規定は、営利法人の同族会社にとって、資産の減少をもたらす贈与(寄附金)等を損金の額に算入し、他方、その贈与を受けた個人(株主)は非課税とされていたことにより(注7)、法人及び所得税の負担を回避する租税回避を防止するために、この否認規定が創設されたということである。この制度創設の趣旨目的に鑑みれば、この租税回避否認規定が否認対象としているのは、営利法人として少数の株主等で構成されている同族会社が経済的不合理な行為計算を行い、同族会社の利益を個人(株主)に移転する場合を課税対象とすることを意図したものである(注8)。したがって、平和事件や本裁決のような個人(株主)がその同族会社に対して、無利息貸付等により個人(株主)の利益を移転することを予定したものでないことは明白であろう。仮に、所得税法157条1項が、本裁決のように、個人(株主)の同族会社に対する利益供与を、その個人(株主)に対して否認して課税するというのであれば、不平等課税の憲法違反の問題が派生することになる。以前、同族会社の行為計算のみ否認の対象とする同族会社の行為計算の否認規定は憲法違反ということが問題となったが、判決は、少数の株主で構成される同族会社にあっては、租税負担回避のために異常不合理な行為計算を行う恐れがあることを理由に、その取扱いの相違は憲法違反とは言えないという判決により結着していたところである。しかるに、本裁決のように、「個人(株主)から同族会社に対する無利息融資等」を異常不合理と認定して、所得税法の同族会社の行為計算の否認規定(所法157①、未発生の利息収入が発生しているとフィクションして課税することは、同規定が、個人(株主)対非同族会社、及び個人対個人の同様の無利息融資等は課税できないこととしていることに照らせば、現行の所得税法157条1項の規定は明らかに不平等課税を招来するものであるから、明らかに憲法違反ということになる。換言すれば、租税回避行為の対象とされる異常不合理の行為の判断基準は、従前、「非同族会社比準説」が採用されていたが、そうであれば、同族会社が無利息融資等を受けて資金調達することは最高の合理的行為であることは論ずるまだもないことである。したがって、この基準によれば租税回避行為に該当する余地はない。ちなみに、この基準はより客観性のある「経済的合理性基準説」が現在の主流とされているが、いずれの基準であっても結論において異なるところはない(注9)。同規定は、個人(株主)が非同族会社に対して、また個人が個人に対して無利息融資等を行った場合には、その貸主の個人には利息認定ができない現行制度の下では、同族会社の個人(株主)に限定して、所得税法157条1項を適用して収受していない利息収入の存在をフィクションして所得税の課税対象とすることは、従前問題とされたことがある不平等課税の憲法違反の問題が復活することになる。また「所得なきところに課税なし」違反、ひいては実質課税の原則に違反することにもなり、課税の合理的根拠は見い出せないことになる。ここでの結論は、所得税法157条1項は、同族会社の無償行為等により個人(株主)に対する利益移転の租税回避を課税対象とするものであり、個人(株主)の同族会社への利益移転を課税の対象とするものではないということである。本裁決及び平和事件判決は、この立法の制度趣旨目的からの検証を捨象したところに、その課税の疑問を払拭することはできないというのが、ここでの結論である。(つづく)<注釈>渡辺伸平「税法上の所得を巡る諸問題」『司法研究報告書』第19輯1号(1967年)28頁)。中里実「3.租税訴訟に有用な理論的フレームワーク」中里実・太田洋・弘中聡浩・宮塚久編『国際租税訴訟の最前線』有斐閣(2010年)56頁・61頁。最近の課税処分及び税務争訟における裁決又は判決は、これとは異なる理解に立って課税され、それが維持されている結果、根本的、合理的な論理が閑却されているということである。それが反省されることもなく、課税実践及び争訟実務に影響を与え定着しつつあるというのが実相であると認識している。大正15年に取引を同族会社と株主間の取引に限定しない旨の改正が行われている。この規定は、基本的には現在の規定と異なるところはない。この点の規定創設の経緯については、村上泰治「同族会社の行為計算否認規定の沿革からの考察」税務大学論叢11号(1977年))228頁に詳しく論じられている。片岡政一『増徴新税税務会計原理』文精社(1935年・昭和10年)283頁以下。なお、山本貞作『営業収益税法釈義』自治館(1927年・昭和2年)378~379頁も同旨。当時の税制の下では、法人からの個人に対する贈与(寄附金)は、法人では損金算入とされ(昭和17年に寄附金課税創設)、贈与を受けた個人は所得源泉説の下では非課税とされていたものである(現在の一時所得は非課税)。それは所得税法157条1項の場合であり、法人の場合には株主に限定されずに、その同族会社以外の法人及び個人に対する行為計算が対象とされる改正が翌年に行われている。金子宏『租税法(24版)』(弘文堂)542頁参照。提供:税経システム研究所
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2026/03/04 所得税
固定資産の交換特例(個人)について
1はじめに個人が、土地や建物などの一定の固定資産を同じ種類の固定資産と交換したときは、所得税の計算において譲渡がなかったものとする「固定資産の交換の特例」という制度があります。底地と借地の交換なども可能であり、状況により大変高い効果が期待できます。ただし、適用要件は多く、また、実務上も頻繁にでてくる項目ではありませんので、効果が期待できる場面に遭遇しても、見過ごしていたり、適切なアドバイスができていないことがあります。今回はこの固定資産の交換特例の適用要件とポイントについてみていきたいと思います。2適用要件について適用要件については下記の通りとなります。要件は多く、注意すべきポイントも多くありますので、適用関係については入念に検討が必要です。(1)交換により譲渡する資産および取得する資産は、いずれも固定資産であること。不動産業者などが販売のために所有している土地などの資産は棚卸資産になりますので、特例の対象になりません。対象資産は土地(底地、借地権、賃借権、一定の耕作権を含みます)、建物(その建物の付属設備や構築物も含みます。※建物付属設備・構築物単体では交換特例の対象にはなりません)、機械装置、船舶、鉱業権となります。(2)交換により譲渡する資産および取得する資産は、いずれも土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であること。土地建物と土地を交換した場合には、例え総額が等価であっても建物部分についてはこの特例が受けられず、交換で建物を取得した側は建物価額相当額の交換差金を受けたことになります。また、交換で建物を譲渡した側は単に建物を譲渡したことになるため、建物についてこの特例は受けられません。この場合、交換で譲り受ける建物価額が譲渡する土地の価額の20パーセントを超えるときは、土地についてもこの特例が受けられませんので注意が必要です。(3)交換により譲渡する資産は、1年以上所有していたものであること。贈与、相続・遺贈で取得した資産を交換により譲渡する場合には、贈与者、被相続人がその資産を取得した日からの期間で判定します。交換特例の適用により取得した資産を再度交換譲渡した場合には、交換譲渡した資産を実際に取得した日からの期間で判定します。(4)交換により取得する資産は、交換の相手方が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものでないこと。(5)交換により取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること。【用途の区分】交換譲渡資産の種類区分土地宅地、田畑、鉱泉地、池沼、山林、牧場または原野、その他建物居住用、店舗または事務所用、工場用、倉庫用、その他用機械装置耐用年数省令別表第二に掲げる設備の種類の区分船舶漁船、運送船、作業船、他例えば宅地の場合、宅地であればよく店舗用宅地と住宅用宅地の交換も可能です。店舗併用住宅の建物は、店舗専用の建物又は住居専用の建物のいずれとの交換も可能です。事務所併用住宅の建物についても、事務所専用又は住居専用の建物のいずれとの交換も可能です。自己の居住用と居住用の貸家との交換も可能です。交換取得資産を同一の用途に使用するための工事などが必要な場合であっても、所得税の申告期限までに同一の用途に使用していれば、特例の適用は可能です。もし申告期限までに工事などが完了しない場合でも、申告期限までに工事に着手し、相当の期間内に工事が完了すると見込まれるときは、特例の適用が可能です。(6)交換により譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20パーセント以内であること。(7)この特例の適用を受けるためには、確定申告書に一定の記載をして、譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]を添えて提出する必要があります。3その他実務上留意すべきポイント(1)交換差金についてこの特例の適用が受けられる場合でも、交換に伴って相手方から金銭などの交換差金を受け取ったときは、その交換差金が譲渡所得として所得税の課税対象になります。交換差金には、交換当事者間でやりとりされる金銭だけでなく、下記のようなものも含まれます。交換取得資産のうち交換譲渡資産と同じ用途に使用しなかった資産がある場合には、同じ用途に使用しなかった資産の価額が交換差金になります。1つの資産のうち一部を交換、他の部分を売買とした場合にはその売買代金が交換差金になります。土地と建物を一括して交換したときに、土地・建物の総額では等しい価額でも、土地と土地、建物と建物の種類ごとの価額が異なっているケースでは、土地と土地、建物と建物とのそれぞれの差額が交換差金となります。この場合に、交換差金の額が交換譲渡資産と取得資産とのいずれか高い方の価額の20パーセントを超えているときは、交換した資産全体について交換特例の適用ができないことには注意する必要があります。(2)その他適用にあたってのポイント個人と法人との間での交換も適用可能です交換取得資産の取得費は交換譲渡資産の取得費を引き継ぎますので、課税の繰り延べであることには留意する必要があります。(交換差金の取得・支払いがある場合には取得費に一定の調整計算がおこなわれます)当事者間で合意された資産の価額が、交換に至った事情等に照らし合理的に算定されていると認められるときは、その合意された資産の価額によることができます。〔所得税基本通達58-12〕固定資産の交換があった場合において、交換当事者間において合意されたその資産の価額が、交換するに至った事情に照らし合理的に算定されていると認められるものであるときは、その合意された価額が通常の取引価額と異なるときであっても、所得税法58条の規定の適用上、その資産の価額はその合意したところによるものとする。提供:税経システム研究所
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2026/02/25 消費税
令和8年度消費税改正① インボイス制度に係る経過措置~2割特例から3割特例へ~
1.はじめに令和7年12月19日に「令和8年度税制改正大綱」が公表され、令和8年9月30日に適用期限が終了する次のインボイス制度に係る経過措置について、見直しが行われることになりました。小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)免税事業者等からの仕入れに係る経過措置(80%控除)今回は、上記アの「小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置」の見直しについて見ていきます。2.小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置の見直し(1)改正の趣旨2割特例の終了後は、簡易課税制度への移行が原則となりますが、インボイス制度の定着に向けて事務負担への配慮がより必要と考えられる個人事業者について、課税事業者を選択して適格請求書発行事業者になっている場合には、これまで2割特例の対象となっている個人事業者も含め、その納税額を売上税額の3割とすることができる経過措置を2年間に限り講ずることになります。(2)3割特例個人事業者である適格請求書発行事業者の令和9年及び令和10年に含まれる各課税期間(注)については、その課税期間における課税標準額に対する消費税額から控除する金額を、その課税標準額に対する消費税額に7割を乗じた額とすることにより、納付税額をその課税標準額に対する消費税額の3割とすることができます。(注)免税事業者が適格請求書発行事業者となったこと又は「消費税課税事業者選択届出書」を提出したことにより事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる課税期間に限ります。図表小規模個人事業者に係る税額控除に関する経過措置(3)確定申告書への付記適格請求書発行事業者が3割特例の適用を受けようとする場合には、確定申告書にその旨を付記します。(4)簡易課税制度への移行3割特例の適用を受けた適格請求書発行事業者が、その適用を受けた課税期間の翌課税期間に係る確定申告期限までに、その翌課税期間について「消費税簡易課税制度選択届出書」を所轄税務署長に提出したときは、その翌課税期間から簡易課税制度を適用することができます。なお、現行の2割特例の適用を受けた適格請求書発行事業者についても、上記と同様に、2割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間に係る確定申告期限(現行:2割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間の末日)までに、その翌課税期間について「消費税簡易課税制度選択届出書」を所轄税務署長に提出したときは、その翌課税期間から簡易課税制度を適用することができ、令和8年10月1日以後に終了する課税期間から適用されます。3.2割特例を適用していた法人の実務対応2割特例は、令和8年9月30日の属する課税期間で終了します。3月決算法人の場合には、令和9年3月31日をもって終了します。終了後の課税期間について、次のア~ウのいずれに移行するかを検討する必要があります。本則課税簡易課税免税事業者(注)(注)適格請求書発行事業者が免税事業者となるためには、免税事業者となろうとする課税期間の初日から起算して15日前の日の前日までに、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を所轄税務署長に提出しなければなりません。4.2割特例を適用していた個人事業者の実務対応2割特例は、令和8年9月30日の属する課税期間で終了します。個人事業者の場合には、令和8年12月31日をもって終了します。終了後の課税期間について、3割特例を含めた次のア~エのいずれに移行するかを検討する必要があります。3割特例本則課税簡易課税免税事業者(上記3(注)参照)提供:税経システム研究所
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2026/02/18 相続・贈与税
贈与税の重要テーマ解説2(みなし贈与1)
【ポイント】贈与は契約行為ですが、贈与契約が行われていなくても、財産又は価値が他人に移転することがあります。個人間の贈与と同様な実質的経済価値の移転に対して、贈与税の課税の対象となります。【解説】1みなし贈与(1)本来の贈与財産贈与契約が成立し、財産を取得したことにより、贈与税の課税の対象となります。財産とは基本的に相続税の対象となるものと同様です。また、契約の有無を判断するまでもなく、財産の移転が無償で行われた場合、一方的に贈与税を課税する取扱いがあります(相基通9-9)。(2)贈与契約によらない財産の取得贈与行為は契約とは言うものの、財産の移転は、必ずしもお互いの了解を得て行われるわけではありません。例えば、父親が掛けていた生命保険の満期受取金を妻や子供が受け取った場合のように、受贈者が贈与の認識がないうちに財産を取得している場合があります。お互いの了解を得て行われるわけではない財産の移転であっても、提供した者の財産が減少し、受け取った者が金銭的な負担がなく経済的な利益を得た場合、その実態は贈与と変わりません。そのため、このような財産の移転については、実態に即した課税を行うため、「贈与によって取得したとみなす(みなし贈与)」として贈与税の課税対象となります(相法5~9の6)。課税の都合による取扱いではありますが、無償による財産の取得の経済効果に着目して課税されるものです。みなし贈与は相続税法の規定に則って機械的に課税の対象となることに留意します。2みなし贈与財産の概要(1)贈与により取得したとみなされる財産相続税法では、みなし贈与として第5条以下、いくつか規定しています。生命保険金の受取人の指定などは、契約者が贈与の認識がなく、思いつくままに満期金の受取人を指定することが多くあります。しかし低額譲渡などは、本来の時価で売買できるものを、あえて譲渡者の財産価額を減少させる目的で低額で売買し、贈与税を逃れる意図が明白な事例が多いのが現状です。これらを封じ込めるため及び課税の公平を維持するための規定ともいえます。(2)贈与又は遺贈により取得したとみなされる財産3相続税法第7条及び第9条の相違みなし贈与で特に適用されるのが相続税法第7条及び第9条です。両条文には「著しく低い価額の対価」での取引があった場合「贈与により取得したものとみなす」と規定してあり、区分が理解しにくいところがあります。この項で整理します。(1)第7条(低額譲受)【相法7(前段)】著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、当該財産の譲渡があった時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があつた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第三章に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与(当該財産の譲渡が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。同条を分解すると次の通りです。「著しく低い価額の対価」で「財産の譲渡を受けた場合」に「財産の譲渡があった時」に「財産の譲渡を受けた者」が「対価と財産の時価との差額に相当する金額」を「財産を譲渡した者」から「贈与により取得した」ものとみなす。この規定は財産の譲渡を受けた場合となっていますので、大前提として売買が絡みます。譲渡した者からの利益に対して、贈与税のみなし課税のことを言っていることから、相対売買があった場合に限られます。一般的には親族間の土地の低額譲受け等が該当します。(2)第9条(その他の利益の享受)【相法9(前段)】第5条から前条まで及び次節に規定する場合を除くほか、対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額(対価の支払があった場合には、その価額を控除した金額)を当該利益を受けさせた者から贈与(当該行為が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。相続税法第9条を分解すると次の通りです。「対価を支払わない」で又は「著しく低い価額の対価」で「利益を受けた場合」に「利益を受けた時」に「利益を受けた者」が「利益を受けた時」における「利益の価額に相当する金額」を「利益を受けさせた者」から「贈与により取得した」ものとみなす。相続税法第9条は、みなし贈与規定である相続税法第5条から第8条及び第3節(信託に関する特例)に該当する場合以外でも、対価を支払わず利益を受けたときは、その利益の金額相当額を、贈与により取得したものとみなし、贈与税を課税することとしたものです。贈与契約によって財産を取得したのではなくても、相対の取引がなかったとしても、実質的に対価を支払わないで、経済的利益を受け、財産価値が自然と増加するような場合のことを想定しています。みなし贈与課税の基本的規定です。本来みなし贈与の規定は相続税対策を講じることの歯止めの意味を兼ねて策定されています。第9条の規定は原則として親子配偶者等親族関係がない場合であっても適用することに注意します。親子夫婦間での贈与であっても贈与税課税のためには民法における契約が成立していることが大前提です。しかし親族間の資産の移転は契約をすることはほとんどなく、実質で判断することになります。調査により贈与の意思を確認することは課税当局にとっては非常に不都合なこと及び納税者にとっても課税の不公平です。そこで、実質的に経済的利益を受けた場合、贈与税の課税対象としています。課税範囲の幅が広がっていることから、贈与の意識がない行為であっても、当事者の意向を無視して経済的利益に対して課税されます。非上場会社に対し、株主以外の者が資産を無償提供して、その会社の株価が増加し、提供者以外の株主が利益を受けた場合などが典型的でしょう。この場合の「利益を受けた」とは、財産の増加のみならず、債務の減少があった場合も実質的に利益を得ることとなるため贈与とみなされます。労務の提供等を受けたような場合は、利益の換算が困難であること等から、含みません(相基通9-1)。相続税基本通達第9条関係では、利益の享受について次の規定があります。【東京高裁判決1977年(昭和52年)7月27日】(相法9条の趣旨)相続税法9条の規定は、私法上の贈与契約によって財産を取得したのではないが、贈与と同じような実質を有する場合に贈与の意思がなければ贈与税を課税することができないとするならば、課税の公平を失することになるので、この不合理を補うために、実質的に対価を支払わないで経済的利益を受けた場合においては、贈与契約の有無にかかわらず贈与により取得したものであるとみなし、これを課税財産として贈与税を課税することとしたものである。提供:税経システム研究所
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2026/02/10 所得税
賃貸用マンションの修繕積立金の取扱いについて
1設例による賃貸用マンションの修繕積立金の取扱い会社役員である甲が、令和7年4月に投資目的とともに相続対策も兼ねて賃貸用マンション1室を購入しました。賃貸用マンションの区分所有者となった甲は、マンションの管理規約に従い管理組合に対し修繕積立金を毎月支払っていますが、甲が支払っている修繕積立金は不動産所得の金額の計算上、令和7年分の必要経費に算入することができるでしょうか。2設例に対する回答所得税法第37条の規定(必要経費)では、実際に修繕等が行われその修繕等が完了した日の属する年分(10年経過後であれば令和17年分)の必要経費になります。しかし、一定の要件を満たす場合には(下記(4)参照)、支払期日の属する令和7年分の必要経費に算入することができます。(1)所得税法第37条の規定(必要経費)その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費・一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除きます)の額とします(所法37①)。(2)必要経費に算入すべき費用の債務確定の判定所得税法第37条の規定によりその年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき償却費以外の費用で、その年において債務が確定しているものとは、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる要件の全てに該当するものをいいます(所基通37-2)。その年12月31日(年の中途において死亡した場合には、その死亡の時など)までにその費用に係る債務が成立していること。その年12月31日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。その年12月31日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。(3)原則(修繕等が完了した日の属する年分の必要経費に算入)上記(1)・(2)により、修繕積立金はマンションの共用部分について行う将来の大規模修繕等の費用の額に充てられるために長期間にわたって計画的に積み立てられるものであり、実際に修繕等が行われていない限りにおいては、具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していないことから、原則的には、管理組合への支払期日の属する年分の必要経費には算入されず(所基通37-2)、実際に修繕等が行われ、その費用の額に充てられた部分の金額について、その修繕等が完了した日の属する年分の必要経費に算入されることになります。(4)特例的な取扱い(修繕積立金を支払った令和7年分の必要経費に算入)修繕積立金は区分所有者となった時点で、管理組合へ義務的に納付しなければならないものであるとともに、管理規約において納入された修繕積立金は管理組合が解散しない限り区分所有者へ返還しないこととしているのが一般的です(マンション標準管理規約(単棟型)(国土交通省)60⑦)。そこで、修繕積立金の支払がマンション標準管理規約に沿った適正な管理規約に従い、次の事実関係の下で行われている場合には、その修繕積立金について、その支払期日の属する令和7年分の必要経費に算入しても差し支えないものと考えられます。区分所有者となった者は、管理組合に対して修繕積立金の支払義務を負うことになること管理組合は、支払を受けた修繕積立金について、区分所有者への返還義務を有しないこと修繕積立金は、将来の修繕等のためにのみ使用され、他へ流用されるものでないこと修繕積立金の額は、長期修繕計画に基づき各区分所有者の共有持分に応じて、合理的な方法により算出されていることしたがって、甲の支払った修繕積立金について、上記①から④の全ての要件を満たす場合には、支払期日の属する令和7年分の必要経費に算入することができます。3マンションの修繕積立金に関するガイドラインマンションの修繕積立金に関するガイドライン(平成23年4月・令和6年6月改訂:国土交通省)は、主としてマンションの購入予定者及びマンションの区分所有者・管理組合向けに、修繕積立金に関する基本的な知識や、修繕積立金の額の目安を示し、修繕積立金に関する理解を深めていただくとともに、修繕積立金の額の水準について判断する際の参考材料として活用していただくことを目的に作成されています。https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747009.pdf提供:税経システム研究所
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2026/02/04 法人税
貸倒引当金制度における「実質的に債権とみられない部分の金額」の取扱い~個別評価による方が繰入限度額の算定が個別的~
貸倒引当金の繰入限度額の計算において、一定の場合、金銭債権の額から相殺適状にあるものや相殺的な性格等を有するものについては、「実質的に債権とみられない部分の金額」として控除することとされています。しかしながら「実質的に債権と認められない部分の金額」の範囲については、個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度額(個別評価による繰入限度額)と一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度額(一括評価による繰入限度額)とでは、異なる取扱いがされていますので、本稿ではそれぞれの制度の概要を確認し、その異なる取扱いの内容とその理由を確認していきます。1貸倒引当金制度の概要貸倒引当金については、一定の業種を営む法人(注1)に限って適用が認められ(注2)、法人税法52条1項において個別評価による繰入限度額が、2項において一括評価による繰入限度額が規定されており、その適用については中小法人が対象とされています(法人税法52条1項、2項)。また、一括評価による繰入限度額については、特例として法定繰入率による計上が認められています(租税特別措置法57条の9第1項)。ところで、個別評価による繰入限度額及び一括評価による繰入限度額(特例適用の場合)の計算に際して、「実質的に債権とみられない部分の金額」がある場合には、いずれの場合も設定の対象となる金銭債権の額から控除することとされています(法人税法施行令96条1項3号、租税特別措置法施行令33条の7第2項)。2個別評価による繰入限度額の計算個別評価による繰入限度額の計算は、その債務者の状況に応じて、①長期棚上げ基準(法人税法施行令96条1項1号)、②実質基準(同条項2号)、③形式基準(同条項3号)(注3)が定められています。そして、本稿で取り上げる「実質的に債権とみられない部分の金額」が問題となるのは③形式基準の場合で、この基準により繰入限度額を算定する際の金銭債権の額については、「当該金銭債権の額(当該金銭債権の額のうち、当該債務者から受け入れた金額があるために実質的に債権とみられない部分の金額……を除く。)」と規定されています(法人税法施行令96条1項3号)(注4)。3一括評価による繰入限度額の計算一括評価による繰入限度額(特例適用の場合)の算定は、「一括評価金銭債権の帳簿価額(政令で定める金銭債権にあっては、政令で定める金額を控除した残額。)」を基礎として計算することと規定されています(租税特別措置法57条の9第1項後段)。そして、政令で定める金銭債権は「その債務者から受け入れた金額があるためその全額又は一部が実質的に債権とみられない金銭債権」、政令で定める金額は「その債権とみられない部分の金額に相当する金額」と規定されています(租税特別措置法施行令33条の7第2項)。4「実質的に債権とみられない部分の金額」の範囲の差異上記2及び3のとおり、いずれの場合にも「実質的に債権とみられない部分」の金額は対象となる金銭債権の額から控除することとされ、その法令解釈の内容はほぼ同じです(注5)が、2つのケースにおいて支払手形の取扱いが異なっています。法人税基本通達11-2-9(1)(8)(1)同一人に対する売掛金又は受取手形と買掛金がある場合のその売掛金又は受取手形の金額のうち買掛金の金額に相当する金額(8)専ら融資を受ける手段として他から受取手形を取得し、その見合いとして借入金を計上した場合のその受取手形の金額のうち借入金の額に相当する金額租税特別措置法(法人税関係)通達57の9-1(1)(8)(1)同一人に対する売掛金又は受取手形と買掛金又は支払手形がある場合のその売掛金又は受取手形の金額のうち買掛金又は支払手形の金額に相当する金額(8)専ら融資を受ける手段として他から受取手形を取得し、その見合いとして借入金を計上した場合又は支払手形を振り出した場合のその受取手形の金額のうち借入金又は支払手形の金額に相当する金額この理由については、改正当時の課税当局者は「個別評価による繰入限度額、すなわち回収不能見込額は、一括評価の場合の繰入限度額が単なる計算上の損失見込み額に過ぎないのに比してより個別的な回収不能見込額を算出するものであるところ、支払手形は債務者に対して振り出したとしても裏書等によりその後転々と流通し、期日が到来すればその所持人に支払わなければならないものであり、債務者に対して有する金銭債権と相殺できるようなものではないことによる」(注6)と解説しています。5まとめ以上のとおり、支払手形の金額については、個別評価による繰入限度額の計算上、「実質的に債権とみられない部分の金額」に含めないことが認められるものの、一括評価による繰入限度額(特例適用の場合)の計算上、「実質的に債権とみられない部分の金額」には含める必要があることに留意が必要です。なお、個人的には、支払手形が「債務者に対して有する金銭債権と相殺できるようなものではない」ならば、一括評価による繰入限度額(特例適用の場合)の計算上も「実質的に債権とみられない部分の金額」に含める必要はなく、回収不能見込額を算定するという同じ目的のために同じ表現を用いている以上、同様の取扱いを認めても良いのではないかと思います(注7)。<注釈>中小法人については、その営む業種に関係なく適用が認められています(法人税法52条1項1号イ、同条2項)平成23年度税制改正前では、全ての法人に適用が認められていましたが、同改正における法人税率の引き下げに伴う課税ベースの拡大の一環として対象法人が限定されました。外国の公的債務者に関する金銭債権についても、形式基準による計算が認められています(法人税法施行令96条1項4号)。平成10年に廃止された債権償却特別勘定制度の形式基準による設定においても、支払手形は債権と相殺できない債務として、その債務者から受け入れた金額から除かれていました(廃止:法人税基本通達9-6-5(形式基準による債権償却特別勘定の設定)(2)イ)法人税基本通達11-2-9及び租税特別措置法(法人税関係)通達57の9-1のそれぞれの(2)から(7)及び(9)は同じ内容です。森秀文編『法人税基本通達等の解説』41頁(大蔵財務協会、平成11年)、同様の内容のものとして、同編『Q&A改正法人税基本通達等のポイント』63,64頁(ぎょうせい、平成10年)貸倒引当金制度に関して、日本税理士連合会「令和8年度税制改正建議」では、個別評価による繰入限度額計算の形式基準額の繰入率の引き上げを要望していました(同建議15頁)が、改正大綱には記載がありません。提供:税経システム研究所
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2026/01/28 消費税税務争訟
真実行われた課税仕入れの仕入先氏名等の偽名記載及び帳簿等の記載不備を根拠に仕入税額控除を否認できるか~最近の審査請求の審理実態の紹介と権利救済制度の在り方~
1.審査請求の審理状況の実態筆者が審査請求の代理人として争っていた審査請求が、令和7年5月12日付で棄却の裁決が行われた。この事例の課税処分は、請求人が保存している帳簿や請求書等に記載された「氏名又は名称」(以下「氏名等」ともいう。)は偽名であること及び、帳簿及び請求書等の記載不備を根拠として、法人税申告において売上原価の損金算入が認められている「真実行われた課税仕入れ」(輸出の際に保税倉庫に持ち込まれた商品の種類及び数量等につき検査を受けている。)に係る5,200万円の消費税の仕入税額控除を否認したものである。なお、本件請求人及び同様の課税処分を受けた同業者は、その後、この事業を停止(廃止)に至っているという現状である。この裁決の内容の検討は後述するが、先ず、請求人の主張に対する国税不服審判所の対応について述べ、その審査請求のあり得ない審理不尽の実相を紹介しておきたい。すなわち、この審査請求においての請求人が最も重視して主張した消費税法30条7項ないし9項の課税庁の解釈誤謬の主張の重要な事項の一部が、審判官から提示された「争点整理表」から欠落していたのである。そこで、再度漏れていた(担当審判官が意図して漏らした)重要な事項について「請求人の主張」として記載されたい旨の要求書を文書で御願いしたのである。ところが、送達された本件裁決書では、この要求書で要求した事項の大半が請求人の主張から除外されていたのである。このことは、請求人の主張に対して答えられない事項を裁決書から除外しそれらを判断しないままに裁決したということである。もはや、この裁決は{裁決固有の瑕疵}のある違法な裁決ということである。しかし、かかる裁決固有の瑕疵による「裁決取消訴訟」は昭和45年の国税不服審判所創設後の一定期間にはみられたものの、最近では当該取消訴訟は提起されていないのではないかと考えている。その理由は、当該訴訟に勝訴したとしても、裁決が取り消されるものの、再度の棄却裁決が行われると、当初提起した取消訴訟の審理が行われることになる。そのため、訴訟費用や判決の遅れ等の理由から、裁決の取消訴訟の提起が行われていないものと思われる。かかる現実からとは考えたくはないが、本件事案のような権利救済機関として考えられない不誠実な運用が行われていると勘ぐられてもやむを得ないものと思われる。このような審判所の運用は、本件事例に止まらず、かなりの事件で見られることは、筆者の関わった他の審査請求事案でも体験し、さらには、現実に審査請求に関わった税理士からの声も届いているという現実からも想像に難くない。そこで、本稿では、最近の裁決事例における審査請求の審査の実際を紹介して、審判所に猛省を促したいという思いからの論考であるということを、先ず明確にしておきたい。なお、帳簿又は請求書等に記載した仕入先の氏名等が偽名である場合の仕入税額控除が否認されている先例もみられるが、その判決及び裁決の法解釈をみると、これから紹介する法解釈上の論点については全く説示されていないところ、したがって、課税処分等を十分な理由付けもなく排斥しているのは誤りであるという以外にはない。ちなみに、ここで指摘した仕入税額控除の否認が誤謬であることについては、2024年12月掲載の「帳簿等の記載事項不備による仕入税額控除否認事件のその後(Ⅰ)」「帳簿等の記載事項不備による仕入税額控除否認事件のその後(Ⅱ)」の「税務情報リポート」については、その学説を紹介して論じているので参考にされたい。なお、この学説等と反対の解釈に立つ見解は、これまでのところ見当たらない。2.裁決書における「争点についての請求人の主張内容の整理」の不備本件裁決の争点は、「帳簿及び請求書等に記載された『氏名または名称』は真実の氏名等ではないこと、また、帳簿及び請求書等には、氏名等の記載漏れ等の不備があり、保存要件を満たす帳簿及び請求書等には該当せず、その課税仕入れに係る消費税の仕入税額控除は認められないとした課税処分の是非」である。この点に関して、代理人は、多くの主張及び反論をしたところであるが、審判所の担当審判官から提示された「争点についての主張」欄の請求人の主張内容をみると、審査請求の審理期間における請求人の主張及び口頭意見陳述で申し述べた重要な論点に関する主張が捨象されていたのである。そこで、次のような追加書面を提出したのである。以下、その書面の主要な点の要旨を紹介することとする。3.「請求人の主張」の追加についてのお願い「争点の確認表」の「請求人の主張」に次のような趣旨の主張を追加されたい旨の申し入れを行ったのである。相手方が現金取引における一見の客(事業者)であれば、その品物の引渡しとその代金の受取りで取引は完了するというのが現実の現金取引の実態である。しかるに、請求人が相手方から代金を現金で受け取り取引は完結したにもかかわらず、消費税法は、帳簿と請求書等(納品書を含む)の保存を要求していること自体が無意味なナンセンスな条文である。このことに照らせば、その帳簿及び請求書等の保存又は記載の不備をもって、本件のように、現実に支払った5,200万円もの多額な消費税の仕入税額控除を否認することは財産権の侵害の憲法違反であり、したがって、帳簿等の記載不備という事実をして仕入税額控除否認の根拠とすることは不合理極まりないことである。現行消費税法は、「帳簿及び請求書等」の保存を法定しているが(平成9年施行、それまでは「帳簿又は請求書等」とされていた。)、仕入の相手方事業者が代金請求のために正確に書いた請求書の記載内容と同様の内容を納税者が作成する帳簿にも記載することが要求されることになるが、かかる運用は行われていない。つまり、帳簿に課税仕入れの相手方が請求漏れがないように丁寧に作成した請求書の記載と同様の記載内容を要求すること自体、その課税仕入の真実の存在を証明するという目的において無意味であること、また、消費税法30条8項の「帳簿及び請求書等」の保存要件は、具体的な課税仕入れの事実を証明すべき一つの手段として法定されたものにすぎず、その記載不備により真実行われ仕入事業者からの課税仕入れにより支払った消費税(5,200万円)の仕入税額控除が、単なる帳簿や請求書等の記載不備という形式的瑕疵により否認されるという趣旨の規定でないことは、仕入税額控除の趣旨に照らせば明らかである。ちなみに、請求書等には「納品書」を含んでいるが、現実の課税実務において、請求書のみを保存し、納品書の保存がない場合について、仕入税額控除を否認するという課税実務は行われていない。それは請求書があれば、課税仕入れの事実が証明できるからである。このことは、帳簿等の保存又は記載事項等の不備が仕入税額控除を否定する根拠とならないことの証左であるということができる。加えて、本件原処分庁のように、実際の課税仕入れの事実が証明され、法人税申告においても売上原価等として損金算入されていることに鑑みれば、単なる記載事項の形式的瑕疵により、消費税の根幹である仕入税額控除が否定されることはありえないことである。仮にあるとすれば、「帳簿又は請求書等の保存がない場合には適用しない」という条文ではなく、より具体的に記載の不備の内容を特定して、「…の記載不備について仕入税額控除を認めないという条文とされたことは言うまでもないこと(金・白金の条文参照)」である。しかも、本件の場合には、請求人(納税者)には何らの義務違反等の懈怠はなく、課税仕入れの相手方が一方的に記載した請求書の住所には居住していなかったということにすぎない。すなわち、そのことにつき請求人に何らの過失がないにもかかわらず、5,200万円の仕入税額控除を否認し、請求人を事業廃止に追い込んだ本件課税処分が違法であることは明白であるという結論に到達するのである。このような不都合な処分が行われるのは、本人確認制度の導入を回避したことにあるが、それは、真実の課税仕入の事実が証明されるのであれば、仕入税額控除を認めるという消費税法の前提があったからであり、その法益は極めて合理的である。加えて、本件のような悲劇的な課税が行われたのは、令和5年から導入されたインボイス制度を消費税創設から35年間も放置していた国側にその大きな要因があることも認識すべきである。納税者(請求人)は、消費税法では請求書等が記載要件とされていない「住所及び所在地」が記載されている請求書を受領した場合、その住所等が真実か否かを確認する義務も責任もなく、その権限も法定されていない。本件のような仕入税額控除が否認されるリスクを回避するために、その「法定記載事項ではない住所等をマスキングして保存していた納税者(また、住所等が記載されていない請求書を保存していた納税者)について、原処分庁は、本件で行ったような郵送による照会状による手段も、また現地の確認も不可能ということになる。しかし、それは、原処分庁が主張するような、真実の氏名等の記載がない場合には、消費税法の仕入税額控除を認めないというのが立法の趣旨であれば、その真否の確認の第一歩である「住所又は所在地」を法定の記載事項としたことは当然のことである。それが欠落している以上、立法の趣旨として、原処分庁のような解釈は不当かつ違法であるということができる。かかる制度の下で、法定されていない住所等の記載のある請求書を保存していた納税者(請求人)についてのみ仕入税額控除を否認するという、消費税制度の根幹を否定することは許されないし、課税の平等原則にも違背することになる。また、このことは実質課税の原則に違背し財産権侵害にも当たるものである。ひいては、条文では請求書に法定されていない住所等が記載され、その住所に居住していないから、記載された住所が偽名と推認されて否認され、他方、住所等の記載がない請求書又は記載された住所等が真実かどうか確認の手段がない事業者が仕入税額控除否認のリスク回避のために、法定の記載事項とされていない住所等をマスキングして保存している場合は、仕入税額控除は否認されないというのは、真に、法の不備の租税法律主義違反であり許されない。したがって、本人確認制度もインボイス制度の導入前の当時の税制の下で、仕入先事業者が請求書に偽名を記載したことを根拠として、その取引につき何らの義務懈怠もない請求人に対して、仕入先に対して現実に支払った5,200万円もの消費税の仕入税額控除を否認する課税処分を行い、請求人の事業廃止に追い込んだことには到底承服できない。本件課税処分は、消費税法の保存帳簿等の記載不備の現状においては、租税法律主義に違背する法解釈に基づく違法な課税であるというべきである。4.本件事案の概要と裁決の要点(1)事案の概要消費税等の課税事業者(輸出業者)の請求人は、日用品等の仕入れに係る消費税について、仕入税額控除を適用して消費税等の確定申告書を提出したところ、総勘定元帳等に記載されている氏名又は名称(「氏名等」という。)が真実の氏名等と認められないものがあること、その氏名の記載が漏れていること等を根拠として仕入税額控除が否認された(法人税では売上原価として損金算入)。その結果、請求人は事業廃止に追い込まれている。この企業は仕入れた日用品等を保税倉庫に持ち込み商品検査を受けたのち、外国(中国)に輸出して輸出免税を受けた上で、消費税還付を受けていたが、それが今回の税務調査ではその還付が否認されたのである。(2)裁決の要点法定帳簿書類や法定請求書等には法定記載事項の記載を要求しているが、その消費税法30条8項及び9項の氏名又は名称等の記載事項は真実の記載であることが当然に要求されているから、真実の氏名等が記載されていない法定帳簿書類を保存している場合には、当該課税仕入に係る消費税額については仕入税額控除は適用されないと解される。相手方から交付された請求書等に記載されている氏名又は名称が真実かどうかについては、社会通念上要求されるところの注意を払えば、相当程度疑われる状況にあるにもかかわらず、これを確認せず、漫然と請求書を保存して、これに基づいて帳簿の記載を行ったに止まる場合には、保存されている帳簿等に、仕入先の真実の氏名又は名称が記載されているとはいえないというべきである。各仕入先の調査の結果、仕入先との取引も確認できず、仕入先の各住所に住民登録がなかったこと、現実に居住の事実も認められなかったこと等から、請求人と各仕入先との間での取引が行われた事実を確認できず、仕入先の氏名等も真実が否かを確認することはできなかった。請求人は、住所等が法定の記載事項とはされていないから、記載された氏名等が真実か否かを確認することは困難であるから、氏名等が真実の記載であることが仕入税額控除の要件とすることは誤りであると主張する。しかしながら、「法定帳簿や請求書等の記載事項は法定されているところ、消費税法30条の7項の規定の趣旨(筆者注:消費税により適正な税収を確保するための法定帳簿書類等の確実な資料を保存させることが必要)からすると、氏名等の法定の記載事項は真実の記載であることが当然に要求されているというべきであるから、その要件を具備した法定帳簿書類を保存していない場合には、仕入税額控除は適用されないと解される。(3)裁決の検討裁決の骨子は、法定帳簿書類の記載事項は真実の記載が必要とされているが、本件取引により記載された仕入れ先の「氏名又は名称」は真実の氏名等の記載とは認められないから、仕入税額控除は認められない、というものである。また、この裁決は仕入先の相手先が真実の氏名等を記載していないという状況がうかがわれるにも関わらず、身分証明書等による本人確認を怠り漫然と帳簿にその氏名を記載していることも真実の氏名等の記載とは認められない根拠の一つとしている。さらに、奇妙なことに、請求人はWeChatを使用して仕入取引を行っていたと認定し、かかる取引については取引が遮断される場合があり、その場合、仕入れた商品に欠陥がある場合に備えて、仕入先の真実の氏名等や住所を確認する必要があるにもかかわらず、その真実の氏名等の確認を怠っていたのは、記載された氏名等が真実のものとはいえないと説示している。かかる事態の発生は日用品であれば、ほとんど考えられないし、しかも、その事態による不都合は、請求人自身であって、真実の氏名等の記載の有無とは無関係である。このような低レベルな論旨を説示している裁決は、正鵠を射た判断による裁決を断念したと評価するほかはない。その要因は記載した氏名等が偽名であれば、課税仕入の事実が証明されているとしても、仕入税額控除は認められないというのが法の趣旨というのであれば、請求書等の記載事項として住所等を法定しなかった法益は何かを検証するのが裁決庁の責務である。その検討により判明するのは、真実の氏名等を記載するのが課税仕入れの必須の要件というのであれば、法律において本人確認制度を創設すべきこと、しかして、それが欠落している現制度の下では、相手方からの課税仕入の事実が確認できる場合には(法人税法では損金算入)、仕入税額控除を認めるという程度の記載事項であるというのが当該法制度の趣旨であるということの結論を導くことができる。しかるに、本裁決は、身分証明書により本人確認をすべきであるという消費税法に規定していない論外な論理を展開するが、かかる解釈を採用するのであれば、裁決はその提示を拒絶された場合の税額控除の是非について法定すべきであることは当然である。本裁決は、論理的判断の提示を捨象した一方通行の判断を示している。本件の根源的な問題は、消費税法の帳簿又は請求書等の書面の法定記載事項として、氏名等のみを法定し、肝心の「住所又は所在地」が法定の記載事項としていないことの合理的な法益が説明できない以上、課税仕入の事実が証明された場合(法人所得計算で損金算入の事実)、帳簿の記載事項の不備、請求書等の保存はないが、明確に相手方預金口座に振り込まれている事実が証明されている等の場合には仕入税額控除を認めるというのが、消費税法の帳簿等の記載事項の趣旨と解すべきである。すなわち、現行法の30条8項及び9項の各記載事項は一部に記載漏れや誤りがある課税仕入れの仕入税額控除は認められないという効力規定と解することは誤りであるということである。かかる不具合とその正当性を明らかにするために行った、請求人の原処分庁に対する求釈明事項を「請求人の主張」として掲載されたい旨を、裁決庁に対して書面で提出し御願いしたにもかかわらず、これを裁決書から意図的に捨象したことは裁決の固有の瑕疵であり許されるものではない。到底、第三者的機関としての権利救済機関とは言い難い所業という以外に言葉もない。国税不服審判所長に猛省を期待するものである。最後に本件裁決論旨と矛盾する課税実務の現実を簡潔に指摘しておく。法人税の経費の計上年度の誤りが、翌期の損金として更正された場合、その課税期間の課税仕入れとして仕入税額控除は認められていること、帳簿には、仕入先の請求書番号を記載するのみで、氏名等を記載していない場合又はその番号も氏名の記載もない課税仕入、さらに、課税仕入の商品等の記載がない場合についても、請求書等により仕入の事実が認められる場合には仕入税額控除が認められていること、筆者は講演料、原稿料等について、請求書を発行したことは殆ど記憶にないが、支払先に確認したところ、仕入税額控除が問題として指摘されたことはないとのことである。また、税理士等においても、その顧問料の収受は所定の銀行の預金口座に振り込まれるのが通常であるが、その場合、請求書等の発行の必要はなく、したがって、法定の請求書等の保存は一切なされていないが、その課税仕入れの税額控除が問題となったことはない。このことは、いわゆる納税者間の不平等な税務執行が行われているということの証明である。さらに。不整合な点は、課税仕入の事実を証明する最も必要な「領収書」が保存要件の書類からはずされていること、このことの説明は困難であろう。いわゆるかかる雑駁な記載事項の規定が、消費税制度の根幹である仕入税額控除の効力要件と解することはできないということの証左であるということができる。以上の検証により、消費税法30条8項及び9項の規定は、現実に課税仕入の事実が証明されている場合には、その法定の記載事項の不備という些細な形式的瑕疵をもって、タックス・オン・タックスを回避するための仕入税額控除を否認することは、納税者の租税負担能力を超えた消費税を課するという論外なものである。権利救済機関の国税不服審判所長は、このことに思いを致して審理判断すべきであったのである。それを期待していた請求人の望みが一蹴されたのが本件裁決であり、誠に、遺憾という以外に言葉もない。そして、偽名等の記載による仕入税額控除の問題点は、インボイス制度導入を35年間も放擲した国側の責任でもあることに留意すべきである。なお、現在、本件課税処分は訴訟提起され、筆者も補佐人として参加していることを附記しておく。(了)提供:税経システム研究所
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2026/01/23 経営・運営公益法人
新公益法人制度と会計(第6回)
新公益法人制度と会計について、前回は中期的収支均衡の全体の法令について記載させて頂きました。第6回では、引き続き中期的収支均衡の内容について解説させて頂きます。(1)認定法規則第16条の構成①通常の算定方法第16条では、当該事業年度における、公益目的事業に係る「収入額」と「費用額」の比較を行い、以下により、「年度剰余額」又は「年度欠損額」を算定します。通常の算定方法以外には、特例算定方法があり、公益目的事業の財源確保のために必要がある場合には自発的に50%を超えて繰入れることができるという方法です。☆当該事業年度の収支(剰余額/欠損額)の算定(認定規則第16条①②)(収入額≧費用額の場合)年度剰余額=収入額-費用額(収入額<費用額の場合)年度欠損額=費用額-収入額上記の場合、法人の判断で年度欠損額は0とすることができます。この任意規定の意味は、継続して単事業年度で収支が均衡している法人などで、欠損額の繰り越しを望まない場合に、残存欠損額の計算・管理の負担を軽減できるよう当該規定を設けられています。(ⅰ)「収入額」は、次に掲げる額の合計額となります。当該事業年度の損益計算書に計上すべき公益目的事業に係る経常収益(一般純資産に係るものに限ります。)の額当該事業年度の公益充実資金の取崩額(公益目的保有財産の取得・改良に充てた額を除きます。)当該事業年度の収益事業等から生じた収益(利益)(管理費のうち収益事業等に按分されるものを除きます。)の50%(収益事業等を行う公益法人に限ります。)(ⅱ)「費用額」は、次に掲げる額の合計額となります。当該事業年度の損益計算書に計上すべき公益目的事業に係る経常費用(一般純資産に係るものに限ります。)(公益充実資金の取崩し又は剰余金の解消策により取得した公益目的保有財産に係る減価償却費の額を除きます。)の額当該事業年度の公益充実資金の積立額上記の費用額に係る減価償却費は、公益目的保有財産に関し発生する費用が二重計上されないよう、公益充実資金の取崩し(積み立て時に費用計上)又は剰余金の解消策により取得した公益目的保有財産に係る減価償却費が含まれる場合には、当該額を費用から控除するものです。公益充実資金の取崩し等で取得した公益目的保有財産については、令和6年度会計基準に基づき「貸借対照表の注記(3)使途拘束資産(控除対象財産)の内訳と増減額及び残高」に公益充実資金の取崩し等を充てた額等を記載します(令和6年度会計基準に移行するまでの間は、定期提出書類別表C(2)「財産の使用状況」に当該情報を記載することとになります。)。以下、旧法による算定方法を確認のため列挙致します。【「収入-費用」の額の算定(旧ガイドラインⅠ5.(2)及び(3))】(2)収益事業等の利益額(注1)の50%を繰入れる場合①以下の合計額を収入とする。i損益計算書上の公益目的事業の会計に係る経常収益ii公益目的事業に係る特定費用準備資金(認定規則第18条)の当期取崩し額iii損益計算書上の収益事業等会計から公益目的事業会計への資産繰入れ額(実物資産を繰入れた場合は帳簿価額相当額(注2))(注3)(注1)収益事業等における利益から、管理費のうち収益事業等に按分される額を控除した額。(注2)収益事業等からの利益を実物資産で繰入れる場合には、繰入時の実物資産の帳簿価額に相当する額が収益事業等の資産から公益目的事業財産となり、同額を支出して、当該実物資産を取得するものと見なす。この場合の当該実物資産は公益目的保有財産となる(認定法第18条第5号)。(注3)法人が収益事業等を行っていない場合にはⅲは除かれる。②以下の合計額を費用とする。i損益計算書上の公益目的事業の会計に係る経常費用ii公益目的事業に係る特定費用準備資金の当期積立額③上記①と②の額を比較する。⇒【②が①を上回る部分の額が「収入-費用」の額】(3)収益事業等の利益額を50%を超えて繰入れる場合①収入として以下の合計額を算出する。i損益計算書上の公益目的事業の会計に係る経常収益ii公益目的事業に係る特定費用準備資金の当期取崩し額(注)iii公益目的保有財産の取得又は改良に充てるために保有する資金(認定規則第22条第3項)(以下「公益資産取得資金」)の当期取崩し額(注)iv公益目的保有財産の当期売却収入(帳簿価額+売却損益)(注)資金積み立て時に、収支相償の計算上、費用として算入した額の合計額。②費用として以下の合計額を算出する。i損益計算書上の(公益目的事業の会計に係る経常費用-公益目的保有財産に係る減価償却費)ii公益目的事業に係る特定費用準備資金の当期積立額(上限あり(注))iii公益資産取得資金の当期積立額(上限あり(注))iv公益目的保有財産の当期取得支出(注)「(各資金の積立限度額-前期末の当該資金の残高)/目的支出予定時までの残存年数」として計算される額。③(②-①)の額について収益事業等から資産を繰入れる(利益の100%を上限、実物資産を繰入れた場合は帳簿価額相当額(注))。(注)収益事業等からの利益を実物資産で繰入れる場合には、繰入時の実物資産の帳簿価額に相当する額が収益事業等の資産から公益目的事業財産となり、同額を支出して、当該実物資産を取得するものと見なす。この場合の当該実物資産は公益目的保有財産となる(認定法第18条第5号、認定規則第26条第7号)。⇒【②が①と③の合計額を上回る部分の額が「収入-費用」の額】次回も引き続き、上記の旧法の考え方を踏まえた上で、中期的収支均衡の過去の剰余額・欠損額との通算(認定規則第16条第3項及び第4項)や特例算定方法等についてご説明させて頂きます。提供:税経システム研究所
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