税務情報レポート
MJS税経システム研究所・税務システム研究会の顧問・客員研究員による租税を中心とした多彩な研究成果および最新の税制改正および制度や動向、判例研究等に関するリポートです。
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2025/06/11 相続・贈与税税制改正
相続時精算課税に係る基礎控除の創設と期限後申告における相続時精算課税の適用の可否
1相続時精算課税に係る基礎控除の創設令和5年度税制改正において、相続時精算課税について暦年課税とは別に110万円の基礎控除が創設され(相法21の11の2①、措法70の3の2①)、まず、この基礎控除額を控除した後に、従来の限度額2,500万円の特別控除額を控除することとされました。すでに、令和6年1月1日以後に贈与により取得した財産について適用されています。なお、同一年中に2人以上の特定贈与者からの贈与により財産を取得した場合の基礎控除額110万円は、特定贈与者ごとの贈与税の課税価格で按分することになります(相法21の11の2②)。また、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算される令和6年1月1日以後に贈与により取得した財産の価額は、基礎控除額を控除した後の残額とされているため(相法21の15①)、相続税の計算の際、基礎控除額部分は対象外となります。【国税庁資料】2相続時精算課税の申告及び届出の確認令和6年1月1日以後に贈与により財産を取得し、新たに相続時精算課税制度の適用を受けようとする受贈者で、この基礎控除後の課税価格がある場合には、贈与を受けた財産に係る申告書の提出期限までに、相続時精算課税選択届出書及び受贈者や特定贈与者の戸籍謄本や抄本など、一定の書類を申告書に添付して提出する必要があります。なお、基礎控除後の課税価格がない場合には、申告義務がないことから、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、相続時精算課税選択届出書、一定の書類を単独で提出しなければなりません(相法21の9②)。相続時精算課税選択届出書(令和6年分以降用)には、3欄に次のような記載欄があります。また、相続時精算課税選択届出書をその提出期限までに提出しなかった場合には、相続時精算課税の適用を受けることはできず、その場合における宥恕規定は設けられていないので注意が必要です(相基通21の9‐3)。3期限後申告における相続時精算課税の適用の可否国税庁は昨年11月27日に、この改正に関係する「質疑応答事例」を3題追加しました。その中に、「相続時精算課税選択届出書を単独で提出した後に贈与税の期限後申告書を提出する場合の相続時精算課税の適用の可否(令和6年1月1日以後の贈与の場合)」というものがあります。照会内容は、期限内に選択届出書は提出しているが、当初は贈与を受けた株式の価額を100万円、つまり相続時精算課税に係る基礎控除額以下と認識していたため、贈与税の申告書は提出していなかったというケースについてです。その後、その株式の価額について評価誤りがあり、正しくは500万円であったことが判明し、基礎控除額を超えたために期限後申告書を提出することとなった場合、相続時精算課税を適用して贈与税額を計算できるかというものです。これに対し、選択届出書を期限内に提出していることから、期限後申告であっても相続時精算課税の適用を受けることは可能ですが、期限内に贈与税の申告書の提出がなかったために、限度額2,500万円の特別控除の適用は受けられないという回答がなされています。相続税法基本通達21の9-3(注)2では、「相続時精算課税選択届出書のみをその提出期限までに提出した場合には、相続時精算課税の適用を受けることができることから、例えば、贈与により財産を取得した者が当該規定に基づいてその提出期限までに相続時精算課税選択届出書のみを提出していた場合において、当該贈与を受けた年分に係る贈与税についての期限後申告書を提出することとなった場合でも、引き続き相続時精算課税の適用を受けることができることに留意する。」とされています。一方で特別控除については、期限内申告書に控除を受ける金額、基礎控除額、前年以前にこの特別控除を適用し控除した金額等の記載がある場合に限り適用されることとなっています(相法21の12②、措規12)。結果として、期限後申告では500万円から基礎控除額110万円を控除した390万円の20%、78万円を納税することになります。提供:税経システム研究所
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2025/06/04 消費税
外国人旅行者向け消費税免税制度の見直し① 「リファンド方式」への改正後の免税店の会計処理
1.「リファンド方式」への改正(1)改正の趣旨外国人旅行者向け消費税免税制度については、不正利用を排除し、免税店が不正の排除のために負担を負うことのない制度とするため、令和8年11月1日以後の免税対象物品の譲渡については、出国時に持出しが確認された場合に免税販売が成立する制度に見直されます。(2)改正内容免税店が、外国人旅行者に対して免税対象物品を譲渡した場合で、その外国人旅行者がその購入日から90日以内に出港地の税関長による確認を受けたときは、その確認をした旨の情報(以下「税関確認情報」といいます。)を免税店において保存することを要件として、その免税対象物品の譲渡について、消費税が免除されます。この改正に伴い、実務上、消費税等相当額を含めた価格で販売し、出国時に持出しが確認された場合に免税店から外国人旅行者に対し消費税等相当額を返金する「リファンド方式」となります。図表1「リファンド方式」のイメージ出典:外国人旅行者向け免税制度の見直し(案)について(財務省・国税庁・経済産業省・観光庁)2025年1月図表2「90日以内の税関確認」のイメージ出典:外国人旅行者向け免税制度の見直し(案)について(財務省・国税庁・経済産業省・観光庁)2025年1月2.免税店の消費税に関する会計処理(1)課税売上げから免税売上げへ振替上記1の「リファンド方式」による免税店の消費税に関する会計処理は、販売時に課税売上げを計上し、税関確認情報を取得後、次のいずれかの方法により、免税売上げに振り替えます。取得の都度、当初の課税売上げを特定して、免税売上げに振り替える方法(個別振替方式)月次等の一定のタイミングで一括して免税売上げに振り替える方法(一括振替方式)なお、外国人旅行者が税関で持出し確認を行わないなどにより、税関確認情報を保存できない場合には、振替処理を行わず、当初のまま課税売上げとなります。(2)設例による仕訳例【設例】A免税店では、食料品以外の商品を販売しています。次のそれぞれの場合の仕訳は、どのようになりますか。課税売上げで販売(税抜経理の場合)外国人旅行者に対し、商品を11,000円(うち消費税等相当額1,000円)で販売しました。外国人旅行者に消費税等相当額が返金された場合(個別振替方式の場合)上記①の取引について、税関確認情報を取得し、保存しました。消費税等相当額1,000円を返金しました。外国人旅行者に消費税等相当額が返金されなかった場合上記①の取引について、免税販売の要件を満たしていますが、外国人旅行者の都合等で返金できないことになり、当事者間の契約により返金不要となりました。上記①の取引について、外国人旅行者が税関で持出し確認を行わないなどにより、税関確認情報を保存できませんでした。【仕訳例】提供:税経システム研究所
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2025/05/28 相続・贈与税
相続開始前7年以内に贈与があった場合における相続税の課税価格への加算額及び贈与税額の控除について
1暦年課税制度における相続前贈与の加算期間の延長相続又は遺贈により財産を取得した者が、その相続開始前7年以内(改正前:3年以内)にその相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、その贈与により取得した財産(以下「加算対象贈与財産」とします)の価額(加算対象贈与財産のうち、その相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産にあっては、その財産の価額の合計額から100万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算することになりました(相法19)。なお、上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用されています。2令和10年に相続が開始した場合における生前贈与財産に対する取扱いの具体例長女は、父及び母から贈与により下表のように財産を取得しましたが、令和10年10月10日に父が死亡しました。下表の贈与財産について、父の相続税の課税価格に加算される金額及び相続税額から控除される暦年課税分の贈与税額控除の金額はどのようになるでしょうか。なお、長女は下表の贈与財産について、相続時精算課税を選択していません。3加算対象贈与財産は相続税の課税価格に加算相続又は遺贈により財産を取得した者(相続人等)が加算対象期間内に被相続人から暦年課税に係る贈与により財産を取得している場合には、その贈与により取得した加算対象贈与財産の価額は相続税の課税価格に加算されます(相法19①)。なお、加算対象期間は、令和5年度税制改正により、次のように見直しされました(相法19、改正法附則19①~③)。4相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産に対する100万円控除令和5年度税制改正により、加算対象贈与財産のうち相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産は、総額100万円まで相続税の課税価格に加算されないことになりました(相法19①)。相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産の価額の合計額が100万円以下である場合には、その財産を贈与した被相続人の死亡に係る相続税の課税価格に加算される財産の価額はありません(零になります)。この100万円を上限とした控除は、贈与により財産を取得した年分ごとに控除するものでなく、相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産の価額の合計額から100万円を上限に控除するものです。5「課された贈与税」は相続税額から控除財産を贈与により取得した年中において、被相続人(父)以外の贈与者(母)から暦年課税に係る贈与により財産を取得しているためにその年分に贈与税の課税が生じているときには、被相続人(父)から贈与により取得した財産に課された贈与税の部分(暦年課税分の贈与税額控除の金額)は、相続税法第19条第1項に規定する「課せられた贈与税」に該当し、被相続人(父)の死亡に係る相続税額から控除されます。上記の場合における暦年課税分の贈与税額控除の金額は、相続人(長女)に課されたその年分の暦年課税分の贈与税額に、相続人(長女)に係るその年分の暦年課税に係る贈与税の課税価格のうち、相続人(長女)が被相続人(父)から取得した加算対象贈与財産の価額が占める割合を乗じて計算した金額になります(相令4①、措令40の4の5②)。なお、相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産については、100万円控除はありません。6具体的な計算過程父の死亡に係る相続税の課税価格に加算される金額及び暦年課税分の贈与税額控除の金額は、それぞれ次のようになります。(1)父の死亡に係る相続税の課税価格に加算される金額(加算対象贈与財産の価額)相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産の価額(注1)加算対象期間のうち相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産に係る期間に取得した財産(イ及びハ)が100万円控除の対象になります。(注2)相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産の価額の合計額が100万円以下のため、相続税の課税価格に加算される金額は0円になります。相続開始前3年以内に取得した財産の価額110万円(ホの価額)合計額(加算対象贈与財産の価額)0円(①の価額)+110万円(②の価額)=110万円(2)相続税額から控除される暦年課税分の贈与税額控除の金額令和6年分の贈与令和7年分の贈与(注3)相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産(イ及びハ)については、100万円控除をする前の価額に基づき暦年課税分の贈与税額控除の金額を計算することになります。暦年課税分の贈与税額控除の金額の合計額0.9万円(①の金額)+10.3万円(②の金額)=11.2万円提供:税経システム研究所
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2025/05/21 その他の税・法令等
令和7年度税制改正での電子帳簿保存法 新たな加算税の軽減措置の追加
1.令和7年度税制改正で電子取引に係る改正が入りました電子帳簿保存法では、従来、スキャナ保存と電子取引の保存において、電磁的記録に記録された事項に関し、隠蔽し、又は仮装された事実に基づいた申告等によって重加算税が課せられる場合においては、その電磁的に記録された事項に関して生じた申告漏れ等に課される重加算税の割合を10%加重する措置がありました(電帳法8⑤)。令和7年度税制改正では、この規定に対して、加重措置の対象から除外される場合が設けられました。(1)改正の内容加重措置の対象から除外されるのは、その保存が特定電磁的記録であり、その記録が次に掲げる要件を満たしている場合となります(改正電帳法8⑤)。その電子取引の取引情報に係る電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った事実及び内容を確認することができる特定電子計算機処理システム(訂正又は削除を行うことができないものを含む。)を使用してその電磁的記録の授受及び保存を行うこと。その電子取引の取引情報に係る電磁的記録の記録事項(金額に係るものに限る。)を訂正又は削除を行った上で国税関係帳簿に係る電磁的記録等に記録した場合には、その訂正又は削除を行った事実及び内容を確認することができる特定電子計算機処理システム(訂正又は削除を行った上で国税関係帳簿に係る電磁的記録等に記録することができないものを含む。)を使用してその電磁的記録の授受及び保存を行うこと。その電子取引の取引情報(請求書・納品書等の重要書類に通常記載される事項に限る。)に係る電磁的記録の記録事項とその取引情報に関連する国税関係帳簿に係る電磁的記録等の記録事項との間において、相互にその関連性を確認することができるようにしておくこと。上記①及び②の特定電子計算機処理システムを使用してその電子取引の取引情報に係る電磁的記録の授受及び保存を行ったことを確認することができるようにしておくこと。(2)特定電磁的記録と特定電子計算機処理システム上記の中で、特定電磁的記録と特定電子計算機処理システムという新しい概念が登場します。特定電磁的記録とは、次に掲げる電磁的記録とされています。保存要件に従って保存が行われている電子取引の取引情報に係る電磁的記録災害その他やむを得ない事情により、保存要件に従って電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存をすることができなかったことを証明した場合又は納税地等の所轄税務署長が保存要件に従ってその電磁的記録の保存をすることができなかったことについて相当の理由があると認めた一定の場合に、保存要件にかかわらず保存が行われているその電磁的記録特定電子計算機処理システムとは、国税庁長官の定める基準に適合する電子計算機処理システムとされています。特定電磁的記録は、真実性、検索性、見読可能性、システム書類の備付けの電子取引データの保存要件を満たしているシステムで作成・保存されている電子データということになるかと思われます。特定電子計算機処理システムに関する国税庁長官が定める基準とは、次に掲げるいずれかの電磁的記録を本稿1.(1)に掲げた要件に従って行うことができる機能を有していることであるとされています。仕入れ明細書または適確請求書に記載すべき事項に係る電磁的記録の仕様としてデジタル庁が管理するものに従って提供された電子取引の取引情報に係る電磁的記録金融機関等のいずれかに預金口座又は貯金口座を開設している預金者又は貯金者の委託を受けて、金融機関等が行うこれらの口座に係る資金を移動させる為替取引の取引情報に係る電磁的記録これは、デジタル庁が管理する仕様に従って送受信されたデジタルインボイスや預貯金口座における決済データのいずれかの電子取引について、要件に従って保存ができるシステムのことをいうことになります。2.実務的な対応今般の改正は、請求や決済の取引についてデジタルデータを用いて事務負担の軽減や適切な保存が実現するような適切な電子取引の普及を促進することを意図しているものと考えられます。したがって、実務的には、生産性の向上を目的に取引情報を電子的に送受信するシステムを導入し、それが前述1.(1)で掲げた4つの要件をクリアするようなシステムとなっているということが課題になると考えられます。1つ目の訂正又は削除を行った事実及び内容を確認することができる特定電子計算機処理システムを使用するというのは、納品書、請求書、領収書などの電磁的記録を特定電子計算機で送受信しているということになります。その電磁的記録の金額に係る記録事項を訂正または削除を行ったうえで国税関係帳簿に係る電磁的記録等に記録した場合ということは、例えば、受領した請求書データに誤りがあり、訂正後の請求書データを再度授受して、当初のデータは削除したうえで、国税関係帳簿に係るシステムに流し込むといった処理が2つ目の要件が想定しているところになります。そして3つ目の要件では、帳簿との相互関連性が確保されていることを求めています。したがって、電子取引での電子データの授受から販売管理システム、購買管理システムもしくは財務会計システムへ取り込んだ処理全般を通して、訂正削除の履歴が確認できる(あるいは訂正・削除ができない仕組み)ことが求められ、電子帳簿システム、電子取引のシステムの双方から関連性が確保されていることが求められます。そして、4つ目の要件で、そうした授受及び保存を実施したことが確認できることが求められているということになります。新設された制度に対応した販売管理・会計ソフト等のイメージ出典:国税庁「請求書等を帳簿に自動連係する仕組みに対応した制度が新設されました」よりデジタルインボイスのインフラが整備されつつある社会状況に対応して、好ましい電子取引から電子帳簿への仕組みの構築というものを推奨する改正といえるのではないでしょうか。なお、今回の改正は、令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する所得税及び法人税について適用されます。提供:税経システム研究所
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2025/05/14 相続・贈与税
相続税の重要テーマポイント解説26(暦年課税と精算課税がある場合の相続税の課税価格の加算)
QA及びBは相続開始前7年以内に300万円を被相続人から贈与を受け、暦年課税で申告した。3年後1,000万円の贈与を受けたので相続時精算課税で申告した。なお、Aは相続財産を取得したが、Bは取得していない。相続財産の加算はどうすればいいか。【ポイント】被相続人から生前に贈与を受け、受贈金額が110万円を超えた場合、暦年課税の贈与税の申告と納税をします。贈与を受けた財産の価額をとめどもなく加算することは、実務的に大変困難です。そこで、相続開始前7年以内(以下「加算対象期間」といいます。)の贈与財産の価額(以下「加算対象贈与財産」といいます。)及び相続時精算課税の適用を受けた価額を加算することにしています。加算するのは、贈与を受けた時の価額です。【解説】1原則加算対象財産の価額は、暦年課税で申告している場合、相続財産の取得の有無に応じて加算の態様が異なります。適用の概要は次の通りです。課税方式相続財産の取得の有無課税価格に加算の有無2024年以後相法暦年課税有加算する相続開始前3年を超え前7年以内については、合計額から100万円を控除する19①無加算しない-相続時精算課税有加算する各年分の贈与について110万円の基礎控除がある21の15①無加算する21の16①2相続時精算課税適用者が、相続開始前7年以内の贈与財産がある場合(1)加算対象期間内の贈与財産があり、相続財産を取得している場合相続時精算課税適用者であっても、適用を受ける以前に贈与を受けた財産が加算対象期間内に取得した財産に該当する場合は、相続財産に加算します。相続開始前3年を超え前7年以内の期間に贈与を受けた金額の合計額から100万円を控除した金額を加算します。贈与税の申告の有無には関係がありません。基礎控除以下であっても加算となることに留意します(相基通19-1)。(2)加算対象期間内の贈与財産があり、相続財産を取得していない場合相続開始前7年以内の贈与加算は、相続又は遺贈により相続財産を取得した者に適用されます(相法19)。相続時精算課税の適用を受けた財産は、相続税の課税価格に加算する若しくは相続等により取得したものとみなされることから、相続時精算課税適用者が、適用を受ける前に贈与により取得し、加算対象期間内に該当する財産は、特定贈与者の相続税の課税価格に加算する必要があります。3相続時精算課税の適用を受けた財産が基礎控除以下の場合相続時精算課税適用者が特定贈与者からの贈与により取得した相続時精算課税の適用を受ける財産が、相続税法第21条の16第3項第2号の規定の適用により相続税の課税価格に算入する金額がない場合(基礎控除110万円を適用した場合)においても、加算対象期間内に贈与により取得した財産があるときは、加算対象期間の贈与財産を加算します(相基通19-11)。この取扱いは、相続時精算課税を選択した場合、その後の贈与は全て相続時精算課税となり、受贈財産価額が110万円以下で特定贈与者の相続財産に加算する金額がなくても、すべて相続時精算課税の適用を受けることとなります。そのため相続時精算課税適用前の加算対象期間内の贈与財産は相続税の課税価格に加算することになります。4事例の回答相続時精算課税適用者は特定贈与者の相続財産の取得の有無にかかわらず、相続財産を取得したとされます。相続開始前7年以内の暦年課税適用財産についても加算の対象となります。提供:税経システム研究所
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2025/05/07 法人税
為替予約の取扱い(法人税)
1.概要ここのところ円安の状況が続いていますが、為替相場の変動は輸出入を行う企業を中心に企業経営において重要な問題となります。為替変動のリスクヘッジのために、「為替予約」を検討する企業も増えてきているように思われます。今回は法人税における「為替予約」の取扱いについてみていきたいと思います。外貨で物を売り買いするような場合、売上・仕入などの収益・費用科目については取引時に金額が確定しますが、売掛金・買掛金等の資産・負債科目は取引から入金・支払いまでの間に為替変動の影響を受ける場合があります。このような為替変動リスクをヘッジする手段として「為替予約」があります。為替予約は予め金融機関との間で決済時の為替レートを取り決めておく方法です。予約実行時点で取引採算が確定できるというメリットがありますが、一度予約すると原則、取消ができず期日に受け渡しの義務が生じる等留意点もございます。2.為替予約の税務上の取扱い(1)外貨建取引の円換算の原則内国法人が外貨建取引を行った場合の円換算額は、外貨建取引を行った時における外国為替の売買相場により換算した金額とされています。また期末に保有する外貨建債権・債務については期末時換算法か発生時換算法により評価しますが、売掛金や買掛金等の短期外貨建債権・債務については、法定換算方法が期末時換算法とされているため、実務上、期末時換算法で評価している会社が多いと思います。(法法61条の8①、法法61条の9①、②)短期外貨建債権外国通貨を受け取る期限が当該事業年度終了の日の翌日から1年以内に到来するものをいいます。短期外貨建債務外国通貨を支払う期限が当該事業年度終了の日の翌日から1年以内に到来するものをいいます。発生時換算法外貨建資産等の取得又は発生の基因となった外貨建取引の円換算に用いた外国為替の売買相場により換算した金額をもって期末時の円換算額とする方法をいいます。期末時換算法期末時の外国為替の売買相場により換算した円換算額をもって期末時の円換算額とする方法をいいます。(2)為替予約等の先物外国為替契約等を締結している場合の円換算内国法人が為替予約等の先物外国為替契約等により外貨建取引によって取得等した外貨建資産等の円換算額を確定させた場合において、先物外国為替契約等の締結の日においてその旨を帳簿書類に記載したときは、その外貨建資産負債の円換算額はその確定した換算額によります。(法法61条の8②)為替予約等を行った場合の売掛金・買掛金などの外貨建資産負債は、為替予約により確定した円換算額で評価することになります。(3)為替予約差額の配分について(原則)法人が期末に有する外貨建資産等につき上記(2)の適用を受けたときは、先物外国為替契約等の締結の日(その日が外貨建資産等の取得又は発生の基因となった外貨建取引を行った日前である場合には、外貨建取引を行った日)の属する事業年度から外貨建資産等の決済等の日の属する事業年度までの各事業年度に為替予約差額を配分し、益金の額又は損金の額に算入することになります(法法61の10①、法令122の9)。期間配分は日数按分によるほか、月数按分によることも可能です(1月に満たない端数は1月とする)期末に為替予約等をしている外貨建資産等を有している場合には、為替予約差額について期間配分を行うことになります。外貨建取引後に為替予約をした場合と外貨建取引前に為替予約をしている場合で処理に違いがありますので、下記で見ていきたいと思います。(処理方法については様々な会計処理が想定されますので、下記はその中での1つの例示となることや説明の便宜上省略している部分もありますのでご留意下さい)為替予約差額外貨建資産等の金額を先物外国為替契約等により確定させた円換算額と、外貨建資産等の金額を外貨建資産等の取得又は発生の基因となった外貨建取引を行った時の外国為替の売買相場により換算した金額との差額をいう。①外貨建取引後に為替予約する場合イ)令和7年3月1日:商品仕入(50,000ドル)直物為替相場:1ドル=150円借方金額貸方金額仕入7,500,000円買掛金7,500,000円ロ)令和7年3月10日:為替予約契約締結直物為替相場:1ドル=152円先物為替相場(予約レート):1ドル=155円直々差額(取引日から予約締結日までの直物為替相場の差額)は予約契約締結事業年度に帰属(152円-150円)×50,000ドル=100,000円借方金額貸方金額為替差損100,000円買掛金100,000円先物為替相場(予約レート)で買掛金の円換算額を確定させる(155円-152円)×50,000ドル=150,000円借方金額貸方金額前払費用150,000円買掛金150,000円ハ)令和7年3月31日(決算日)為替予約差額(直先差額)の配分を行う(155円-152円)×50,000ドル×1ヶ月/2ヶ月=75,000円※月数按分を採用借方金額貸方金額為替差損75,000円前払費用75,000円ニ)令和7年4月30日:買掛金支払いと残りの為替予約差額の配分買掛金の支払い(予約レートで確定)借方金額貸方金額買掛金7,750,000円現金預金7,750,000円残りの為替予約差額(直先差額)の配分を行う(155円-152円)×50,000ドル-75,000円=75,000円借方金額貸方金額為替差損75,000円前払費用75,000円②外貨建取引前に為替予約する場合先物為替相場(予約レート):1ドル=155円を既に締結済みイ)令和7年3月1日:商品仕入(50,000ドル)為替:1ドル=150円借方金額貸方金額仕入7,500,000円買掛金7,500,000円取引前予約の場合は仕入時に予約レートで計上することも可能である(法基通13の2-1-4)先物為替相場(予約レート)で買掛金の円換算額を確定させる(155円-150円)×50,000ドル=250,000円借方金額貸方金額前払費用250,000円買掛金250,000円ロ)令和7年3月31日(決算日)為替予約差額の配分(155円-150円)×50,000ドル×1ヶ月/2ヶ月=125,000円※月数按分を採用借方金額貸方金額為替差損125,000円前払費用125,000円ハ)令和7年4月30日:買掛金支払いと残りの為替予約差額の配分買掛金の支払い(予約レートで確定)借方金額貸方金額買掛金7,750,000円現金預金7,750,000円残りの為替予約差額(直先差額)の配分を行う(155円-150円)×50,000ドル-125,000=125,000円借方金額貸方金額為替差損125,000円前払費用125,000円(4)短期外貨建資産等に係る為替予約差額の配分方法の特例について外貨建資産等が、短期外貨建資産等である場合には、為替予約差額を一括してその事業年度に係る益金の額又は損金の額に算入することができます。(法法61の10③)選択の方法は、外国通貨の種類を異にする短期外貨建資産等ごとに選定することができます。手続きこの一括計上を選択する場合には、選択しようとする事業年度の確定申告書の提出期限までに、外国通貨の種類を異にする短期外貨建資産等ごとに、書面により納税地の所轄税務署長に届出が必要となります。変更手続き変更をする場合には、変更する事業年度開始の日の前日までに納税地の所轄税務署長に変更承認申請書を提出し、その承認を受ける必要があります。提供:税経システム研究所
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2025/04/30 法人税事業承継
組織再編税制(会社分割)を利用した事業承継(2)
前回(2025年1月15日掲載)では、組織再編税制が個人や中小企業の事業承継にも利用できる制度であることの例として「相続が生じる前」に会社分割の事例を紹介し、その際、相続後においても会社分割により同様のことが可能であることを述べました。そこで、今回は「『相続後』の会社分割と株式譲渡による円滑な事業承継」が可能であることを事例(注1)を用いて確認したいと思います。(1)事例の概要X社は、もともと創業者甲の100%出資により設立された株式会社ですが、甲の死亡(相続)により甲の子供である乙と丙がそれぞれX社株式の50%ずつを承継しました。X社において乙と丙はそれぞれ異なる事業の経営を行っています。また、当社全体の経営方針等を巡って乙と丙で対立しています。そこで、乙と丙が互いに独立して事業を進めるために、X社を2つに分割して乙がX社を100%保有し、丙が新会社を100%保有する形態にすることを考えています。まず、X社は、新設分割(分割型分割)を行って新会社を設立し、新会社株式を直ちに乙と丙にそれぞれに交付します。そして、乙は交付を受けた新会社株式の全部を丙に譲渡し、丙は保有するX社株式の全部を乙に譲渡します。その結果、乙はX社株式の100%を保有し、丙は新会社株式の100%保有することとなります。(2)X社の課税関係イ適格要件分割が適格分割となる場合とは、①完全支配関係の場合、②支配関係の場合、③共同事業を行う場合、④事業を独立して行う場合(分割型分割の場合のみ)の4つの類型に分かれます。この事例の場合、乙と丙の兄弟で100%保有していますので、「①完全支配関係の場合」の要件に該当するか否かをまず検討することになり、この場合の適格要件は、①金銭等不交付要件と②完全支配関係継続要件の2つになります(法人税法2条12号の11イ、法人税法施行令4条の3第6項他)。①金銭等不交付要件金銭等不交付要件とは、分割対価資産として分割承継法人又は分割承継親法人(注2)のうちいずれか一の法人の株式以外の資産が交付されないこと(株式が交付される分割型分割にあっては、その株式が分割法人の発行済株式(自己株式を除きます。)の総数のうちに占める分割法人の各株主の有する分割法人の株式の数の割合に応じて交付されるもの(按分型の分割型分割)に限ります。)をいいます(法人税法2条12号の11、法人税法施行令4条の3第5項)。この事例の場合、新設分割において新会社の株式のみが分割対価資産としていったんⅩ社に交付され、それが直ちにⅩ社の株主である乙及び丙に全部交付されます。分割対価資産として分割承継法人(新会社)の株式以外の資産は交付されず、分割承継法人(新会社)の株式は、分割法人(Ⅹ社)の100%株主である乙及び丙に全部交付されることで按分型の分割型分割に該当します。したがって、金銭等不交付要件を満たすことになります。②完全支配関係継続要件単独新設分割である分割型分割に該当するこの事例の場合、その分割後に分割法人(Ⅹ社)と分割承継法人(新会社)との間に同一の者(乙及び丙)(注3)による完全支配関係が生ずることになりますが、完全支配関係の継続が見込まれることが求められるのは、乙及び丙と分割承継法人(新会社)との間の完全支配関係となります(注4)。この事例の場合、乙は、交付を受けた分割承継法人(新会社)の株式の全部を丙に譲渡して分割承継法人(新会社)の株式を保有しなくなりますが、同一の者の中での譲渡であり、乙及び丙という同一の者による分割承継法人(新会社)の完全支配関係には影響を及ぼしません。丙は、乙から譲渡を受けた分を含めて分割承継法人(新会社)の株式の100%を保有し続ける見込みですから、同一の者(乙及び丙)と分割承継法人(新会社)との間の完全支配関係の継続が見込まれるため、完全支配関係継続要件を満たすことになります。ロ事例の適格性この分割は、金銭等不交付要件及び完全支配関係継続要件を満たしますので、適格分割に該当することになります。ハ資産及び負債の移転価額適格分割により、資産及び負債を移転した場合には、帳簿価額による引継ぎをしたものとして所得の計算をすることとされています(法人税法62条の2第2項)。したがって、分割に係る資産及び負債の移転に関する譲渡損益は生じません。移転するこれらの含み損益は、新会社においてその譲渡等が行われたときに新会社において課税されます。(3)個人株主(親族)の課税関係イ分割後の株式の取得価額分割型分割により分割承継法人の株式のみを取得した場合、旧株の従前の取得価額のうち純資産移転割合(注5)を乗じて計算した部分の金額をその分割承継法人の株式に引き継ぐこととされ(所得税法施行令113条1項)、分割型分割後の旧株の取得価額は、旧株の従前の取得価額のうち、純資産移転割合を乗じて計算した部分以外の部分の金額を付け替えることとされています(同令113条3項)。ロ分割後の株式の譲渡の課税関係乙が行う丙に対する新会社株式の譲渡、丙が行う乙に対する貴社株式の譲渡は、いずれも一般株式等の譲渡として申告分離課税20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)によりが行われることとなります(措法37の10①、復興財源確保法13、地法附則35の2①⑤)。(4)まとめこの事例の場合には、法人税の課税は生じることはなく、乙と丙との株式の譲渡に関する課税(申告分離課税、上記(2)ロ)が生じることになります。なお、消費税等についても非課税や軽減措置が認められています(注6)。前回及び今回取り上げたように、いわゆる「事業承継税制」以外の税制(制度、手法)を用いることで、円滑な事業承継が可能になるのではないかと考えています。<注釈>この事例も、平成27年10月21日開催の九州北部税理士会「事業承継のための新たな手法」で解説した事例の一つで、その後もいくつかの税理士会で内容等を修正等して解説しており、直近では昨年5月に東京税理士会第7回会員研修会でも取り上げています。書籍としては、本職事務所客員税理士の小松誠志氏が『事例検討法人税の視点からみた事業承継・M&Aの実務ポイント』(大蔵財務協会、令和3年)等に取りまとめています。基本的に分割の直前に分割承継法人と分割承継法人以外の法人との間にその法人による完全支配関係(「直前完全支配関係」といいます。)があり、かつ、分割後に分割承継法人とその法人との間にその法人による完全支配関係が継続することが見込まれている場合におけるその直前完全支配関係がある法人をいいます。一の者が個人の場合には、その者と親族等の特殊の関係のある個人を含むこととされています(法人税法施行令4条1項、4条の2第2項)。乙と丙は兄弟(親族)の間柄ですので、乙と丙で同一の者と判定されます。乙及び丙と分割法人(X社)との間の完全支配関係が継続することが見込まれているとしても適格性に影響はありません。仮に分割後に分割法人(X社)株式を第三者に譲渡することが見込まれている(乙及び丙と分割法人(X社)との間の完全支配関係が継続することが見込まれていない)としても、この事例の場合の適格性には影響はありません。純資産移転割合は、原則として、「分割型分割の直前の移転資産の簿価純資産価額」の「分割法人の分割型分割の日の属する事業年度の前事業年度の簿価純資産価額」に占める割合をいいます(所得税法施行令61条2項2号)。消費税は、法人税法上の適格又は非適格に係わらず、分割が合併の場合と同様に権利義務の包括承継であることから資産の譲渡等に該当せず、不課税取引とされています(『平成13年改正税法のすべて』(国税庁・511、512頁)、末安直貴『回答実例消費税質疑応答事例集』18頁(大蔵財務協会、令和3年)。登録免許税は、一定の軽減はあるものの課税され(登録免許税法別表1二十四(一)ト、同表一(二)イ・ハ、租税特別措置法80条1項3号、同条1項6号)、不動産取得税は、一定の形式移転と認められるものは非課税とされています(地方税法73条の7第2号、同法施行令37条の14)。提供:税経システム研究所
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2025/04/23 所得税法人税医療業務
クリニックの窓口収入管理方法
1.医療機関の収入医療機関の収入には患者から徴収した収入レセプト(診療報酬明細書)による社会保険診療報酬支払基金及び国民健康保険連合会への保険診療報酬の請求収入予防接種や健診等の実施による自治体や医師会から振り込まれる自由診療収入などがあります。これらの収入のうち②や③の収入は振込みによりますから収入の把握においては特段難しいことはありませんが、①の患者から徴収した収入の管理が医療機関においては(会計事務所においてはと言い換えることができます)一番難しい問題です。なぜ難しいのか、それは徴収した金額には保険診療と保険外収入とがあり、保険診療は消費税が非課税(事業税においても非課税)という扱いのため、区分して経理処理しておかないと消費税や事業税の計算ができない最近では患者の支払手段がPayPayなどによる電子決済、クレジットによる支払、それからオンライン診療においてはシステム会社を通してのクレジット決済、とキャッシュレス決済が多くなっているということがあげられます。特に②のキャッシュレス決済による窓口における収入をどのように管理・集計するかが、医療機関の経理事務を煩雑にしてきています。2.現場での作業診療報酬の領収書は、レセプトコンピュータからプリントしたものを患者に渡していますが、そこには現金なのかキャッシュレス支払なのかの記載はありません。そこで医療機関によっては余白に「クレジット決済」などのゴム印を押して患者に渡しています。更に、医療機関側では集計を管理するために領収証の控えの余白に「クレジット」や「PayPay」や「オンライン診療」などのゴム印を使い、決済手段ごとに領収証控えをまとめ、決済手段ごとに1日の集計をしています。3.会計事務所側の問題会計事務所においても、現金での収入はいくらだったのか、キャッシュレス決済による収入はいくらだったのかを把握しなければなりません。上述したように、保険診療収入は消費税や事業税の計算において非課税扱いになっているため、キャッシュレス決済による収入についても保険診療はいくらか保険以外の診療はいくらだったのかを把握する必要があります。また、クレジットやPayPayによる決済の場合手数料を引かれて振込まれ、オンライン診療にいたってはシステム会社が利用料を差引きます。また医療機関によって金額は異なりますが患者からオンライン診療利用料(保険診療以外の収入)を徴収しています。これらの金額を処理しないと、正確な収入金額が計算されないことになってしまいます。社会においてキャッシュレス決済が普及していっているのに、医療機関の事務処理はかえって地味な作業を強いられています。4.窓口における収入管理表の作成医療機関側では、窓口の収入を集計管理するためにエクセルで日計表や月計表を作成しています。基本のフォームは、「保険診療」と「保険外の収入」とを区分して集計できるようにしていますが、以前のように決済手段が現金だけならば、フォームも単純です。しかし、決済手段の多様化により、決済手段ごとに保険診療と保険外の収入の区分を設ける必要が生じました。保険診療も消費税や事業税の課税対象とされていれば、このような区分など必要ないのですが、税額計算上、区分を設けた管理表を作成せざるを得ないのです。参考までに、管理表フォームを最後に示してあります。5.日本医師会ORCA(オルカ)管理機構によるキャッシュレスサービス日本医師会ORCA(オルカ)管理機構は、医療機関のIT化を促進するため種々のサービスを提供していますが、そのうちの1つにクレジット決済サービスがあります。クレジット決済の他に電子決済にも対応(日本医師会会員限定)しています。窓口収入管理表の項目を1つ減らすことができるかもしれません。6.収入管理表の自動化はできないものかレセプトコンピュータやクレジット等の決済端末機から窓口の収入管理表へのデータ転送はできないものか、更には収入管理表のデータを会計システム(入力システム)に連動させるようなソフトはできないものか、おそらく多くの会計事務所が医療機関の処理実務をやりながら思っているのではないでしょうか。そのくらい医療機関における事務のIT化は遅れています。医療技術においてはあれほどIT化が進んでいるのにです。医療機関の事務においても、作業効率化のためにぜひ実現してもらいたいものです。7.追加情報:保険診療決定通知書のペーパーレス化昨年7月より、社会保険診療報酬支払基金(支払基金)及び国民健康保険連合会(国保連合会)からの診療報酬決定通知書が、これまでの紙媒体による郵送から、レセプトコンピュータへの配信通知に変更されました(プリントしなければ入手できなくなった)。顧問先に医療機関がある会計事務所にとっては知っておきたい知識です。なお、支払基金からの診療報酬額について、個人開業医の場合には源泉徴収税額が徴収されています。その源泉徴収税額の計算方法は(診療報酬決定額-200,000)×0.1021=源泉徴収税額です。この算式も知っておきたい知識です。ちなみに、上記の算式から、支払基金からの決定通知書が手元にない場合に報酬決定額を把握するための算式を求めることができます。報酬決定額をXとするととなります。そして源泉徴収税額はX-振込額で求めることができます。なぜ支払基金からの診療報酬について源泉徴収され、国保連合会からの診療報酬については源泉徴収されないのか、換言すれば、所得税法において「報酬・料金等の支払いを受ける者が個人の場合の源泉徴収の対象となる範囲」に「社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬」だけが該当しているのはなぜなのか、ということについては、おそらく国保連合会は国民健康保険法に基づき会員である保険者(都道府県、市町村及び国保組合)が共同して設立した公法人であるのに対し、支払基金は社会保険診療報酬支払基金法に基づき設立された法人(特別の法律に基づき設立された法人としての民間法人)であるという法人の性格(地位)によるのではないかと思われます。【参考:窓口収入管理表】提供:税経システム研究所
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2025/04/16 その他の税・法令等
不動産の取得に係る税金(登記と登録免許税)
不動産を取得した場合などには、通常は法務局で登記をしますが、このとき登録免許税が課税されます。登記をする際に安易に考えて、資金を出していない人を登記名義人としたり、出した資金よりも多い割合で登記したりすると、原則として贈与税が課税されます。資金を出した割合で登記することが大切です。1.登記と登録免許税不動産を取得した場合には、通常は法務局で所有権移転登記や保存登記、抵当権設定登記をしますが、このとき登録免許税が課税されます。登録免許税は、次のように定められています。2.土地の価額の特例登録免許税は固定資産税の評価額に税率を掛けて計算しますが、土地に対する登録免許税については、平成11年4月1日から平成15年3月31日までは固定資産税の評価額に3分の1の割合を掛けた価格に税率を掛けて計算する特例がありましたが平成15年3月31日をもって廃止されました。3.自己の居住用の家屋の特例一定の自己の居住用の家屋については、前記1.のように登録免許税が軽減される特例があります。この特例が受けられる一定の自己居住用の家屋は、平成11年4月1日以後に新築する次のような要件を満たす家屋です。所有者自身が住むためのものであること家屋の床面積(マンションの場合には専有部分の床面積)が50㎡以上であること新築住宅ならびに中古住宅の場合、新耐震基準に適合している住宅用家屋(登記簿上の建築日付が昭和57年1月1日以降の家屋については、新耐震基準に適合している住宅用家屋とみなす。)であること新築または取得後1年以内に登記すること登記申請書にその家屋所在地の市町村長の証明書類を添付することなお、この特例は敷地には適用がありません。また、法人にも適用しません。4.司法書士の手数料通常は司法書士に登記手続きを依頼しますが、その手数料もかかります。5.登記名義、親族からの借入と贈与税マイホームを購入したり新築したりすると、あとで税務署から「お買いになった資産の買入価額などについてのお尋ね」が送られてきて資金の出所などが質問されます。登記をする際に安易に考えて、資金を出していない人を登記名義人としたり、出した資金よりも多い割合で登記したりすると、原則として贈与税が課税されます。したがって資金を出した割合で登記することが大切です。また、親族から資金を借りる場合には、贈与とみなされて贈与税が課税されることがありますので、金銭消費貸借契約書を取り交わし、きちんと返済期日や利息などを定めておき、これに基づいて実際に返済することが大切です。提供:税経システム研究所
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2025/04/09 会計制度経営・運営公益法人
新公益法人制度と会計(第3回)
新公益法人制度と会計について、前回は制度改正等に伴うスケジュールの前半部分を記載させて頂きました。第3回では、引続き令和7年度以降の制度改正等のスケジュールを把握して、公益法人制度がどのように変貌するのかを考察したいと思います。(1)新公益法人制度と会計に関するスケジュールと概要⑤公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行令の一部を改正する政令(第323号)→令和6年10月30日公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号。以下「認定法」という。)により委任された事項を定める公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行令(平成19年政令第276号。以下「認定令」という。)について、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第29号。以下「改正法」という。)の施行に伴い、理事の構成の特例の基準等について定めるほか、公益目的取得財産残額に相当する額の財産の贈与を受けることができる法人に係る規定の見直しを行うため、改正するものです。特別利害関係(認定法第5条第10号関係)【改正】会計監査人設置義務適用除外(認定法第5条第13号関係)【改正】外部理事設置義務適用除外(認定法第5条第15号関係)【新設】公益目的取得財産残額贈与先(認定法第5条第20号関係)【改正】⑥公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則の一部を改正する内閣府令(第87号)令和6年10月30日改正される内閣府令では、公益認定の基準及び変更の認定の対象の見直し、公益目的事業の収入、遊休財産額の保有の制限及び区分経理に関する規定の見直し等について定めており、内閣府令案は、これらの見直し等について内閣府令に委任されている事項について定めるほか、所要の改正を行うものです。主な事項は以下のとおりです。外部理事・監事(改正法第5条第15号及び第16号)関係変更認定対象の届出化(改正法第11条及び第13条)関係公益目的事業の収入及び費用(改正法第14条)関係使途不特定財産額の保有の制限(改正法第16条)関係公益目的事業財産(改正法第18条)関係区分経理(改正法第19条)等関係公益目的取得財産残額(改正法第30条)関係財産目録等(改正法第21条及び第22条)関係経過措置について⑦一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律施行規則の一部を改正する内閣府令(第88号)→令和6年10月30日改正法される内閣府令では、整備法施行規則第45条においてインターネット上で閲覧に供することができる旨を定めるほか、所要の改正を行うものです。⑧公益認定等ガイドラインの制定→令和6年12月20日新しい「公益認定等に関する運用について」(公益認定等ガイドライン)が、令和6年12月20日に内閣府公益認定等委員会・内閣府大臣官房公益法人行政担当室で決定されました。本ガイドラインは、公益法人認定法令の運用に当たり留意すべき事項(法令等の解釈・運用)及び審査・処分の基準・考え方を示すものです。⑨公益法人会計基準及び運用指針の制定→令和6年12月20日新しい「公益法人会計基準」及び「公益法人会計基準の運用指針」が令和6年12月20日に内閣府公益認定等委員会で決定されました。本会計基準等は、今般の公益法人制度改革を受けた必要な見直しを行うとともに「わかりやすい財務情報の開示」を実現するため制定されたものです。また、本会計基準等の検討に当たり、公益法人の会計に関する研究会で特に議論になった事項については、その結論の背景を明らかにするため公益法人の会計に関する研究会において「公益法人会計基準の検討経過」を取りまとめられました。次回より、新公益法人制度と会計の各論についてご説明させて頂きます。提供:税経システム研究所
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