税務デイリーニュース
税務に関する最新のニュースを毎日お届けします。
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2024/11/21
国税庁、令和5事務年度の「相互協議の状況」を公表
現在、我が国では79の租税条約等(適用対象国・地域は86か国・地域)において、相互協議に関する規定が置かれており、国税庁では、移転価格課税等による国際的な二重課税について納税者の申立てを受けた場合、租税条約等の規定に基づき外国税務当局との相互協議を実施してその解決を図っている。また、納税者の予測可能性を高め、移転価格税制の適正・円滑な執行を図る観点から、事前確認に係る相互協議を実施している。今回、国税庁から令和5事務年度における「相互協議の状況」が公表された。相互協議事案の発生件数は212件であり、前事務年度と比較して70%に減少したが、そのうち、167件(79%)が事前確認に係るものとなっている。処理件数は219件、前事務年度に比べ115%の増加となり、事前確認に係るものは158件(72%)となっている。処理事案について、業種別内訳は製造業が約69%と最も多く、次いで卸売・小売業(約19%)となっている。令和5事務年度末の繰越件数は前事務年度に比べ減少したものの735件あり、事前確認に係るものが595件(81%)となっている。繰越事案の相手国・地域の地域別内訳については、アジア・大洋州が最も多く、次いで米州、欧州・アフリカが続いている。具体的な国別では、米国が24%で最も多く、次いで中国(14%)、インド(14%)、韓国(8%)、ドイツ(5%)となっている。OECD非加盟国・地域との相互協議事案については、発生件数が65件、処理件数は74件であり、繰越件数は326件となっている。この件数は、相互協議事案の繰越件数の44%に当たる。処理事案1件当たりに要した平均処理期間は、42.2か月、事前確認に係るものは63.5か月となっているが、処理事案全体での平均処理期間は、31.8か月、事前確認に係るものは35.8か月であることから、OECD非加盟国・地域との相互協議事案の処理は長期化の傾向にある。事前確認は、納税者と税務当局が独立企業間価格の算定方法等について、事前に確認を行う制度であり、移転価格課税への対策として有効な手段であると考えられるが、その処理には時間を要することから事前確認を求める企業は長期的な視点で計画を立てる必要がある。(参考)令和5事務年度の「相互協議の状況」についてhttps://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/sogo_kyogi/sogo_kyogi.pdf
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2024/11/20
「103万円の壁」引き上げに対する企業アンケート
衆議院選挙で議席を伸ばした国民民主党が提案する「年収103万円の壁」を178万円に引き上げる案が注目を集めている。深刻化する人手不足への対応策として、年収の壁の引き上げはパートタイマーなどの働き方が変わり、働き控えの解消につながると期待されている。また、減税効果による実質賃金の増加も見込まれる。こうした背景のもと、帝国データバンクは、「103万円の壁」の引き上げについて企業にアンケートを実施し、その結果を令和6年11月14日に公表した。詳細は以下のリンクで確認できる。アンケート調査は、2024年11月8日~11月12日にかけてインターネットで実施され、有効回答企業数は1,691社であった。日本の社会全体にとって「103万円の壁」引き上げをどう考えるかを尋ねたところ、「賛成」と「撤廃すべき」を合わせた約9割の企業が見直しの必要性を訴える結果となった。回答企業からは、「103万円の壁を意識するパートの方の働き控えが解消される」、「社会保険料の壁もあるので、所得税のみの見直しでは働き控えはそれほど変わらない」といった意見が寄せられた。「103万円の壁の制度自体が古いため、社会保険制度とともに制度設計の見直しが必要」との声もあった。令和2年からは、税制改正により所得税の基礎控除や給与所得控除などが変更されている。また、平成29年以降、配偶者控除や配偶者特別控除が配偶者の所得金額に基づくものから、所得者本人の所得金額も影響する仕組みになっている。さらに政府は、令和6年度税制改正大綱において、児童手当の所得制限が撤廃や支給期間延長に伴う扶養控除見直しを示唆している。扶養控除の見直しにより課税総所得金額や税額などが変わることで、社会保険制度や教育費等の給付・負担額に不利益が生じないよう措置を講じる必要があるとしている。例年、税制改正大綱は12月中旬に公表される。今後、「103万円の壁」に関する議論の進展が期待される。(参考)「103万円の壁」引き上げに対する企業アンケートhttps://www.tdb.co.jp/report/economic/20241114-1-03mwall/(参考)令和6年度税制改正の大綱https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2024/20231222taikou.pdf
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2024/11/19
フリーランス・事業者間取引適正化等法が施行される
政府は、2020年からフリーランスの保護ルールの整備を行ってきたが、今回、個人であるフリーランスと組織である発注事業者の間における交渉力などの格差、それに伴うフリーランスの取引上の弱い立場に着目し、フリーランスが安心して働ける環境を整備するために本法を制定した。多種多様な業界で活躍しているフリーランスとの業務委託取引について、「取引の適正化」と「就業環境の整備」の2つの観点から、発注事業者が守るべき義務と禁止行為を定めている。対象となる事業者は、フリーランス(特定受託事業者)と発注事業者(業務委託事業者又は特定業務委託事業者)であり、業務委託の当事者(受託者、委託者)であること、従業員の使用についての要件が定められている(法2)。対象となる取引は、発注事業者からフリーランスに対する「業務委託」に係る取引、すなわち事業間取引(BtoB)における委託取引に適用される。「業務委託」とは、事業者がその事業のために他の事業者に給付に係る仕様、内容等を指定して、物品の製造、情報成果物の作成又は役務の提供を委託することをいい、業種・業界の限定はなく、発注事業者からフリーランスへ委託する全ての業務が対象となる。法律の規制は、「取引の適正化」と「就業環境の整備」であり、適用される義務と禁止行為は次のとおりとなっている。取引の適正化については、義務として書面等による取引条件の明示(法3)、期日における報酬支払(法4)が、発注事業者の禁止行為(法5)として受領拒否をはじめ7項目が定められている。就業環境の整備では、募集情報の的確表示(法12)、育児介護等と業務の両立に対する配慮(法13)、ハラスメント対策に係る体制整備(法14)、中途解除等の事前予告・理由開示(法16)が義務とされている。義務及び禁止行為規定の適用対象者については、発注事業者の種別(業務委託事業者又は特定業務委託事業者)や業務委託を行う期間に応じて区分されている。本法に違反する事実がある場合、フリーランスは所管省庁(公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省)に対しその旨を申し出ることができるほか、取引上のトラブルについて、弁護士に相談できる窓口として「フリーランス・トラブル110番」が設置されている。(参考)特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/law_freelance.html
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2024/11/18
令和5事務年度の法人税等の申告(課税)事績の概要
令和6年10月30日、「令和5事務年度の法人税等の申告(課税)事績の概要」が国税庁ホームページで公表された。令和5年度における申告所得金額の総額は過去最高であり、法人税の申告件数、申告所得金額、申告税額のすべてが前年を上回った。具体的には、申告件数が318万件、申告所得金額の総額が98兆2,781億円、申告税額の総額が17兆3,924億円に達しており、いずれも4年連続の増加である。これにより、申告所得金額は前年に比べ13兆2,675億円(15.6%)増加、申告税額も2兆4,825億円(16.7%)の増加となっている。この増加傾向の背景には、コロナ禍からの経済回復と企業業績の改善、円安による輸出企業の収益増加、デジタル化とDX推進による生産性向上、政府の投資促進施策と法人税制の影響が考えられる。加えて、令和4年4月1日に導入されたグループ通算制度の影響にも注目したい。令和6年6月30日時点での通算法人数は18,937件、内訳として親法人が2,049件、子法人が16,888件であったが、グループ通算制度における黒字申告割合は55.0%で、黒字申告の所得金額は29兆7,815億円に上り、黒字申告1件当たりの平均所得金額は2,859百万円にもなっている。この制度はグループ全体での税負担を見直すために設けられたものであるが、申告所得金額を押し上げる要因の1つとなっている。源泉所得税等についても動向が公表されており、令和5年7月1日から令和6年6月30日までに提出された徴収高計算書によると、源泉所得税等の税額は21兆3,351億円であった。しかし、前事業年度に比べると2.2%減少しており、減少額は4,807億円に上る。内訳を詳しく見ると、給与所得税額は13兆円余りで前年対比103.8%増加している一方、配当所得税額は前年対比74.1%、減少額は1兆5,764億円にも上る。一方で、特定口座内保管上場株式等の譲渡所得等の税額は前年対比170.7%と大幅に増加、増加税額は3,423億円となった。同様に利子所得等の税額も前年対比131.2%、増加税額は1,047億円と増加した。国内外の市場動向や株式市場の活性化が影響していると推測される。令和5年度の法人税申告におけるe-Tax利用率は86.2%と税務手続のデジタル化も着実に進展している。主要な申告書のほか、財務諸表など添付されるべき書類とされている書類を含めALLe-Tax率は63.8%となった。これは、4社に3社がALLe-Taxということになる。(参考)国税庁「令和5事務年度法人税等の申告(課税)事績の概要」https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/hojin_shinkoku/pdf/hojin_shinkoku.pdf
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2024/11/15
「申請書等の取下書」の代理送信について
令和6年11月から、提出済の申告書や申請書等を取下げる旨を記載した「税務代理権限証書」を電子申告で代理送信した場合、「申請書等の取下書」として取り扱われることになった。「取下書」は税法で定められた様式ではないが、税務署に提出した申告書や申請書等について、後から提出を取りやめたいときに、便宜上、作成して取下げの意思表示をするものである。実務においては、取下げが認められるものと、認められないものがあるが、当初に提出した書類の記載内容に不備があり、改めて書類を提出し直す際などは認められることが多い。従来は、「取下書」の様式が作成者ごとに異なっていたが、今回の取扱いの変更に伴って、作成方法が統一される。税務代理権限証書のみを作成し、送信することになるので、申告書等と一緒に送付することの無いよう留意されたい。また、延納申請取下げ書など、規定の様式が設けられているものについては、「申請書等の取下書」では提出できない。【記載事項】1「基申告書(申請書)の受付番号」の記載e-Taxダウンロード版で作成する場合は、税務代理権限証書の右上の「基申告書(申請書)の受付番号」欄に、「123」と記載する。民間の税務ソフトで作成する場合は、「123」と入力するとエラーになる場合がある。その場合は、未入力でも差し支えない。2「3その他の事項」の記載「3その他の事項」欄には、既に提出済の申請書等の「受付番号」及び「申請書等の手続名称」並びに「取下の意向」を記載する。(例)受付番号(××××-××××-××××-××××-××××)の●●税申告書(申請書)について、取下げます。作成後、電子申告で提出すると、次のワーニングメッセージが表示されるが、正常に受付されているので、再送信は不要である。なお、ワーニングメッセージが表示されない場合は、エラーになっている可能性があるため、提出先の税務署に確認が必要である。【ワーニングメッセージ】税務代理権限証書に入力された受付番号及び依頼者の利用者識別番号のいずれかに誤りがあり代理受領欄の選択の有無を確認できませんでした。通知書の代理受領を希望される場合は、入力内容を確認のうえ、税務代理権限証書のみを再度送信してください。参考国税庁ホームページhttps://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/yokuaru08/42.htm
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2024/11/14
国税庁、e-Taxの利用は順調と公表
国税庁は、令和5年度におけるオンライン(e-Tax)手続の利用状況等について、利用は順調に拡大していると公表した。デジタル社会の実現に向けて納税者利便の向上と税務行政の効率化を目的に、オンライン手続であるe-Taxやキャッシュレス納付の利用拡大を進めており、令和8年度末までの目標値を掲げ、目標の達成に向けてオンライン利用率の更なる向上を目指している。令和5年度の利用率については、法人税申告86.2%(前年対比+1.3ポイント)、消費税申告(法人)88.7%(同比+2.9ポイント)、所得税申告69.3%(同比+3.6ポイント)、消費税申告(個人)73.5%(同比+3.6ポイント)となっており、いずれも前年度と比べて増加している。なお、法人税申告について、添付書類を含めた利用率は63.8%(同比+1.0ポイント)となっており、法人税申告の利用率に比べ22.4ポイント低くなっている。令和2年度からe-Taxの利用が可能となった相続税申告については、37.1%(同比+7.6ポイント)と大幅に増加している。また、納税の方法について、キャッシュレス納付はダイレクト納付やインターネットバンキング等の電子納税の利用が増加し、39.0%(同比+3.1ポイント)となっている。これまでも利便性向上を図るため、e-Taxシステムの改善を進めてきており、令和5年度にはマイナポータル連携の自動入力対象を拡大するなどの取組を行った。令和7年1月からは、スマートフォン用電子証明書を利用することで、マイナンバーカードをスマートフォンで読み取らなくても、申告書の作成・e-Tax送信ができるようになる取組が行われる(Android端末でのみ利用可能)。国税庁が行ったe-Taxの利用に関するアンケートの結果では、e-Taxを利用しようと思った理由について、「税務署に行く必要がない」、「税務署の閉庁時間でも申告書等の提出ができる」、「申告書の作成・送信が容易である」などの回答が上位を占めており、利便性向上への取組が利用率の増加につながっている。「令和5年度におけるオンライン(e-Tax)手続の利用状況等について」https://www.e-tax.nta.go.jp/topics/topics_riyozyokyo/0610pressrelease.pdf「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2023」https://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/digitaltransformation2023/pdf/syouraizo2023.pdf
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2024/11/13
経団連、令和7年度税制改正に関する提言を公表
経団連は、10月3日に「令和7年度税制改正に関する提言」を公表している。提言には、「日本経済を成長型の新たなステージへ」とのテーマが付されており、これは過去最高水準の設備投資、30年ぶりの高水準の賃金引上げなど、歴史的な転換点を迎える中、デフレから完全に脱却し、日本経済を成長型の新たなステージに移行させることが重要であることを示している。提言では、「成長と分配の好循環」を実現していくことが重要であり、実現に向けた取組として、企業の持続的な成長、分厚い中間層の形成、グローバルな競争力の三点を挙げている。また、中長期的な視点から、少子高齢化・人口減少等や資源不足といったわが国の制約条件の克服に向け、全世代型社会保障の構築に向けた税・社会保障の一体改革、GXの推進に向けた税制などについても検討を進めるべきであるとしている。1企業の持続的な成長を支える税制まず、これまでの成長志向の法人税改革を振り返り、続いて国内投資の拡大・研究開発推進や賃金引上げを後押しする法人課税のあり方について言及している。次に法人税制等の諸課題については、企業価値向上に向けた組織再編による事業ポートフォリオの見直しとしてパーシャルスピンオフ税制の本則化のほか、インセンティブ報酬の活用拡大では「業績連動給与」の対象の拡大を挙げている。また、リース会計基準改正への対応では、企業の実務上、税務と会計の取扱いに差異が生じることがないよう、法人税等において必要な対応を行うべきであるとしている。2分厚い中間層の形成に向けた税制働き方やライフスタイルの多様化に即した年金税制を構築する必要があり、企業型確定拠出年金の拠出限度額の引上げなどを挙げている。また、社会保障制度の持続可能性の確保に向け、税・社会保障一体での改革の推進が必要であること、財源については公正・公平の観点から、年齢にかかわらず負担能力に応じた負担(応能負担)を徹底すべきとし、税も含めた様々な財源の組み合わせによるバランスの取れた負担のあり方を検討していくべきであるとしている。3企業のグローバル活動を下支えする税制【グローバルな競争力】経済のデジタル化に伴う課税上の課題への解決策「第1の柱(市場国への新たな課税権の配分)」、「第2の柱(グローバル・ミニマム課税)」に係る国際合意及び国内法制化と円滑な実施等が必要であるとし、外国子会社合算税制(CFC税制)も見直しを示している。(参考)「令和7年度税制改正に関する提言」https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/067.html
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2024/11/12
旅費制度の見直しについて
国家公務員の旅費制度が約70年ぶりに見直され、令和7年4月に施行される予定である。この改正は、デジタル化の進展やパック旅行の利用など、出張の実態に即した制度運用を目指し、国費の適正な支出や事務負担の軽減を図るものである。具体的には、宿泊料の支給方法が定額から実費(上限付き)に変更されるほか、旅行命令簿や旅費請求書の様式が廃止される点が大きな特徴である。税務調査において旅費規程が現実の業務実態に合わないと判断された場合、企業が従業員に支給する旅費が「過大」とみなされ、所得税が課されるリスクがあるため、この改正には注意する必要がある。税務調査では、国家公務員の旅費制度や同業他社の規程との比較により過大と判断されるケースもあるため、今回の改正を契機に、企業の業態や役職・職種に合った適切な旅費規程を策定することが求められる。特に、定額から実費に変更している点は注意が必要であり、日当の額にも影響を与えるものと考えられる。改正の概要1旅費の計算等に係る規定の簡素化・旅行に要する実費を弁償するためのものとして、旅費の種類及び内容に係る規定を簡素化する。宿泊料は、定額支給方式から実費弁償方式(上限付き)に変更する。・デジタル化の進展を踏まえ、旅行命令簿及び旅費請求書の様式を廃止する。2旅費の支給対象の見直し・出張や勤務の実態に応じて、自宅発の出張に係る旅費の支給を可能とする。・旅行者に対する旅費の支給に代えて、旅行代理店等に対する直接の支払いを可能とする。3国費の適正な支出の確保・旅費法の規定に違反して旅費を受給した旅行者等に対して旅費の返納を求めるとともに、旅行者の給与等からの控除を可能とする規定を新設する。・同法の適正な執行を確保するため、財務大臣による各庁の長に対する監督規定を新設する。(参考)財務省ホームページ「ファイナンス令和6年7月号」https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202407/202407g.pdf財務省ホームページ「ファイナンス令和6年10月号」https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202410/202410e.pdf
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2024/11/11
賃金のデジタル払いについて
2024年8月、大手企業ソフトバンクグループが「PayPay」を通じて賃金のデジタル払いを行う事業者として、国内で初めて厚生労働省から指定を受けた。これにより、希望する従業員がPayPay口座で給与を受け取れるようになり、現金や銀行振込に代わる新たな支払方法として注目されている。「賃金のデジタル払い」は、令和5年4月に法改正で解禁され、従来の現金や銀行振込に加えて、労働者の同意を得た場合に資金移動業者の口座を利用する支払いも認められるようになった。ただし、デジタル払いは強制することは許されず、あくまで労働者の同意が必要である。資金移動業者には厚生労働大臣の指定が必要であり、厳格な基準が設けられている。例えば、口座残高が100万円を超えないように管理する体制や、万が一破綻が発生した場合に労働者の資産が速やかに補償される仕組みが求められる。こうした条件は、労働者の資産を守るために設けられたもので、資金決済法に基づいて定められている。賃金がデジタル払いであっても、源泉徴収や社会保険料の天引きは従来通り行われる。ただし、実務では、諸々の事情から、控除額が給与から控除しきれないケースや過大支給の返還など、別途従業員から追加徴収することが必要になるケースもあり、デジタル払いを円滑に導入するためには、こうした実務的な課題への対応も重要である。帝国データバンクが実施した調査(2024年10月)では、「賃金のデジタル払いを導入予定なし」と回答した企業が約9割を占めている。主な理由として、業務負担の増加やセキュリティリスクへの懸念が挙げられ、特に中小企業にとっては新たなシステム導入によるコスト負担が重くのしかかるようだ。一方で、賃金のデジタル払いには、振込手数料の削減や従業員満足度の向上といったメリットも期待されている。キャッシュレス決済を日常的に利用する若年層の従業員にとっても、給与受け取りの利便性が増し、企業の魅力向上にもつながる可能性もある。今後、賃金のデジタル払いを検討する企業は、法令の要件と労働者の同意を十分に確認することが不可欠である。(参考)厚生労働省「賃金のデジタル払いについて」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03_00028.html厚生労働省「賃金のデジタル払いにおける資金移動業者の指定」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41528.html帝国データバンク「賃金のデジタル払い対応状況アンケート」https://www.tdb.co.jp/report/economic/20241016_digitalsalary/
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2024/11/08
定額減税しきれないときの手続き
令和6年6月以降、物価上昇に伴う国民の経済的負担を軽減するために定額減税が実施されている。この制度では、納税者本人および配偶者・扶養親族1人につき、所得税3万円、住民税1万円の合計4万円が、給与や賞与から減税される。6月以降に支払われる給与や賞与から控除する月次減税で控除しきれない金額は、年末調整で精算することとなっており、ここでも控除しきれない金額は「控除外税」とされて、令和7年に実施される「調整給付」の対象となる。「調整給付」が適切に行われるためには、年末調整後に作成する源泉徴収票の「摘要欄」に定額減税を実施した内容を正確に記載する必要がある。例えば、年調減税額が90,000円、実際に控除した年調減税額が80,000円、控除しきれなかった金額が10,000円の場合は「源泉徴収時所得税減税控除済額80,000円、控除外額10,000円」と記載する。控除しきれなかった金額がない場合は、「控除外額0円」と記載する。なお、次に該当する場合は年末調整の対象とはならず、令和6年分の確定申告において最終的な特別控除の額を計算の上、納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することになる。1主たる給与の支払者からの給与収入が2,000万円を超えるとき2年の途中で退職し、給与等に係る源泉徴収について特別控除の額の控除が行われていない(又は控除しきれない額がある)とき3年末調整において、所得税額から特別控除の額を控除した際、控除しきれない額が生じる場合(特別控除の額が所得税額を上回る場合)において、次に該当するとき・給与所得以外の所得があるとき・退職所得に係る源泉徴収税額があるとき・2か所以上から給与の支払を受けているとき控除しきれない金額がある場合は調整給付の対象となるが、必ずしも控除外額が給付されるわけではない。自治体によっては独自の制度を設けている場合もある。調整給付金を受け取るためには、自治体から送付される確認書類に基づいて手続きを行う必要があり、書類を受け取ったら、振込口座の情報や本人確認書類のコピーなどを添付して返送することが求められる。なお、確認書の申請期限は自治体ごとに異なる。(参考)国税庁ホームページ「定額減税特設サイト」https://www.nta.go.jp/users/gensen/teigakugenzei/index.htm
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