税金ワンポイント
税務に関するニュースの中でも、注目度の高いトピックスを取り上げ紹介していく税金ワンポイント。主要な改正情報はもちろん、税務上、判断に迷いやすい税金実務のポイントを毎週お届けします。速報性の高い、タイムリーな情報を皆様の実務にお役立てください。
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2025/04/14
保険外交員は「代理業」に該当
平成29年度以降、東京都は生命保険外交員の業務を「代理業」に該当するとして個人事業税を課税する運用に転じている。この取扱いを巡って争われた裁判事例について、令和7年3月4日、原告19人(納税者)の請求を棄却する判決が下された(令和6年(行ウ)第118号)。原告らは生命保険募集人(以下「保険外交員」)であり、生命保険会社との間で営業社員雇用契約等を締結し、歩合制による報酬を受けていた。保険外交員が受ける歩合報酬は通常、事業所得に該当するが、それが事業税の課税対象である「代理業」に当たるかどうかについては、かねてより議論があった。その理由としては、保険外交員が地方税法に列挙された「事業」に含まれていないこと、昭和29年の行政実例で外交員への課税が「非課税」とされていたこと、一部の道府県では保険外交員を「代理業」に認定していないことなどが挙げられる。裁判において原告らは、自らは代理権を有しておらず、代理権を有しない者が行う取引の媒介業務を「代理業」に当たると解釈することは、租税法律主義等に反し、地方税法72条の2第8項の趣旨にも反するなどと主張した。しかし判決では、地方税法が「代理業」を定義していない以上、商法27条の「代理商」概念と整合的に解釈すべきとし、代理権の有無にかかわらず「一定の商人のために、反復継続的に取引の代理または媒介を行う事業」は課税対象となると判断した。また、報酬体系や支出の内容、業務の独立性などを踏まえ、外交員業務は「自己の計算と危険によって行われる独立した事業」に該当すると結論づけた。実際、原告らは事業所得の申告において、事務所経費や青色専従者給与等を計上しており、収入・支出の規模が1億円を超える者も存在していた。契約上「営業社員雇用契約」などとされていても、その実態が準委任契約としての性質を有すると認められる場合には、「使用人」とはされず、代理業として課税されることが明らかとなった。この判決を受けて、保険外交員が行う事業について「非課税」として運用している自治体の対応が注目される。また、令和6年10月の都税調査会では、法定業種の限定列挙方式を廃止し、事業性のあるもの全般を課税対象とする提言が復活しており、今後は課税基準そのものの見直しも議論される可能性もある。外交員に限らず、委託型業務に従事する者は、自身の業務実態を再点検し、必要に応じて専門家の助言を仰ぐべきであろう。提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/04/07
中小企業者等の雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除
令和6年度の税制改正により見直された「中小企業者等の雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除」(いわゆる「賃上げ促進税制」)は、節税効果が高いだけでなく、繰越税額控除制度が設けられるなど、中小企業者にとって利用しやすい制度となっている。中小企業庁からガイドブックも公開されているため、活用するとよい(注1)。この制度は、青色申告書を提出する中小企業者または農業協同組合等が、令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度において、国内雇用者に対して給与等を支給し、一定の要件を満たす場合に適用される(注2)。適用されると、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%相当額が法人税額から控除できる。さらに、上乗せ要件を満たす場合には、控除率が加算される。1.適用要件国内雇用者に対して給与を支給すること。雇用者給与等支給増加割合が1.5%以上であること。【算式】(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)/比較雇用者給与等支給額≧1.5%2.税額控除限度額税額控除限度額は、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%相当額とされている。ただし、適用対象法人の適用事業年度の調整前法人税額の20%相当額を超える場合には、調整前法人税額の20%相当額が控除額の上限となる。3.上乗せ要件以下の要件を満たす場合、15%にそれぞれの割合を加算した控除率となる。雇用者給与等支給増加割合が2.5%以上である場合:15%教育訓練費の額が、比較教育訓練費の額に対して5%以上の増加があり、かつ雇用者給与等支給額の0.05%以上である場合:10%プラチナくるみん認定またはプラチナえるぼし認定を受けた場合、または、くるみん認定・えるぼし認定(2段階目以上)を受けた場合:5%4.繰越税額控除制度要件を満たす賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額(繰越税額控除限度超過額)については、翌年度以降5年間の繰り越しが認められる。この適用を受けるには、確定申告書に明細書を添付するなどの手続きが必要である。<注釈>https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai.htmlhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5927-2.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/03/31
死亡した者に対する退職手当等の取扱い
役員や従業員が在職中に死亡した際に、その遺族に支給される退職手当等を死亡退職金という。これは通常の退職金とは異なり、その死亡後に支給期が到来するものは、故人に帰属して所得税が課されるのか、またはその支給を受ける相続人などに帰属して相続税が課されるのかという問題が生ずる。相続税法第3条1項2号は、被相続人(死亡した役員や従業員)に支給されるべきであった退職手当金は、相続または遺贈により取得したものとみなすと規定している。ただし、死亡後も相当の期間が経過した後に支給されるものまで相続税の課税対象にすることは適当でないとして、死亡後3年以内の支給確定分はみなし相続財産、死亡後3年経過後に支給が確定したものは、それを受領した者の一時所得になると規定している。なお、この場合、所得税法第9条1項17号では相続税との二重課税を避ける趣旨から、所得税が課税されないと規定されているため、源泉徴収の必要はない。(注1)一方で、死亡した者に退職金を支払うケースとして、生前に退職し、その後、支給日までの間に死亡するケースがある。このようなケースで、生前に退職手当等として支給すべき額が確定していた場合は、所得税法上の所得とみなされ、源泉徴収や準確定申告の必要がある。この取り扱いは住民税においても同様である。例えば、国税庁ホームページでは、3月31日に退職し、4月25日に退職金を支給する予定だったが、4月20日に死亡した事例が掲載されており、この事例では詳細は書かれていないが、生存中に退職手当等が確定しているという前提で、退職所得の収入とすべき時期は退職の日であり、所得税及び復興特別所得税の源泉徴収が必要であるとしている(注2)。この場合、所得税等を差し引いた残余の金額が本来の相続財産として相続税が課税されることになり、みなし相続財産の非課税の適用はない。また、役員や従業員が死亡退職した際、勤務先から弔慰金や花輪代、葬祭料などが支払われることがあるが、これらは通常、相続税の対象にはならない。しかし、実質上、退職手当等に該当する場合や一定の金額を超える場合は、退職手当等として相続財産とみなされるため注意が必要である(注3)。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4117.htmhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2728_qa.htm#q1https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4120.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/03/24
総合譲渡所得の注意点
譲渡所得とは、土地、建物、株式、ゴルフ会員券、書画骨董、貴金属や宝石などの資産を売却することによって生ずる所得をいう(注1)が、ゴルフ会員権、金地金などの動産、借家権、特許権などの権利の譲渡から生じる所得は総合譲渡所得とされている。総合譲渡所得は、原則として保有期間に応じて短期譲渡所得と長期譲渡所得に区分される。具体的には、譲渡資産の保有期間が5年以内のものは短期譲渡所得、5年を超えるものは長期譲渡所得とされる(注2)。ただし、特定の資産については保有期間に関わらず長期譲渡所得とされる。例えば、自己の研究の成果である特許権や実用新案権、自己の著作に関わる著作権などが該当する。生活用動産の譲渡については、所得税法第9条第1項第9号に規定されており、「自己又はその配偶者その他の親族が生活の用に供する家具、じゅう器、衣服その他の資産で政令で定めるものの譲渡による所得」は非課税とされている。こうした生活に通常必要な動産は、売却して利益が出たとしても課税されないが、その代わりに損失が生じても損益通算の対象にはならない。一方で、生活に通常必要でない資産や、生活の用に供する動産のうち、30万円を超える貴金属、書画、骨董、美術工芸品などの譲渡所得は課税対象となる。生活用動産の課税・非課税の判定においては、単に金額基準である30万円を当てはめるのではなく、取引形態や資産の性質を見極める必要がある。例えば、高級腕時計だったとしても、宝飾品が一切使われておらず、日常的に使用するものであれば生活に通常必要である動産の要素が強いが、宝石がちりばめられたものは宝飾品として扱われ、生活に通常必要でない動産と見なされるため、課税対象となる。車の取り扱いについても、プライベートと業務で兼用している高級車の場合、それが生活用動産として認められるかどうかは判断が難しい。裁判でも争われることがあり、その判断基準としては、その所有が通常かつ必要と考えられるかどうかが重要視される。一般的に、個々の所有者の事情は考慮されないが、地域的な特殊性がある場合には一定の配慮がなされることもある。また、時の経過によって価値が減少するかどうか、歴史的価値や希少価値を有するかどうか、代替性があるかどうかといった要素も判断材料となる。ゴルフ会員権については、ゴルフ場経営法人が破綻し、優先的施設利用権が消滅したものは雑所得となる。それ以外のゴルフ会員権は総合譲渡所得とされるが、平成26年4月1日以降、その譲渡損失は他の所得と損益通算ができなくなっている。これは、生活に通常必要でない資産に該当するためである。総合譲渡所得は、生活用動産の譲渡所得の非課税範囲や特例の適用について慎重に判断する必要がある。また、事業用資産の譲渡については、棚卸資産に準ずる資産か、少額重要資産に該当するか、その譲渡所得が営利を目的として継続的に行われているか等の検討が必要となる点に注意が必要である。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3105.htmhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1460.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/03/17
医療費控除の判断ポイント
所得税確定申告における医療費控除の適用可否を判断する際、特に注意すべきポイントがいくつかある。医療費控除を適用する際には、以下のポイントを正確に判断することが求められる。1.医療品購入に関する判断所得税法73条2項及び施行令207条2号の「治療又は療養に必要な医薬品の購入」の対価は、治療又は療養に必要な薬事法2条1項所定の「医薬品」の購入の対価に限られると解されているところ、医師の処方箋に基づいて薬局で購入した医薬品は、原則としてすべて医療費控除の対象となる。一方で、処方箋なしに自己判断で購入した市販薬については、その全てが控除の対象となるわけではなく、いくつかの条件を満たす必要がある。具体的には、購入した医薬品が薬機法(旧薬事法)に定められた医薬品であり、単なる健康維持や美容目的ではなく、明確な治療や療養のために必要なものであることが求められる。さらに、その症状に応じた一般的な治療費の範囲内で支出されたものでなければならない(注1)。サプリメントについては、医師の指導のもとで購入した場合でも医薬品には該当しないため、控除の対象外とした判例がある(平成27年5月12日東京地裁判決第265号‐75(順号12658))。不妊治療の一環としてクリニックで購入した商品が、医薬品と同等の成分を含む製品であっても、医療費控除の対象とすることはできないと判断された。2.交通費の扱い医療機関への通院にかかった交通費については、その費用の性質によって医療費控除の適用可否が異なる。公共交通機関を利用した場合の運賃、例えば電車やバスの料金、または患者の事情によりやむを得ず利用したタクシー代は、医療費控除の対象として認められる。しかし、自家用車を利用した場合のガソリン代や、高速道路の通行料金、さらには病院の駐車場代については、医療費控除の対象とはならない。これは、令和5年11月6日に公表された裁決でも明確に示されている。3.セルフメディケーション税制との関係通常の医療費控除とは別に、「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」が存在する。この制度では、一定の要件を満たすスイッチOTC医薬品(医療用から転用された一般用医薬品)の購入費用が控除対象となる。ただし、適用には健康診断や予防接種などの「一定の取組」を行っていることが条件となる。通常の医療費控除とは併用できない(注2)。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1122.htmhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1129.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/03/10
青色事業専従者給与とは
青色事業専従者給与とは、青色申告を行う個人事業主が、生計を一にする配偶者やその他の親族で、専らその事業に従事する者に支払う給与を、必要経費として認める制度である(注1)。青色事業専従者給与を経費として計上するためには、以下の要件を満たす必要がある。生計を一にする配偶者または親族であること。その年の12月31日時点で年齢が15歳以上であること。その年の6か月を超える期間、専らその事業に従事していること。年の途中で事業開始した場合などは、事業に従事可能な期間の2分の1を超える期間の従事があれば認められる(注2)。支払う給与が労務の対価として相当であること。このほか、専従の程度によっては、専従者として認められないケースもあるため注意が必要である。例えば、週1日程度の勤務では専従とは認められない可能性が高く、専業主婦が事業の一部を補助していた程度では認められなかった事例がある。青色事業専従者給与が税務上認められるためには、労務内容や勤務実態を明確に記録し、証拠として提示できる状態にしておくことが重要である。帳簿への記帳や振込決済を行い、支払い事実を明確にすることも求められる。特に注意が必要なのは、支払われる給与額が相当額を超えた場合の取扱いである。給与が過大と判断された場合、その超過分は経費として認められないばかりか、事業主から専従者への贈与とみなされ、贈与税の課税対象となる可能性がある。給与額の決定には、十分な検討が必要である(注3)。さらに、青色事業専従者給与を経費に算入するためには、「青色事業専従者給与に関する届出書」を所轄の税務署長に提出する必要がある。提出期限は、給与を経費に算入しようとする年の3月15日までである。ただし、その年の1月16日以降に新たに事業を開始した場合や、新たに専従者がいることとなった場合には、その日から2ヶ月以内に提出する。届出書には、専従者の氏名、職務内容、給与の金額支給時期などを詳細に記載する。また、専従者が増えた場合や、給与額を変更する場合には、「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を速やかに提出しなければならない。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2075.htmhttps://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/04/10.htmhttps://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/651008/01.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/03/03
満期や解約により保険金を受け取ったとき
確定申告の時期を迎え、満期や解約により保険金を受け取った場合の取扱いについて改めて確認しておきたい。同保険金にかかる税金は、契約者、受取人の関係によって異なり、所得税または贈与税の課税対象となる(注1)。1.契約者と受取人が同一の場合(自身の契約で、自身が受取人の場合)この場合、満期や解約による保険金は、受取の方法により、契約者(兼受取人)の一時所得または雑所得となる。満期保険金等を一時金で受領した場合満期保険金等を一時金で受領した場合には、一時所得になる。【計算式】(受取保険金額-払込保険料総額-特別控除額50万円)×1/2=一時所得満期保険金等を年金で受領した場合満期保険金等を年金で受領した場合には、その年中に受け取った年金の額から、その金額に対応する払込保険料または掛金の額を差し引いた金額が、公的年金等以外の雑所得になる。2.契約者と受取人が異なる場合(例:契約者が親、子が受取人)契約者(保険料の負担者)と保険金の受取人が異なる場合は、贈与税が課される。満期保険金を一時金でなく、年金で受領する場合は、その年金を受け取る権利に対して贈与税が課される。契約者と受取人が同一の場合は、満期返戻金額または解約返戻金額から払込保険料総額を差し引いた額が課税対象となるが、契約者(保険料の負担者)と保険金の受取人が異なる場合は、払込保険料は加味されない。暦年贈与の場合は、満期返戻金額または解約返戻金額から110万円を差し引いた額が贈与税の課税対象となる。3.契約者と受取人が同一であっても、保険料の負担者が異なる場合契約者と受取人が同一の場合は上記1の取扱いとなるが、実務では契約者と実際の保険料の負担者が異なることがある。例えば、契約者と受取人を子にしつつも、その保険料を親が直接保険会社に支払うケースである。この場合は、たとえ契約者と受取人が同一であっても、上記2と同様に贈与税が課される。この場合、払込保険料ではなく、上記2と同様に満期返戻金額または解約返戻金額が贈与税の対象となる。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1755.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/02/17
相続時精算課税制度と贈与税申告
令和5年度税制改正により、相続時精算課税制度が大幅に変更されている(注1)。令和6年中にこの制度を利用して贈与を受けた方は、確定申告手続きが例年と異なるため、注意が必要である。相続時精算課税制度は、60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子や孫に対して財産を贈与する際に選択できる制度である。贈与時においては、特別控除により2,500万円までの贈与が非課税となるが、贈与者が亡くなった際には、これらの贈与が相続財産に加算され、相続税対象となる(注2)。令和6年分において初めて相続時精算課税制度を選択する場合、以下の手続きが必要になる。「相続時精算課税選択届出書」の提出「相続時精算課税選択届出書」に受贈者の戸籍謄本または抄本などを添付して受贈者の所轄税務署に提出する。提出期間は、令和7年2月3日から3月17日まで。贈与税の申告書の提出(贈与財産が110万円を超える場合)贈与財産の価額が年110万円を超える場合は、1の届出書と併せて「贈与税の申告書」を提出する必要がある。一方で、贈与財産の価額が110万円以下の場合は、申告書の提出は不要で、届出書のみの提出で済む。このように手続きが変更になったのは、相続時精算課税制度においても年間110万円の基礎控除が認められるようになったことによる。これにより、贈与財産の価額が110万円以下の場合は贈与税申告書の提出義務がなくなった。令和6年分贈与税申告の申告期間は、令和7年2月3日から令和7年3月17日である。この期間は、所得税申告の申告期間(令和7年2月17日から令和7年3月17日)とは異なるため、早めの準備が求められる。特に、今回初めて相続時精算課税を選択する場合は、期限内に必要書類を全て提出しなければ選択が認められず、暦年課税となってしまうことに注意が必要である。改正により相続時精算課税はメリットが大きくなったが、一度選択すると取り消して暦年贈与に戻すことはできないため、選択する際には慎重に検討することが重要である。(参考)令和6年分贈与税の申告のしかたhttps://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/shinkoku/zoyo/tebiki2024/01.htm<注釈>https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0023006-004.pdfhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/02/17
必要経費と認められる支出〜資格取得費用をめぐる判断
所得税法では、必要経費を「事業の遂行上必要な支出」と定め、事業収入と直接関連するものが該当するとされる。個人事業においては、店舗併用住宅の維持費など、一つの支出が家事費と業務上必要な費用の両方の性質をもつ家事関連費について区分が難しい。特に、教育関連費の支出については、家事関連費に該当するのか、該当した場合に必要経費に算入できるかどうかを二段階で検討する必要がある。所得税法施行令96条では、家事関連費は原則として必要経費に算入できないと規定されている。ただし、支出の「主たる部分」が業務遂行上直接必要であり、かつ、その必要部分が明確に区分できる場合に限り、必要経費として認められる(注1)。この点に関し、法廷で争われた事例として、大阪高裁令和2年5月22日判決がある(注2)。本件では、接骨院を経営する者が、柔道整復師の資格取得費用を必要経費として計上できるかが争われた。裁判所の判断(要旨)は次のとおりである。資格がなくても事業を継続できていたため、資格取得が業務遂行上不可欠とはいえない。将来の事業拡大や収入増加の可能性はあるものの、資格取得は個人のスキル向上の側面が強く、必要経費とは認められない。支出の中に業務に関連する部分が含まれていたとしても、家事費と明確に区分されていないため、必要経費には算入できない。この判決から、必要経費として認められるには、業務との関連性を客観的に示す証拠が不可欠であり、納税者の主観的な判断だけでは認められないことがわかる。また、家事関連費と家事費を明確に区分することの重要性も指摘されており、教育関連費を安易に必要経費として計上することは避けるべきであろう。一方、近年の働き方の変化に伴い、リスキリングや資格取得の重要性が高まっていることから、教育関連費を必要経費として認めるべきではないかという意見もある。しかし、現状では十分な議論が尽くされておらず、本判決が実務に与える影響は大きい。教育関連費を必要経費として計上する際には、慎重な判断が求められる。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htmhttps://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2020/pdf/13408.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/02/10
チャットボットによる確定申告相談スタート
令和7年1月6日、令和6年分所得税の確定申告に対応する税務相談チャットボットが国税庁ホームページで公開された(注1)。チャットボットは「チャット(会話)」と「ロボット」を組み合わせた言葉で、利用者の知りたい情報を簡単に得られる便利なウエブサービスである。メニューから質問を選ぶか、ユーザーが文字を直接入力すると、AI(人工知能)が自動的に回答を表示してくれる(注2)。国税庁のチャットボットは「税務職員ふたば」というAIキャラクターが、利用者の質問に対して24時間対応している。●相談方法メニューから質問する方法「よくある質問」が一覧として表示されるので、相談内容に近いメニューを選択し、さらに細かい項目を選んでいくと回答が表示される。例えば、確定申告に必要な書類を調べたい場合、「所得税の確定申告令和6年分」から「確定申告に必要な書類を調べる」を選択する。その後、「所得の種類」や「控除の種類」を順に選ぶ。所得:「給与所得、公的年金、土地や建物の譲渡所得」、控除:「医療費控除、住宅ローン控除」と選択した場合は、マイナンバーを確認するための本人確認書類譲渡所得の内訳書医療費控除の明細書住宅借入金等特別控除の計算明細書住宅取得資金の借入金の年末残高証明書などが表示され、各書類名をクリックするとその様式や説明が確認できる。文字を直接入力して質問する方法具体的な質問を話し言葉で入力すると、それに応じた回答が表示される。例えば、「土地・建物を譲渡した時の税金について教えてほしい。」と入力すると、「土地や建物を売却した場合の税金の取扱い」が表示される。さらに、「参考情報:土地や建物を売ったとき」をクリックすると、譲渡所得や税金の計算方法、譲渡益や譲渡損失がある場合の特例について、さらに詳しい情報が表示される。税務相談チャットボットは昨年より進化しており、確定申告の税金相談だけでなく、e-Taxやスマホ申告の相談もできるようになっている。インターネット上で申告書が作成できる「確定申告書作成コーナー」の事前準備方法やエラーの対処方法などについても相談できる。自宅からパソコンやスマホで申告する際の相談ツールとして心強いものとなった印象であり、多くの利用が期待される。今後、令和6年分の消費税の確定申告に対応するチャットボットは、令和7年2月3日に公開される予定。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/chatbot/index.htmhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/chatbot/pdf/0020011-029.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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