税金ワンポイント
税務に関するニュースの中でも、注目度の高いトピックスを取り上げ紹介していく税金ワンポイント。主要な改正情報はもちろん、税務上、判断に迷いやすい税金実務のポイントを毎週お届けします。速報性の高い、タイムリーな情報を皆様の実務にお役立てください。
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2025/05/12
交際費と祝儀の経理処理
企業が創立記念や周年行事を開催し、取引先や関係者を招いて式典やパーティーを行うことは少なくない。これらの行事に係る費用は、通常、交際費として処理されるが、来賓等から祝儀を受け取った場合は、経理処理に注意が必要である。結論として、式典費用の支出(開催者の交際費)と祝儀の受領(参加者の交際費)は、それぞれ独立した経済取引であり、式典費用の総額から祝儀を控除して処理することはできない。式典費用は全額を「交際費」として計上し、受け取った祝儀は「雑収入」として処理する必要がある。例えば、国税庁タックスアンサーでは、宴会費(1人当たり1万円を超えるもの)、交通費、記念品代を含む総額が1,000万円、受け取った祝儀が100万円という事例が紹介されている。この場合、交際費として1,000万円、雑収入として100万円をそれぞれ計上することが適切である(注1)。なお、令和6年4月1日以降は、飲食に係る費用のうち、「1人あたり1万円以下」の金額は交際費等に含まれない取扱いとなっている(注2)。この1人あたりの金額は、「飲食等の費用の総額÷参加者数」により判定する。複数の法人が共同で式典を開催し費用を分担した場合も、合計費用を参加者数で除して判定する。ただし、分担または負担した法人側にその費用の総額の通知が無く総額が把握できない場合で、かつ、飲食等に要する1人あたりの金額がおおむね1万円程度と見込まれる場合には、その見込額により判定することができる。消費税の仕入税額控除についても、交際費の支出額は祝儀などの受領を差し引かず、総額で計上しなければならない。祝儀は不課税取引であり、これを控除して交際費を計上すると、実際の支出額と一致せず、消費税の控除額の計算に誤りが生じるおそれがあるためである。また、式典が社長の就任や退任によるものであった場合、得意先からの祝儀を会社の収入とすべきか、社長個人の収入にすべきかという論点が生ずる。祝儀を贈る側は、「(借方)交際費/(貸方)現金」と処理していることが多く、業務上の関係に基づくものであると考えられる。したがって、受領する会社側でも雑収入として計上するのが妥当である。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5261_qa.htm?utm_source=chatgpt.comhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/05/12
電子契約と印紙税
電子契約の普及により、契約書を電磁的記録で作成・保存する企業が増えている。電子契約では電子印鑑が押印されることが多く、これが朱色で表示されるため、PDF形式の契約書を見て、「印紙税の対象では?」と疑問を抱く方も少なくない。しかし、印紙税法では、紙により作成された「課税文書」に対して課税する仕組みであり、電子印鑑が押されたものであっても、それが電磁的記録(電子データ)である限り、印紙税の課税対象とはならない。印紙税法基本通達第44条では、「作成」の意義が書かれているが、電子ファイル(PDFやWordファイルなど)を「送信」する行為は「作成」に該当しないとされている。このため、契約書を電子データで作成し、メール等で送受信した場合には、印紙を貼付する必要はない(注1)。一方で、電子契約で締結した契約書であっても、それを紙に出力して交付した場合や、契約内容の変更に伴い変更契約書を紙で作成した場合には、印紙税の課税対象となるため注意が必要である(注2)。たとえば、当初の契約金額が90万円で、変更契約書に変更後の金額110万円が記載されている場合、その差額である20万円が「記載金額」となり、印紙税が課されることになる。一方で、変更契約書に変更後の金額のみが記載されており、変更前の契約金額が明らかでない場合は、その記載された金額全額が課税対象となる(注3)。電子契約の導入は、印紙税のコスト削減や契約業務の効率化に大きく寄与する。導入に際しては、契約締結後の変更対応や書面化の有無などについても十分に検討し、印紙税の課税リスクを回避するための社内体制を整備することが重要である。さらに、電子契約に関連して注意すべき法令に「電子帳簿保存法」があり、同法では契約書などの国税関係書類を電子データで保存する場合、真実性や可視性を確保するための要件が求められる。印紙税の課税対象外であっても、保存方法が電帳法の要件を満たしていない場合は、税務上の問題となる可能性があるため、電子契約書の保存体制についても十分に整備しておく必要がある。<注釈>https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/02/10.htmhttps://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/02/11.htmhttps://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/02/12.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/04/28
消費税調査の強化
近年、税務当局は消費税の調査を強化しており、特に不正還付の防止に注力している。税務署の税務調査だけでなく、国税局査察部も消費税調査に重点を置いている。不正還付の手口としては、同一の高級腕時計のシリアルナンバーや不正に入手したパスポートの写しを用いて書類を偽造し、架空の課税仕入れおよび架空の輸出免税売上を計上するもの、虚偽のパスポート情報を用いた免税商品の販売を装うものなどがある(注1)。これらは消費税の仕入税額控除制度や輸出物品販売所制度を悪用する典型例であり、国税庁はこうした不正還付に対して厳格に対応している。企業にはコンプライアンス強化が求められる。インボイス制度の導入により、今後、税務調査の方向性も変化すると予想される。インボイス制度では、適格請求書(インボイス)の保存が仕入税額控除の要件とされているため、税務調査ではインボイスおよび帳簿の記載が正確かつ適切であるか、申告された仕入税額控除が適正であるかが精査されることが見込まれる。会計ソフトを使用して記帳している場合、1つ誤りが発見されると、芋づる式に検索機能で同様の誤りを簡単に抽出できるため、税務調査も効率的に実施されるだろう。効率的な調査を行うため、国税局や税務署にはITに特化した専門部署があり、必要に応じて調査に協力している。インボイス制度が始まって間もない現段階では、国税庁は軽微な記載不備を目的とした調査は行わず、まずは制度の定着を図るために柔軟な対応をとっている。しかし、これを理由に対策を怠ることはできない。制度が浸透し、適用が厳格化されるにつれ、税務調査も厳しさを増していくと考えられる。インボイス制度に関しては、法律ではなく国税庁ホームページ内のみで取り扱いが示されている場合もあり、実務者は知識のアップデートが欠かせない(注2)。消費税調査において誤りが見つかり、修正申告を行った場合、過少申告加算税が課される(注3)。また、不正が発覚した場合は重加算税が課される。重加算税は、仮装や隠蔽といった不正行為を行った際に適用され、税額の35%または40%と非常に重い負担となる。これらに加えて延滞税も課されるため、企業にとっては大きなリスクとなる。確定申告期が終わり、税務署は7月に向けて事務年度最後の税務調査に乗り出す。7月の人事異動後には税務調査の最盛期を迎える。実務担当者にとって税務調査は負担となりがちだが、日頃から適切な処理を心掛け、税務調査に備えることが求められる。<注釈>https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/01.pdfhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice.htmhttps://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/tins/n04_3.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/04/21
事前確定届出給与を届出どおりに支給しなかった場合
事前確定届出給与は役員に対する給与を事前に定め、税務署に届け出ることでその給与額を損金として認めてもらう制度である。事前確定届出給与として認められるためには、支給時期や金額が事前に確定しており、実際の支給がその内容通りであることが求められる。もし、届け出と異なる支給があった場合は事前確定届出給与としての適格性を失い、損金算入が否認されることになる。3月決算法人が役員に対して、令和5年12月と令和6年5月にそれぞれ200万円の給与を支給すると届け出たものの、異なる支給をした場合は次のように取り扱う。1令和5年12月には100万円しか支給せず、令和6年5月には届け出どおり200万円を支給した場合1回目の支給が届け出と異なったため、その職務執行期間に係る給与すべてが定めどおりに行われたといえない。結果として、2回目の支給も含め、合計300万円全額が損金不算入となる。2令和5年12月に予定どおり200万円を支給し、令和6年5月には100万円しか支給しなかった場合このケースでは、1回目の200万円は損金算入が認められるが、2回目の100万円は損金不算入となる。1回目については、3月決算の年度内に予定どおり支給が完了していること、さらに、2回目の支給が前事業年度の課税所得に影響を与えるものではないことから、2回目のみを損金不算入とすることで差し支えない。このケースでは、決算期をまたいでの支給であるため、2回目のみが損金不算入となるが、これが同一事業年度内だった場合には、上記1のように全額が事前確定届出給与として認められない可能性が高い。業績が悪化し、減額支給をせざるを得ないケースがある。しかし、その場合でも減額支給が事前確定届出給与の適格性を失うことに変わりはないため注意が必要である。平成25年3月14日東京高裁判決でも、「業績悪化による減額は租税回避に当たらない」との主張は認められず、減額支給した給与が全額損金不算入とされている。やむを得ない事情で支給内容を変更する際は、「事前確定届出給与に関する変更届出書」を、変更決議日から1か月以内、または給与支給日の前日までのいずれか早い日までに提出する必要がある。変更が生じた場合には、迅速に変更届出を行うことが不可欠である。参考:国税庁HP「定めどおりに支給されたかどうかの判定(事前確定届出給与)」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/11/16.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/04/14
保険外交員は「代理業」に該当
平成29年度以降、東京都は生命保険外交員の業務を「代理業」に該当するとして個人事業税を課税する運用に転じている。この取扱いを巡って争われた裁判事例について、令和7年3月4日、原告19人(納税者)の請求を棄却する判決が下された(令和6年(行ウ)第118号)。原告らは生命保険募集人(以下「保険外交員」)であり、生命保険会社との間で営業社員雇用契約等を締結し、歩合制による報酬を受けていた。保険外交員が受ける歩合報酬は通常、事業所得に該当するが、それが事業税の課税対象である「代理業」に当たるかどうかについては、かねてより議論があった。その理由としては、保険外交員が地方税法に列挙された「事業」に含まれていないこと、昭和29年の行政実例で外交員への課税が「非課税」とされていたこと、一部の道府県では保険外交員を「代理業」に認定していないことなどが挙げられる。裁判において原告らは、自らは代理権を有しておらず、代理権を有しない者が行う取引の媒介業務を「代理業」に当たると解釈することは、租税法律主義等に反し、地方税法72条の2第8項の趣旨にも反するなどと主張した。しかし判決では、地方税法が「代理業」を定義していない以上、商法27条の「代理商」概念と整合的に解釈すべきとし、代理権の有無にかかわらず「一定の商人のために、反復継続的に取引の代理または媒介を行う事業」は課税対象となると判断した。また、報酬体系や支出の内容、業務の独立性などを踏まえ、外交員業務は「自己の計算と危険によって行われる独立した事業」に該当すると結論づけた。実際、原告らは事業所得の申告において、事務所経費や青色専従者給与等を計上しており、収入・支出の規模が1億円を超える者も存在していた。契約上「営業社員雇用契約」などとされていても、その実態が準委任契約としての性質を有すると認められる場合には、「使用人」とはされず、代理業として課税されることが明らかとなった。この判決を受けて、保険外交員が行う事業について「非課税」として運用している自治体の対応が注目される。また、令和6年10月の都税調査会では、法定業種の限定列挙方式を廃止し、事業性のあるもの全般を課税対象とする提言が復活しており、今後は課税基準そのものの見直しも議論される可能性もある。外交員に限らず、委託型業務に従事する者は、自身の業務実態を再点検し、必要に応じて専門家の助言を仰ぐべきであろう。提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/04/07
中小企業者等の雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除
令和6年度の税制改正により見直された「中小企業者等の雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除」(いわゆる「賃上げ促進税制」)は、節税効果が高いだけでなく、繰越税額控除制度が設けられるなど、中小企業者にとって利用しやすい制度となっている。中小企業庁からガイドブックも公開されているため、活用するとよい(注1)。この制度は、青色申告書を提出する中小企業者または農業協同組合等が、令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度において、国内雇用者に対して給与等を支給し、一定の要件を満たす場合に適用される(注2)。適用されると、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%相当額が法人税額から控除できる。さらに、上乗せ要件を満たす場合には、控除率が加算される。1.適用要件国内雇用者に対して給与を支給すること。雇用者給与等支給増加割合が1.5%以上であること。【算式】(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)/比較雇用者給与等支給額≧1.5%2.税額控除限度額税額控除限度額は、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%相当額とされている。ただし、適用対象法人の適用事業年度の調整前法人税額の20%相当額を超える場合には、調整前法人税額の20%相当額が控除額の上限となる。3.上乗せ要件以下の要件を満たす場合、15%にそれぞれの割合を加算した控除率となる。雇用者給与等支給増加割合が2.5%以上である場合:15%教育訓練費の額が、比較教育訓練費の額に対して5%以上の増加があり、かつ雇用者給与等支給額の0.05%以上である場合:10%プラチナくるみん認定またはプラチナえるぼし認定を受けた場合、または、くるみん認定・えるぼし認定(2段階目以上)を受けた場合:5%4.繰越税額控除制度要件を満たす賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額(繰越税額控除限度超過額)については、翌年度以降5年間の繰り越しが認められる。この適用を受けるには、確定申告書に明細書を添付するなどの手続きが必要である。<注釈>https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai.htmlhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5927-2.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/03/31
死亡した者に対する退職手当等の取扱い
役員や従業員が在職中に死亡した際に、その遺族に支給される退職手当等を死亡退職金という。これは通常の退職金とは異なり、その死亡後に支給期が到来するものは、故人に帰属して所得税が課されるのか、またはその支給を受ける相続人などに帰属して相続税が課されるのかという問題が生ずる。相続税法第3条1項2号は、被相続人(死亡した役員や従業員)に支給されるべきであった退職手当金は、相続または遺贈により取得したものとみなすと規定している。ただし、死亡後も相当の期間が経過した後に支給されるものまで相続税の課税対象にすることは適当でないとして、死亡後3年以内の支給確定分はみなし相続財産、死亡後3年経過後に支給が確定したものは、それを受領した者の一時所得になると規定している。なお、この場合、所得税法第9条1項17号では相続税との二重課税を避ける趣旨から、所得税が課税されないと規定されているため、源泉徴収の必要はない。(注1)一方で、死亡した者に退職金を支払うケースとして、生前に退職し、その後、支給日までの間に死亡するケースがある。このようなケースで、生前に退職手当等として支給すべき額が確定していた場合は、所得税法上の所得とみなされ、源泉徴収や準確定申告の必要がある。この取り扱いは住民税においても同様である。例えば、国税庁ホームページでは、3月31日に退職し、4月25日に退職金を支給する予定だったが、4月20日に死亡した事例が掲載されており、この事例では詳細は書かれていないが、生存中に退職手当等が確定しているという前提で、退職所得の収入とすべき時期は退職の日であり、所得税及び復興特別所得税の源泉徴収が必要であるとしている(注2)。この場合、所得税等を差し引いた残余の金額が本来の相続財産として相続税が課税されることになり、みなし相続財産の非課税の適用はない。また、役員や従業員が死亡退職した際、勤務先から弔慰金や花輪代、葬祭料などが支払われることがあるが、これらは通常、相続税の対象にはならない。しかし、実質上、退職手当等に該当する場合や一定の金額を超える場合は、退職手当等として相続財産とみなされるため注意が必要である(注3)。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4117.htmhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2728_qa.htm#q1https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4120.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/03/24
総合譲渡所得の注意点
譲渡所得とは、土地、建物、株式、ゴルフ会員券、書画骨董、貴金属や宝石などの資産を売却することによって生ずる所得をいう(注1)が、ゴルフ会員権、金地金などの動産、借家権、特許権などの権利の譲渡から生じる所得は総合譲渡所得とされている。総合譲渡所得は、原則として保有期間に応じて短期譲渡所得と長期譲渡所得に区分される。具体的には、譲渡資産の保有期間が5年以内のものは短期譲渡所得、5年を超えるものは長期譲渡所得とされる(注2)。ただし、特定の資産については保有期間に関わらず長期譲渡所得とされる。例えば、自己の研究の成果である特許権や実用新案権、自己の著作に関わる著作権などが該当する。生活用動産の譲渡については、所得税法第9条第1項第9号に規定されており、「自己又はその配偶者その他の親族が生活の用に供する家具、じゅう器、衣服その他の資産で政令で定めるものの譲渡による所得」は非課税とされている。こうした生活に通常必要な動産は、売却して利益が出たとしても課税されないが、その代わりに損失が生じても損益通算の対象にはならない。一方で、生活に通常必要でない資産や、生活の用に供する動産のうち、30万円を超える貴金属、書画、骨董、美術工芸品などの譲渡所得は課税対象となる。生活用動産の課税・非課税の判定においては、単に金額基準である30万円を当てはめるのではなく、取引形態や資産の性質を見極める必要がある。例えば、高級腕時計だったとしても、宝飾品が一切使われておらず、日常的に使用するものであれば生活に通常必要である動産の要素が強いが、宝石がちりばめられたものは宝飾品として扱われ、生活に通常必要でない動産と見なされるため、課税対象となる。車の取り扱いについても、プライベートと業務で兼用している高級車の場合、それが生活用動産として認められるかどうかは判断が難しい。裁判でも争われることがあり、その判断基準としては、その所有が通常かつ必要と考えられるかどうかが重要視される。一般的に、個々の所有者の事情は考慮されないが、地域的な特殊性がある場合には一定の配慮がなされることもある。また、時の経過によって価値が減少するかどうか、歴史的価値や希少価値を有するかどうか、代替性があるかどうかといった要素も判断材料となる。ゴルフ会員権については、ゴルフ場経営法人が破綻し、優先的施設利用権が消滅したものは雑所得となる。それ以外のゴルフ会員権は総合譲渡所得とされるが、平成26年4月1日以降、その譲渡損失は他の所得と損益通算ができなくなっている。これは、生活に通常必要でない資産に該当するためである。総合譲渡所得は、生活用動産の譲渡所得の非課税範囲や特例の適用について慎重に判断する必要がある。また、事業用資産の譲渡については、棚卸資産に準ずる資産か、少額重要資産に該当するか、その譲渡所得が営利を目的として継続的に行われているか等の検討が必要となる点に注意が必要である。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3105.htmhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1460.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/03/17
医療費控除の判断ポイント
所得税確定申告における医療費控除の適用可否を判断する際、特に注意すべきポイントがいくつかある。医療費控除を適用する際には、以下のポイントを正確に判断することが求められる。1.医療品購入に関する判断所得税法73条2項及び施行令207条2号の「治療又は療養に必要な医薬品の購入」の対価は、治療又は療養に必要な薬事法2条1項所定の「医薬品」の購入の対価に限られると解されているところ、医師の処方箋に基づいて薬局で購入した医薬品は、原則としてすべて医療費控除の対象となる。一方で、処方箋なしに自己判断で購入した市販薬については、その全てが控除の対象となるわけではなく、いくつかの条件を満たす必要がある。具体的には、購入した医薬品が薬機法(旧薬事法)に定められた医薬品であり、単なる健康維持や美容目的ではなく、明確な治療や療養のために必要なものであることが求められる。さらに、その症状に応じた一般的な治療費の範囲内で支出されたものでなければならない(注1)。サプリメントについては、医師の指導のもとで購入した場合でも医薬品には該当しないため、控除の対象外とした判例がある(平成27年5月12日東京地裁判決第265号‐75(順号12658))。不妊治療の一環としてクリニックで購入した商品が、医薬品と同等の成分を含む製品であっても、医療費控除の対象とすることはできないと判断された。2.交通費の扱い医療機関への通院にかかった交通費については、その費用の性質によって医療費控除の適用可否が異なる。公共交通機関を利用した場合の運賃、例えば電車やバスの料金、または患者の事情によりやむを得ず利用したタクシー代は、医療費控除の対象として認められる。しかし、自家用車を利用した場合のガソリン代や、高速道路の通行料金、さらには病院の駐車場代については、医療費控除の対象とはならない。これは、令和5年11月6日に公表された裁決でも明確に示されている。3.セルフメディケーション税制との関係通常の医療費控除とは別に、「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」が存在する。この制度では、一定の要件を満たすスイッチOTC医薬品(医療用から転用された一般用医薬品)の購入費用が控除対象となる。ただし、適用には健康診断や予防接種などの「一定の取組」を行っていることが条件となる。通常の医療費控除とは併用できない(注2)。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1122.htmhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1129.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/03/10
青色事業専従者給与とは
青色事業専従者給与とは、青色申告を行う個人事業主が、生計を一にする配偶者やその他の親族で、専らその事業に従事する者に支払う給与を、必要経費として認める制度である(注1)。青色事業専従者給与を経費として計上するためには、以下の要件を満たす必要がある。生計を一にする配偶者または親族であること。その年の12月31日時点で年齢が15歳以上であること。その年の6か月を超える期間、専らその事業に従事していること。年の途中で事業開始した場合などは、事業に従事可能な期間の2分の1を超える期間の従事があれば認められる(注2)。支払う給与が労務の対価として相当であること。このほか、専従の程度によっては、専従者として認められないケースもあるため注意が必要である。例えば、週1日程度の勤務では専従とは認められない可能性が高く、専業主婦が事業の一部を補助していた程度では認められなかった事例がある。青色事業専従者給与が税務上認められるためには、労務内容や勤務実態を明確に記録し、証拠として提示できる状態にしておくことが重要である。帳簿への記帳や振込決済を行い、支払い事実を明確にすることも求められる。特に注意が必要なのは、支払われる給与額が相当額を超えた場合の取扱いである。給与が過大と判断された場合、その超過分は経費として認められないばかりか、事業主から専従者への贈与とみなされ、贈与税の課税対象となる可能性がある。給与額の決定には、十分な検討が必要である(注3)。さらに、青色事業専従者給与を経費に算入するためには、「青色事業専従者給与に関する届出書」を所轄の税務署長に提出する必要がある。提出期限は、給与を経費に算入しようとする年の3月15日までである。ただし、その年の1月16日以降に新たに事業を開始した場合や、新たに専従者がいることとなった場合には、その日から2ヶ月以内に提出する。届出書には、専従者の氏名、職務内容、給与の金額支給時期などを詳細に記載する。また、専従者が増えた場合や、給与額を変更する場合には、「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を速やかに提出しなければならない。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2075.htmhttps://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/04/10.htmhttps://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/651008/01.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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