会計研究レポート
MJS税経システム研究所・会計システム研究会の顧問・客員研究員による新会計基準や制度改正等をできるだけわかりやすく解説した各種研究リポートを掲載しています。
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2025/03/06 財務会計
公益法人制度の改正(4)
はじめに「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(以下、改正前公益認定法)が、昨年2024年(令和6年)5月に改正(改正後の法律は、以下、改正公益認定法)され、新たな公益法人制度が2025年(令和7年)4月から始まります。この改正の内容のなかで、今回は、遊休財産額の保有制限に係る改正を取り上げて解説します。遊休財産とは、端的に表現するならば、使用しておらず、ないしは使用する予定がないままに保有している財産を指しており、遊休財産額とはその金額です。公益認定される法人が遊休財産を過度に保有するということは、経済資源の効率的な利用という社会全体の観点からは、望まれるものではありません。そのため、社会全体の利益に鑑み、遊休財産額の保有制限が設けられてきました。そして公益目的事業費の1年分の額が、遊休財産額の保有制限となっています。しかし、その保有制限に対して、もっと余裕を持たせて欲しいとの要望があったことを踏まえて、その制限を緩和する方向での改正が行われました。5.遊休財産額の保有制限の改正(1)改正の背景遊休財産額は、具体的には次の算式により算定されています。遊休財産額=資産額-(負債額+基金額)-(控除対象財産額-対応負債額)ここにいう控除対象財産とは、現に使用されているあるいはその将来の使用が明確に決まっている財産として、遊休財産額の算定から控除されるものです。例えば、公益目的保有財産や公益目的事業を行うために必要な収益事業等に供する財産として使用している財産のほか、特定費用準備資金や資産取得資金、寄附者による使途指定が付されて寄附された財産等が、控除対象財産に該当します。対応負債は、そうした控除対象財産の取得のための資金調達となった負債を指しています。この対応負債は、遊休財産額の算定上、正味の控除対象財産額を計算するために、上記算式のとおりとなっています。こうした公益認定基準が設けられたときには、1年分の公益目的事業費相当額の資産を保有していれば、法人を取り巻く環境の変化にも対応できるものと考えられていました。しかし、公益目的事業に重大な影響を与えるにもかかわらず、予見することが困難な自然災害や新型コロナ感染症のパンデミック等といった事態に備えるには不十分であるとの意見が広く存在していました。要するに、何に使用するのかが決められていない資産についても、万が一に備えるという意味で、一定程度の財産保有は、遊休財産額の保有制限とは別に認められるべきであるとの考え方が示されていました。(2)「遊休財産額」の保有制限から「使途不特定財産額」の保有制限へ上記の背景をもって、予見が困難な災害等に備えるための財産を、保有制限から除こうとの方向性が示されました。ただし、遊休財産という用語には、使用されておらず、かつ将来の使用が計画ないしは予定されていないものという意味が込められています。そこで、予見が困難な災害等に備えるための資産、すなわちいつどれだけ何に使用するのかが明確には決まっていない資産をも保有制限から除くために、遊休財産という用語に代えて、「使途不特定財産」という用語が用いられることとなりました。改正公益認定法第16条第1項では、「公益法人の毎事業年度の末日における使途不特定財産額は、当該公益法人が公益目的事業を翌事業年度においても行うために必要な額として、当該事業年度前の事業年度において行った公益目的事業の実施に要した費用の額(その保有する資産の状況及び事業活動の態様に応じ当該費用の額に準ずるものとして内閣府令で定めるものの額を含む。)を基礎として内閣府令で定めるところにより算定した額を超えてはならない。」と規定されることとなりました。そして第2項で、使途不特定財産額は、「公益法人による財産の使用若しくは管理の状況又は当該財産の性質に鑑み、公益目的事業又は公益目的事業を行うために必要な収益事業等その他の業務若しくは活動のために現に使用されておらず、かつ、引き続きこれらのために使用されることが見込まれない財産」と定義されています。(3)公益目的事業継続予備財産使途不特定財産から除かれるとされた予見困難な災害等に備えるための財産は、「公益目的事業継続予備財産」と呼ばれ、改正公益認定法第16条第2項のなかで、「災害その他の予見し難い事由が発生した場合においても公益目的事業を継続的に行うために必要な限度において保有する必要があるもの」と定義づけられています。そしてこの公益目的事業継続予備財産については、内閣府令「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則」(以下、公益認定等規則)第35条にて、その設定要件として次の3つが定められています。【公益目的事業継続予備財産の要件】法人の実情に鑑み、資金を保有する必要性があること当該法人の事業内容、資産及び収支の状況、予見し難い災害等の発生により想定される公益目的事業継続が困難となる事態、予見し難い災害等が発生した場合でも公益目的事業を継続するための平時の取組みの状況等に鑑み、公益目的事業を継続的に行うための資金を保有する必要性があること予備財産の限度額が算定されていること予見し難い災害等に起因して必要となる資産の額を算定することは困難であると思われるため、上記一の必要性と公的機関等における各種検討結果・研究内容、過去に発生した類似の事例を基にしつつ、かつ平時の取組みにより抑制できる部分は除いて、その限度額を算定。予備財産額がその限度額以下であること予備財産は、使途が特定されていない公益目的事業財産であるから、公益目的事業会計における使途不特定の財産額(対応負債額を除く)を超えてはならないこと。具体的には、上記二の限度額と公益目的事業会計における「資産額-(負債額+基金額)-(控除対象財産額-対応負債額)」のいずれか少ない額以下であること。そして公益目的事業継続予備財産を保有している場合、その保有の理由及びその3つの要件の内容を毎事業年度の経過後3ヶ月以内に、法人自らが公表しなければなりません(改正認定法第16条第3項、公益認定等規則第37条第1項及び第2項)。当然ながら、その保有の理由としては、既述の3つの要件に適合することが説明されなければなりません。なおこうした公表は、インターネットの利用等の適切な方法により行うこととされています(公益認定等規則第37条第3項)。(4)使途不特定財産額の保有制限額の算定(公益認定等規則第34条)上述の公益目的事業継続予備財産を考慮するならば、使途不特定財産額は、次の算式により算定されることになります。使途不特定財産額=資産額-(負債額+基金額)-(控除対象財産額-対応負債額)-公益目的事業継続予備財産額そして使途不特定財産額となる「1年分の公益目的事業費相当額」は、原則として、前事業年度までの過去5年間の各事業年度における公益目的事業費相当額の平均額となります。平均額を採用するのは、コロナ禍において生じたような公益目的事業費が突発的に激減したりした場合、保有制限額も急減することとなり、結果的に事業の安定性や継続性に問題が生じる程度で使途不特定財産額の保有が制限されるリスクを回避する意図があると考えられます。なお、特例として、公益目的事業の規模が急速に拡大しているような場合には、過去5年間の平均額をもって保有制限額とするならば、拡大している公益目的事業の規模に応じた財産を確保することができなくなる可能性もあるとして、その事業年度または前事業年度の公益目的事業費相当額を保有限度額とすることも認められています。図表:遊休財産規制の見直し(出所)内閣府公益認定等委員会事務局「新しい公益法人制度説明資料」(2025年1月10日)、スライド25。https://www.koeki-info.go.jp/regulation/pdf/20250110kaisetsu.pdf提供:税経システム研究所
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2025/02/27 管理会計
中小企業が身につけておきたい原価管理の知識(21)
1.はじめに本シリーズでは、経営・会計において欠かせない原価管理の考え方を紹介します。今回は、前回に続き、原価企画の例として、富士フイルムビジネスイノベーション株式会社(以下、同社)による製品開発時の取り組みについて説明します。原価企画では、計画時点での見積額から原価が大幅に変動する場合があり、コスト変動を可能な限り抑えることが課題になります。以下では、コスト変動の管理について考えてみます。2.コスト変動のリスク管理表1コスト変動リスクの一例設計リスク共通項対策リスク例:熱、騒音、安全基準他部門要求対策リスク例:加工性、組立性構成リスク構成漏れリスク例:未出図分漏れ、リスト作成ミス小組立リスク例:仕入先変更、手配単位変更(出所)加登(1993,p.176)を基に筆者作成。前回の記事でも確認したように、原価は、内的・外的な要因によって変動します。目標原価を達成するうえで、コスト変動のリスクを最小限に抑えることが重要になります。例えば、事務機器の開発では、開発期間中に発生する様々なコスト変動のリスク事項を表1のような一覧表にして管理することがあります。3.コスト変動に対する管理の取り組み例ここでは、コスト変動のリスク管理に関する同社の取り組み内容を見てみましょう。同社の原価企画で、コスト変動が予想されるリスク事項への対策を検討します。コストの増加、減少が予想される項目を予測額とともに一覧表にして、変更策を検討します。次に、一覧表に記載された項目について、開発活動機能チームのリーダーを中心として変更策の内容とそれを実行した場合に開発機能の目標を達成できるかを確認し、開発商品QCD(Quality品質-Cost原価-Delivery納期)責任者に申告します。開発QCD責任者は、変更内容とコスト変動の予測額を確認し、妥当な変更であるか、増加額を最小限に抑えるために他の対策は無いか、目標額以内に入っているかなどを確認します。増加額を最小限に抑える対策が他にもあったり、原価の目標額が未達であったりした時は、開発活動機能チームのリーダーに戻され、再度検討の指示が出されます。変更予定の項目が確認され、変更内容に関して問題が無ければ承認されます。開発QCD責任者によって変更予定の項目が承認されると、図面の変更や変更手続きが開始され、出図され、外注の部品については取引先へと伝達されます。取引先からの原価見積りの回答額が変動予定額を下回れば、提案内容通りに図面の変更が行われます。回答額が変動予定額を上回ると、調達部門担当者による取引先との交渉を中心とする原価改善活動が行われます(注1)。最後に、原価推進責任者が、開発機能ごとのコスト変動の予測額と実績額を集計し、その数値を開発QCD責任者が確認することで、目標設定時の変動許容額に収まるように管理します。以上のように、同社では、開発活動機能チームのリーダーを中心に変動額の推移を可視化することによって、現状の進捗状況を把握し、コスト変動を抑制する取り組みが行われています。参考文献加登豊.1993.『原価企画:戦略的コストマネジメント』日本経済新聞社.谷武幸.2022.『エッセンシャル管理会計第4版』中央経済社.吉田栄介・伊藤治文.2021.『実践Q&Aコストダウンのはなし』中央経済社.<注釈>交渉だけではコストのギャップが解消できないと判断された時は、同社内の設計部門に戻して設計者による改善の検討を行うこともあります。提供:税経システム研究所
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2025/02/20 財務会計
2015年改訂版 中小企業向け国際財務報告基準(21)
1.はじめにこのシリーズでは、2015年に国際会計基準審議会(InternationalAccountingStandardsBoard:IASB)が公表した「改訂版中小企業向け国際財務報告基準」(以下、「中小企業向けIFRS(2015年版)」という)について解説しています。2022年9月に、IASBは、公開草案「中小企業向け国際財務報告基準(第3版)」(以下、「公開草案(第3版)」という)を公表しており、本シリーズでも、適宜「公開草案(第3版)」に触れています。IASBのウェブサイトによると、「中小企業向け国際財務報告基準(第3版)」は、2025年の第一四半期に公表される予定です(注1)。今回は、「公開草案(第3版)」の第23章「顧客との契約から生じる収益」の開示規定について説明し、この章の説明を終えることにします。2.開示規定(1)カテゴリ別の表示顧客との契約から認識した収益は、次のようなカテゴリに分けて表示します(23.121項)。財の販売サービスの提供ロイヤリティ手数料(2)顧客との契約包括利益計算書で区分表示されている場合を除き、顧客との契約から生じた債権または契約資産について認識した減損損失額を開示します(23.122項)。(3)契約残高次の事項を注記する必要があります(23.123項)。顧客との契約から生じた債権、契約資産および契約負債の期首残高と期末残高(区分表示していない場合)報告期間に認識した収益のうち、期首残高の契約負債残高に含まれていたもの報告期間に、過去の期間に充足した履行義務、または部分的に充足した履行義務から認識した収益(例:変動対価の見積値の変動)(4)約束顧客との契約における約束に関する次のような情報を開示します(23.124項)。約束を充足する通常の時点(例:出荷時、納品時、サービス提供時、サービス完了時)重要な支払い条件返品義務、返金義務、その他の類似義務製品保証や関連する義務の種類(5)約束の充足時期の決定時間の経過とともに充足される約束については、収益の認識に際して用いた方法を開示します(23.125項)。(6)未充足の約束未充足の約束の重要性とこれらの約束が充足される予想時期に関する定量的情報または定性的情報を開示します(23.126項)。(7)契約獲得コストと契約履行コスト契約獲得コスト(契約を獲得するためのコスト)と契約履行コスト(契約を履行するためのコスト)に関する次の情報を開示します(23.127項)。契約獲得コストまたは契約履行コストから認識した資産について、資産の主要区分別の期末残高報告期間に認識した償却および減損損失の金額(8)一定の事実貨幣の時間価値の調整を行わなかった場合(23.59項)、または契約獲得コストを費用処理した場合(23.105項)は、その事実を開示します(23.128項)「公開草案(第3版)」でも、収益認識に関する開示は規定されていますが、IFRS第15号や企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」の規定にはある「収益の分解(情報)」(注2)などはないため、簡略化されていると言えるでしょう。<注釈>https://www.ifrs.org/projects/work-plan/2019-comprehensive-review-of-the-ifrs-for-smes-standard/(最終アクセス日は2025年1月5日)。「収益の分解(情報)」は、顧客との契約から認識した収益を、収益とキャッシュ・フローの性質、金額、発生時期および不確実性に影響を与える主要な要因に基づく区分に分解した情報を開示することです。提供:税経システム研究所
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2025/02/13 管理会計
生成AIを活用した財務・非財務情報の分析(1)
2025-02-219:00追記当記事につきまして、タイトルに変更がございました。謹んでお詫び申し上げますとともに、下記のとおり訂正いたします。(変更前)生成AIを活用した財務・非財務情報の活用(1)↓(変更後)生成AIを活用した財務・非財務情報の分析(1)1.生成AIの発展とビジネスでの活用生成AI(GenerativeAI)の爆発的な成長は、ビジネス環境を大きく変貌させています。ChatGPT、MicrosoftCopilot、GoogleGeminiなど、多くの生成AIが登場し、日々その内容はアップデートされ続けています。生成AIは我々の生活の様々な場面で用いられるようになっていますので、おそらく読者の皆さんも、なんらかの生成AIに触れたことがあるのではないでしょうか。そもそも生成AIとは、大量のデータを学習して新しいデータやコンテンツを生成する能力を持つ人工知能技術のことを言います。その基盤技術には、ニューラルネットワークと呼ばれる人間の脳の神経伝達を模した計算モデルが使用されており、まるで、人間が学習を通じて新たなものを創造するのと同じようなプロセスによって、文章、音声、映像などを作り出すことができるのです。グローバルなビジネスシーンでは、生成AIの活用が爆発的なスピードで進んでいます。総務省(2024)(注1)では、日本、米国、ドイツ、中国の4か国の企業における生成AIの活用状況についての調査結果が示されていますが、日本企業の利用状況は、他国から大幅に遅れをとっていることがわかります。メールや議事録、資料作成等の補助への生成AIの活用状況(注2)は、米国(84.7%)、ドイツ(72.7%)、中国(84.4%)に対して、日本(46.8%)となっており、また、生成AIの自社製品やサービスへの組み込みについても、米国(79.4%)、ドイツ(68.7%)、中国(84.0%)に対して、日本(34.6%)となっています。同調査では、その他様々な場面での生成AIの活用状況が示されていますが、いずれの項目においても日本企業での活用の程度は低い状況となっています。日本企業の生成AI利用率の低さの背景には、生成AI利用によって生ずるリスクに対する懸念があるのかもしれません。事実、生成AIは常に正確な情報を出力してくれるとは限りませんし、まれに誤った情報を出力してしまうこともあります。また、出力された情報の根拠となる資料が完全に示されないこともあります。近年の生成AIはこれらの問題に対処するように、情報の精度も格段に上がり、出力情報の根拠資料も明確に示すように改良が進められてきました。これらの改良によって、生成AIの利用リスクは生成AIが世に出始めた当初に比べて非常に小さくなっていますが、リスクが全くなくなったわけではありません(注3)。したがって、生成AIを利用する場合は、生成AIに依存し過ぎず、それを使う側の人間も情報をアップデートし、スキルを高めていく必要がありますが、だからといって、生成AIを過度に恐れる必要もありません。使い方によっては、生成AIはビジネスを格段にレベルアップさせるための大きな武器となるのです。2.生成AIで会計情報を活かす本リポートでは、生成AIを活用しながら会計情報をどのように活かすことができるのか、具体的な活用方法を含めて解説していきます。これまで、会計というと、主に貨幣的価値によって表現される財務情報が主役でしたが、近年では、財務情報が生み出されるプロセスの情報である非財務情報をマネジメントすることの重要性に対する企業の認識も高まっています。なかには、非財務情報がどのようなプロセスを通じて財務業績、ひいては企業価値の向上をもたらすのかについて、相関や因果関係の分析を行う企業も現れ始めています。たとえば、アサヒグループでは、環境に関する取り組み(非財務情報)が、企業の活動を通じて、企業業績(財務業績)に影響を与える過程を図1のような仮説として示し、その検証と改善を行っています。図1非財務情報と財務情報を結び付ける仮説検証出典:アサヒグループ統合報告書(2024),pp.39-40.生成AIが登場する以前であれば、上記のような分析を行うことは容易ではありませんでした。大規模なシステム投資を行うか、統計やプログラミングに長けた高度な能力を持つ人材を獲得しなければ、そもそも基本的なデータ分析ですら、実行することは難しかったでしょう。しかし、生成AIの登場により、データ分析の実行環境は大きく変化しています。とくに、もっとも名の知れた生成AIと言っても過言ではないChatGPTは、データ分析能力が非常に高いことでも有名です。本リポートでは、ChatGPTを用いて、分析コードを一切使わずにデータ分析を行う方法を解説していきます。具体的な解説は、次回のリポートからとさせていただきますが、さいごに、簡単な分析例をお示しして、第一回のリポートを閉じたいと思います。3.ChatGPTを用いたデータ分析今回はある架空の企業データ(注4)を用いて、分析を試みます。データには、10年分の売上高、広告費、給与、社員研修の時間、および有給取得率が含まれています。また、分析は、ChatGPTの最新モデルであるGPT-4o(GPT-4omni)を用いることにします。GPT-4oは、ユーザー登録後、使用回数制限はありますが、無料版でも使用することが可能です(注5)。まず、注3のリンクから、今回の分析に必要となるExcelファイルをダウンロードしてください。その後、ChatGPTにユーザー登録後、図2の①の箇所をクリックし、当該Excelファイルを添付します。その後、②メッセージ記入欄に以下の指示(プロンプト)を入力し、③実行します。「これは自社の10年分の財務・非財務情報です。このデータを用いて、広告費、給与、社員研修の時間、有給取得率が売上高に与える影響について分析を実行し、統計分析の専門用語を使用せずに解釈を記述してください。影響関係が不確実なものについては、出力は不要です。また、具体的な影響(たとえば、有給取得率が〇%増えると、売上が約〇円増加する)がわかるように解釈を記述してください。」図2ChatGPTの初期入力画面すると、図3のような結果が出力されます。ChatGPTを用いた分析の結果、この企業においては、社員研修時間や有給取得率の増加が売上高の向上に寄与しているものの、広告費の増加は売上高の向上に寄与していないことが確認できました(注6)。今回のリポートでは、これ以上の追加的な分析は行いませんが、ChatGPTと対話を繰り返すことにより、さらに詳細な分析やグラフの出力などを行うことも可能です。図3ChatGPTによる解析結果生成AIをうまく使いこなすことができれば、会計情報を効果的に活用し、データに基づく経営を行うことが可能になります。次回のリポートから、ChatGPTを用いた様々な分析についてご紹介していきますので、ぜひこの機会に生成AIのビジネスへの活用を検討していただければと思います。<注釈>総務省(2024)「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究」https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/datashu.html#f00063総務省(2024)への回答のうち、生成AIの活用状況について「業務で使用中(効果はでている)」および「業務で使用中(効果は測定中または不明)」と回答したものを生成AIを活用しているものとして割合を計算しています。生成AI利用のリスクについては稿を改めてご紹介させていただきます。Excelデータは、以下のURLよりダウンロードいただけます。https://www.dropbox.com/scl/fi/j1kt3co2kowa47ie2bqdq/data.xlsx?rlkey=lp3jyzp6c0n5dvg7bsazmihar&dl=0ChatGPTのアカウント作成のためには、メールアドレス、名前、電話番号等のご登録が必要となります。また、利用にあたっては、自社のセキュリティ基準を確認し、また、機密情報や社外秘の情報をしないよう注意をお願いいたします。分析結果の確認方法についても、次回以降のレポートでご説明していきたいと思います。提供:税経システム研究所
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2025/02/06 財務会計
公益法人制度の改正(3)
はじめに「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(以下、改正前公益認定法)が、昨年2024年(令和6年)5月に改正(改正後の法律は、以下、改正公益認定法)され、新たな公益法人制度が2025年(令和7年)4月から始まります。この改正の内容のなかで、今回は、収支相償(中期的収支均衡)の判断においても影響を与え、また遊休財産額(改正後は、使途不特定財産)の保有制限や公益目的事業比率等にも影響を与える「公益充実資金」を取り上げて、解説します。いわば財務三規律に重大な影響を及ぼす改正内容であると言えます。公益充実資金は、今回の改正により創設された制度ですが、従来の特定費用準備資金や資産取得資金の制度を引き継ぎながら、さらに法人により柔軟な資金の積立てを可能とするものとなっています。4.公益充実資金の創設(1)改正の背景従来、「特定費用準備資金」(改正前施行規則(注1)第18条)や「資産取得資金」(改正前施行規則第22条第3項第3号)の制度が存在しており、それらを積み立てた場合には、その積立額は、会計帳簿上は費用ではありませんが、公益目的事業比率や収支相償の判断においては費用の額に含められる措置が取られてきました。特定費用準備資金は、将来の特定の活動の実施のために特別に支出する費用のために積み立てる資金を指していました。また資産取得資金は、将来に、公益目的事業等にとって必要な実物資産の取得や改良のために積み立てられる資金を指していました。そして、その積立額に相当する資産は、特定資産等として資金拘束されることが求められてきました。これら、特定費用準備資金や資産取得資金については、それら資金に係る実行可能性のある将来計画の策定が求められていました。それらの資金に関わって拘束されている具体的な資産の額は遊休財産額には含められないこととされていました。特定費用準備資金や資産取得資金の制度により、収支相償の要件を容易に充たすことができるようになると考えられていました。しかし、上述のとおり、その制度の利用のためには、実行可能な計画を立てる必要があるとともに、将来の特定の支出のための資金として紐付きでの資金拘束を行う必要がありました。このことは、確実に公益目的事業の拡大につなげるための措置であったと言えます。しかし、恒常的に公益目的事業において余剰が生じている場合には、その公益目的事業の拡大や新規の公益目的事業の計画がないとき、あるいはそれらについて明確な計画が立てられていない場合には、収支相償を充たすための仕組みとしては機能できないこととなっていました。すなわち将来計画を有することができない法人にとっては、公益目的事業において余剰がある場合には収支相償を充たすことができないリスク、また収益事業等にて余剰が生じる法人にあっても、遊休財産額の保有制限に抵触するリスクが生じていました。加えて、将来の収入の減少等の不安定要素について備えなければ、事業の継続が困難になるとの意見もありました。そこで事業、特に公益目的事業の継続を考慮するならば、従来の特定費用準備資金や資産取得資金の制度を緩和(拡充)することが求められました。(2)公益充実資金への拡張公益充実資金とは、公益目的事業を充実させるため将来において必要となる資金(注2)(改正公益認定法第14条)を指します。改正前の制度である特定費用準備資金や資産取得資金を統合し、「法人の実情や環境変化に応じた柔軟な資金管理が可能となるよう、使途変更の柔軟性等を高めたものとして創設」(改訂ガイドライン(注3)、154頁)されました。そして公益充実資金を積み立てるには、一定の使途の具体性(目的や時期、必要額等)が必要とされており、次の要件をすべて満たすことが求められています。「一公益目的事業に係る将来の特定の活動又は将来の特定の公益目的保有財産に係る資産の取得若しくは改良(以下、「公益充実活動等」という。)に係る費用等の支出に充てるために必要な資金として積み立てられるものであること。二公益充実資金に関する次に掲げる事項を当該事業年度の終了後、インターネットの利用その他の適切な方法により速やかに公表していること。当該事業年度の末日における公益充実活動等ごとの内容及び実施時期当該事業年度末日における積立限度額(公益充実活動等ごとの所要額の合計額をいう。以下同じ。)及びその算定根拠当該事業年度の公益充実資金の取崩額及び積立額当該事業年度の末日における公益充実資金の額前事業年度の末日における公益充実活動等ごとの内容及び実施時期、積立限度額及びその算定根拠並びに公益充実資金の額、その他内閣総理大臣が必要と認める事項三公益充実資金を公益充実活動等以外の支出に充てるために取り崩す場合について特別の手続が定められていること。四当該事業年度の末日における公益充実資金の額が第二号ロの積立限度額以下であること。五財産目録、貸借対照表又はその附属明細書において、他の資金と明確に区分して表示されていること。」(改正施行規則第23条)(3)公益充実活動等に関する補足説明公益充実資金は、公益充実活動等に係る費用等の支出に充てるために積み立てることができますが、公益充実活動等には、「既存事業を維持するために将来の収支変動に備えた積立てや将来の収入減少に備えた積立ても可能」(改訂ガイドライン、155頁)とされています。将来の収支変動に備えた積立てについては、「過去の実績や事業環境の見通しを踏まえて活動見込みや限度額を合理的に見積もることが出来ること(事業構造から収入が多い年・少ない年(支出が多い年・少ない年)があるなど)」(改訂ガイドライン、155頁脚注)が、そして将来の収入減少に備えた積立てについては、「外的な要因により将来の収入減少が合理的に見込まれること(保有する有価証券の配当が減少傾向にありそれが引き続く可能性が高い、補助金制度の見直しが進められており補助金を受け取れなくなる可能性が高いなど)」(改訂ガイドライン、155頁脚注)が、公益充実活動等に含められるために必要とされています。参考:公益充実資金が取り崩される場合には、改正前の特定費用準備資金等と同様に、取り崩した事業年度の収支相償等の判断において、費用の額から控除して、収支相償等の判断が行われることになります。<注釈>内閣府令第68号「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則」(平成19年)。以下、このレポートでは改正前施行規則と呼ぶことにします。なお、改正された施行規則は、内閣府令第87号(令和6年)であり、以下、改正施行規則と呼ぶことにします。公益充実資金には、公益目的事業を充実させるために将来に必要なる資金を運用することを目的として保有する財産も含みます(改正施行規則第23条)。内閣府公益認定等委員会「公益認定等に関する運用について(公益認定等ガイドライン)」を指し、以下、このレポートでは、平成20年度版を改正前ガイドライン、令和6年改訂を改訂ガイドラインと呼ぶことにします。提供:税経システム研究所
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2025/01/30 管理会計
企業が生き残るための製品・サービスの原価計算の勘所(15)
1.販売費及び一般管理費への注目前回の(14)では、販売費及び一般管理費について、「実務の場面では、各顧客に関連して販売費及び一般管理費が一律に同じ割合で発生するのではなく、顧客ごとに販売費の、場合によると、一般管理費も含めた費用の発生額が異なる場合が多い」から検討が必要であると説明しました。商品販売業においては、商品の仕入単価は、おおむね変動費として管理することができます。また、製造業においては、製品製造原価、とくに製品単価については、詳細に分類・計算して分析・管理に役立てるための研究を長年蓄積してきました。したがって、売上原価については、原価管理の手法がいろいろと確立しています。これに対して、販売費及び一般管理費は、「原価計算基準」[大蔵省企業会計審議会,1962]においては、「販売費および一般管理費は、これを期間原価とする」[四(二)]と規定されています。「原価計算基準」[大蔵省企業会計審議会,1962]では、「販売費および一般管理費原価要素の分類基準」[三七]については説明しているものの、「販売費および一般管理費の計算」[三八]では、「製造原価の費目別計算に準」[三八]じて、「一定期間の発生額を計算する」[三八]と規定していることから、販売費及び一般管理費を製品別に集計することを想定してはいないようです。こういった状況について、わが国の原価計算研究において多大な貢献をした一橋大学岡本清名誉教授は、名著『原価計算』の三訂版から営業費計算を設け[岡本,1980,p.i]、営業費計算の重要性が増大したことについて、現段階で最新版の六訂版まで次のように説明しています。原価計算の主目的が公開財務諸表の作成にあるときは、営業費計算はあまり注目されなかった。なぜならば、営業費は期間損益計算上、期間原価(periodcosts)として処理され、製品や仕掛品に割り当てられることはないので、単に費目別実際発生額を把握すればよかったからである。ところが、・・・、広告費、販売促進費、研究開発費、電算機による情報処理費などがいちじるしく増加してきた。そこでこれらの営業費とりわけ販売費を、製品品種別、販売地域別、顧客別、販売ルート別などに分析し、収益性の改善を図らなければならない。このようにして、営業費計算は人々の注目を集めるようになったのであるが、製造原価と異なり、営業費は極めて特異な性質をもつ原価であるために、営業費をどのようにして管理すべきか、経営管理者の意思決定に役立つように、営業費をどのように分析すべきかは、きわめて難解な問題であって、それは原価計算担当者にたいする重大な挑戦となっている[岡本,2000,pp.691-692]。2.原価計算基準における販売費及び一般管理費の分類基準原価計算においては、原価を体系的に把握するために、これを分類することが必要です。一般的に、製造原価の計算では、原価要素を、材料費・労務費・経費、直接費・間接費、固定費・変動費などに分類することが説明されています。「原価計算基準」[大蔵省企業会計審議会,1962]では、製造原価要素の分類基準として、材料費・労務費・経費という形態別分類[八(一)]、機能別分類[八(二)]、直接費・間接費という製品との関連における分類[八(三)]、固定費と変動費という操業度との関連における分類[八(四)]、管理可能費・管理不能費という管理可能性に基づく分類[八(五)]、を規定しています。販売費及び一般管理費の計算においても、これらの費用を分類する必要があります。「原価計算基準」[大蔵省企業会計審議会,1962]では、製造原価と同様に、形態別分類、機能別分類、直接費と間接費、固定費と変動費、管理可能費と管理不能費を、「販売費および一般管理費要素の分類基準」[三七]としてあげています。(1)形態別分類「原価計算基準」[大蔵省企業会計審議会,1962]では、販売費及び一般管理費の要素を、形態別分類によって、「給料、賃金、消耗品費、減価償却費、賃借料、保険料、修繕料、電力料、租税公課、運賃、保管料、旅費交通費、通信費、広告料等にこれを分類する」と説明しています[三七(一)]。「原価計算基準」[大蔵省企業会計審議会,1962]において、製造原価の形態別分類では、消費する経営資源によって分類しています。物品を消費して発生した原価は材料費に、労働力を消費して発生した原価は労務費、それ以外の経営資源を消費して発生した原価は経費に分類しています。(2)機能別分類「原価計算基準」[大蔵省企業会計審議会,1962]では、機能別分類によって、販売費及び一般管理費の要素を、「広告宣伝費、出荷運送費、倉庫費、掛売集金費、販売調査費、販売事務費、企画費、技術研究費、経理費、重役室費等にこれを分類する」[三七(二)]と説明しています。また、機能別の「分類にさいしては、当該機能について発生したことが直接的に認識される要素を、は握して集計する。たとえば広告宣伝費には、広告宣伝係員の給料、賞与手当、見本費、広告設備減価償却費、新聞雑誌広告料、その他の広告料、通信費等が集計される」[三七(二)]。(3)直接費と間接費「原価計算基準」[大蔵省企業会計審議会,1962]では、「販売費および一般管理費の要素は、販売品種等の区別に関連して、これを直接費と間接費とに分類する」[三七(三)]と規定しています。製造原価要素を直接費と間接費とに分類することについては、「製品との関連における分類とは、製品に対する原価発生の態様、すなわち原価の発生が一定単位の製品の生成に関して直接的に認識されるかどうかの性質上の区別による分類」[大蔵省企業会計審議会,1962,八(三)]と規定しています。これに倣えば、販売費及び一般管理費を直接費と間接費とに分類する基準は、「販売品種等に対する原価の発生が直接的に認識されるかどうかの区別による」ということができるでしょう。(4)固定費と変動費「原価計算基準」[大蔵省企業会計審議会,1962]では、販売費及び一般管理費を固定費と変動費とに分類することについて説明していません[三七(四)]。しかしながら、この分類基準は、製造原価の分類と同様に、操業度との関連による分類であることは間違いありません。いうまでもなく、固定費は操業度の変動にかかわらず一定期間一定額が発生する費用であり、変動費は操業度の変動によって比例的に増減する費用です。(5)管理可能費と管理不能費「原価計算基準」[大蔵省企業会計審議会,1962]では、販売費及び一般管理費を管理可能費と管理不能費とに分類することについても、説明していません[三七(五)]。しかしながら、この分類基準も、製造原価の分類と同様に、「原価の発生が一定の管理者層によって管理しうるかどうかによる分類」[八(五)]であることは間違いないでしょう。参考文献伊藤嘉博・目時壮浩、2021『異論・正論管理会計』中央経済社。大蔵省企業会計審議会、1962「原価計算基準」大蔵省企業会計審議会。岡本清、1980『原価計算』三訂版、国元書房。岡本清、2000『原価計算』六訂版、国元書房。岡本清・廣本敏郎・尾畑裕・挽文子、2008『管理会計』中央経済社。小林啓孝、1997『現代原価計算講義』第2版、中央経済社。小林啓孝・伊藤嘉博・清水孝・長谷川惠一、2017『スタンダード管理会計』第2版、東洋経済新報社。清水孝、2006『上級原価計算』第2版、中央経済社。清水孝、2014『現場で使える原価計算』中央経済社。清水孝・長谷川惠一・奥村雅史、2004『入門原価計算』第2版、中央経済社。園田智昭、2021『プラクティカル原価計算』中央経済社。谷武幸、2022『エッセンシャル管理会計』第4版、中央経済社。提供:税経システム研究所
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2025/01/23 財務会計
IFRS第 18号「財務諸表における表示及び開示」(5)
本レポートでは、IASBより2024年4月に公表された会計基準IFRS第18号「財務諸表における表示及び開示(PresentationandDisclosureinFinancialStatements)」(以下、IFRS18といいます)について解説しています。IFRS18は、とくに損益計算書に大きくかかわるものであり、国際会計基準を任意適用している日本企業にも影響を与えることとなります。なお、IFRS18は従来のIAS1「財務諸表の表示(PresentationofFinancialStatements)」を置き換えるものであり、IFRS18の適用は2027年1月1日と規定されていますが、それより前の早期適用も認められています(注1)。5.損益計算書のポイント(続き)■損益計算書(Statementofprofitorloss)(注2)⑤「その他」の表示について公開草案ED/2019/7「全般的な表示及び開示(注3)」(以下、ED(2019)といいます)では、「特徴を共有していない、重要性がない項目を集約することができる」(par.27)とされていた一方で、集約された結果としての「その他」の表示について否定的な、以下の提案が示されていました(pars.27and28)。特徴を共有していない、重要性がない項目のグループを記述するために、「その他」などの記述的でない名称の使用は、追加的な情報がないと、当該項目を忠実に表現することにならない。(a)集約された項目を忠実に表現するために、重要性がない項目について、次のいずれかで集約しなければならない(以下の(b)の場合を除く)。類似した特徴を共有し、集約された項目の特徴を忠実に表現する方法で記述できる他の項目と集約する。類似した特徴を共有していないが、異質な項目を忠実に表現する方法で記述するかもしれない他の項目と集約する。(b)上記の(a)が、忠実な表現をもたらす記述につながらない場合注記において、集約された項目の内訳に関する情報を開示しなければならない。例)集約された情報がいくつかの関連のない、重要性がない金額で構成されていることを示し、集約された中の最大の項目の性質と金額を示す。このようなED(2019)の提案は、IFRS18において、より詳細な規定として示されています。IFRS18では、「より情報価値(informative)のある名称が見つからない場合のみ、表示・開示において「その他」という名称を用いる」(IFRS18,B25)こととされ、より情報価値のある名称が見つかるかもしれない方法の例として、以下が示されています(IFRS18,B25(a)(b))(a)情報に重要性のある項目が、情報に重要性のない項目と集約されている場合・情報に重要性のある項目を示す名称を見つける(b)情報に重要性のない複数の項目が、集約されている場合類似した特徴を共有し、その類似した特徴を忠実に表現する方法での集約類似した特徴を共有していないが、その異質な項目を忠実に表現する方法での集約そのうえで、「その他」以上に情報価値のある名称がみつからない場合について、以下が規定されています(IFRS18,B26(a)(b))。(a)全ての集約について、可能な限り正確な名称を用いる例)「その他の営業費用(otheroperatingexpenses)」「その他の財務費用(otherfinanceexpenses)」(b)情報に重要性のない項目のみで構成されている集約については、以下を検討する。・財務諸表利用者が、情報に重要性のある項目が含まれているかどうかについて、合理的な疑問を抱くかもしれないほど、その集約された金額が十分に大きいかどうか・上記疑問を解消するために、そのような集約された金額について、たとえば、以下のような追加情報を開示する(∵疑問を解消するための情報は、重要な情報である)集約された金額のなかに、情報に重要性があると考えられる項目が含まれていないことの説明集約された金額は、情報に重要性がないと考えられる複数の項目で構成されていること、および、最大の項目の内容と金額<注釈>PrimaryFinancialStatements,FinalStage[https://www.ifrs.org/projects/completed-projects/2024/primary-financial-statements/#final-stage](accessedon2024/11/18)PrimaryFinancialStatements,Publisheddocuments「EffectsAnalysis:IFRS18PresentationandDisclosureinFinancialStatements」p.16[https://www.ifrs.org/projects/completed-projects/2024/primary-financial-statements/#published-documents](accessedon2024/11/18)*上記ファイル自体のURLは以下[https://www.ifrs.org/content/dam/ifrs/publications/amendments/english/2024/effect-analysis-ifrs18-april2024.pdf](accessedon2024/11/18)本レポートでは、以下の会計基準および財務会計基準機構・企業会計基準委員会による日本語訳を、一部修正のうえ引用。InternationalAccountingStandardsBoard.2019.GeneralPresentationandDisclosures.ExposureDraftED/2019/7.IASB.*本基準の日本語訳については、以下のページより入手。[https://www.asb-j.jp/jp/iasb_activity/press_release/y2019/2019-1217.html](accessedon2024/11/18)提供:税経システム研究所
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2025/01/16 管理会計
中小企業が身につけておきたい原価管理の知識(20)
1.はじめに本シリーズでは、経営・会計において欠かせない原価管理の考え方を紹介します。今回は、前回に続き、原価企画の例として、富士フイルムビジネスイノベーション株式会社(以下、同社)による製品開発時の取り組みについて説明します。原価企画では、計画で想定されたようには活動が進まず、目標の達成が困難になることがあります。以下では、目標未達への対策について、同社を取り巻く外的要因、同社内での活動にかかわる内的要因それぞれに分けて考えてみましょう。2.外的要因とその対策近年、生産拠点や部品・原材料の調達先がグローバル化するにともなって、為替レートや材料費の変動等の影響が、原価管理活動でも重視されるようになっています。同社では、これら外的要因に関して対策が検討されています。まず為替レートについて、基本的には、商品化会議で目標原価が承認された時の数値を基にして目標の達成状況を評価します。これらの情報は、組織や個人の評価にも使用されます。また、為替レートの数値は変動していますので、設定時の数値の下で目標とした原価と実際に把握できた原価を比較し、大きな差異が生じた時には、改善策が検討されています。次に材料費の変動については、実際の原価との乖離を生じにくくするため、商品化会議で目標原価が承認される前の段階で、調達部門が材料費の変動見通し値を設定しています。3.内的要因とその対策(1)販売価格・数量の変更製品企画の段階が終了した後に、企画や営業の担当者より販売価格・数量の見直しや、機能・仕様の追加変更を求められることがあります。これらの要求は市場や顧客状況の把握不足によって発生することが多く、販売価格・数量の前提が崩れる場合に、目標原価を見直すことになります。(2)新技術や内製部品の開発における目標達成状況の検討新技術や内製部品の開発において、承認済みの納期や設定価格、品質目標を達成できないことがあります。ただし、問題を解決するまでに時間を要することもあり、目標値を達成する時期と、目標達成までに代わりの部品を使用することで発生するコストの増加額、その増加額が利益に与える影響を見ながら対策を検討します。(3)PDCAの実施目標の設定・展開やコストチームの編成に時間がかかり、シナリオ策定や目標原価達成のための活動の時間が十分確保できないことがあります。この対策として、製品企画段階の終了時点までに、目標達成の見通しを明確にすることが重要です。この時期までに、目標達成に向けたPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを一通り回して、課題に対応した活動が行われています。(4)責任者の能力向上や配置開発商品QCD(Quality品質-Cost原価-Delivery納期)の責任者が既存の商品開発プロセスから逸脱した行動をとることや、原価推進責任者も含めてマネジメントの能力(原価管理の仕組みや開発プロセスについての知識と高い達成意欲)が不足するために、目標原価の達成に向けた活動を推進できないことがあります。同社では、教育や経験を通じて能力や意欲が高められています。また、開発商品の特性(フルモデルチェンジかマイナーチェンジか)に応じた人選が行われています。(5)Off-JT教育原価管理活動に対する設計者の理解や熱意が乏しかったり、調達や生産のスタッフのコストチーム活動に対する支援が不足したりすることがあります。この問題に関して、OJT教育だけではなく、Off-JT教育も活用した人材の育成が行われています。(6)改善策の抽出原価管理活動では、目標を達成するための改善策を出すことに行き詰まることがあります。これに関しては、多角的な視点からアイデアを出すとともに、ベンチマーク手法を活用して改善策が抽出されています(注1)。4.目標等の変更経営の状況が当初から大きく変化した場合、現実的に目標の達成が難しくなることもあるでしょう。同社では、商品開発の責任者が設定された目標値を達成できないと判断すると、その理由、新しい目標の設定値、達成見通し値、ビジネスの採算性を商品化会議に提案します。この提案が承認されると、新しい目標に変更することができます。実際に目標原価の数値が変更された時期を見ると、その多くは、製品企画の段階が終了する前のコストレビュー会と、商品化会議までとなっています。このような傾向には、この時期までに、責任者がQCDの目標の達成に向けた提案をするにあたり、目標を達成するための使用技術や施策、原価の条件を満たしているかを十分に検討して(注2)、判断する必要があることが関係しています。参考文献谷武幸.2022.『エッセンシャル管理会計第4版』中央経済社.吉田栄介・伊藤治文.2021.『実践Q&Aコストダウンのはなし』中央経済社.<注釈>ベンチマーク手法では、自社の開発商品を、機能や仕様が類似する他の商品と比較、分析し、その結果を基に原価低減の施策を検討します。詳細は、第18回の記事をご覧ください。これまでに同社では、目標の達成状況を判断する目安として許容率(目標値に対して+~%以下なら活動を継続するというもの)を設定し、QCDの目標値を提案・審議する製品企画段階の商品化会議で検討したこともありました。しかし、許容率を厳格なロジックで設定することができず、この仕組みは定着しませんでした。提供:税経システム研究所
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2024/12/26 管理会計
中小企業も知っておきたい! 事例でつかむESG経営と管理会計(25)
1.脱炭素に対する国際的な動き先日、世界中が注目していたアメリカ大統領選挙が行われ、ドナルド・トランプ氏が大統領に返り咲くことが決まりました。同氏は前回大統領在任時に、気候変動に関する国際的枠組みであるパリ協定からの離脱を表明するなど、脱炭素に対して否定的な姿勢を示しています。バイデン政権への移行後、アメリカはパリ協定への復帰を果たすとともに、世界の脱炭素に向けた動きをリードしてきましたが、トランプ政権が再び協定から離脱するということになれば、脱炭素の動きにブレーキがかかることは必至です。そんななか、この11月にはアゼルバイジャンにて第29回目の国連気候変動対策会議であるCOP(ConferenceoftheParties)29が開催されました。イギリスのスターマー首相が新たな脱炭素目標を発表するなど、脱炭素に対する積極的な姿勢をみせる国がある一方で、アメリカ、中国、日本などの主要国トップの欠席が相次ぐなど、脱炭素に向けた先行きはやや不透明な状況となっています。2.スコープ3開示に対する企業の取り組みの加速前述の状況ではありますが、脱炭素に向けた企業の取り組みは増々加速しています。温室効果ガス排出量(GHG排出量)の開示は、主にスコープ1(企業が製造活動を通じて直接排出されるGHG)やスコープ2(電気・熱・蒸気等の利用により間接的に排出されるGHG)に焦点が当てられてきましたが、その範囲は増々拡大し、現在はスコープ3と呼ばれる原材料の提供や物流などを担うサプライチェーンが排出するGHG排出量にまで拡大しています(具体的な内容は図表1をご参照ください)。国際的なサステナビリティ開示基準を検討する国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、上場企業に対してスコープ3の開示も義務付けることを決定し、日本企業も対応を迫られています。スコープ3に対する開示が強化されると、その影響は大企業のサプライチェーンを構成する中小企業に及ぶことになります。上位に位置する大企業がスコープ3に関するGHG排出量削減目標を達成するためには、必然的に、サプライチェーンを構成する企業もその目標の達成に向けて脱炭素への取り組みを求められるからです。一例として、脱炭素に積極的に取り組む富士通は、スコープ3のGHG排出量を2040年までに2020年比で90%以上削減することを目標とし、その実現に向けて、サプライチェーンを構成する企業に対しても排出削減目標を設定することを求めています(注1)。また、サプライチェーン構成企業のGHG排出量に関するデータ収集の支援や、企業間でのデータ連携を強化するためのシステム構築にも取り組んでいます(注2)。図表1スコープ3カテゴリの内訳出典:環境省(2023)(注3)3.スコープ3への対応に向けて取引先が脱炭素に向けた取り組みを強化する場合、自社もGHG排出量の測定および削減に向けた取り組みが可能であることを示す必要があります。具体的には、自社のGHG排出量削減目標がパリ協定の求める基準に合致した計画となっていることを示すSBT(ScienceBasedTargets)認証を取得する方法があります。環境省(2024)(注4)によれば、SBT認証を取得する企業は必ずしも大企業ばかりではなく、2024年3月1日現在で704社の中小企業が認証を取得していることが示されています。また、日本では、電気機器、建設業の取得が多いとされていますが、海外ではソフトウェア、ホテル・レジャー、食料品製造業、不動産など、幅広い業種で取得が進んでいるようです。SBT認証を受けるためには、SBT事務局に対して認証取得のための申請を行ったうえでGHG排出削減目標を設定し、事務局による審査を受ける必要があります。なお、SBT認証には通常版にくわえて、中小企業向けの認証が用意されています(注5)。中小企業向けのSBT認証を取得するためには、図表2に示すとおり、設定した基準年に比べてスコープ1・スコープ2の排出量を毎年4.2%以上削減するとともに、スコープ3についても削減(基準は特になし)に向けた取り組みを行うことが求められています。図表2通常版SBT認証と中小企業版SBT認証の比較出典:環境省(2024)「【参考①】中小企業向けSBT」多くの大企業がGHG排出量の削減に向けて取り組むなかで、中小企業に対するGHG削減圧力も増々高まりを見せています。脱炭素への取り組みが十分ではない場合、取引機会を逸することにもなりかねません。脱炭素への取り組みが道半ばにある企業は、この機会にSBT認証取得を検討してみてはいかがでしょうか。<注釈>富士通株式会社2023年8月28日プレスリリースhttps://pr.fujitsu.com/jp/news/2023/08/28.html(2024年11月3日最終閲覧)富士通株式会社2024年11月15日プレスリリースhttps://pr.fujitsu.com/jp/news/2024/11/15.html(2024年11月15日最終閲覧)環境省(2023)「サプライチェーン排出量の算定と削減に向けて」p.7https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SC_syousai_all_20230301.pdf環境省(2024)「SBT(ScienceBasedTargets)について」中小企業向け認証を受けることのできる企業は、①スコープ1とロケーション基準のスコープ2の排出量合計が10,000t-CO₂e(t-CO₂eは、各種のGHG排出量に地球温暖化係数を乗じてCO2相当量に換算した値)未満であること、②海運船舶を所有または支配していないこと、③再エネ以外の発電資産を所有または支配していないこと、④金融機関セクターまたは石油・ガスセクターに分類されていないこと、⑤親会社の事業が、通常版のSBTに該当しないこと、を満たす必要があります。また、これにくわえて、・従業員が250人未満であること、・売上高が5,000万ユーロ未満であること、・総資産が2,500万ユーロ未満であること、・森林、土地および農業(FLAG)セクターに分類されないこと、のうち2つを満たす必要があります。提供:税経システム研究所
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2024/12/26 財務会計
2015年改訂版 中小企業向け国際財務報告基準(20)
1.はじめにこのシリーズでは、2015年に国際会計基準審議会(InternationalAccountingStandardsBoard:IASB)が公表した「改訂版中小企業向け国際財務報告基準」(以下、「中小企業向けIFRS(2015年版)」という)について解説しています。2022年9月に、IASBは、公開草案「中小企業向け国際財務報告基準(第3版)」(以下、「公開草案(第3版)」という)を公表しており、本シリーズでも、適宜「公開草案(第3版)」に触れています。今回は、前回に引き続き、「公開草案(第3版)」の第23章「顧客との契約から生じる収益」における収益の認識モデルのステップ4とステップ5および契約コストを説明します。IASBのウェブサイトによると、2025年の第一四半期に「中小企業向け国際財務報告基準(第3版)」を公表する予定とのことです(注1)。2.ステップ4取引価格の履行義務への配分(1)独立販売価格に基づいた配分企業は、値引きまたは変動対価の配分の場合を除いて、相対的な独立販売価格に基づいて、取引価格を契約で識別された各約束に配分します(23.61項)。独立販売価格とは、企業が約束された財またはサービスを独立して顧客に販売する場合の価格をいいます。独立販売価格の最たる例は、企業が財またはサービスを独立して顧客に販売する場合の観察可能な価格です(23.64項、23.69項)(注2)。企業は、契約の各約束の基礎となる別個の財またはサービスの契約開始時における独立販売価格を決定し、それらの独立販売価格の比率に基づいて取引価格を各約束に配分します(23.63項)。(2)値引き、変動対価の配分企業は、一定の場合(注3)を除いて、値引きや変動対価を相対的な独立販売価格に基づいて比例的に契約全体に配分します(23.69項、23.70項)。たとえば、契約に2つの約束X(独立販売価格は800千円)と約束Y(独立販売価格は200千円)が含まれており、全体の取引価格が900千円の場合であれば、100千円の値引きがあったことになります。3.ステップ5履行義務の充足時(または充足するにつれて)収益認識企業は、約束した財またはサービスを顧客に移転するという約束を充足したときに(または充足するにつれて)収益を認識します。財またはサービスは、顧客がその財またはサービスに対する支配を獲得したときに(または獲得するにつれて)、移転されます(23.75項)。(1)一定期間にわたり充足される約束次の①から④の要件のいずれかを満たす場合は、財またはサービスに対する支配は一定の期間にわたり顧客に移転されることになるので、一定期間にわたり約束が充足されることになります(23.78項)。企業が義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受すること(たとえば、清掃サービスなどの定期的なサービス)。他の企業が顧客との約束の残りを履行する場合、その企業が現在までに行った作業を実質的に再実行する必要がないこと(たとえば、貨物運送契約)。企業の履行が資産の創出または資産価値の増加をもたらし、資産の創出または資産価値の増加につれて、顧客がその資産を支配すること(たとえば、顧客が仕掛品を管理する建設契約)。企業の履行が他の顧客に簡単に転用できる資産を創出せず、かつ、顧客は完了した履行に対する支払義務があること。(2)一時点で充足される約束ある約束が一定期間にわたり充足されるものでない場合(上記(1)の①~④のいずれも満たさない場合)は、その約束は一時点で充足されます。顧客が資産の支配を獲得した時点を決定するにあたっては、次のような指標を考慮する必要があります(23.83項)。企業がその資産に関する対価を受け取る現在の権利を有していること。顧客が資産に対する法的所有権を有していること。顧客が資産を物理的に所有していること。顧客が資産の所有に伴う重要なリスクと便益を有していること。顧客が資産を受け入れたこと。(3)約束の充足に係る進捗度の測定一定期間にわたり充足される約束については、進捗度を測定して、収益を認識します(23.88項)。履行義務の充足に係る進捗度は単一の方法で見積り、類似の履行義務や状況に首尾一貫した方法を適用します(23.89項)。履行義務の充足に係る進捗度は各決算日に再測定し、進捗度の見積りを変更する場合は、第10章「会計方針、見積りおよび誤謬」にしたがって処理します(23.90項)。4.契約コスト契約コストについては、契約を獲得するためのコスト(以下、契約獲得コストという)と、契約を履行するためのコスト(以下、契約履行コストという)に区別されています。(1)契約獲得コスト契約獲得コストは、次の要件をすべてみたすときに資産計上します(23.102項)(注4)。もし契約を締結していなければ、企業が負担しなかったコストであること(たとえば、販売手数料)。コストの回収が見込まれること。(2)契約履行コスト契約履行コストは、「公開草案(第3版)」の該当する章に従って会計処理しますが、「公開草案(第3版)」の範疇にない場合は、次の要件をすべてみたすときに、資産計上します(23.106項、107項)。コストが契約に直接関連していること。コストが約束の充足のために使用される企業の資源を創出または増加させること。コストの回収が見込まれること。(3)事後測定資産計上された契約獲得コストと契約履行コストについては、その後減価償却と減損処理が適用されます。したがって、当初認識後は、資産の取得原価から減価償却累計額と減損損失累計額を控除した金額で測定されます。ステップ4「取引価格の履行義務への配分」とステップ5「履行義務の充足時(または充足するにつれて)収益認識」については、「公開草案(第3版)」、IFRS第15号および企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」間で、内容に大きな差はないと言えます。一方、契約コストについては、「公開草案(第3版)」とIFRS第15号には規定がありますが、日本基準には規定がないという相違点があります(注5)。<注釈>https://www.ifrs.org/projects/work-plan/2019-comprehensive-review-of-the-ifrs-for-smes-standard/(最終アクセス日は2024年11月24日)。独立販売価格を直接観察できない場合は、合理的に入手できるすべての情報を考慮して、独立販売価格を見積もります。この方法が必ずしも企業が顧客から得られる対価の金額を忠実に表さない場合です。契約獲得コストが①と②の要件を満たすことを識別するためのコストや労力が過大である場合や資産計上する期間が1年以内の場合などは、簡便法として費用処理が認められています。日本基準では、「棚卸資産や固定資産等、コストの資産化等の定めがIFRSの体系とは異なるため、IFRS第15号における契約コスト(契約獲得の増分コストおよび契約を履行するためのコスト)の定めを範囲に含めていない」と説明されています(109項)。提供:税経システム研究所
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