アウトライン審査事例
国税不服審判所が示した審査請求事件の裁決例は、正確な税務処理を行っていくうえで見落とせません。アウトライン審査事例では実務家の皆様にとって実用性の高い裁決事例を簡潔に紹介。併せて、参照条文も記載しておりますので、実務上の判断の一助としてお役立てください。
1151 件の結果のうち、 1 から 10 までを表示
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2025/02/10
保険会社からの支払通知日の属する事業年度に計上した会計処理は合理的な収益計上基準であると認められた事例(全部取消し)
【裁決のポイント】法人税法上、収益がどの事業年度に帰属するかは、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従うべきであり、これによれば、収益は、その実現があった時、すなわち、その収入すべき権利が確定したときの属する年度の益金に計上すべきものと解されている。審査請求人には、代表者の退職金支払いに充てる目的で契約していた生命保険契約が2件あった。代表者死亡の日は事業年度末に近い令和3年12月〇日であった。審査請求人は、各保険会社に保険金請求を行い、支払通知書を受領したのは2件とも翌期であったことから、それを権利の確定として、令和4年12月期で各保険金の額を雑収入計上して申告したところ、税務署は、代表者の死亡により保険金請求権は確定し、収益が客観的に実現している令和3年12月期に計上すべきとして更正処分などを行った。国税不服審判所は、審査請求人の会計処理は、取引の経済的実態からみて合理的な収益計上の基準に則したものであるということができ、法人税法上も正当なものとして是認すべきと認められると判断して、課税処分を全部取り消した事例である。(令和3年1月1日から令和3年12月31日までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、他・全部取消し・令和6年2月26日裁決)【主な争点】各生命保険金の額の収益計上時期は、令和3年12月期か、令和4年12月期か。【裁決の要旨】法人税法第22条第4項は、現に法人のした利益計算が法人税法の企図する公平な所得計算という要請に反するものでない限り、課税所得の計算上もこれを是認するのが相当であるとの見地から、収益を一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計上すべきものと定めたものと解される。したがって、権利の確定時期に関する会計処理を、法律上どの時点で権利の行使が可能となるかという基準を唯一の基準としなければならないとするのは相当でない。取引の経済的実態からみて合理的なものとみられる収益計上の基準の中から、当該法人が特定の基準を選択し、その基準によって収益を計上している場合には、法人税法上もその会計処理を正当なものとして是認すべきである。保険金の支払は、その請求後、書類不備等の形式面のほか、免責事由その他保険金を支払わない事由の確認調査の必要性を検討した上で行われ、死亡診断書に直ちには免責事由の存在を疑わせる記載がないとしても、保険会社の検討の結果次第では、保険金が支払われないこともあり得た。保険会社所定の死亡証明書等の取得にはある程度の時間を要すると認められ、また、前代表者の死亡後に、審査請求人が事業を継続しつつ、葬儀や会社法所定手続等を行う必要性を踏まえると、審査請求人が恣意的に本件各保険金の額の収益計上時期を令和4年12月期に繰り延べようと企図したとは認められない。本件における具体的な事実関係の下での検討を踏まえれば、本件各保険金の額を令和4年12月期の雑収入等に計上した審査請求人の会計処理は、取引の経済的実態からみて合理的な収益計上の基準に則したものであるということができ、法人税法上も正当なものとして是認すべきと認められ、本件各保険金の額は令和3年12月期の益金の額に算入されない。【参照条文】法人税法第22条(第二款各事業年度の所得の金額の計算の通則)本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/02/03
7年分の所得税と消費税について、無申告加算税に代えて重加算税を課した処分が適法とされた事例(棄却)
【裁決のポイント】重加算税を課するためには、納税者が法定申告期限までに納税申告書を提出しなかったこと(無申告行為)そのものとは別に、隠蔽、仮装と評価すべき行為が存在し、その行為を原因として無申告の結果が発生したものであれば足り、それ以上に、納税者において無申告の認識を有していることまでを必要としない、と解される。本件の審査請求人はラーメン店を経営する青色申告事業者である。平成21年の開業後まもなく税理士関与を断り、以後は記帳せず、売上や経費を確認できる書類、コロナ禍の時短協力金の支給決定通知書も捨てていた。税務調査が入り、7年分の期限後申告をしたところ、重加算税が課されたため、ひとえに審査請求人の無知が招いた結果であり、意図的に当該申告をしなかったのではないと主張し、処分の取消しを求めた。国税不服審判所は、書類を捨てたことは「隠蔽し、又は仮装し」に該当する、無申告の認識を有していることまで必要としないから、重加算税の賦課要件を満たすと判断した事例である。(平成27年分から令和3年分までの所得税及び復興特別所得税並びに平成27年課税期間から令和3年課税期間までの消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分・棄却・令和6年3月25日裁決)【主な争点】審査請求人に、重加算税が課される「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったか。【裁決の要旨】審査請求人が、本件事業の開業から2か月程度の間は、本件税理士の指導の下、本件各会計伝票を集計する等して各営業日の売上金額等をノートに記載し、領収書等を保管していたことがあり、本件事業に係る売上金額等を把握するには、これらの集計や保管などの行為が必要であることを認識していたはずであった。審査請求人は、税務に関する相応の知識がなく、本件事業に係る売上金額は概算で把握していたにとどまり、本件事業に利益があったとは認識しておらず、審査請求人が帳簿書類等を作成せず、本件各会計伝票等を保管せずに廃棄していたのは、ひとえに審査請求人の無知が招いた結果である旨主張する。しかしながら、審査請求人は、捨てることで、本件各年分の本件事業に係る売上金額及び必要経費の金額が不明になることを認識しており、審査請求人は故意に真実の本件各年分の本件事業に係る売上金額及び必要経費を隠匿し、かつ、故意に真実の本件各課税期間に係る課税売上高を隠匿したといえる。そして、国税通則法第68条《重加算税》第2項の重加算税を課すためには、審査請求人において、申告しなければならないのに無申告とすることの認識を有していることまでを必要とするものではないというべきであるから、審査請求人に対する重加算税の賦課要件は充足する。【参照条文】国税通則法第68条《重加算税》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/01/27
生活費及び学費として社会通念上相当と認められる範囲とは認められず、徴収不足との間に基因関係があるとして、妻に第二次納税義務が課された事例(棄却)
【裁決のポイント】滞納処分を執行しても徴収不足と認められ、その不足が、当該国税の法定納期限の1年前の日以後に、滞納者が財産について行った無償譲渡等の処分(無償又は著しく低い額の対価による譲渡など)に基因すると認められるときは、処分により権利を取得した者が、受けた利益を限度に、滞納国税の第二次納税義務を負う。しかし、滞納者が、生計を一にする親族の生活費、学費等に充てるためにした社会通念上相当と認められる範囲の金銭又は物品の交付は、「無償又は著しく低い額の対価による譲渡」には当たらないとされている。審査請求人は、亡滞納者(元夫、令和3年死亡)が平成30年分の所得税を滞納している時、子ども2人とともに別居中で、毎月の生活費(婚姻費用)のほかに教育費2,000万円(本件金銭交付)を夫の預金口座から銀行振込みで受け取っていた。税務署は、その額は社会通念上相当と認められる額を超える、本件金銭交付がなければ滞納国税の徴収不足は生じていなかったとして、審査請求人に第二次納税義務を課した。なお亡滞納者の全相続人が相続放棄している。国税不服審判所は、2,000万円振込み時点で学資等として具体的な支払の予定がない、その額は、滞納国税額を上回り、滞納国税の徴収不足は本件金銭交付に基因するから、税務署の処分は適法であると判断した事例である。(第二次納税義務の納付告知処分・棄却・令和6年1月29日裁決)【主な争点】(争点1)本件金銭交付は、法定納期限の1年前の日以後に行われた無償譲渡に該当するか(争点2)本件各滞納国税の徴収不足は、本件金銭交付に基因するか【裁決の要旨】(争点1)本件亡滞納者は、審査請求人に対し、本件金銭交付に先立ち、合計〇〇〇〇円という相当程度に高額な本件金銭交付前送金をし、本件金銭交付後も送金を継続していること、本件金銭交付に係る金員が、将来的には、長男及び長女の学資等の原資となるとしても、本件金銭交付の時点においては、学資等として具体的な支払の予定があったとはいえないことからすると、本件亡滞納者において婚姻費用あるいは生活費及び学資等を負担する必要があったとしても、その前払として本件金銭交付をすべき必要があったとは認められない。本件金銭交付は、国税徴収法第39条に規定する無償による譲渡に該当する。(争点2)滞納国税について徴収不足であったことが認められるところ、本件金銭交付に係る金額は、滞納国税の金額を上回ることからすると、本件金銭交付がなかったならば本件納付告知処分時の徴収不足を生じなかったであろうということができる。したがって、本件各滞納国税の徴収不足は、本件金銭交付に基因すると認められる。審査請求人は、本件金銭交付時に本件亡滞納者の親族であったから、本件金銭交付により受けた利益である〇〇〇〇円の限度で第二次納税義務を負う。【参照条文】国税徴収法第32条《第二次納税義務の通則》、第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》国税徴収法施行令第14条《無償又は著しい低額の譲渡の範囲等》国税徴収法基本通達第39条関係3《譲渡》国税通則法第5条《相続による国税の納付義務の承継》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/01/20
上司2名は自ら現場を確認せず、法人における管理・監督は不正防止に十分であったとは認められないとして、重加算税が課された事例(棄却)
【裁決のポイント】役員や経理担当者でもない一従業員の隠ぺい仮装行為を、納税者である法人の行為と同視して、重加算税を賦課することができるか否かについては、その従業員の地位・権限、その従業員の行為態様、その従業員に対する管理・監督の程度等を総合考慮して判断される。職制上の地位や肩書なし、経営に参画することなし、経理業務に関与しない工場従業員が、年度を跨ぐと稟議の再提出になることを避けるため、工場の営繕工事の完了の日付を事業年度末3月31日(実際は4月3日)とした書類を作成した行為(本件行為)によって、審査請求人は過少申告となり、本件行為は審査請求人の行為と同視できるとして、重加算税が課された。審査請求人は、一使用人の独断である、社内規定を作り、不正防止の教育をし、従業員の管理・監督してきたことに落ち度はなかったと主張した。国税不服審判所は、本件行為は、審査請求人から付与された権限の範囲内において行われた行為であり、また、上司に本件行為による不正の事実を把握させ、是正させることが可能であったと認められるから審査請求人の講じた不正防止措置は十分でなく、それらを総合考慮すれば、重加算税の賦課決定処分は適法であると判断した事例である。(令和2年4月1日から令和3年3月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分・棄却・令和6年1月10日裁決)【主な争点】本件従業員による行為(一使用人が工事完了日付を虚偽記載)を、審査請求人の行為と同視して、重加算税を賦課することができるか。【裁決の要旨】審査請求人は、本件従業員が工事業者と通謀して虚偽の工事完了日を記載した工事完了報告書等を作成した本件行為が、事実の仮装に該当することについては争わないが、(1)本件従業員は、審査請求人の一使用人として限定的な地位・権限を有していたにすぎないこと、(2)本件行為は、本件従業員の独断的な不正行為であったこと、(3)審査請求人は、従業員に対して一定の教育、管理・監督を行っていたことなどから、本件行為を審査請求人の行為と同視することはできない旨主張する。しかしながら、イ)本件工場における工事完了の手続(工場長、課長が押印)、ロ)本件従業員の業務等(保全チームの担当者)、ハ)本件各工事に係る本件従業員の行為等(工事未了を課内で報告していない)、ニ)工場長の本件各工事への関与等(現場を見ていない)、ホ)上司である課長の本件各工事への関与等(現場を見ていない)、へ)本件各工事の概要(400平米の緑地をアスファルト敷きへ)、ト)全従業員に対する審査請求人の管理・監督(未了案件の費用化厳禁、処罰を通知済み)について、以下の事実が認められる。本件行為は、審査請求人から付与された権限の範囲内において行われたものである、本件行為の防止措置として、審査請求人は本件従業員に対して一定の管理・監督は行っていた一方、工場長と課長は本件各工事の現場確認を全て本件従業員に任せ、自ら現場を確認しなかったため、本件行為による不正の事実を把握して是正措置を講ずることができなかったことからすると、審査請求人における管理・監督が、本件行為のような不正を防止する上で十分であったとは認められない。以上の点を総合考慮すれば、本件行為を納税者たる審査請求人の行為と同視することができると判断するのが相当である。【参照条文】国税通則法第68条《重加算税》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/01/20
1月1日の賦課期日後に新たに所有者となった者が、固定資産税等の納税義務を負担することはなく、買主から受け取る精算金は譲渡所得の総収入金額になると判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】各年度の固定資産税等は、1月1日の賦課期日における土地又は家屋の所有者を納税義務者として課されるものであり、その賦課期日後に所有者の異動が生じたとしても、新所有者が賦課期日を基準として課される固定資産税等の納税義務を負うことはない。未経過固定資産税等相当額の精算金には、税の性格はなく、譲渡の対価を構成すると解される。不動産が譲渡された場合に、未経過期間に対応する固定資産税等の精算は当事者の自由意志だが、売買契約書では買主が売主に精算金を支払う旨が書かれていることが多い。審査請求人(個人)は、売買契約書に従って受け取った未経過固定資産税等相当額を譲渡所得の総収入金額に計上しなかったため、更正処分を受け、買主負担分を立替えていたにすぎない、譲渡収入になれば税に税を課す二重課税だと主張した。国税不服審判所は、所得税法(譲渡所得課税)の趣旨及び地方税法の規定から、税務署の処分を適法と判断した事例である。また、家屋に係る固定資産税等相当額の受け取りは、消費税の課税売上になる。(令和3年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、他・棄却・令和6年2月13日裁決)【主な争点】未経過固定資産税等相当額は、譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入されるか。【裁決の要旨】所得税法第33条《譲渡所得》第1項及び第3項は、譲渡所得に対する課税は、資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会にこれを清算して課税する趣旨のものと解すべきである。このような譲渡所得に対する課税の趣旨からすると、資産の譲渡の対価として収入すべき金額については、その名目いかんにかかわらず、譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入されるべきであると解するのが相当である。固定資産税等は、その賦課期日である毎年1月1日現在における固定資産の所有者に対して課されるものであって、その所有期間に対応して課されるものではなく、賦課期日後に当該固定資産の所有者に異動が生じたとしても、新たな所有者が当該固定資産のその年の固定資産税等の納税義務を負担するものではない。本件土地建物の売買契約における固定資産税等の負担及び清算に関する定めは、新たな債権債務関係を発生させる合意内容の一つというべきである。したがって、当該合意に基づいて買主から請求人に支払われた本件未経過固定資産税等相当額は、本件土地建物の譲渡の対価の一部であると認められることから、請求人の譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入されることとなる。【参照条文】所得税法第33条《譲渡所得》、第36条《収入金額》地方税法第343条《固定資産税の納税義務者等》、第359条《固定資産税の賦課期日》、第702条《都市計画税の課税客体等》、第702条の6《都市計画税の賦課期日》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/01/06
土地売却代金と将来の還元住戸の取得代金が相殺されても、土地売却益は引渡した事業年度に計上すると判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】法人税法上、各事業年度の益金の額に算入すべき収益の額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算すべきとされている。固定資産の譲渡による収益の額はその引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入するという法人税基本通達2-1-14の定めは、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従い、収益計上時期に権利確定主義を採用しており、法人税法の趣旨に適合すると解されている。不動産業の審査請求人は、甲社から提案を受け、所有土地を甲社に売却し、甲社が当該土地上に建築する分譲マンション内の住戸を譲り受けることに合意して、土地の売買契約並びに等価交換協定書を交わし、土地を引渡した平成29年9月期に売却益を計上した。その後、土地譲渡益の計上は、還元住戸の引渡予定日の令和2年2月28日の属する事業年度になるとして、更正の請求を行ったが、税務署は認めなかった。国税不服審判所は、契約書等の内容から、土地の売却と還元住戸の取得は別々の売買取引である、そして、土地の引渡し日に所有権移転登記と固定資産税等の精算が行われているから、土地の譲渡による収入は引渡し日において権利が確定しており、同日の属する平成29年9月期に譲渡益を計上すると判断した事例である。(平成28年10月1日から平成29年9月30日までの事業年度の法人税の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分、他・棄却・令03-04-20裁決)(非公開)【主な争点】更正の請求は認められるか。具体的には、土地の譲渡益の計上時期は、土地の引渡し時か、交換を前提とし、それぞれの代金が相殺された、還元住戸の取得の時か。【裁決の要旨】1)売買契約及び還元契約について売買契約書には、土地と住戸の交換協定が、締結に至らなかった又失効した場合であっても、その理由のいかんにかかわらず、本件売買契約に何ら影響を及ぼさない旨、交換協定書には、交換協定及び還元契約が解除等により失効した場合であっても、その理由のいかんにかかわらず、売買契約に何ら影響を及ぼさない旨がそれぞれ定められている。土地と還元住戸それぞれの売買代金を対当額につき相殺する方法により支払う旨は定められているものの、土地と還元住戸とを交換する旨は定められていない。契約当事者によって選択された法形式を否定すべき特段の事由もないことからすれば、売買契約と還元契約はそれぞれが有効に成立した別個の契約であり、それぞれの契約に基づく取引は独立した売買取引であると認められる。2)収益等の額の計上時期について売買契約書においては、土地の引渡期日は、平成29年7月31日と定めた上で、同日に所有権移転の登記が行われていること、甲社が同日以降分の固定資産税及び都市計画税の精算金を審査請求人に対して支払っていることが認められる。この事実からすれば、土地の引渡しがあった日は、平成29年7月31日であることは明らかであり、土地の譲渡によって生ずる収入については、同日において、その収入すべき権利が確定したとみるのが相当であるから、土地の譲渡による収益等の額については、同日の属する平成29年9月期の益金等の額に算入することとなる。以上のことからすれば、納付すべき税額が過大であるとは認められないから、更正の請求には、国税通則法第23条《更正の請求》第1項第1号の規定に該当する事由はない。【参照条文】国税通則法第23条《更正の請求》法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》法人税基本通達2-1-14《固定資産の譲渡による収益の帰属の時期》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2024/12/23
課税庁の主張を裏付ける的確な証拠がなく、免税品を国内で譲渡したとして行われた消費税等の賦課決定処分が取り消された事例(全部取消し)
【裁決のポイント】輸出物品販売場(免税店)を経営する事業者は、非居住者に対し、免税対象物品(土産品等として国外に持ち帰る目的で購入される物品のうち、通常生活の用に供する物品)を、政令で定める方法で購入されるものの譲渡を行った場合には、消費税を免除する規定(消費税法第8条第1項)に基づいて、非居住者は、免税で購入することができる。しかし免税品の国内不正転売が問題となり、令和5年4月1日以降の譲渡から、日本国籍を有しない非居住者については、出入国管理及び難民認定法に規定する「短期滞在」、「外交」又は「公用」の在留資格を有する者等に限ることとされ、令和6年度税制改正で出国時に還付する方式への変更など抜本的な制度の見直しが明言されている。本件の審査請求人は中国籍の非居住者で、免税店から国税庁に電子送信された購入記録情報では入国後の令和3年11月1日から令和4年1月31日までほぼ連日、免税品を購入し、一度も出国していないことから、課税庁は審査請求人の滞在場所で調査をし、免税品は日本国内で譲渡されたとして、消費税等の賦課決定処分を行った。審査請求人は、いずれの物品も日本国外へ輸出したと主張して、処分の全部の取消しを求める審査請求を行った。国税不服審判所は、課税庁の主張を裏付ける的確な証拠はなく、納税地となる譲渡時の譲渡に係る物品の所在場所の特定ができない以上、賦課決定処分は違法であり、その全部を取り消すべきと判断した事例である。(令和4年3月22日(譲渡若しくは所持させた日又は譲受け若しくは所持をした日)の消費税及び地方消費税の賦課決定処分・全部取消し・令和5年3月16日裁決(非公開))【主な争点】審査請求人は、課税対象となった本件免税対象物品を国内において譲渡したか否か。【裁決の要旨】原処分庁主張の箱及び袋の存在は、審査請求人による本件免税対象物品の国内譲渡の事実をうかがわせるものであるとはいえず、審査請求人が本件免税対象物品を購入後に自ら消費し、あるいは、他に譲渡したことがうかがわれるに留まり、審査請求人が輸出した可能性を排斥できない。また、審査請求人は、本件免税対象物品の全部を輸出した証拠として、中華人民共和国向けの国際スピード郵便(EMS)や中華人民共和国マカオ特別行政区宛の国際輸送サービスの複数の送り状を当審判所に提出している。内容物の詳細は不明で、送り状に記載された審査請求人の住所は審査請求人の滞在場所とは相違するが、審査請求人の配偶者は、発送を同人の知人に依頼したために、その知人の住所が記載されてしまったものである旨答述しており、審査請求人が輸出した物品が本件免税対象物品の一部である可能性を排斥するに足りる的確な証拠はない。本件免税対象物品のうち輸出されなかった物品の範囲を明らかにできる的確な証拠はなく、国内において譲渡されたものが本件免税対象物品のうちのどの物品であるのかを特定するに足りる証拠もない。加えて、納税地である譲渡時の譲渡に係る物品の所在場所は判然としないため、賦課決定処分に係る納税地を特定することができない。本件免税対象物品の一部に審査請求人が購入していないものが含まれているか否かにかかわらず、本件免税対象物品について、審査請求人に消費税法第8条第5項を適用することはできず、本件賦課決定処分は違法であり、その全部を取り消すべきである。【参照条文】消費税法第8条《輸出物品販売場における輸出物品の譲渡に係る免税》、第27条《輸出物品販売場において購入した物品を譲渡した場合等の納税地》消費税法施行令第18条《輸出物品販売場で譲渡する物品の範囲、手続等》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2024/12/16
実額が原則であり、家内労働者の特例でも上限を超え、給与所得のように収入に応じて控除額を算定する控除方式は認められないとした事例(棄却)
【裁決のポイント】事業所得における必要経費については、事業活動と直接関連を持ち、事業の遂行上必要な費用を控除する、いわゆる実額控除を原則としている。そのうえで、特例として、家内労働法に規定する家内労働者や、外交員、集金人、電力量計の検針人のほか、特定の者に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする個人については、事業所得の金額の計算上算入すべき必要経費の金額が55万円(令和元年分以前は65万円)まで認められるという規定がある(租税特別措置法第27条《家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例》)。本件の審査請求人は、マッサージを施術するセラピストで、平成29年4月までは業務委託契約先に継続的な人的役務の提供に係る業務を行う家内労働者に該当した。税務署の調査があり、実額が65万円未満なので上記特例により必要経費を65万円(当時)とする更正処分を受けたが、同じ収入のサラリーマンより控除される控除額が少なくなり不公平だ、収入に応じて控除額が算定されるべきと主張して、審査請求を行った。国税不服審判所は、審査請求人主張の計算は法令上に規定がないとして、請求を棄却した事例である。なお、審査請求人は法令で定められた帳簿書類の備付け、記録又は保存が行われていないとしてなされた青色申告の承認の取消の処分も適法とされた。(平成25年分ないし平成28年分所得税等の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、他・棄却・令和2年10月13日裁決(非公開))【主な争点】更正処分における家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例による必要経費の額は過少であるか否か。具体的には、事業所得の計算において、給与所得のように、収入に応じて控除額を算定する控除方式は認められるか。【裁決の要旨】事業所得における必要経費については、いわゆる実額控除を原則とするものであり、また、事業所得等の計算の特例の適用を受ける場合でも65万円(令和2年分以降は55万円)を限度とされ、審査請求人が主張する給与所得における給与所得控除と同じように事業所得についても収入金額の増加に比して一定額を必要経費として控除する方式を認める旨の法令上の規定もないことから、審査請求人の主張は採用できない。なお、審査請求人の主張が、処分の基となった法令自体の適否又は合理性を主張するものであれば、当審判所は、原処分庁が行った処分が違法又は不当なものであるか否かを判断する機関であって、法令自体の適否又は合理性の判断をすることはその権限に属さないから、当審判所の審理の限りではない。【参照条文】所得税法第37条《必要経費》租税特別措置法第27条《家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2024/12/09
工事代金支払いに介在させた業者への支払いについて、業務関連性がないとして工事原価としての損金算入が認められず、重加算税も課された事例(棄却)
【裁決のポイント】法人の所得金額の計算上、損金の額に算入することができる支出は、当該法人の業務の遂行上必要と認められるものでなければならないというべきであり、支出のうち、使途の確認ができず、業務との関連性の有無が明らかではないものについては、損金の額に算入することができないというべきとされる(法人税法第22条第1項及び第3項)。本件の審査請求人は、土木建築工事会社で、工事原価として損金算入したマンション新築工事に係る外注費等について、審査請求人が支払いをした相手の各業者は工事において役務の提供を行っていないとして、損金算入を認めない更正処分等を受けた。審査請求人は、設計監理施工業者への支払いに中間業者の介在させたのは、工事を審査請求人に発注するよう働きかけた者へ紹介料を払うためのスキームであり、実際に7,900万円の粗利益を上げた工事を受注するために直接要した費用であるから工事原価であり、仮に交際費等に該当するとしても、交際費等として損金算入限度額を超えたことによる過少申告になったにすぎないと主張した。国税不服審判所は、本件各金員は、工事原価、交際費等のどちらにしても、業務との関連性の有無が明らかではないことから損金の額に算入できない、工事原価と帳簿に記載したことは事実の仮装に当たり、処分は適法であると判断した事例である。(平成27年10月1日から平成28年9月30日までの事業年度の法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分、他・棄却・令和4年5月25日裁決)(非公開)【主な争点】(争点1)工事代金支払いに介在した本件各業者への支払われた本件各金員は、工事原価として損金の額に算入できるか、(争点2)本件各金員を本件工事の工事原価として計上したことは重加算税が課される事実の仮装に当たるか。【裁決の要旨】(争点1)審査請求人は、(審査請求人の過去の取引先で審査請求人の専務と旧知の)Aが用意した本件各業者名義及びB名義の各預金口座に本件各金員を振り込んだ後、Aの指示で、(審査請求人との契約に基づき役務の提供を行った)設計監理施工業者へ契約金額が支払われ、その残金について、AとBが受領している。Aの行為は本件工事の完成に寄与するものではなく、Aが本件工事について役務の提供を行っているとは認められない。本件各金員は、本件工事について役務の提供を行っていないA及びBに対して支払われたものであると認めざるを得ず、業務との関連性の有無が明らかではないから、本件工事の工事原価として損金の額に算入することはできない。またAがその他の者に支払った事実を推認させる証拠はなく、当審判所の調査によっても明らかでない。審査請求人は、最終的にCが紹介料を受領するためのスキームであると主張するが、審査請求人からCに支払われた事実は認められないので、審査請求人の主張には理由がない。(争点2)本件各業者が本件工事について役務の提供を行っていないにもかかわらず、本件各金員を、本件各業者に対して支出した本件工事の工事原価として記載させた行為は、事実を仮装したものといえる。専務は、審査請求人代表者の弟であり、受発注及び請求に関する関係書類の決裁業務等を行っており、工事の請負の決定を実質的に一任されていたのであるから、上記の行為は審査請求人の行為と同視できる。本件各金員は、業務との関連性の有無が明らかではないことから、損金の額に算入できない。本件各金員が本件工事の工事原価又は交際費等に該当することを前提とした請求人の上記の主張は、その前提を欠く。【参照条文】国税通則法第68条《重加算税》法人税法第22条本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2024/12/02
譲渡所得申告漏れの基因となった上場株式等が、銘柄別に区分記載されていなかったため、過少申告加算税の加重措置が適用された事例(棄却・却下)
【裁決のポイント】財産債務調書制度は、億単位の一定額以上の財産をもつ人に適用される。対象者には、財産債務の「種類別」、「用途別」(一般用か事業用か)、「所在別」情報の提出を求めることから、適正な提出へのインセンティブとして、過少申告加算税の特例措置がおかれ、財産債務調書に記載がある財産債務に関して所得税・相続税の申告漏れが生じても税務調査通知前の修正申告なら5パーセントに軽減(軽減措置)、反対に、記載がない(記載不十分を含む)財産債務に係る申告漏れは、その財産債務に関する加算税が5%加重される(加重措置)。本件の審査請求人は、令和3年に売却した上場株式等の所得の申告漏れに気づいて修正申告を行い、過少申告加算税は軽減措置とされたが、その上場株式等が令和2年12月31日時点の財産債務調書上で証券会社ごとに他の銘柄と国内株式等、債券等として一括合計記載されていたため、記載不十分として加重措置が適用されたことから、銘柄別ではないが記載はしてある、証券会社の残高証明書で内訳はわかると主張して軽減措置を求めて審査請求を行った。国税不服審判所は、加重措置の判断は財産債務調書の記載自体から行うべきであるとして、銘柄別に記載されていないから、軽減措置は適用されないとした事例である。(令和3年分の所得税及び復興特別所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分、他・却下及び棄却、令和6年2月7日裁決)【主な争点】財産債務調書上で銘柄別に記載されていない財産の申告漏れについて、過少申告加算税は、軽減措置が適用されるか、加重措置が適用されるか。【裁決の要旨】財産債務調書の提出制度の趣旨から、財産債務調書には「財産の種類、数量及び価額並びに債務の金額その他必要な事項」を記載することが規定され、有価証券については、種類別、用途別及び所在別の数量及び価額並びに取得価額(種類別は、株式、公社債等の別のほか、銘柄の別)を記載することが規定されていることに照らすと、加重措置が適用される「重要なものの記載が不十分であると認められる場合」とは、「財産の種類、数量、価額及び所在並びに債務の金額その他必要な事項」といった記載すべき事項について誤りがあり、又は記載すべき事項の一部が記載漏れとなり、修正申告等の基因となる財産又は債務の特定が困難である場合をいうものと解される。そして、加算税の加重措置及び軽減措置の適用の可否の判断は、財産債務調書の記載内容自体から行うべきであるところ、本件財産債務調書には、本件有価証券の銘柄及び数量の記載がないため、本件財産債務調書の記載内容からは本件有価証券を特定することは困難であると認められ、重要なものの記載が不十分であると認められる場合に該当し、過少申告加算税の計算において加重措置が適用され、軽減措置は適用されない。【参照条文】国税通則法第65条《過少申告加算税》内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律関係(国送法)第6条《国外財産に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例》、第6条の2《財産債務調書の提出》、第6条の3《財産債務に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例》国送法施行令第12条の2《財産債務調書の提出に関し必要な事項》国送法施行規則第15条《財産債務調書の記載事項等》国送法通達6の2-4《財産債務調書の財産の記載事項》、6の3-3《重要なものの記載が不十分であると認められる場合》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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