アウトライン審査事例
国税不服審判所が示した審査請求事件の裁決例は、正確な税務処理を行っていくうえで見落とせません。アウトライン審査事例では実務家の皆様にとって実用性の高い裁決事例を簡潔に紹介。併せて、参照条文も記載しておりますので、実務上の判断の一助としてお役立てください。
1140 件の結果のうち、 1 から 10 までを表示
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2024/11/18
当事者間の契約解除の合意に基づき受け取った解決金は、非課税所得に該当しないと判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】所得税では、「心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得する」保険金、損害賠償金、慰謝料などは非課税所得となっている。損害には種々なものが含まれることから、損賠賠償金のすべてが一律に非課税とはされず、政令(施行令)が非課税とされる具体的な範囲を例示している(所得税法第9条、所得税法施行令第30条)。本件の審査請求人は、飲食店経営の個人事業者で、店舗物件の所有権を取得して賃貸人の地位を継承した賃貸人から、マンション建設を理由とした退去を求められ、物件引渡しと引換えの解決金の額で合意して解決金を受け取った。一時所得として確定申告をしたのち、本件解決金は非課税扱いの損害賠償金である、すくなくとも移転費用や営業損失の額を超える部分は精神的な見舞金なので非課税であるとして更正の請求を行ったが、税務署は認めなかった。国税不服審判所は、本件解決金は、審査請求人と賃貸人との間の契約解約の合意に基づいて審査請求人に生じた損失を補償するためのものであるから、所得税法及び施行令が非課税所得として想定している損害賠償金及びこれらに類するものではなく、また、見舞金及びこれに類するものでもないから、非課税所得に該当する金額はなく、税務署の処分を適法と判断した事例である。(平成30年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対してされた更正すべき理由がない旨の通知処分・棄却・令和3年1月13日裁決)(非公開))【主な争点】本件解決金は、所得税の非課税所得に該当するか(所得税法第9条第1項第17号(現行法第18号)号及び所得税法施行令第30条)【裁決の要旨】当事者の合意に基づいた損失を補償するための本件解決金は、所得税法施行令第30条第2号が規定する「不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金」及びこれに類するものに該当しないことは明らかである。また、本件解決金は、損害保険契約等に基づいて支払われたものでないことから、同号が規定する「損害保険契約に基づく保険金及び損害保険契約に類する共済に係る契約に基づく共済金で資産の損害に基因して支払を受けるもの」及びこれに類するものに該当しないことも明らかである。本件解決金は、店舗移転のための休業期間中の収入金額又は店舗移転に係る必要経費の補償等の性質を有するものであることからすれば、施行令第30条第1号が非課税所得として規定する心身に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金及びこれに類するものに該当しない。加えて、施行令第30条第3号が規定する「見舞金」は、災害等の見舞金で、その金額がその受贈者の社会的地位、贈与者との関係等に照らし社会通念上相当と認められるものと解するのが相当であるところ、当審判所に提出された証拠資料等によっても本件解決金の中に見舞金に相当する金額が含まれていると認めることはできないことに加え、本件解決金は、災害等に際して支払われたものではなくことについても明らかである。したがって、本件解決金は、所得税法第9条第1項第17号及び施行令第30条が規定する非課税所得に該当しない。【参照条文】所得税法第9条《非課税所得》所得税法施行令第30条《非課税とされる保険金、損害賠償金等》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2024/11/11
支出の目的は契約外の業務への支払いでなく歓心を得ることで、金銭の贈答であり、交際費等に該当すると判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】税法上、交際費等は、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等(事業関係者等)に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(接待等)のために支出するものをいうと規定されているが、平成15年9月9日東京高裁判決(萬有製薬事件と呼ばれる)以降は、ある支出が「交際費等」に該当するというためには、①「支出の相手方」(事業に関係ある者等か)②「支出の目的」(事業関係者等との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図るため)とともに、③「行為の形態」(接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為)を満たすことが必要という、三要件説が多く用いられている。交際費等の「等」は、中身が問題で、会計科目は交際費に限定されないからである。本件の審査請求人は産廃運搬業で、外注先の個人事業者(運搬ドライバー)に、自社従業員の賞与支給時期に合わせて、委託契約書に定めのない金銭(本件各支出金)の支払いを行っていたため、税務署は、外注費計上額のうち本件各支出金については交際費等と認定して処分を行った。国税不服審判所は、三要件の「支出の目的」を代表者や外注先の申述から検討し、金銭を贈った本件各支出金は交際費等に該当し、処分は適法であるとした事例である。課税仕入れに係る支払対価には該当しなくなり、消費税計算にも影響する。(平成28年6月1日から令和2年5。月31日までの各事業年度の法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、他・棄却、他・令和4年12月20日裁決)(非公開)【主な争点】主な争点は、本件各支出金は、交際費等に該当するか否か【裁決の要旨】当該支出が「交際費等」に該当するというためには、「支出の相手方」「支出の目的」「行為の形態」の三要件を満たすことが必要であると解され、支出の目的が接待等のためであるか否かについては、当該支出の動機、金額、態様、効果等の具体的事情を総合的に判断して決すべきであり、また、接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為であれば、それ以上に支出金額が高額なものであることや、その支出が不必要(冗費)あるいは過大(濫費)なものであることまでが必要とされるものではないと解される。本件各支出金の支出の相手方は、審査請求人の事業関係者等であることが明らかなので、「支出の目的」及び「行為の形態」に関してその要件に該当するか否かについて検討する。本件各支出金について審査請求人代表者が、各外注先は、経験の浅い外注先を指導してもらうなど長年貢献してくれており、審査請求人にとって生命線だから今後も引き続き一生懸命仕事をしてもらいたい旨、あるいは外注先も自身が請求した金額ではないので喜んでいると思う旨申述していること、審査請求人が赤字のときには支払わず、また、決算月の5月になれば1年を通しての利益がほぼ確定するので、それに応じて5月の支払金額を決めていた旨答述していたこと等を併せ考慮すれば、本件各支出金に係る支出の動機は、各外注先に対し、審査請求人の業績を考慮して金銭を支出することで、今後とも従前同様の貢献を期待することや歓心を得ることにあったことと認められる。したがって、本件各支出金は、その支出の金額の決定方法、動機及び効果等から勘案すると、事業関係者等である本件各外注先との親睦の度を密にし、取引関係の円滑な進行を図るという目的でなされた各外注先に対する金銭の贈答であると認められる。したがって、本件各支出金は、租税特別措置法第61条の4第4項に規定する交際費等に該当する。【参照条文】租税特別措置法第61条の4《交際費等の損金不算入》消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2024/11/11
経理担当者の長期不在は組織内部の事情にすぎず、源泉所得税の期限後納付に不納付加算税を課した処分は適法と判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】国税がその法定納期限までに完納されなかったという客観的な事実があれば、原則として納税義務者(源泉所得税は源泉徴収義務者)に不納付加算税が課される。例外的に「正当な理由があると認められる場合」(国税通則法第67条第1項ただし書)には、不納付加算税を課さないこととされ、正当な理由の例として、「災害、交通・通信の途絶その他法定納期限内に納付しなかったことについて真にやむを得ない事由があると認められるとき」が挙げられている。「病気」「入院」を当てはめて処分の取消しを求め、棄却された事案がしばしば見受けられる。本件の審査請求人は、1月から6月までの源泉所得税(納期の特例の承認を受け、7月10日が納期限)を9月9日に納付して不納付加算税が課されたため、「前年4月に経理担当者が突然退職してから担当者不在が続き事務が間に合わない、これは政府の大企業優先の政策によりあらゆる零細企業が直面する社会現象であって、審査請求人が努力しても解決できない規模で、審査請求人の責めに帰することのできない客観的事情がある」等と主張した。国税審判所は、本件全証拠によっても零細企業全般が期限内の納付困難とは認められず、源泉徴収義務者である審査請求人としては、あらかじめ準備するなど必要な措置を講じておくべきであったというほかないとして、税務署の処分は適法とした事例である。(平成31年1月から令和元年6月までの期間分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の不納付加算税の賦課決定処分・棄却・令和2年10月13日裁決(非公開))【主な争点】審査請求人が法定納期限までに納付しなかったことについて、「正当な理由があると認められる場合」(国税通則法第67条第1項ただし書)に該当するか。【裁決の要旨】不納付加算税の制度の趣旨からすれば、例外的に不納付加算税を課さないこととする「正当な理由があると認められる場合」とは、法定納期限内に完納しなかったことについて源泉徴収義務者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、そのため、このような源泉徴収義務者に不納付加算税を課することが不当又は酷と評されるような場合であって、法定納期限内に完納した者との間の公平を損ねることになってもなおその制裁を免除するのが相当である場合をいうものと解するのが相当である。審査請求人の主張について、本件全証拠によっても、零細企業全般が人手不足等により源泉徴収に係る国税を法定納期限までに納付することが困難な状態に陥っているとは認められない。そして、経理担当者の不在状態の継続等により事務処理が間に合わなかったなどという事情は、審査請求人の組織内部の事情にすぎないのであって、源泉徴収義務者である審査請求人としては、経理担当者の有無にかかわらず、その責任において本件源泉所得税等を法定納期限内に納付できるように、あらかじめ準備するなど必要な措置を講じておくべきであったというほかない。したがって、本件は、国税通則法第67条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当しない。【参照条文】国税通則法第67条《不納付加算税》所得税法第216条《源泉徴収に係る所得税の納期の特例》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2024/10/28
売主が負担した商品券の交付等により経済的利益を得ており、雑所得でなく、一時所得として課税されると判断した事例(全部取消し)
【裁決のポイント】所得税法では、人の担税力を増加させる経済的利得は、その源泉、形式、合法性の有無を問わず、全て所得として把握するものとしているから、非課税とする趣旨の規定がない限り、これを課税対象としているものと解するのが相当とされる。そして、では何所得か、という所得区分を検討することになる。審査請求人は、分譲マンションの販売担当者から、提携値引き以外の値引きはできないが、売主が諸費用等の負担や商品券の交付(商品券の交付等)をすることで対応することはできるといわれて売買契約を結んだ。商品券の交付等は、合意の覚書に記載された。審査請求人は商品券の交付等について、確定申告で所得に含めなかったが、税務署から、無償で得た経済的利益で雑所得であるという更正処分を受けたことから審査請求を行い、課税対象ではない、しかし仮に課税されるなら法人からの贈与に該当し一時所得であると主張した。国税不服審判所は、商品券の交付等は経済的利益として課税対象である、そして「営利を目的として継続していない」「役務提供の対価としての性格を有しない」から、一時所得であるとして、課税処分を全部取消した事例である。(一時所得で再計算すると、確定申告書の納税額と同額になった)。(平成30年分所得税及び復興特別所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・全部取消し・令和5年1月26日裁決(非公開))【主な争点】(争点1)商品券の交付等により課税される「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益」が生じているか、(争点2)仮に、経済的な利益が生じている場合、本件経済的利益は一時所得か雑所得か。【裁決の要旨】(争点1)本件売買契約書及び本件覚書の内容のほか、本件売買契約及び本件合意に至る経緯を検討すると、審査請求人及び妻が本件売主との間で、本件売買契約及び本件合意において合意した売買の目的物は本件物件であり、本件商品券の交付等は含まれていないと認められる。本件商品券の交付等は、売買の目的物とは別に無償で提供されたものであったというべきで、審査請求人には、本件合意により外部から本件商品券の交付等に係る経済的価値(本件経済的利益)の流入があったというべきであり、「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益」(所得税法第36条第1項括弧書)が生じていると認められる。(争点2)経済的利益の所得区分の判断においては、当該経済的利益が生じる基因となった契約及び経緯等を総合的に考慮して判断するのが相当である。また、一時所得に該当するためには、「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得」で、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」(非継続要件)であること及び「労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの」(非対価要件)であることのいずれにも該当する必要がある。審査請求人は、売主から無償で本件商品券の交付等を受けたにすぎず、本件経済的利益は非継続要件を満たす。本件商品券の交付等に係る給付が審査請求人の何らかの役務行為に関連してされたものとは認められず、本件経済的利益は非対価要件を満たす。以上からすれば、本件経済的利益は一時所得に該当する。【参照条文】所得税法第34条《一時所得》、第35条《雑所得》、第36条《収入金額》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2024/10/21
バス運行事業がない自治体に依頼されたバス運行業務に関して、自治体から支払われる運行負担金も課税売上げであると判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】一般乗用旅客自動車運送事業などを営む審査請求人は、B市とバスの運行に関する協定を結び、B市の運行計画に従って運行し、運行に要する審査請求人の経費から、運行収入を差し引いた残りの赤字相当分を、B市から運行負担金として受け取り、消費税の課税売上げとして申告した後に、課税資産の譲渡等の対価に該当しないとして更正の請求をしたところ、税務署に認められなかったことから、審査請求を行った。審査請求人は、国税庁作成の消費税QA集の設問「バス路線運行維持補償金」に、「赤字の既存路線維持のため、又は既存路線の延長若しくは増便に際して、実際の赤字額又は予想される赤字額を補てんするため関係先から交付される補償金」は、課税の対象外となる(交付する補償金とバス会社の役務の提供との間に明白な対価関係がない。)と記載されていることを、主張の根拠にした。国税不服審判所は、本件運行負担金と審査請求人のB市に対する役務提供との間には対価関係があると認められるから、事例集のケースに該当しないと判断した事例である。*なおQA集の同じ設問内に、「本来自己において行うべき業務を他の事業者に委託する場合に、当該業務について当該事業者に交付する金銭は、その名称の如何にかかわらず当該業務に係る役務の提供の対価として課税となる」という解説も掲載されている。(平成31年4月1日から令和4年3月31日までの各課税期間の消費税等の各更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の各通知処分・棄却・令和6年6月11日裁決(非公開))【主な争点】B市から受け取る運行負担金の額は、課税資産の譲渡等の対価の額に該当するか否か。【裁決の要旨】B市は、バスの運行事業を主体として行っていたと認められるところ、バスを運行するための部署は有していないため、実際のバスの運行を審査請求人に依頼し、審査請求人においてB市が策定した運行計画に基づいてバスの運行業務を行うことで、B市は、「B市地域公共交通網形成計画」の一部を実現していたものと認めるのが相当であり、審査請求人が、バスの運行業務を行うことにより、B市が便益を享受していたものと評価できる。そうすると、審査請求人が行っていたバスの運行業務は、B市に対する役務の提供に当たる。B市と審査請求人の間のバス協定書においては、運行負担金は、運行計画に基づくバスの運行に要する審査請求人の経費の総額から、バスの運行に係る収入等を減じた額とする旨定められているところ、当該定めからすると、B市による運行負担金の支払は、審査請求人が実際に「運行計画に基づくFバスの運行」を行うことが条件となっていたと認めるのが相当である。そして、審査請求人は、本件各課税期間において、B市からの依頼により、実際に「運行計画に基づくバスの運行」業務というB市に対する役務の提供を行っており、審査請求人は、バス協定書に基づいて、B市から運行負担金の支払を受けていた。これらからすると、運行負担金は、審査請求人のB市に対する役務の提供の対価に該当する。運行負担金の算定方法は、認定を何ら左右するものではない。【参照条文】国税通則法第23条《更正の請求》消費税法第2条《定義》、第4条《課税の対象》、第28条《課税標準》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2024/10/21
損金算入した外注費について、外注先の役務提供はなく、対価が発生する余地はないと判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】その費途の確認ができず、業務との関連性が明らかでないものは、損金の額に算入することができないと解され、「業務関連性」が厳しく問われることがある。業務の遂行上必要と認められる費用として支出したものであるかのように記載し、仮装して、仮装したところに基づき申告書を提出すれば、重加算税が課され、悪質性が高い場合は、本件のように青色申告の承認の取消しも行われる。解体工事業を営む法人である審査請求人は、税務調査を受け、損金算入した各外注費について、外注先からの請求書に書かれている現場の工事作業について役務提供を受けた事実は認められないと指摘されると、実際は施工管理及びコンサルタント業務の対価として支払ったという申立書とその証拠として「貴社コンサル及び施工管理〈再発行分〉」とする再発行請求書の写しを提出したうえで、各外注費は業務関連性があるから損金算入されると主張した。国税不服審判所は、外注先の供述内容が、請求人の申立書に合わせるように、複数回も変遷しており、請求人の主張の裏付け証拠としての信用性は低いと認定し、請求人の主張するような役務の提供を行ったと認められないから、その対価が発生する余地はなく、本件各外注費の損金算入は認められないと判断した事例である。(平成28年4月期以後の法人税の青色申告の承認の取消処分、平成28年4月期から令和2年4月期までの各事業年度の法人税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、他・棄却・令和4年9月9日裁決(非公開))【主な争点】本件各外注費は、本件各事業年度の法人税の所得金額の計算上、損金の額に算入されるか。【裁決の要旨】外注先は、調査担当者に対して、外注先が審査請求人のために行った役務の内容について、8割から9割までは、清掃又は資材運搬のような雑仕事であり、残りの仕事は、とび工事であると申述していたにもかかわらず、突如として、審査請求人に対する不動産の紹介、審査請求人役員のタクシー代行、審査請求人に関する関係書類の受渡し、現場の清掃を行っていたと、供述を複数回にわたり変遷させている。仮に審査請求人が主張するとおり、真実、外注先が、審査請求人のために、少なくとも平成25年頃から、継続的に、様々な活動をしてきたならば、それらの業務を外注先が行ったことを裏付ける文書などの記録(例えば、業務委託契約書、請求人からの指示文書、外注先に支払うべき金額の計算の基となるような書類、外注先からの交渉記録の報告書及び外注先の稼働実績の記録書類など)が存在してしかるべきであるにもかかわらず、そのような証拠は、信用性の低い、本件各再発行請求書以外に提出されておらず、当審判所の調査によっても、認めることはできない。審査請求人から提出された各証拠を検討しても、本件各外注先が、審査請求人に対して、審査請求人の主張するような役務の提供を行ったと認められないから、その対価が発生する余地はなく、本件各外注費は、その対価の支払とはいえない。そうすると、本件各外注費は、その使途の確認ができず、その業務の関連性が明らかではないのであるから、本件各事業年度の法人税の所得金額の計算上、損金の額に算入されない。【参照条文】法人税法第22条(第二款各事業年度の所得の金額の計算の通則)本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2024/10/07
税務署から「確認したい」という電話があり、調査を受ける前にと提出した修正申告書に対して、過少申告加算税が課された事例(棄却)
【裁決のポイント】確定申告書を提出した後、納める税金が少な過ぎた場合や還付される税金が多過ぎたという場合は修正申告を行うことになるが、税務署の調査を受ける前に自主的に修正申告をすれば、税務署において課税標準を調査する等の事務負担等を軽減することができることも勘案して、過少申告加算税は課せられない。給与所得者の審査請求人は、令和4年9月15日に、税務署から、株式報酬制度で親会社株式を時価より低額で取得したことによる経済的利益(本件報酬)について確認したいという電話の後で税理士を探して同月26日に修正申告書を提出し、同月30日に税務署を訪問して本件報酬金額一覧表を提出したところ、過少申告加算税賦課決定処分がなされたことから、不服として、審査請求を行った。国税不服審判所は、「納税者がやがて更正に至るべきことを認識した上で修正申告を決意し修正申告書を提出したものでない」といえるか否かについては、調査の内容・進捗状況、それに関する納税者の認識、修正申告に至る経緯、修正申告と調査の内容との関連性等の事情等を総合考慮して判断すべきであるとし、本件の処分は適法であるとした事例である。(平成29年分から令和2年分の所得税及び復興特別所得税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却・令和5年12月7日裁決)【主な争点】本件各修正申告書の提出は、「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合において、その申告に係る国税についての調査通知がある前に行われたもの」、すなわち、過少申告加算税が課されない場合に該当するか。【裁決の要旨】修正申告書の提出が「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合」というのは、税務職員がその申告に係る国税についての調査に着手してその申告が不適正であることを発見するに足るかあるいはその端緒となる資料を発見し、これによりその後の調査が進行し先の申告が不適正で申告漏れの存することが発覚し更正に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達した後に、納税者がやがて更正に至るべきことを認識した上で修正申告を決意し修正申告書を提出したものでないことをいうと解するべきである。そして、上記については、調査の内容・進捗状況、それに関する納税者の認識、修正申告に至る経緯、修正申告と調査の内容との関連性等の事情等を総合考慮して判断すべきである。また、「調査」とは、課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味し、課税庁の証拠資料の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての課税要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を含む税務調査全般を指すものと解され、いわゆる机上調査のような課税庁内部における調査をも含むものと解される。本件は、各事情からすれば、各修正申告の時点において、調査担当職員による調査は、その後の調査が進行し各年分の申告が本件報酬を計上しない不適正なものであることが発覚し更正に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達していたというべきであり、また、本件電話を受けて税務代理人に問合せ等を行っていた審査請求人については、やがて更正に至るべきことを認識した上で各修正申告を決意し、各修正申告書を提出したものと認められる。よって、本件各修正申告書の提出は、「調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合」に該当しない。【参照条文】国税通則法第65条《過少申告加算税》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2024/09/30
国際郵便の発送手続きが完了時に、資産の譲渡に係る対価を収受する権利が確定し、その時点で物品は国内にあるから、国内取引の課税取引であると判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】消費税法では資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定は、資産の譲渡等が行われる時において当該資産が所在していた場所によるものと規定されている。「資産の譲渡等が行われる時」については、法令上の規定はないが、「資産の譲渡に係る対価を収受する権利が確定した時点」と解することが相当とされている。本件の審査請求人は、化粧品等を国内で仕入れ、中国在住の個人や法人に国際郵便でそれら物品を送付する取引を行う法人で、本件送付取引に輸出免税の適用があるとして消費税の申告を行ったが、税務調査を受け、審査請求人は税関の輸出許可証等を保存していないから輸出免税の適用はないと説明されると、委託販売かもしれないと説明を変え、不服審査請求後に、本件送付取引が国内以外の地域において資産の譲渡等をするため資産を輸出した場合(委託販売のための移送)に該当する(消費税法第31条第2項)ことの裏付けとして、口頭契約を書面にしたという委託販売契約書を提出した。国税不服審判所は、審査請求人が示した契約内容を検討し、通常の委託というよりは、物品等の所有権の移転を前提とした売買に近似する取引としての性格が極めて強いものであると判断、国際郵便の送付手続き完了時において、対価を種々する権利が確定し、物品等は国内に所在していることから、本件送付取引は、国内取引であり、その売上げは、「課税資産の譲渡等の対価の額」に該当することとなると判断した事例である。(平成29年1月1日から令和元年6月30日までの各課税期間の消費税等の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却・令和4年3月23日裁決(非公開))【主な争点】本件送付取引は、消費税法第4条第1項の「国内において事業者が行った資産の譲渡等」に当たるか。【裁決の要旨】審査請求人は、本件送付取引の販売形態は委託販売であるから、審査請求人が行った国外への輸出は、国外の受託者に販売させるための輸出であり、国内において行う課税資産の譲渡等に当たらないと主張することから、以下、本件送付取引が、「国内において事業者が行った資産の譲渡等」に当たるか否かについて検討する。資産の譲渡等が国内で行われたかどうかの判定は、資産の譲渡に係る対価を収受する権利が確定した時点で行うこととなり、当該時点において資産が所在している場所が国内である場合には、「国内において事業者が行った資産の譲渡等」に該当することとなる。審査請求人が提出した委託販売契約の存在及び内容を証明するものによれば、本件については、中国国内での物品等の販売は、受託者の名において、受託者の計算においてなされていたと認められるのであり、本件送付取引は、通常の委託販売というよりは、物品等の所有権の移転を前提とした売買に近似する取引としての性格が極めて強いものである。審査請求人が国際郵便による発送手続きを了すれば、審査請求人が履行すべき義務は果たされることから、発送手続きの完了時において、譲渡に係る対価を収受する権利は確定したといえる。このことは、審査請求人が、物品等を送付した日に、送付取引に係る売上げとして、総勘定元帳に売上高として計上していたことと整合する。そうすると、物品等の国際郵便による発送手続きの完了時において、物品等は日本国内に所在しているのであるから、本件送付取引は、「国内において事業者が行った資産の譲渡等」に該当すると認められる。仮に、審査請求人の主張のとおり、受託者との間で委託販売が行われていたとしても、本件物品等の送付先が中国国内の受託者の顧客である場合には、審査請求人は、受託者に代わって本件物品等を顧客に引き渡したことになり、上記のとおり、発送手続きの完了時に請求人は対価を収受する権利が確定することから、「国内において事業者が行った資産の譲渡等」に該当することに変わりはない。【参照条文】消費税法第2条《定義》、第4条《課税の対象》、第7条《輸出免税等》、第28条《課税標準》、第31条《非課税資産の輸出等を行った場合の仕入れに係る消費税額の控除の特例》消費税法施行規則第5条《輸出取引等の証明》関税法第67条《輸出又は輸入の許可》、第76条《郵便物の輸出入の簡易手続》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2024/09/30
役員退職給与の不相当に高額な部分について、支給を受けた審査請求人には第二次納税義務があると判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】滞納者の国税につき滞納処分を行っても不足する場合、その不足が、法定納期限の1年前の日以後に、滞納者が行った無償又は著しく低い額の対価による譲渡など、第三者に利益を与える処分が原因と認められるときは、それによって利益を得た者が、受けた利益を限度で、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負うこととされている。本件の審査請求人は、滞納会社(同族会社)から役員退職給与が支給された代表者である。以前に会社からの多額の借入金を精算するために、自宅の土地建物を会社に売却していた。会社の業績は悪化しており、退職給与の支給(本件支給)の中身は、実質的には、その土地建物と保険の解約返戻金(保険契約者の地位を会社から審査請求人に譲渡した時の価額)の2つであった。会社は退職給与の具体的な算定根拠を回答していない。会社はその後、破産した。税務署は、本件支給が、税務署が平均功績倍率法を用いて計算した役員退職慰労金として相当と認められる金額の約7倍と、対価的均衡を著しく欠き、著しく低い額の対価による譲渡で該当するとして、その差額について、利益を受けた審査請求人に第二次納税義務の告知処分を行った。国税不服審判所は、本件支給がされたのは、滞納会社が滞納国税の徴収などを回避するためで、審査請求人の職務及び功労を考慮した上で決定されたものではないと判断し、税務署の処分を適法と判断した事例である。(第二次納税義務の納付告知処分・棄却・令和5年12月14日裁決)【主な争点】本件支給は、滞納者が行った無償又は著しく低い額の対価による譲渡(無償譲渡等)に該当するか否か。【裁決の要旨】第二次納税義務の制度の趣旨に鑑みれば、無償譲渡等の処分に該当するか否かは、当該財産の種類、数量の多寡、時価と対価の差額の大小等を総合的に考慮して、当該取引価額が、通常の取引額に比して、社会通念上著しく低いと認められるか否かにより判断すべきである。平均功績倍率法を用いて算定した過大な役員退職給与の額の全てが当該役員の職務の執行又は功労と全く無関係に支給されたものと即断することはできず、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分に該当するかどうかは、平均功績倍率法によって求めた相当とされる役員退職給与の金額と実際に支給された役員退職給与の金額の乖離の程度に加えて、当該役員の職務又は功労の内容、程度、勤務年数のほか当該役員退職給与が支給されるに至った具体的事情等をも考慮した上で判断するのが相当である。本件支給の額は、①平均功績倍率法により求められる審査請求人の役員退職慰労金として相当と認められる金額の7倍を超え、その乖離の程度が大きいことに加え、②審査請求人の主な業務は社員教育であり、本件滞納会社の経営を担っていたとはいえないことや③本件支給の決議当時の状況等に鑑みれば、本件支給がされたのは、本件滞納会社が滞納国税の徴収などを回避するためであり、本件支給の額は、本件不動産及び本件保険契約を審査請求人に得させるために設定されたもので、審査請求人の職務及び功労と役員退職慰労金の金額との対価的均衡を考慮した上で決定されたものではなかったと認められる。審査請求人は、本件支給により受けた利益(相当とされる役員退職給与の金額と実際に支給された役員退職給与の金額の差額)を限度として、滞納国税につき第二次納税義務を負うこととなる。【参照条文】国税徴収法第32条《第二次納税義務の通則》、第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》国税徴収法施行令第14条《無償又は著しい低額の譲渡の範囲等》国税徴収法基本通達第39条関係11《親族その他の特殊関係者》、16《特殊関係者の場合の納税義務の範囲》法人税法第2条《定義》、第34条《役員給与の損金不算入》法人税法施行令第7条《役員の範囲》、第70条《過大な役員給与の額》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2024/09/09
収益を分割計上した審査請求人の会計処理が公正処理基準に適合すると判断された事例(全部取消し)
【裁決のポイント】法人税法上、収益の計上時期の原則は、目的物の引渡しの日または役務の提供の日(引渡し等の日)の属する事業年度であるが、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準(公正処理基準)に従って引渡し等の日に近接する日(たとえば検針日)の属する事業年度の収益として経理することも認められている。最高裁は、公正処理基準では収益は収入の原因となる権利が確定した事業年度の益金に計上され、権利確定時期はそれぞれの権利の特質を考慮し決定されるべきという判決を出している。消費税法上も同様に解される。本件の審査請求人は、発注先に納入する部品のためだけに必要な金型等製作費については、契約で、その費用を発注先が負担し、部品の量産開始日を含む月から24カ月の月額均等分割払で受領することとされ、毎月末に収益計上していたが、コロナ禍での取引先支援として分割払中の残額および限定月の新規発注分について一括払いがなされた。審査請求人はそれら一括払費を前受金で処理し、毎月末に収益に振り替える会計処理をしたところ、税務署から一括受領した日の属する事業年度において全額を益金の額に算入すべきとする更正処分を受けた。国税不服審判所は、契約の法的性質、審査請求人が提供する役務の特質、基本契約書に変更はないことから、審査請求人の会計処理は、公正処理基準に適合すると判断した事例である。(令和2年4月1日から令和3年3月31日までの事業年度の法人税、同課税期間の消費税等の各更正処分他・全部取消し・令和5年12月21日裁決)【主な争点】一括払費の前受金勘定の残高(本件差額)は、令和3年3月期の所得の金額の計算上、益金の額に算入されるか。【裁決の要旨】金型等相当額の負担に係る審査請求人とN社との契約(本件金型等契約)は、①N社から部品製造のための金型等の製作を依頼された審査請求人がこれに応じて金型等を製作するという物の引渡しを伴わない請負契約、②N社が審査請求人に金型等の維持、管理を委任する準委任契約及び③審査請求人が製作した金型等についてN社に一定の権利を付与する権利設定契約に係る各役務(本件各役務)を審査請求人が提供し、N社から審査請求人に対してその対価として金型等相当額を支払うことを内容とする混合契約と解される。そして、本件役務は審査請求人により継続的に日々提供されるという特質を有する。金型等相当額の支払に関する本件基本契約書の条項は本件一括払の後も審査請求人とN社との間で変更されていないことからすれば、上記の本件金型等契約の実態は、本件一括払の後も変わるものではない。以上によれば、金型等相当額は、均等分割払方式で受領したか一括払で受領したかにかかわらず、本件部品の量産開始日を含む月から24回にわたり、毎月末日の経過でその支払請求権(収入の原因となる権利)が順次確定するものと認められ、審査請求人が、本件一括払費を均等分割払方式の際と同様に、本件部品の量産始日を含む月から24回にわたり、毎月末日に収益計上した会計処理は、公正処理基準に適合するものと認められる。一括で受領した金型等相当額の全額を受領した日の属する事業年度の益金の額に算入すべきとは認められない。【参照条文】法人税法第22条の2(第3款《益金の額の計算》第1目《収益の額》)本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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