税金ワンポイント
税務に関するニュースの中でも、注目度の高いトピックスを取り上げ紹介していく税金ワンポイント。主要な改正情報はもちろん、税務上、判断に迷いやすい税金実務のポイントを毎週お届けします。速報性の高い、タイムリーな情報を皆様の実務にお役立てください。
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2025/08/25
退職金課税制度の改正と実務対応
令和7年度税制改正により、退職手当等に関する国税および個人住民税の取扱いが大きく見直される(注1)。施行は令和8年1月1日以後に支払を受ける場合、または同日以降に提出すべき書類から適用されるが、事務負担や保存義務が拡大するため、早期対応が不可欠である。今回の改正の柱は三つである。第一に、退職所得控除額の計算における勤続期間等の重複排除特例の対象拡大である。現行では、同一人が短期間に複数の退職手当等を受給する場合、控除の重複を避けるため勤続期間を調整するが、改正後は確定拠出年金法に基づく老齢給付金として支給される一時金(老齢一時金)を前年以前9年内に受給している場合にも、この調整を行う。実務上は、退職金制度と企業型DCを併用する企業での影響が大きく、支給履歴の把握と本人申告の正確性が一層重要となる。第二に、老齢一時金に係る申告書の保存期間延長である。現行の7年の保存期間が10年に延長される。これは9年内の受給履歴確認を可能にするための措置であるが、これにより企業の文書管理負担は増加する。税務当局からの照会に対応できる体制整備に加え、保存期間内に合併・解散等が生じる場合の承継手続きも事前に検討しておくことが望ましい。第三に、源泉徴収票等の提出義務対象の拡大である。国税ではすべての居住者に係る退職所得の源泉徴収票、個人住民税ではすべての納税義務者に係る退職所得の特別徴収票の提出が義務付けられる。従来は法人役員のみが対象であったが、令和8年1月1日以後は全従業員分が対象となるため、退職時の事務フローを全面的に見直す必要がある。さらに、記載事項の見直しも予定されており、給与計算ソフトの改修や委託先への仕様確認を早期に進めることが求められる。従前は、例えば60歳で老齢一時金を受給し、65歳で老齢一時金以外の退職手当等の支払を受けた場合でも、両者の勤続期間等の重複期間は調整はされなかった。改正後はこの重複期間が調整されるため、退職所得が増加することとなる。なお、DCの受取方法は一時金のほか年金形式や一時金と年金の併用がある。年金形式で受給する場合は雑所得となるが、公的年金等控除額の範囲であれば所得はゼロとなり、課税負担は生じない。一方、雑所得の金額によっては社会保険料負担が増加する場合もあるため、受給に当たっては受給方法を慎重に検討する必要がある。<注釈>https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2025/07taikou_01.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/08/18
動画配信収益に対する事業税課税
この時期、動画配信者のもとに、県税事務所から事業内容等の確認を求める文書が届くことがある。これは、所得税の確定申告書に記載された動画配信収入が地方税法上の個人事業税の課税対象に該当するかを確認するためのものであり、収入の内訳や事業の実態が問われる。自治体は、このような照会に基づき収入の内容を分析し、広告業や請負業などの第一種事業として課税対象と判断している模様だ。課税要件は各自治体の条例ではなく、法律および政令によって全国共通に定められたものであるため、全国一律の課税判断がなされるべきものであるが、その実態は自治体によってばらつきがあるように思われる。実は、動画配信によって得られる収益の構造は単純ではない。配信した動画に広告を表示させることで得られる広告料のほか、投げ銭、ギフト、メンバーシップ、サブスク、実験など、プラットフォームごとに多様な収益構造をとっている。また、広告の表示に関しては、配信者が視聴者から直接広告料などを受け取っているのではなく、プラットフォーム事業者が広告主から得た収入を、広告の視聴やクリックに応じて分配するという複雑なスキームをとっている。配信者の中には、こうした動画配信の収益スキームを「広告業」や「請負業」と捉えられることに違和感を覚えるものも少なくない。実際、大阪、富山、石川などで裁決事例が存在し、いずれも「広告業」に該当するかが争点となっている(注1、2、3)。一方、国税においては、動画は著作物であり、その使用許諾に基づいて得る収益は「無体財産権の提供」に該当し、収益事業として法人税の課税対象になると整理された質疑応答が存在する(注4)。また、米国のプラットフォームから収益を得る場合、日本の配信者は税務情報としてW-8BENフォームを提出しなければロイヤリティとして源泉徴収されるという取り扱いがあることから、米国でも動画配信収益を著作権の使用料として扱っていることがうかがえる。このように、地方税では広告業(または請負業)、国税や米国ではロイヤリティと、それぞれ異なる課税概念が存在し、制度的には整合性に欠ける状況が生じている。とはいえ、現行制度のもとでは、動画配信者が照会文書に正確かつ丁寧に回答することで不要な課税を避けることがきわめて重要である。どの収益がどのような形で発生しているかは、プラットフォーム内の自身のアカウント内で確認することが可能である。<注釈>https://fufukudb.search.soumu.go.jp/koukai/Main?vc=&sc=select&J004=&saiketsuId=10217https://fufukudb.search.soumu.go.jp/koukai/Main?vc=&sc=select&J004=&saiketsuId=9283https://fufukudb.search.soumu.go.jp/koukai/Main?vc=&sc=select&J004=&saiketsuId=8698https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/21/21.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/08/18
旅費規程の見直しと税務上の留意点
近時の物価高騰やインバウンド需要の影響により、宿泊費や交通費などの出張関連費用の上昇が顕著となっている。特に首都圏や観光地における宿泊料金の高騰は著しく、従来の旅費規程に基づく支給では実費をまかなえず、出張者に自己負担が生じるケースも散見される。こうした状況を受け、旅費規程の見直しを検討する企業が増加しているが、その際には税務上の留意点を押さえる必要がある。旅費が所得税法上非課税と認められるためには、まず、「職務遂行上通常必要な範囲」に該当することが前提であり、かつ、その支給額が社会通念上相当であることが求められる。すなわち、同業種・同規模の企業と比較して妥当な範囲に収まっていることが必要である。また、役職や職務内容に応じて支給額に差を設ける場合には、その基準が職務上の必要性に基づいたものであり、説明可能なものでなければならない。これらの要件を満たす合理的な旅費規程に基づく支給であれば、出張者(受給者)側では非課税所得として扱われ、企業側も損金算入が認められる。さらに、国内出張にかかる旅費のうち、通常必要と認められる範囲の費用については、課税仕入れとして消費税の仕入税額控除の対象となる。一方で、税務調査において問題となりやすいのは、旅費が実費精算ではなく、定額支給の場合に、その支給が高額であるとみなされる場合である。このような場合には、「通常必要な範囲」を超えるとして、全額または一部が給与所得として課税対象とされる可能性がある。この点に関して参考となるのが、高松地方裁判所平成28年11月9日判決(注1)である。本件では、ある医療法人が非常勤医師に対し、出勤1回あたり、県内在住者に2万円、隣県Aからの出勤者に3万円、隣県Bからの出勤者に4万円、C大学医学部眼科の所属医師には4万5千円の交通費を定額で支給していた。また、これとは別に、出勤1回ごとに2万円の出勤手当も支給していた。旅費規程は、これら支給がタクシー利用を前提としたものであるとしていたが、実際にはタクシーのみを利用していた医師はおらず、大半が公共交通機関や自家用車を利用していた。裁判所は、公共交通機関等による通勤が可能な状況でありながら、タクシー前提で高額な手当てを一律に支給することは「出勤のために直接必要な費用」とは認められないとし、当該手当を給与所得と判断した。また、出勤手当については旅費規程に明示しておらず、合理的な算定根拠が欠けていたことも問題視された。旅費規程を策定するに当たっては、まず支給対象費目(交通費、宿泊費、日当等)および各々の上限額を明示する必要がある。また、交通手段の区分やグリーン車・ビジネスクラス等の上級クラスの利用についても、役職や目的地までの距離・移動時間に応じた合理的な基準を設けることが求められる。とりわけ、役員やその家族のみで構成される中小企業においては、たとえ旅費規程が整備されていたとしても、その支給内容が社会通念上高額であると評価されれば、非課税とは認められない可能性が高い。グリーン車やビジネスクラスの利用を認める場合には、長距離移動中の職務遂行効率やセキュリティ面への配慮といった業務上の合理的理由を明示し、それに基づいた支給であることを説明できる体制を整えておくべきである。以上のとおり、制度の見直しに際しては、税理士等の専門家と連携しつつ、形式と実質の双方から精査することが肝要である。<注釈>https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2016/pdf/12928.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/08/04
「課税仕入れを行った日」はいつか
消費税法上、課税仕入れに係る消費税額の控除は、原則として「課税仕入れを行った日」の属する課税期間において適用される(注1)。実務では、「仕入れた日」や「請求書の日付」を基準として処理されることも少なくないが、法的には資産の引渡しや役務の提供が完了した日が「課税仕入れを行った日」とされる。契約書や納品書、請求書等に記載される「納品日」や「役務提供日」が基準とされることが多いものの、実際には、前払いや後払いといった取引形態により、一律に納品日だけで判断することが難しいケースもある。この点に関して重要な判断を示したのが、令和4年6月9日高松地方裁判所判決(税務訴訟資料第272号・順号13727)(注2)である。本件は、営農型太陽光発電設備の導入にあたり、設計・設置等を一括して委託する請負契約に基づき、原告が課税期間内に支払った前払金を課税仕入れの対価とみなして申告したところ、更正処分および過少申告加算税の賦課決定を受けたという事案である。納税者は、機器の納品時点をもって課税仕入れが成立すると主張し、消費税法基通9-1-9の適用も訴えた。しかし裁判所は、契約の実態は複数の機材や部材を現地で設置・配線し、稼働する設備一式を完成させる内容であり、一体の請負契約であると認定した。そのため、機器が納品されたからといって、その時点で課税資産の譲渡があったとはいえず、課税仕入れが成立するのは、設備が完成し、相手方に引き渡された時であると判断された。加えて、消費税法基通9-1-9の適用が否定された理由も注目される。同通達は、「機械設備の販売」と「据付工事」が契約上明確に区分されており、かつ販売契約が成立していることを前提に、両者を別個の取引として資産の譲渡時期を分けて認定できるという特例である。しかし本件では、機器販売の合意自体が認められず、同通達の適用要件を欠くとされた。このように、課税仕入れの日は、形式的な処理ではなく、取引の実体に即して判断するべきであり、とりわけ請負契約においては、完成引渡しの有無が「資産の譲渡」に該当するか否かを分ける重要な基準となる。前払金や中間金が支払われていたとしても、それ自体が仕入控除の対象となるとは限らず、課税仕入れの成立は、資産の引渡しや役務提供の完了という事実によって、客観的に裏付けられる必要がある。請負契約を含む多段階取引においては、消費税法上の「課税仕入れの時期」の判断について、実務上の処理と法的な評価とを整合させることが求められる。「課税仕入れを行った日」は、一般的には取引の発生した日、すなわち物品の引渡しやサービスの提供が完了した日を指します。例えば、商品を注文し、その商品が納品された日が「課税仕入れを行った日」となります。契約書や納品書、請求書等に記載される「納品日」や「役務提供日」が、実務では基準とされることが多いでしょう。ただし、前払いや後払いなど、取引形態によっては一概に納品日だけで判断することが難しいケースもあります。たとえば、資産の賃貸借や長期の工事契約などの場合、契約で定められた「役務提供期間の末日」や「検収日」などが該当する場合もあります。つまり、「実際に事業者が対象資産を使用できるようになった時点」、または「サービスの提供が完了した時点」が「課税仕入れを行った日」となるのです。<注釈>https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/11/03.htmhttps://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2022/pdf/13727.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/07/28
非居住者免税と「名義貸し」
消費税法は、国内において行われた資産の譲渡等を課税対象とするが、非居住者に対する輸出取引等については、一定の手続を行うことで免税の適用を認めている(消費税法7条、8条)。しかし、この免税規定の適用に当たっては、形式的な書類や手続を備えるだけでは足りず、非居住者が実質的な購入者であることが必要とされる。令和2年6月19日東京地裁判決(税務訴訟資料第270号-55(順号13415))(注1)は、まさにこの点を争点とした事案であり、実務上の示唆に富むものである。輸出物品販売場を経営する原告は、同制度に基づき外国人旅行者への免税販売を主張したが、実際にはコーディネーターが商品の購入・支払を一括で行っており、非居住者(旅行者)は商品の確認すらしておらず、販売場を訪れた形跡もなかった。本件では、購入者誓約書には非居住者の名義が記載されていたものの、金工芸品と代金の授受はすべてコーディネーターと原告の間で行われていた。裁判所は、これらの取引において非居住者の名義が貸与されただけ(いわゆる「名義貸し」)であり、実質的な購入者は別に存在していたとして、消費税法上の免税譲渡には該当しないと判断した。すなわち、免税の根拠となる「非居住者への譲渡」(消費税法8条1項)に該当するためには、単に名義上非居住者名義で書類を整えるだけでは足りず、実際にその者が商品を取得し、対価を支払っている実態が必要と示したものである。さらにこの事案では、延べ7,000名を超える名義人のうち、延べ427名が19歳から22歳の若年層であり、いずれも1,000万円を超える高額商品を現金で購入したとされていた。このような経済合理性を欠く不自然な事情を踏まえ、裁判所は名義人による購入の実態を否定し、販売スキーム全体が名義貸しに基づく仮装取引であると判断した。原告はこれらの売上を免税売上高として帳簿に記載し、確定申告を行っていたが、裁判所は「国税通則法68条1項に規定する仮装・隠蔽に該当する」とし、更正処分は適法と認めた。本判決は、消費税法における免税規定の適用に際し、形式的な要件を満たすのみでは不十分であり、非居住者が実質的に購入者であることが求められることを明確に示した。名義貸しによる取引は、たとえ帳簿上の整合性があっても、実態が伴わなければ仮装・隠蔽と評価され、免税の適用が否認される可能性が高い。特に高額商品の免税販売においては、取引の経済合理性や購入実態の裏付けが強く求められる点に留意すべきである。<注釈>https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2020/pdf/13415.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/07/28
非居住者の金融・暗号資産情報、報告制度の強化へ
外国の金融機関を利用した国際的な脱税や租税回避への対応として、OECDは「共通報告基準(CRS:CommonReportingStandard)」を策定し、参加国間で非居住者の金融口座情報を税務当局間で自動的に交換する体制を整備した。日本でも、平成29年以降に新たに口座を開設する者に対し、居住地国名等を記載した届出書の提出が義務付けられ、平成30年からは金融機関が毎年4月30日までに特定の非居住者に係る金融口座情報を所轄税務署長に報告し、その情報は租税条約等に基づいて各国税務当局に提供されている(注1)。令和4年には、OECDにおいてCRSの報告事項を拡充する改訂が公表され、日本でも令和6年度税制改正により国内制度の見直しが行われた(注2)。改正後の制度は令和8年1月に施行され、令和9年からは新制度に基づく情報交換が開始される予定である。一方、暗号資産については、従来の制度では国際的な情報交換の枠組みが整っていなかったことから、匿名性を利用した脱税行為が課題となっていた。これに対処するため、令和6年度税制改正では「非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換制度」が新たに創設された。報告暗号資産交換業者は、非居住者と取引のある場合、その者の氏名、住所、居住地国、納税者番号、取引内容などを翌年4月30日までに税務署へ報告し、その情報が非居住者の居住地国に提供される。届出書の提出義務、異動届出、記録保存、回避行為への対応措置、調査権限等も制度に組み込まれている。国税庁は、こうしたCRS情報を活用した課税事例を実際に公表している。たとえば、海外の金融機関に多額の預金を保有し、そこから得た利息収入を日本で申告していなかった居住者について、CRS情報に基づき租税条約による情報交換を要請し、未申告所得の全容を把握のうえ課税を行った事例がある(注3)。今後は、暗号資産に係る取引情報も対象となるため、これまで調査の網をかいくぐっていた事例も補足される可能性が高い。たとえば、暗号資産から別の暗号資産への交換は、実際に日本円を取得していなくとも、一度売却したものとみなされ、その差益が課税対象となる。従来は申告漏れとなりやすかったこのようなケースについても、今後は一層厳格な対応が求められることとなろう。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/crs/index.htmhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/crs/pdf/0025006-044-03.pdfhttps://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/report/report2025/pdf/04.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/07/14
物納・延納制度における許可限度額等の計算方法が変更
相続税は原則として金銭で一括納付することが必要であるが、相続財産の大半が不動産や非上場株式など換金が困難な資産である場合、納税資金の確保が困難となることがある。こうした場合に備え、一定の要件のもとで納期限の延長を認める「延納」と、金銭以外の相続財産で納付を認める「物納」の制度が設けられている(注1)。いずれも納税者からの申請と税務署の許可を要する救済的な措置であり、制度の適用可否や金額には厳密な要件がある。令和7年度税制改正では、少子高齢化や資産構成の変化といった社会構造の変化を踏まえ、延納・物納の許可限度額に関する計算方法が見直された。新たな計算方法は、相続税については令和7年4月1日以後に相続開始があった場合、贈与税については令和7年6月24日以後に申請期限が到来する延納申請から適用される。国税庁はこの改正の概要を解説したパンフレット「物納許可限度額等の計算方法が変わりました」(注2)をホームページで公表しており、改正点は以下のとおりである。改正点延納によって納付することができる金額の計算について、納期限または納付すべき日における収入金額を基に算出していたが、「将来の収入金額の減少が確実であると見込まれる場合の計算方法が明確化」された。延納可能額の算定に用いる年数について、従来は延納可能な最長年数(原則20年)を一律に適用していたが、今後は「課税相続財産の種類における延納年数」や「平均余命年数」を考慮して計算する方法となった。物納許可限度額について、改正前の金額に「延納期間終了後における当面の生活費および事業経費を加算した額」を限度額とすることとなった。当面の事業経費の算出方法も見直され、従来は「前年の事業経費の額に1/12を乗じた額」として差し支えないとしていたところ、「前年の事業経費の額に3/12を乗じた額」として差し支えないこととなった。今回の改正は、納税者の生活や事業の継続性に配慮しつつ、制度運用の透明性と合理性を高めるものである。延納や物納の申請には、関係書類の提出や税務署との事前調整が求められる場合が多いため、申告準備段階から早期に専門家や税務署に相談することが望ましい。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/enno-butsuno/01.htmhttps://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0025006-033.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/07/07
e-Taxの送信ミスは正当な理由に当たらず
令和6年10月15日付の国税不服審判所裁決では、e-Taxの送信ミスにより確定申告書が期限内に提出されなかった事案について、「正当な理由」には該当しないとして、無申告加算税の賦課決定を適法と認定した(注1)。本件は、電子申告における操作確認の重要性を改めて考えさせられるものである。本件では、納税者が国税庁ホームページの「確定申告書作成コーナー」を利用して、確定申告書および財産債務調書等のデータを作成し送信したが、結果として、財産債務調書等のデータのみが送信され、申告書は送信されていなかった。納税者は、①e-Taxの「送信内容選択」画面において、意思に反する誤作動が生じうるシステム上の問題がある、②送信後に完了画面が表示されたことから、確定申告書のデータも正常に送信されたと認識したのはやむを得ない、と主張した。しかし、①については、「送信内容選択」の画面において、「申告書等、財産債務調書を送信する」を選択できるにも関わらず、「財産債務調書を送信する」を選択しており、利用者の操作に起因するものである。②についても、申告書の送信完了を確認するには、「即時通知」だけでなく、メッセージボックスに格納される「受信通知」を確認すべきだった。「受信通知」を確認していれば、確定申告書が正常に送信されていないことが容易に確認できたはずである。本件の争点は、通則法第66条第1項ただし書きに規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当するか否かであるが、同ただし書きは、例えば災害、交通や通信の途絶等、真に納税者の責めに帰すことのできない客観的な事情があり、納税者に無申告加算税を課することが不当又は酷になる場合と解されている。しかし、本件においては通信障害等は生じておらず、納税者が送信済と誤認したことが原因である以上、納税者の主観的事情に基づくものとされ、「正当な理由」には当たらないと判断された。「即時通知」と「受信通知」には、それぞれ異なる役割がある(注2)。「即時通知」は送信直後に、データの受信可否や受付番号・受付日時等を画面に表示するにとどまるのに対し、「受信通知」は、申告書等データについての審査(必須項目の入力の有無、電子証明書の有効性等)を経て、メッセージボックスに格納されるものである。送信内容の誤りや、審査エラー等により、正常に送信されないケースは少なくない。したがって、申告書等の送信後は、メッセージボックスに格納された「受信通知」の確認は必須である。申告手続における最終責任は納税者側に存することを再認識しておきたい。<注釈>https://www.kfs.go.jp/service/JP/137/02/index.htmlhttps://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/yokuaru05/04.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/06/30
青色申告の承認取消しと実務
青色申告制度は、欠損金の繰越控除や少額資産の一括償却などの優遇措置を受けられる一方で、厳格な要件の遵守が求められる制度である。国税庁は「事務運営指針(注1)」に基づき、申告期限を継続して守れていない法人などを定期的に抽出し、青色申告の承認取消しの対象となり得るかを審査している。取消しの理由は多岐にわたる。例えば、税務調査において帳簿書類の提示を求められたにもかかわらず、法人がこれを拒否した場合や、仮装・隠蔽に基づく不正所得が一定以上あった場合、また、帳簿の記載内容が不備で推計によらなければ所得金額を算定できないと認められる場合なども取消しの対象となる。実務上、特に多く見られるのは、2事業年度連続して申告書が提出期限内に提出されていないケースである。実際、福岡高裁令和5年6月30日判決(注2)では、法人が2期連続で期限内申告を行わなかったとして、青色申告の承認取消処分が適法とされた。納税者は、申告遅延の原因が申告を委任した税理士にあると主張したが、裁判所では税理士は代理人に過ぎず、その過失は納税者自身に帰属すると判断した。また、帳簿管理の不備による取消事例としては、税理士本人が青色申告の承認を取り消された名古屋地裁令和3年4月22日判決(注3)がある。本件では、青色申告の取消しに加え、所得税・消費税の更正処分も行われた。取消しの理由は、帳簿に現金取引の記載がないこと、私的費用の混在、証憑の不備など、帳簿全体の真実性を著しく損なうものであったためである。なお、電子帳簿保存法の要件を満たしていない場合も、青色申告の承認取消しが検討されることがある。事務運営指針では、電磁的記録等の備付け状況、保存の程度、今後の改善の可能性などを総合的に勘案し、青色申告書を提出するにふさわしいかどうかを判断するとされている。青色申告制度の恩恵を享受するためには、期限内申告、帳簿・証憑の整備、調査協力など、制度趣旨に則った適正な運用が不可欠である。遵法意識と管理体制の確立が、制度継続の鍵となる。<注釈>https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/000703-3/01.htmhttps://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2023/pdf/13862.pdfhttps://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2021/pdf/13552.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/06/23
財産債務調書と国外財産調書の提出期限は6月30日
「財産債務調書」と「国外財産調書」は、一定額以上の財産を持つ者に対し、提出が義務付けられている書類である。令和6年分については、令和7年6月30日(月)が提出期限となっている。これらの調書を正確に提出した場合には、過少申告加算税の軽減措置が適用される一方、不提出や虚偽記載がある場合には加重措置や罰則の対象となるため、非止めに要件を確認し、適切に対応する必要がある。【財産債務調書】財産債務調書は、その年の12月31日時点の財産及び債務の状況を記載し、翌年6月30日までに、所得税の納税地を所轄する税務署に提出する制度である。財産債務調書合計表を添付し、書面またはe-Taxで提出する(注1)。提出義務があるのは、以下のいずれかに該当する居住者である。その年の12月31日時点で、財産の総額が3億円以上、かつ、その年分の所得金額(退職所得を除く)の合計額が2,000万円を超える者ただし、所得税の確定申告書を提出する必要が無い者や還付申告書が提出できない者は提出が不要である。同日時点で、有価証券等の合計額が1億円以上、かつ、その年分の退職所得金額(所得を除く)の合計額が2,000万円を超える者ただし、所得税の確定申告書を提出する必要が無い者や還付申告書が提出できない者は提出が不要である。同日時点で、財産の総額が10億円以上である者この場合は、所得税の申告義務や所得金額に関係なく提出義務がある。【国外財産調書】国外財産調書は、その年の12月31日時点で、国外財産の総額が5,000万円以上である居住者(非永住者を除く)に提出義務があり、同日時点での国外財産状況を記載し、翌年6月30日までに税務署に提出する制度である。財産債務調書合計表を添付して、所得税の納税地を所轄する税務署に提出する(注2)。国外財産調書には、氏名、住所(又は居所等)、マイナンバーのほか、国外財産の種類、数量、価額、所在等を記載する。また、国外財産に係る事項については、「種類別」、「用途別」(一般用及び事業用の別)及び「所在別」に記載する必要がある。財産の価額は、その年の12月31日における「時価」または時価に準ずるものとして「見積価額」によることとされ、外貨建て財産については、同日における外国為替の売買相場による邦貨換算することとされている。これらの調書は、所得税の申告義務とは異なる基準に基づき提出が求められるため、要件該当の有無を慎重に確認し、作成もれや提出もれが無いよう注意すべきである。なお、令和6年2月7日裁決(注3)では、財産債務調書の記載が不十分であったことから納税者の主張が認められず、加重措置が適用された事例もある。調書の作成に当たっては、合計金額だけでなく、個別の銘柄ごとの明細まで正確に記載することが求められる。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7457.htmhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7456.htmhttps://www.kfs.go.jp/service/JP/134/01/index.html提供:株式会社日本ビジネスプラン
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