税務情報レポート
MJS税経システム研究所・税務システム研究会の顧問・客員研究員による租税を中心とした多彩な研究成果および最新の税制改正および制度や動向、判例研究等に関するリポートです。
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2026/02/25 消費税
令和8年度消費税改正① インボイス制度に係る経過措置~2割特例から3割特例へ~
1.はじめに令和7年12月19日に「令和8年度税制改正大綱」が公表され、令和8年9月30日に適用期限が終了する次のインボイス制度に係る経過措置について、見直しが行われることになりました。小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)免税事業者等からの仕入れに係る経過措置(80%控除)今回は、上記アの「小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置」の見直しについて見ていきます。2.小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置の見直し(1)改正の趣旨2割特例の終了後は、簡易課税制度への移行が原則となりますが、インボイス制度の定着に向けて事務負担への配慮がより必要と考えられる個人事業者について、課税事業者を選択して適格請求書発行事業者になっている場合には、これまで2割特例の対象となっている個人事業者も含め、その納税額を売上税額の3割とすることができる経過措置を2年間に限り講ずることになります。(2)3割特例個人事業者である適格請求書発行事業者の令和9年及び令和10年に含まれる各課税期間(注)については、その課税期間における課税標準額に対する消費税額から控除する金額を、その課税標準額に対する消費税額に7割を乗じた額とすることにより、納付税額をその課税標準額に対する消費税額の3割とすることができます。(注)免税事業者が適格請求書発行事業者となったこと又は「消費税課税事業者選択届出書」を提出したことにより事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる課税期間に限ります。図表小規模個人事業者に係る税額控除に関する経過措置(3)確定申告書への付記適格請求書発行事業者が3割特例の適用を受けようとする場合には、確定申告書にその旨を付記します。(4)簡易課税制度への移行3割特例の適用を受けた適格請求書発行事業者が、その適用を受けた課税期間の翌課税期間に係る確定申告期限までに、その翌課税期間について「消費税簡易課税制度選択届出書」を所轄税務署長に提出したときは、その翌課税期間から簡易課税制度を適用することができます。なお、現行の2割特例の適用を受けた適格請求書発行事業者についても、上記と同様に、2割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間に係る確定申告期限(現行:2割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間の末日)までに、その翌課税期間について「消費税簡易課税制度選択届出書」を所轄税務署長に提出したときは、その翌課税期間から簡易課税制度を適用することができ、令和8年10月1日以後に終了する課税期間から適用されます。3.2割特例を適用していた法人の実務対応2割特例は、令和8年9月30日の属する課税期間で終了します。3月決算法人の場合には、令和9年3月31日をもって終了します。終了後の課税期間について、次のア~ウのいずれに移行するかを検討する必要があります。本則課税簡易課税免税事業者(注)(注)適格請求書発行事業者が免税事業者となるためには、免税事業者となろうとする課税期間の初日から起算して15日前の日の前日までに、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を所轄税務署長に提出しなければなりません。4.2割特例を適用していた個人事業者の実務対応2割特例は、令和8年9月30日の属する課税期間で終了します。個人事業者の場合には、令和8年12月31日をもって終了します。終了後の課税期間について、3割特例を含めた次のア~エのいずれに移行するかを検討する必要があります。3割特例本則課税簡易課税免税事業者(上記3(注)参照)提供:税経システム研究所
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2026/02/18 相続・贈与税
贈与税の重要テーマ解説2(みなし贈与1)
【ポイント】贈与は契約行為ですが、贈与契約が行われていなくても、財産又は価値が他人に移転することがあります。個人間の贈与と同様な実質的経済価値の移転に対して、贈与税の課税の対象となります。【解説】1みなし贈与(1)本来の贈与財産贈与契約が成立し、財産を取得したことにより、贈与税の課税の対象となります。財産とは基本的に相続税の対象となるものと同様です。また、契約の有無を判断するまでもなく、財産の移転が無償で行われた場合、一方的に贈与税を課税する取扱いがあります(相基通9-9)。(2)贈与契約によらない財産の取得贈与行為は契約とは言うものの、財産の移転は、必ずしもお互いの了解を得て行われるわけではありません。例えば、父親が掛けていた生命保険の満期受取金を妻や子供が受け取った場合のように、受贈者が贈与の認識がないうちに財産を取得している場合があります。お互いの了解を得て行われるわけではない財産の移転であっても、提供した者の財産が減少し、受け取った者が金銭的な負担がなく経済的な利益を得た場合、その実態は贈与と変わりません。そのため、このような財産の移転については、実態に即した課税を行うため、「贈与によって取得したとみなす(みなし贈与)」として贈与税の課税対象となります(相法5~9の6)。課税の都合による取扱いではありますが、無償による財産の取得の経済効果に着目して課税されるものです。みなし贈与は相続税法の規定に則って機械的に課税の対象となることに留意します。2みなし贈与財産の概要(1)贈与により取得したとみなされる財産相続税法では、みなし贈与として第5条以下、いくつか規定しています。生命保険金の受取人の指定などは、契約者が贈与の認識がなく、思いつくままに満期金の受取人を指定することが多くあります。しかし低額譲渡などは、本来の時価で売買できるものを、あえて譲渡者の財産価額を減少させる目的で低額で売買し、贈与税を逃れる意図が明白な事例が多いのが現状です。これらを封じ込めるため及び課税の公平を維持するための規定ともいえます。(2)贈与又は遺贈により取得したとみなされる財産3相続税法第7条及び第9条の相違みなし贈与で特に適用されるのが相続税法第7条及び第9条です。両条文には「著しく低い価額の対価」での取引があった場合「贈与により取得したものとみなす」と規定してあり、区分が理解しにくいところがあります。この項で整理します。(1)第7条(低額譲受)【相法7(前段)】著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、当該財産の譲渡があった時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があつた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第三章に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与(当該財産の譲渡が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。同条を分解すると次の通りです。「著しく低い価額の対価」で「財産の譲渡を受けた場合」に「財産の譲渡があった時」に「財産の譲渡を受けた者」が「対価と財産の時価との差額に相当する金額」を「財産を譲渡した者」から「贈与により取得した」ものとみなす。この規定は財産の譲渡を受けた場合となっていますので、大前提として売買が絡みます。譲渡した者からの利益に対して、贈与税のみなし課税のことを言っていることから、相対売買があった場合に限られます。一般的には親族間の土地の低額譲受け等が該当します。(2)第9条(その他の利益の享受)【相法9(前段)】第5条から前条まで及び次節に規定する場合を除くほか、対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額(対価の支払があった場合には、その価額を控除した金額)を当該利益を受けさせた者から贈与(当該行為が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。相続税法第9条を分解すると次の通りです。「対価を支払わない」で又は「著しく低い価額の対価」で「利益を受けた場合」に「利益を受けた時」に「利益を受けた者」が「利益を受けた時」における「利益の価額に相当する金額」を「利益を受けさせた者」から「贈与により取得した」ものとみなす。相続税法第9条は、みなし贈与規定である相続税法第5条から第8条及び第3節(信託に関する特例)に該当する場合以外でも、対価を支払わず利益を受けたときは、その利益の金額相当額を、贈与により取得したものとみなし、贈与税を課税することとしたものです。贈与契約によって財産を取得したのではなくても、相対の取引がなかったとしても、実質的に対価を支払わないで、経済的利益を受け、財産価値が自然と増加するような場合のことを想定しています。みなし贈与課税の基本的規定です。本来みなし贈与の規定は相続税対策を講じることの歯止めの意味を兼ねて策定されています。第9条の規定は原則として親子配偶者等親族関係がない場合であっても適用することに注意します。親子夫婦間での贈与であっても贈与税課税のためには民法における契約が成立していることが大前提です。しかし親族間の資産の移転は契約をすることはほとんどなく、実質で判断することになります。調査により贈与の意思を確認することは課税当局にとっては非常に不都合なこと及び納税者にとっても課税の不公平です。そこで、実質的に経済的利益を受けた場合、贈与税の課税対象としています。課税範囲の幅が広がっていることから、贈与の意識がない行為であっても、当事者の意向を無視して経済的利益に対して課税されます。非上場会社に対し、株主以外の者が資産を無償提供して、その会社の株価が増加し、提供者以外の株主が利益を受けた場合などが典型的でしょう。この場合の「利益を受けた」とは、財産の増加のみならず、債務の減少があった場合も実質的に利益を得ることとなるため贈与とみなされます。労務の提供等を受けたような場合は、利益の換算が困難であること等から、含みません(相基通9-1)。相続税基本通達第9条関係では、利益の享受について次の規定があります。【東京高裁判決1977年(昭和52年)7月27日】(相法9条の趣旨)相続税法9条の規定は、私法上の贈与契約によって財産を取得したのではないが、贈与と同じような実質を有する場合に贈与の意思がなければ贈与税を課税することができないとするならば、課税の公平を失することになるので、この不合理を補うために、実質的に対価を支払わないで経済的利益を受けた場合においては、贈与契約の有無にかかわらず贈与により取得したものであるとみなし、これを課税財産として贈与税を課税することとしたものである。提供:税経システム研究所
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2026/02/10 所得税
賃貸用マンションの修繕積立金の取扱いについて
1設例による賃貸用マンションの修繕積立金の取扱い会社役員である甲が、令和7年4月に投資目的とともに相続対策も兼ねて賃貸用マンション1室を購入しました。賃貸用マンションの区分所有者となった甲は、マンションの管理規約に従い管理組合に対し修繕積立金を毎月支払っていますが、甲が支払っている修繕積立金は不動産所得の金額の計算上、令和7年分の必要経費に算入することができるでしょうか。2設例に対する回答所得税法第37条の規定(必要経費)では、実際に修繕等が行われその修繕等が完了した日の属する年分(10年経過後であれば令和17年分)の必要経費になります。しかし、一定の要件を満たす場合には(下記(4)参照)、支払期日の属する令和7年分の必要経費に算入することができます。(1)所得税法第37条の規定(必要経費)その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費・一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除きます)の額とします(所法37①)。(2)必要経費に算入すべき費用の債務確定の判定所得税法第37条の規定によりその年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき償却費以外の費用で、その年において債務が確定しているものとは、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる要件の全てに該当するものをいいます(所基通37-2)。その年12月31日(年の中途において死亡した場合には、その死亡の時など)までにその費用に係る債務が成立していること。その年12月31日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。その年12月31日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。(3)原則(修繕等が完了した日の属する年分の必要経費に算入)上記(1)・(2)により、修繕積立金はマンションの共用部分について行う将来の大規模修繕等の費用の額に充てられるために長期間にわたって計画的に積み立てられるものであり、実際に修繕等が行われていない限りにおいては、具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していないことから、原則的には、管理組合への支払期日の属する年分の必要経費には算入されず(所基通37-2)、実際に修繕等が行われ、その費用の額に充てられた部分の金額について、その修繕等が完了した日の属する年分の必要経費に算入されることになります。(4)特例的な取扱い(修繕積立金を支払った令和7年分の必要経費に算入)修繕積立金は区分所有者となった時点で、管理組合へ義務的に納付しなければならないものであるとともに、管理規約において納入された修繕積立金は管理組合が解散しない限り区分所有者へ返還しないこととしているのが一般的です(マンション標準管理規約(単棟型)(国土交通省)60⑦)。そこで、修繕積立金の支払がマンション標準管理規約に沿った適正な管理規約に従い、次の事実関係の下で行われている場合には、その修繕積立金について、その支払期日の属する令和7年分の必要経費に算入しても差し支えないものと考えられます。区分所有者となった者は、管理組合に対して修繕積立金の支払義務を負うことになること管理組合は、支払を受けた修繕積立金について、区分所有者への返還義務を有しないこと修繕積立金は、将来の修繕等のためにのみ使用され、他へ流用されるものでないこと修繕積立金の額は、長期修繕計画に基づき各区分所有者の共有持分に応じて、合理的な方法により算出されていることしたがって、甲の支払った修繕積立金について、上記①から④の全ての要件を満たす場合には、支払期日の属する令和7年分の必要経費に算入することができます。3マンションの修繕積立金に関するガイドラインマンションの修繕積立金に関するガイドライン(平成23年4月・令和6年6月改訂:国土交通省)は、主としてマンションの購入予定者及びマンションの区分所有者・管理組合向けに、修繕積立金に関する基本的な知識や、修繕積立金の額の目安を示し、修繕積立金に関する理解を深めていただくとともに、修繕積立金の額の水準について判断する際の参考材料として活用していただくことを目的に作成されています。https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747009.pdf提供:税経システム研究所
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2026/02/04 法人税
貸倒引当金制度における「実質的に債権とみられない部分の金額」の取扱い~個別評価による方が繰入限度額の算定が個別的~
貸倒引当金の繰入限度額の計算において、一定の場合、金銭債権の額から相殺適状にあるものや相殺的な性格等を有するものについては、「実質的に債権とみられない部分の金額」として控除することとされています。しかしながら「実質的に債権と認められない部分の金額」の範囲については、個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度額(個別評価による繰入限度額)と一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度額(一括評価による繰入限度額)とでは、異なる取扱いがされていますので、本稿ではそれぞれの制度の概要を確認し、その異なる取扱いの内容とその理由を確認していきます。1貸倒引当金制度の概要貸倒引当金については、一定の業種を営む法人(注1)に限って適用が認められ(注2)、法人税法52条1項において個別評価による繰入限度額が、2項において一括評価による繰入限度額が規定されており、その適用については中小法人が対象とされています(法人税法52条1項、2項)。また、一括評価による繰入限度額については、特例として法定繰入率による計上が認められています(租税特別措置法57条の9第1項)。ところで、個別評価による繰入限度額及び一括評価による繰入限度額(特例適用の場合)の計算に際して、「実質的に債権とみられない部分の金額」がある場合には、いずれの場合も設定の対象となる金銭債権の額から控除することとされています(法人税法施行令96条1項3号、租税特別措置法施行令33条の7第2項)。2個別評価による繰入限度額の計算個別評価による繰入限度額の計算は、その債務者の状況に応じて、①長期棚上げ基準(法人税法施行令96条1項1号)、②実質基準(同条項2号)、③形式基準(同条項3号)(注3)が定められています。そして、本稿で取り上げる「実質的に債権とみられない部分の金額」が問題となるのは③形式基準の場合で、この基準により繰入限度額を算定する際の金銭債権の額については、「当該金銭債権の額(当該金銭債権の額のうち、当該債務者から受け入れた金額があるために実質的に債権とみられない部分の金額……を除く。)」と規定されています(法人税法施行令96条1項3号)(注4)。3一括評価による繰入限度額の計算一括評価による繰入限度額(特例適用の場合)の算定は、「一括評価金銭債権の帳簿価額(政令で定める金銭債権にあっては、政令で定める金額を控除した残額。)」を基礎として計算することと規定されています(租税特別措置法57条の9第1項後段)。そして、政令で定める金銭債権は「その債務者から受け入れた金額があるためその全額又は一部が実質的に債権とみられない金銭債権」、政令で定める金額は「その債権とみられない部分の金額に相当する金額」と規定されています(租税特別措置法施行令33条の7第2項)。4「実質的に債権とみられない部分の金額」の範囲の差異上記2及び3のとおり、いずれの場合にも「実質的に債権とみられない部分」の金額は対象となる金銭債権の額から控除することとされ、その法令解釈の内容はほぼ同じです(注5)が、2つのケースにおいて支払手形の取扱いが異なっています。法人税基本通達11-2-9(1)(8)(1)同一人に対する売掛金又は受取手形と買掛金がある場合のその売掛金又は受取手形の金額のうち買掛金の金額に相当する金額(8)専ら融資を受ける手段として他から受取手形を取得し、その見合いとして借入金を計上した場合のその受取手形の金額のうち借入金の額に相当する金額租税特別措置法(法人税関係)通達57の9-1(1)(8)(1)同一人に対する売掛金又は受取手形と買掛金又は支払手形がある場合のその売掛金又は受取手形の金額のうち買掛金又は支払手形の金額に相当する金額(8)専ら融資を受ける手段として他から受取手形を取得し、その見合いとして借入金を計上した場合又は支払手形を振り出した場合のその受取手形の金額のうち借入金又は支払手形の金額に相当する金額この理由については、改正当時の課税当局者は「個別評価による繰入限度額、すなわち回収不能見込額は、一括評価の場合の繰入限度額が単なる計算上の損失見込み額に過ぎないのに比してより個別的な回収不能見込額を算出するものであるところ、支払手形は債務者に対して振り出したとしても裏書等によりその後転々と流通し、期日が到来すればその所持人に支払わなければならないものであり、債務者に対して有する金銭債権と相殺できるようなものではないことによる」(注6)と解説しています。5まとめ以上のとおり、支払手形の金額については、個別評価による繰入限度額の計算上、「実質的に債権とみられない部分の金額」に含めないことが認められるものの、一括評価による繰入限度額(特例適用の場合)の計算上、「実質的に債権とみられない部分の金額」には含める必要があることに留意が必要です。なお、個人的には、支払手形が「債務者に対して有する金銭債権と相殺できるようなものではない」ならば、一括評価による繰入限度額(特例適用の場合)の計算上も「実質的に債権とみられない部分の金額」に含める必要はなく、回収不能見込額を算定するという同じ目的のために同じ表現を用いている以上、同様の取扱いを認めても良いのではないかと思います(注7)。<注釈>中小法人については、その営む業種に関係なく適用が認められています(法人税法52条1項1号イ、同条2項)平成23年度税制改正前では、全ての法人に適用が認められていましたが、同改正における法人税率の引き下げに伴う課税ベースの拡大の一環として対象法人が限定されました。外国の公的債務者に関する金銭債権についても、形式基準による計算が認められています(法人税法施行令96条1項4号)。平成10年に廃止された債権償却特別勘定制度の形式基準による設定においても、支払手形は債権と相殺できない債務として、その債務者から受け入れた金額から除かれていました(廃止:法人税基本通達9-6-5(形式基準による債権償却特別勘定の設定)(2)イ)法人税基本通達11-2-9及び租税特別措置法(法人税関係)通達57の9-1のそれぞれの(2)から(7)及び(9)は同じ内容です。森秀文編『法人税基本通達等の解説』41頁(大蔵財務協会、平成11年)、同様の内容のものとして、同編『Q&A改正法人税基本通達等のポイント』63,64頁(ぎょうせい、平成10年)貸倒引当金制度に関して、日本税理士連合会「令和8年度税制改正建議」では、個別評価による繰入限度額計算の形式基準額の繰入率の引き上げを要望していました(同建議15頁)が、改正大綱には記載がありません。提供:税経システム研究所
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2026/01/28 消費税税務争訟
真実行われた課税仕入れの仕入先氏名等の偽名記載及び帳簿等の記載不備を根拠に仕入税額控除を否認できるか~最近の審査請求の審理実態の紹介と権利救済制度の在り方~
1.審査請求の審理状況の実態筆者が審査請求の代理人として争っていた審査請求が、令和7年5月12日付で棄却の裁決が行われた。この事例の課税処分は、請求人が保存している帳簿や請求書等に記載された「氏名又は名称」(以下「氏名等」ともいう。)は偽名であること及び、帳簿及び請求書等の記載不備を根拠として、法人税申告において売上原価の損金算入が認められている「真実行われた課税仕入れ」(輸出の際に保税倉庫に持ち込まれた商品の種類及び数量等につき検査を受けている。)に係る5,200万円の消費税の仕入税額控除を否認したものである。なお、本件請求人及び同様の課税処分を受けた同業者は、その後、この事業を停止(廃止)に至っているという現状である。この裁決の内容の検討は後述するが、先ず、請求人の主張に対する国税不服審判所の対応について述べ、その審査請求のあり得ない審理不尽の実相を紹介しておきたい。すなわち、この審査請求においての請求人が最も重視して主張した消費税法30条7項ないし9項の課税庁の解釈誤謬の主張の重要な事項の一部が、審判官から提示された「争点整理表」から欠落していたのである。そこで、再度漏れていた(担当審判官が意図して漏らした)重要な事項について「請求人の主張」として記載されたい旨の要求書を文書で御願いしたのである。ところが、送達された本件裁決書では、この要求書で要求した事項の大半が請求人の主張から除外されていたのである。このことは、請求人の主張に対して答えられない事項を裁決書から除外しそれらを判断しないままに裁決したということである。もはや、この裁決は{裁決固有の瑕疵}のある違法な裁決ということである。しかし、かかる裁決固有の瑕疵による「裁決取消訴訟」は昭和45年の国税不服審判所創設後の一定期間にはみられたものの、最近では当該取消訴訟は提起されていないのではないかと考えている。その理由は、当該訴訟に勝訴したとしても、裁決が取り消されるものの、再度の棄却裁決が行われると、当初提起した取消訴訟の審理が行われることになる。そのため、訴訟費用や判決の遅れ等の理由から、裁決の取消訴訟の提起が行われていないものと思われる。かかる現実からとは考えたくはないが、本件事案のような権利救済機関として考えられない不誠実な運用が行われていると勘ぐられてもやむを得ないものと思われる。このような審判所の運用は、本件事例に止まらず、かなりの事件で見られることは、筆者の関わった他の審査請求事案でも体験し、さらには、現実に審査請求に関わった税理士からの声も届いているという現実からも想像に難くない。そこで、本稿では、最近の裁決事例における審査請求の審査の実際を紹介して、審判所に猛省を促したいという思いからの論考であるということを、先ず明確にしておきたい。なお、帳簿又は請求書等に記載した仕入先の氏名等が偽名である場合の仕入税額控除が否認されている先例もみられるが、その判決及び裁決の法解釈をみると、これから紹介する法解釈上の論点については全く説示されていないところ、したがって、課税処分等を十分な理由付けもなく排斥しているのは誤りであるという以外にはない。ちなみに、ここで指摘した仕入税額控除の否認が誤謬であることについては、2024年12月掲載の「帳簿等の記載事項不備による仕入税額控除否認事件のその後(Ⅰ)」「帳簿等の記載事項不備による仕入税額控除否認事件のその後(Ⅱ)」の「税務情報リポート」については、その学説を紹介して論じているので参考にされたい。なお、この学説等と反対の解釈に立つ見解は、これまでのところ見当たらない。2.裁決書における「争点についての請求人の主張内容の整理」の不備本件裁決の争点は、「帳簿及び請求書等に記載された『氏名または名称』は真実の氏名等ではないこと、また、帳簿及び請求書等には、氏名等の記載漏れ等の不備があり、保存要件を満たす帳簿及び請求書等には該当せず、その課税仕入れに係る消費税の仕入税額控除は認められないとした課税処分の是非」である。この点に関して、代理人は、多くの主張及び反論をしたところであるが、審判所の担当審判官から提示された「争点についての主張」欄の請求人の主張内容をみると、審査請求の審理期間における請求人の主張及び口頭意見陳述で申し述べた重要な論点に関する主張が捨象されていたのである。そこで、次のような追加書面を提出したのである。以下、その書面の主要な点の要旨を紹介することとする。3.「請求人の主張」の追加についてのお願い「争点の確認表」の「請求人の主張」に次のような趣旨の主張を追加されたい旨の申し入れを行ったのである。相手方が現金取引における一見の客(事業者)であれば、その品物の引渡しとその代金の受取りで取引は完了するというのが現実の現金取引の実態である。しかるに、請求人が相手方から代金を現金で受け取り取引は完結したにもかかわらず、消費税法は、帳簿と請求書等(納品書を含む)の保存を要求していること自体が無意味なナンセンスな条文である。このことに照らせば、その帳簿及び請求書等の保存又は記載の不備をもって、本件のように、現実に支払った5,200万円もの多額な消費税の仕入税額控除を否認することは財産権の侵害の憲法違反であり、したがって、帳簿等の記載不備という事実をして仕入税額控除否認の根拠とすることは不合理極まりないことである。現行消費税法は、「帳簿及び請求書等」の保存を法定しているが(平成9年施行、それまでは「帳簿又は請求書等」とされていた。)、仕入の相手方事業者が代金請求のために正確に書いた請求書の記載内容と同様の内容を納税者が作成する帳簿にも記載することが要求されることになるが、かかる運用は行われていない。つまり、帳簿に課税仕入れの相手方が請求漏れがないように丁寧に作成した請求書の記載と同様の記載内容を要求すること自体、その課税仕入の真実の存在を証明するという目的において無意味であること、また、消費税法30条8項の「帳簿及び請求書等」の保存要件は、具体的な課税仕入れの事実を証明すべき一つの手段として法定されたものにすぎず、その記載不備により真実行われ仕入事業者からの課税仕入れにより支払った消費税(5,200万円)の仕入税額控除が、単なる帳簿や請求書等の記載不備という形式的瑕疵により否認されるという趣旨の規定でないことは、仕入税額控除の趣旨に照らせば明らかである。ちなみに、請求書等には「納品書」を含んでいるが、現実の課税実務において、請求書のみを保存し、納品書の保存がない場合について、仕入税額控除を否認するという課税実務は行われていない。それは請求書があれば、課税仕入れの事実が証明できるからである。このことは、帳簿等の保存又は記載事項等の不備が仕入税額控除を否定する根拠とならないことの証左であるということができる。加えて、本件原処分庁のように、実際の課税仕入れの事実が証明され、法人税申告においても売上原価等として損金算入されていることに鑑みれば、単なる記載事項の形式的瑕疵により、消費税の根幹である仕入税額控除が否定されることはありえないことである。仮にあるとすれば、「帳簿又は請求書等の保存がない場合には適用しない」という条文ではなく、より具体的に記載の不備の内容を特定して、「…の記載不備について仕入税額控除を認めないという条文とされたことは言うまでもないこと(金・白金の条文参照)」である。しかも、本件の場合には、請求人(納税者)には何らの義務違反等の懈怠はなく、課税仕入れの相手方が一方的に記載した請求書の住所には居住していなかったということにすぎない。すなわち、そのことにつき請求人に何らの過失がないにもかかわらず、5,200万円の仕入税額控除を否認し、請求人を事業廃止に追い込んだ本件課税処分が違法であることは明白であるという結論に到達するのである。このような不都合な処分が行われるのは、本人確認制度の導入を回避したことにあるが、それは、真実の課税仕入の事実が証明されるのであれば、仕入税額控除を認めるという消費税法の前提があったからであり、その法益は極めて合理的である。加えて、本件のような悲劇的な課税が行われたのは、令和5年から導入されたインボイス制度を消費税創設から35年間も放置していた国側にその大きな要因があることも認識すべきである。納税者(請求人)は、消費税法では請求書等が記載要件とされていない「住所及び所在地」が記載されている請求書を受領した場合、その住所等が真実か否かを確認する義務も責任もなく、その権限も法定されていない。本件のような仕入税額控除が否認されるリスクを回避するために、その「法定記載事項ではない住所等をマスキングして保存していた納税者(また、住所等が記載されていない請求書を保存していた納税者)について、原処分庁は、本件で行ったような郵送による照会状による手段も、また現地の確認も不可能ということになる。しかし、それは、原処分庁が主張するような、真実の氏名等の記載がない場合には、消費税法の仕入税額控除を認めないというのが立法の趣旨であれば、その真否の確認の第一歩である「住所又は所在地」を法定の記載事項としたことは当然のことである。それが欠落している以上、立法の趣旨として、原処分庁のような解釈は不当かつ違法であるということができる。かかる制度の下で、法定されていない住所等の記載のある請求書を保存していた納税者(請求人)についてのみ仕入税額控除を否認するという、消費税制度の根幹を否定することは許されないし、課税の平等原則にも違背することになる。また、このことは実質課税の原則に違背し財産権侵害にも当たるものである。ひいては、条文では請求書に法定されていない住所等が記載され、その住所に居住していないから、記載された住所が偽名と推認されて否認され、他方、住所等の記載がない請求書又は記載された住所等が真実かどうか確認の手段がない事業者が仕入税額控除否認のリスク回避のために、法定の記載事項とされていない住所等をマスキングして保存している場合は、仕入税額控除は否認されないというのは、真に、法の不備の租税法律主義違反であり許されない。したがって、本人確認制度もインボイス制度の導入前の当時の税制の下で、仕入先事業者が請求書に偽名を記載したことを根拠として、その取引につき何らの義務懈怠もない請求人に対して、仕入先に対して現実に支払った5,200万円もの消費税の仕入税額控除を否認する課税処分を行い、請求人の事業廃止に追い込んだことには到底承服できない。本件課税処分は、消費税法の保存帳簿等の記載不備の現状においては、租税法律主義に違背する法解釈に基づく違法な課税であるというべきである。4.本件事案の概要と裁決の要点(1)事案の概要消費税等の課税事業者(輸出業者)の請求人は、日用品等の仕入れに係る消費税について、仕入税額控除を適用して消費税等の確定申告書を提出したところ、総勘定元帳等に記載されている氏名又は名称(「氏名等」という。)が真実の氏名等と認められないものがあること、その氏名の記載が漏れていること等を根拠として仕入税額控除が否認された(法人税では売上原価として損金算入)。その結果、請求人は事業廃止に追い込まれている。この企業は仕入れた日用品等を保税倉庫に持ち込み商品検査を受けたのち、外国(中国)に輸出して輸出免税を受けた上で、消費税還付を受けていたが、それが今回の税務調査ではその還付が否認されたのである。(2)裁決の要点法定帳簿書類や法定請求書等には法定記載事項の記載を要求しているが、その消費税法30条8項及び9項の氏名又は名称等の記載事項は真実の記載であることが当然に要求されているから、真実の氏名等が記載されていない法定帳簿書類を保存している場合には、当該課税仕入に係る消費税額については仕入税額控除は適用されないと解される。相手方から交付された請求書等に記載されている氏名又は名称が真実かどうかについては、社会通念上要求されるところの注意を払えば、相当程度疑われる状況にあるにもかかわらず、これを確認せず、漫然と請求書を保存して、これに基づいて帳簿の記載を行ったに止まる場合には、保存されている帳簿等に、仕入先の真実の氏名又は名称が記載されているとはいえないというべきである。各仕入先の調査の結果、仕入先との取引も確認できず、仕入先の各住所に住民登録がなかったこと、現実に居住の事実も認められなかったこと等から、請求人と各仕入先との間での取引が行われた事実を確認できず、仕入先の氏名等も真実が否かを確認することはできなかった。請求人は、住所等が法定の記載事項とはされていないから、記載された氏名等が真実か否かを確認することは困難であるから、氏名等が真実の記載であることが仕入税額控除の要件とすることは誤りであると主張する。しかしながら、「法定帳簿や請求書等の記載事項は法定されているところ、消費税法30条の7項の規定の趣旨(筆者注:消費税により適正な税収を確保するための法定帳簿書類等の確実な資料を保存させることが必要)からすると、氏名等の法定の記載事項は真実の記載であることが当然に要求されているというべきであるから、その要件を具備した法定帳簿書類を保存していない場合には、仕入税額控除は適用されないと解される。(3)裁決の検討裁決の骨子は、法定帳簿書類の記載事項は真実の記載が必要とされているが、本件取引により記載された仕入れ先の「氏名又は名称」は真実の氏名等の記載とは認められないから、仕入税額控除は認められない、というものである。また、この裁決は仕入先の相手先が真実の氏名等を記載していないという状況がうかがわれるにも関わらず、身分証明書等による本人確認を怠り漫然と帳簿にその氏名を記載していることも真実の氏名等の記載とは認められない根拠の一つとしている。さらに、奇妙なことに、請求人はWeChatを使用して仕入取引を行っていたと認定し、かかる取引については取引が遮断される場合があり、その場合、仕入れた商品に欠陥がある場合に備えて、仕入先の真実の氏名等や住所を確認する必要があるにもかかわらず、その真実の氏名等の確認を怠っていたのは、記載された氏名等が真実のものとはいえないと説示している。かかる事態の発生は日用品であれば、ほとんど考えられないし、しかも、その事態による不都合は、請求人自身であって、真実の氏名等の記載の有無とは無関係である。このような低レベルな論旨を説示している裁決は、正鵠を射た判断による裁決を断念したと評価するほかはない。その要因は記載した氏名等が偽名であれば、課税仕入の事実が証明されているとしても、仕入税額控除は認められないというのが法の趣旨というのであれば、請求書等の記載事項として住所等を法定しなかった法益は何かを検証するのが裁決庁の責務である。その検討により判明するのは、真実の氏名等を記載するのが課税仕入れの必須の要件というのであれば、法律において本人確認制度を創設すべきこと、しかして、それが欠落している現制度の下では、相手方からの課税仕入の事実が確認できる場合には(法人税法では損金算入)、仕入税額控除を認めるという程度の記載事項であるというのが当該法制度の趣旨であるということの結論を導くことができる。しかるに、本裁決は、身分証明書により本人確認をすべきであるという消費税法に規定していない論外な論理を展開するが、かかる解釈を採用するのであれば、裁決はその提示を拒絶された場合の税額控除の是非について法定すべきであることは当然である。本裁決は、論理的判断の提示を捨象した一方通行の判断を示している。本件の根源的な問題は、消費税法の帳簿又は請求書等の書面の法定記載事項として、氏名等のみを法定し、肝心の「住所又は所在地」が法定の記載事項としていないことの合理的な法益が説明できない以上、課税仕入の事実が証明された場合(法人所得計算で損金算入の事実)、帳簿の記載事項の不備、請求書等の保存はないが、明確に相手方預金口座に振り込まれている事実が証明されている等の場合には仕入税額控除を認めるというのが、消費税法の帳簿等の記載事項の趣旨と解すべきである。すなわち、現行法の30条8項及び9項の各記載事項は一部に記載漏れや誤りがある課税仕入れの仕入税額控除は認められないという効力規定と解することは誤りであるということである。かかる不具合とその正当性を明らかにするために行った、請求人の原処分庁に対する求釈明事項を「請求人の主張」として掲載されたい旨を、裁決庁に対して書面で提出し御願いしたにもかかわらず、これを裁決書から意図的に捨象したことは裁決の固有の瑕疵であり許されるものではない。到底、第三者的機関としての権利救済機関とは言い難い所業という以外に言葉もない。国税不服審判所長に猛省を期待するものである。最後に本件裁決論旨と矛盾する課税実務の現実を簡潔に指摘しておく。法人税の経費の計上年度の誤りが、翌期の損金として更正された場合、その課税期間の課税仕入れとして仕入税額控除は認められていること、帳簿には、仕入先の請求書番号を記載するのみで、氏名等を記載していない場合又はその番号も氏名の記載もない課税仕入、さらに、課税仕入の商品等の記載がない場合についても、請求書等により仕入の事実が認められる場合には仕入税額控除が認められていること、筆者は講演料、原稿料等について、請求書を発行したことは殆ど記憶にないが、支払先に確認したところ、仕入税額控除が問題として指摘されたことはないとのことである。また、税理士等においても、その顧問料の収受は所定の銀行の預金口座に振り込まれるのが通常であるが、その場合、請求書等の発行の必要はなく、したがって、法定の請求書等の保存は一切なされていないが、その課税仕入れの税額控除が問題となったことはない。このことは、いわゆる納税者間の不平等な税務執行が行われているということの証明である。さらに。不整合な点は、課税仕入の事実を証明する最も必要な「領収書」が保存要件の書類からはずされていること、このことの説明は困難であろう。いわゆるかかる雑駁な記載事項の規定が、消費税制度の根幹である仕入税額控除の効力要件と解することはできないということの証左であるということができる。以上の検証により、消費税法30条8項及び9項の規定は、現実に課税仕入の事実が証明されている場合には、その法定の記載事項の不備という些細な形式的瑕疵をもって、タックス・オン・タックスを回避するための仕入税額控除を否認することは、納税者の租税負担能力を超えた消費税を課するという論外なものである。権利救済機関の国税不服審判所長は、このことに思いを致して審理判断すべきであったのである。それを期待していた請求人の望みが一蹴されたのが本件裁決であり、誠に、遺憾という以外に言葉もない。そして、偽名等の記載による仕入税額控除の問題点は、インボイス制度導入を35年間も放擲した国側の責任でもあることに留意すべきである。なお、現在、本件課税処分は訴訟提起され、筆者も補佐人として参加していることを附記しておく。(了)提供:税経システム研究所
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2026/01/23 経営・運営公益法人
新公益法人制度と会計(第6回)
新公益法人制度と会計について、前回は中期的収支均衡の全体の法令について記載させて頂きました。第6回では、引き続き中期的収支均衡の内容について解説させて頂きます。(1)認定法規則第16条の構成①通常の算定方法第16条では、当該事業年度における、公益目的事業に係る「収入額」と「費用額」の比較を行い、以下により、「年度剰余額」又は「年度欠損額」を算定します。通常の算定方法以外には、特例算定方法があり、公益目的事業の財源確保のために必要がある場合には自発的に50%を超えて繰入れることができるという方法です。☆当該事業年度の収支(剰余額/欠損額)の算定(認定規則第16条①②)(収入額≧費用額の場合)年度剰余額=収入額-費用額(収入額<費用額の場合)年度欠損額=費用額-収入額上記の場合、法人の判断で年度欠損額は0とすることができます。この任意規定の意味は、継続して単事業年度で収支が均衡している法人などで、欠損額の繰り越しを望まない場合に、残存欠損額の計算・管理の負担を軽減できるよう当該規定を設けられています。(ⅰ)「収入額」は、次に掲げる額の合計額となります。当該事業年度の損益計算書に計上すべき公益目的事業に係る経常収益(一般純資産に係るものに限ります。)の額当該事業年度の公益充実資金の取崩額(公益目的保有財産の取得・改良に充てた額を除きます。)当該事業年度の収益事業等から生じた収益(利益)(管理費のうち収益事業等に按分されるものを除きます。)の50%(収益事業等を行う公益法人に限ります。)(ⅱ)「費用額」は、次に掲げる額の合計額となります。当該事業年度の損益計算書に計上すべき公益目的事業に係る経常費用(一般純資産に係るものに限ります。)(公益充実資金の取崩し又は剰余金の解消策により取得した公益目的保有財産に係る減価償却費の額を除きます。)の額当該事業年度の公益充実資金の積立額上記の費用額に係る減価償却費は、公益目的保有財産に関し発生する費用が二重計上されないよう、公益充実資金の取崩し(積み立て時に費用計上)又は剰余金の解消策により取得した公益目的保有財産に係る減価償却費が含まれる場合には、当該額を費用から控除するものです。公益充実資金の取崩し等で取得した公益目的保有財産については、令和6年度会計基準に基づき「貸借対照表の注記(3)使途拘束資産(控除対象財産)の内訳と増減額及び残高」に公益充実資金の取崩し等を充てた額等を記載します(令和6年度会計基準に移行するまでの間は、定期提出書類別表C(2)「財産の使用状況」に当該情報を記載することとになります。)。以下、旧法による算定方法を確認のため列挙致します。【「収入-費用」の額の算定(旧ガイドラインⅠ5.(2)及び(3))】(2)収益事業等の利益額(注1)の50%を繰入れる場合①以下の合計額を収入とする。i損益計算書上の公益目的事業の会計に係る経常収益ii公益目的事業に係る特定費用準備資金(認定規則第18条)の当期取崩し額iii損益計算書上の収益事業等会計から公益目的事業会計への資産繰入れ額(実物資産を繰入れた場合は帳簿価額相当額(注2))(注3)(注1)収益事業等における利益から、管理費のうち収益事業等に按分される額を控除した額。(注2)収益事業等からの利益を実物資産で繰入れる場合には、繰入時の実物資産の帳簿価額に相当する額が収益事業等の資産から公益目的事業財産となり、同額を支出して、当該実物資産を取得するものと見なす。この場合の当該実物資産は公益目的保有財産となる(認定法第18条第5号)。(注3)法人が収益事業等を行っていない場合にはⅲは除かれる。②以下の合計額を費用とする。i損益計算書上の公益目的事業の会計に係る経常費用ii公益目的事業に係る特定費用準備資金の当期積立額③上記①と②の額を比較する。⇒【②が①を上回る部分の額が「収入-費用」の額】(3)収益事業等の利益額を50%を超えて繰入れる場合①収入として以下の合計額を算出する。i損益計算書上の公益目的事業の会計に係る経常収益ii公益目的事業に係る特定費用準備資金の当期取崩し額(注)iii公益目的保有財産の取得又は改良に充てるために保有する資金(認定規則第22条第3項)(以下「公益資産取得資金」)の当期取崩し額(注)iv公益目的保有財産の当期売却収入(帳簿価額+売却損益)(注)資金積み立て時に、収支相償の計算上、費用として算入した額の合計額。②費用として以下の合計額を算出する。i損益計算書上の(公益目的事業の会計に係る経常費用-公益目的保有財産に係る減価償却費)ii公益目的事業に係る特定費用準備資金の当期積立額(上限あり(注))iii公益資産取得資金の当期積立額(上限あり(注))iv公益目的保有財産の当期取得支出(注)「(各資金の積立限度額-前期末の当該資金の残高)/目的支出予定時までの残存年数」として計算される額。③(②-①)の額について収益事業等から資産を繰入れる(利益の100%を上限、実物資産を繰入れた場合は帳簿価額相当額(注))。(注)収益事業等からの利益を実物資産で繰入れる場合には、繰入時の実物資産の帳簿価額に相当する額が収益事業等の資産から公益目的事業財産となり、同額を支出して、当該実物資産を取得するものと見なす。この場合の当該実物資産は公益目的保有財産となる(認定法第18条第5号、認定規則第26条第7号)。⇒【②が①と③の合計額を上回る部分の額が「収入-費用」の額】次回も引き続き、上記の旧法の考え方を踏まえた上で、中期的収支均衡の過去の剰余額・欠損額との通算(認定規則第16条第3項及び第4項)や特例算定方法等についてご説明させて頂きます。提供:税経システム研究所
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2026/01/16 所得税
所得税では同一生計親族間での事業取引は無視されるが(その1)
1.同一生計の親族間で事業取引を行った場合の所得税の特例同一生計の親族間で事業取引を行った場合には、下記の所得税法56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)の規定が適用され、支払った金額は必要経費に算入されず、その金額に対応する必要経費相当額が必要経費に算入されます。他方、取引の相手側は、受け取った金額は総収入金額に算入されず、その金額に対応する必要経費相当額を、自らの必要経費に算入することはできません。具体例でみましょう。仮に、夫が妻に対し、事業に関して100万円を支払い、妻にとってその収入に対応する必要経費が60万円とします。もしこの特例がなかったとすると、夫は100万円が必要経費に算入され、妻は100万円が総収入金額に算入される一方で60万円が必要経費に算入されるはずです。しかし、実際は所得税法56条が適用されるために、夫は妻に支払った100万円は夫の必要経費に算入されず、その代わり妻の方で計上されるはずの60万円が夫の必要経費に算入される一方で、妻は夫から収受した100万円は総収入金額に算入されない代わりに、その収入に見合う必要経費60万円も妻の必要経費に算入されません。具体的には次のようになります。2.対象となる取引の範囲この特例は、家族で事業を行っている場合に、家族間で所得を分散することによる税負担の軽減化を避けるために設けられました。わが国の所得税は、戦前までは世帯単位で合算して課税していたところ、戦後GHQによるシャウプ勧告を受けて昭和25年度改正によって個人単位課税に改められた際に、例外的に残されたことに端を発しています。当時は、農漁業、製造業、販売業を始め家内規模程度の個人経営が多かったことから、このような特例が設けられたものと思われます。その関係で、所得税法56条の条文も「配偶者その他の親族がその居住者の営む……事業に従事したことその他の事由により」と、生計を一にする親族が事業主の事業に従事していることを念頭に置かれた表現になっていますが、その続きを読むと「その他の事由により」と記載されています。法律用語としての「その他の」の語意は、「その他」の前の語は後ろの語の例示とされ、「Aその他のB」という表現は、Aに代表されるBというニュアンスで、AはBに含まれます。したがって、その親族が支払者の事業に従事しているかどうかにかかわらず、何らかの事由によって生計を一にする親族間で対価の支払いがあった場合には、広く適用されることになります。3.対価の支払いに対する贈与税の懸念上記のように、対価の支払いを受けた側にとっては、その収入に対して課税されないことになりますので、贈与税が課税されないかとの懸念を耳にする場合があります。しかし、同一生計の親族間での取引といえども、あくまで対価の支払いであり、その前提として対価に見合う資産の譲渡や貸付け又は役務の提供があるはずです。これに対して、贈与とは財産の無償の提供をいいますので(民法549)、対価という概念が存在しません。したがって、親族間で収受された金額について、取引の対価としての合理性があるかぎり、贈与税の問題は発生しません。4.対象となる親族には事実婚状態にある配偶者は含まれない下に掲げた条文を読むと、取引の対象となる者の範囲を「居住者と生計を一にする配偶者その他の親族」としており、あくまで親族を対象としています。これに対して、例えば同族会社における同族関係者には、判定の対象となる株主の親族(配偶者、六親等内の血族、三親等内の姻族)以外に、株主と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者として事実婚状態にある者など、実質的に親族と同様とみられる者を広く対象にしています(法人税法施行令4)。これに対して、所得税法56条の条文では、単に「親族」だけを対象にしており、事実婚状態にある者も含むとの規程は設けられていません。わが国では、婚姻は婚姻届を役所に提出することによって法的に有効になります(民法739)。したがって、結婚式を挙げて自他共に夫婦であるとの認識があったとしても、婚姻届が提出されていなければ、法的には事実婚状態ということになります。事実婚は一般には、婚姻届を提出しないで夫婦としての生活を継続している者が想定されがちですが、結婚式を挙げてから婚姻届を提出するまでの間にある場合も事実婚状態であり、親族には該当しません。したがって、この規定の適用に当たっては、婚姻届が提出されて法的に夫婦になっているかについての確認も、実務上非常に重要であるといえるでしょう。(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)第五十六条居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとし、かつ、その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。この場合において、その親族が支払を受けた対価の額及びその親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、当該各種所得の金額の計算上ないものとみなす。提供:税経システム研究所
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2026/01/13 所得税
認定住宅等の新築等に係る所得税額の特別控除
自己資金により認定住宅を取得した場合、特定増改築や耐震改修工事を行った場合は、住宅ローンがなくても所得税の特別控除が受けられます。1.認定住宅等の新築等に係る所得税額の特別控除居住者が、2021年1月1日から2025年12月31日までの間に、認定住宅(認定長期優良住宅および認定低炭素住宅)、ZEH水準省エネ住宅を新築等し、その新築等の日から6ヵ月以内に居住の用に供した場合に税額控除が受けられます。具体的には、下表の金額を控除することができます。また、控除額がその年分の所得税額から控除しきれない場合は、1年間の繰越しが認められ、翌年分の所得税額から控除することができます。ただし、その年分の合計所得金額が2,000万円(2023年以前は3,000万円)を超える場合には適用が受けられません。なお、この控除は全額自己資金で新築等した場合のほか、住宅ローンを組んで新築等した場合でも適用があります。この場合、住宅借入金等特別控除とは選択適用になります。2.中古住宅の耐震改修工事または特定の改修工事に係る所得税額の特別控除居住者が、その者の居住の用に供する家屋について一定の耐震改修工事(併せて行う一定の耐久性向上改修工事を含む)または一定の省エネ改修工事(併せて行う一定の耐久性向上改修工事を含む)、一定のバリアフリー改修工事、一定の三世代同居改修工事を行い、2022年から2025年に居住の用に供した場合は、次の金額を所得税額から控除できます。この控除額も住宅借入金等特別控除とは選択適用です。必須工事に係る標準的な工事費用相当額(控除対象限度額あり)×控除率10%さらに、2022年度の税制改正により、必須工事の控除対象限度額を超える部分やその他のリフォームについて、その金額の5%を控除する措置が上乗せされました。次の①②の金額の合計額(必須工事の工事対象限度額と併せて1,000万円を限度)×控除率5%必須工事の標準的な工事費用相当額のうち控除対象限度額を超える金額必須工事と併せて行うその他の改修工事に要した金額(補助金等の交付がある場合はその補助金を控除した金額)さらに、子育て特例対象個人が、自己所有の居住用家屋に一定の子育て対応改修工事をして、2024年4月1日から2025年12月31日までの間に居住の用に供した場合、その子育て対応改修工事に係る標準的な工事費用相当額(250万円を限度)の10%相当額を控除できます。ただし、その年分の合計所得金額が2,000万円を超える場合には適用が受けられません。〈控除額まとめ〉※()内の金額は、省エネ改修工事と併せて太陽光発電装置を設置する場合3.用語確認①一定の耐震改修工事一定の耐震改修工事とは、1981年5月31日以前に建築された一定のものについて、建築基準法に基づく現行の耐震基準(1981年6月1日施工)に適合させるための耐震改修工事をいいます。②一定のバリアフリー改修工事一定のバリアフリー改修工事とは、(a)年齢50歳以上の者、(b)介護保険法の要介護または要支援の認定を受けている者、(c)障害者、(d)前記(b)、(c)または年齢65歳以上の者と同居している者が行う、次の①から⑤に該当する工事等で、その工事費用(補助金等をもって充てる部分を除く)の合計額が50万円を超える一定のものをいいます。廊下の拡張階段の勾配の緩和浴室改良便所改良手すりの設置など③一定の省エネ改修工事一定の省エネ改修工事とは、次の①から④に該当する工事等で、その工事費用(補助金等をもって充てる部分を除く)の合計額が50万円を超える一定のものをいいます。居室のすべての窓の改修工事または居室の一部の窓の改修工事であって、改修後の住宅全体の断熱等性能等級が1段階相当以上向上するなど所定の要件を満たす工事床の断熱工事(①の工事と併せて行うものに限る)天井の断熱工事(①の工事と併せて行うものに限る)壁の断熱工事(①の工事と併せて行うものに限る)など④一定の耐久性向上改修工事一定の耐久性向上改修工事とは、小屋裏、外壁、浴室・脱衣所、土台・軸組等、床下、基礎もしくは地盤に関する劣化対策工事、または給排水管もしくは給湯管に関する維持管理もしくは更新を容易にする工事で、次の要件を満たすものをいいます。認定を受けた長期優良住宅建築等計画に基づくものであること改修部位の劣化対策ならびに維持管理および更新の容易性が、いずれも増改築による長期優良住宅の認定基準に新たに適合することになること増築、改築、大規模の修繕もしくは大規模の模様替えまたは一室の床もしくは壁の全部について行う修繕もしくは模様替えであること工事費用(補助金等をもって充てる部分を除く)の合計額が50万円を超えること⑤一定の多世帯同居改修工事一定の多世帯同居改修工事とは、(1)調理室、(2)浴室、(3)便所、(4)玄関のいずれかを増設する工事(改修後に(1)から(4)までのいずれか2つ以上が複数となるものに限る)で、その工事費用(補助金等をもって充てる部分を除く)が50万円を超えるものをいいます。⑥子育て対応改修工事一定の子育て対応改修工事とは、(1)住宅内における子どもの事故を防止するための工事、(2)対面式キッチンへの交換工事、(3)開口部の防犯性を高める工事、(4)収納設備を増設する工事、(5)開口部・界壁・床の防音性を高める工事、(6)間取り変更工事(一定のものに限る)であって、その工事に係る標準的な工事費用相当額(補助金等の交付がある場合には、当該補助金等の額を控除した後の金額)が50万円を超えること等、一定の要件を満たすものをいいます。⑦標準的な工事費用相当額標準的な工事費用相当額とは、各改修工事の種類等ごとに定められた金額(国土交通省が公示)にその工事を行った床面積等を乗じて計算した金額(補助金等の交付がある場合はその補助金を控除した金額)をいいます。提供:税経システム研究所
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2026/01/07 所得税医療業務
個人開業医の確定申告作業確認項目
1.はじめにまもなく確定申告時期に入りますが、個人開業医の決算処理においては、他の業種と異なる点がいくつかあります。その特徴的な項目をいくつか挙げてみたいと思います。2.収入関連収入は売上勘定1つでは処理できない医療機関の収入は保険診療収入と保険外の収入(自由診療収入や雑収入)に区分して経理しなければなりません。所得税の計算において医業収入はそのすべてが課税の対象となるので、収入を区分経理せずとも税額の計算はできるわけですが、事業税の計算や、措置法26条(社会保険診療報酬の所得計算の特例)を適用して所得計算する場合には、保険診療収入とそれ以外の収入とを区分して集計していないと計算ができません。事業税については都道府県による賦課課税ですから申告の必要はありませんが、個人開業医の事業税の課税対象収入は保険診療収入以外の収入であるため(保険診療収入は非課税収入であるため)、都道府県から保険診療収入と保険外の収入の金額の提出を求められることがあります。また措置法26条の計算においては自由診療割合を算出しなければならないため、保険診療収入と保険外の収入とを区分して経理しておく必要があります。社会保険診療報酬支払基金から発行される年間の支払調書(源泉徴収票)の内訳では生活保護にかかる診療分があるかないかわからない生活保護分の保険診療の点数及び金額は支払基金から毎月送付される決定通知書(当座口払込通知書)には記載されているので、申告時には必ず毎月の決定通知書をもう一度確認する必要があります。ちなみに、決定通知書に記載される生活保護分の支払区分コードは「12」です。なお、国民健康保険連合会からの決定通知書は、すでに紙媒体による通知書ではなく、電子通知により各医療機関のレセプトコンピュータに格納されていますので、件数、実日数、保険点数を把握するには、医療機関にプリントを依頼する必要があります。事業収入ではなく給与収入扱いとなるものの拾い出し振り込まれる収入金額の中には、保険診療収入や自賠責のような自由診療収入などの他に、医師会や市町村から振り込まれる収入もあります。この医師会や市町村から振り込まれる収入には、事業収入に該当するもの(雑所得に該当する場合もあります)と、給与収入に該当するものとがあります。給与扱いになるものは、確定申告時期に源泉徴収票が送られてきますが、それは年間合計額ですから、年の中途において数回にわたり振り込まれるもののうち、どの金額が当該源泉徴収票に記載されている分なのか確認する必要があります。交通事故による入院自由診療収入に係る未収金について次のものを計上しているか入院自由診療収入については期末における次の金額を未収計上する必要があります。12月末までに損保会社に請求しているが、その入金が翌年1月以降になっている分の金額損保会社に請求したのは翌年1月以降だが、12月末までに患者が既に退院している分の金額消費税申告において、自由診療収入から労災や自賠責に係る収入を除いたか自由診療収入のうち労災や自賠責に係るものは、消費税においては非課税であるので課税売上に含まれていないか確認する必要があります。歯科医業の場合の金属売却(残メタ売却)収入の確認残メタとは、残ったメタル(金属)のことをいう業界用語ですが、歯科医の税務調査では必ずこの収入計上漏れがチェックされます。企業からの売却代金は振り込みが基本ですが、中には現金による決済を希望している歯科医師もいるようです。歯科医院の場合、この収入は必ずあると思って間違いありませんから、申告処理にあたってこの収入の計上があるかどうかを、決算チェックリストに加えておくべきでしょう。3.必要経費関連福祉共済負担金や政治連盟会費は必要経費として認められない医師会費として徴収される金額の中には、通常会費の他に福祉共済負担金および政治連盟会費があります。このうち必要経費に算入される部分は通常会費のみで、福祉共済負担金および政治連盟会費は収入をあげるために直接必要な経費には該当しないものとされています。なお、医師会・歯科医師会によっては徴収する会費のうち「必要経費に算入できるのは通常会費のみ」と明示しているところもあります。棚卸金額が消費税込みの金額であるか確認したか医療機関が行った棚卸金額は、えてして在庫数×納入単価(消費税抜き単価)で計算されている場合が多いので確認する必要があります。措置法12条の2(医療用機器の特別償却)の適用を確認したか青色申告の場合に、取得した医療機器(新品)のうち次に該当するものは、普通償却費のほかに特別償却費も計算できる(措置法12条の2)ので、確認する必要があります。1台又は1基の取得価額が500万円以上のもの……100分の12医師及びその他の医療従事者の労働時間短縮に資する機器等の取得医師等医療従事者の労働時間短縮に資する機器等を取得して医療保健業の用に供した場合には、普通償却限度額に加え、取得価額の15%相当額の特別償却を認める制度です。地域医療構想の実現のための病床再編等の促進に向け取得または建設した設備地域医療構想実現のため病床再編等を行った場合の工事により取得又は建設した病院用又は診療上建物及び附属設備については、普通償却限度額に加え、取得価額の8%相当額の特別償却を認める制度です。なお、措置法10条の3(中小企業者が機械等を取得した場合の特別償却)については、医療機器は対象とはなりません。措置法第26条(社会保険診療報酬の所得計算の特例)適用の確認医業又は歯科医業を営む個人が、各年において社会保険診療につき支払を受けるべき金額を有する場合において、当該支払を受けるべき金額(社会保険診療報酬の金額)が5千万円以下であり、かつ、当該個人が営む医業又は歯科医業から生ずる事業所得に係る総収入金額に算入すべき金額の合計額が7000万円以下であるときは、その年分の事業所得の金額の計算上、当該社会保険診療に係る費用として必要経費に算入する金額は、当該支払を受けるべき金額を次の表の上欄に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に同表の下欄に掲げる率を乗じて計算した金額の合計額とするとして、保険診療収入にかかる必要経費についてはいわゆる概算経費での経費算入を認めています。具体的な概算経費の金額の計算は次の通りです。なお、実際の計算は、措置法第26条適用計算付表において、実際の経費の額と上記の算式で計算した金額とを比較し、概算経費の額と実際の経費の額との差額を「措置法差額」として、青色決算書の損益計算書の右下にある欄に記載して所得金額から差し引くことになります。ということは、措置法第26条の適用があるからといって実際の経費の集計を怠るわけにはいかないということになります。提供:税経システム研究所
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2025/12/24 所得税
相続と所得税 第31回 令和7年11月30日以前に死亡した者における令和7年度税制改正項目の適用手続き
令和7年度税制改正により、所得税の「基礎控除の見直し」「給与所得控除の見直し」「特定親族特別控除の創設」「扶養親族等の所得要件の改正」(この4つの改正項目については、以下「基礎控除の見直し等」という)が行われた。令和7年中に死亡した者に係るこれらの改正の適用の取扱いについてみていく。1.令和7年度税制改正による基礎控除の見直し等の適用について所得税における令和7年度税制改正の「基礎控除の見直し等」は、原則として、令和7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税について適用される。したがって、令和7年11月までの給与及び公的年金等の源泉徴収事務に、これらの改正による変更は生じない。令和7年の給与の源泉徴収事務においては、令和7年12月に行う年末調整の際に「改正後の規定に基づいて1年間の税額」を計算し「改正前の源泉徴収税額表によって計算した源泉徴収税額」との精算を行う。令和7年分の公的年金等(確定給付企業年金法の規定に基づいて支給する年金等を除く)の源泉徴収事務においては、令和7年12月の支払いの際に「改正後の一定の基礎控除額に基づいて1年間の税額」を計算し、「改正前の一定の基礎控除額に基づいて計算した源泉徴収税額」との精算を行う。2.令和7年中に死亡した者令和7年11月30日以前に死亡した者の「令和7年分の所得税及び復興特別所得税」は、以下のとおり、令和7年12月1日以後に相続人等が行う手続きが必要な場合がある。(1)令和7年11月30日以前に準確定申告書を提出した場合令和7年度税制改正による基礎控除の見直し等は、令和7年12月1日から施行されるので、令和7年11月30日以前にいわゆる準確定申告書を提出する場合には、適用されない。つまり、令和7年11月30日以前に準確定申告書を提出するときは、改正前の規定における基礎控除額、給与所得控除額、扶養親族等の所得要件などを適用する。令和7年12月1日以後、令和7年度税制改正による基礎控除の見直し等の施行後に、更正の請求を行うことにより、令和7年度税制改正による基礎控除の見直し等の適用を受けることができる。なお、すでに提出した準確定申告書に係る法定期限が到来していない場合には、訂正申告書の提出により、基礎控除の見直し等の適用を受けることができる。「所得税及び復興特別所得税の更正の請求書」の提出にあたり、相続人等が2以上の場合で、相続人等の代表が、還付金を一括受領する場合には「委任状」を一緒に提出する。(2)令和7年11月30日以前に死亡により退職した場合令和7年中に死亡により退職した人で、最後に給与の支払いを受けた日が令和7年11月30日以前である人の年末調整では、改正後の令和7年度税制改正による基礎控除の見直し等は適用されない。したがって、改正後の規定の適用を受けるためには、相続人等が準確定申告書等を提出する。「所得税及び復興特別所得税の準確定申告書」の提出にあたり、相続人等が2以上の場合で、相続人等の代表が、還付金を一括受領する場合には「委任状」を一緒に提出する。(3)令和7年12月1日以後にe-Taxソフトで準確定申告書を提出する場合の基礎控除等令和7年12月1日以後に、準確定申告書を提出する場合には、令和7年12月1日から施行される「令和7年度税制改正による基礎控除の見直し等」の適用を受けることになる。しかし、令和7年の間は、令和6年分の確定申告書の様式を使用することとなっているため、e-Taxにおいて、次のような対処が必要である。申告書第一表入力のしかた「基礎控除」欄金額を入力しない・・・「0.000」「雑損控除」欄改正後の基礎控除額を入力申告書等送信票(兼送付書)の「特記事項」欄に「基礎控除額●●●円」と入力雑損控除の入力もある場合には、「雑損控除額+基礎控除額」を合わせて入力申告書等送信票(兼送付書)の「特記事項」欄に「雑損控除額●●●円、基礎控除額●●●円」と入力「扶養控除」欄特定親族特別控除額を入力申告書等送信票(兼送付書)の「特記事項」欄に「特定親族特別控除額●●●円」と入力扶養控除の入力もある場合には、「扶養控除額+特定親族特別控除額」を合わせて入力申告書等送信票(兼送付書)の「特記事項」欄に「扶養控除額●●●円、特定親族特別控除額●●●円」と入力【参考文献】国税庁HP提供:税経システム研究所
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