商事法研究レポート

MJS税経システム研究所・商事法研究会の顧問・客員研究員による商事法関係の論説、重要判例研究や法律相談に関する各種リポートを掲載しています。

最高裁平成20年1月28日判決(判時1997号143ページ)(栄木不動産事件)
Ⅰ.事実関係昭和63年7月頃、A銀行B支店(北海道拓殖銀行千葉支店)は、Cと取引を開始し、その後、Cの紹介でD不動産(株式会社栄木不動産)とも取引を開始しました。平成2年1月10日以降、B支店の副支店長は、Cの要請に応じて、Cの持ち込んだD社振り出しの小切手につき、ほぼ連日、当日他券過振りの処理(支払可能残高を超えて振り出された他行を支払銀行とする小切手につき、これを交換に回す前に即日Cの口座に入金し...
株主有限責任と残余請求権者としての地位は所与のものか?
Ⅰ.はじめに「株主有限責任」は株式会社の基本的な特質の一つであり、「株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とする」と定める会社法104条はそうした特質を明定したものとされています。このように株式会社制度において株主が有限責任とされている理由としては、一般に「出資者のリスクを限定しておくことにより、小規模な投資家を含むより多くの出資者から出資を募ることを可能にし、そうした出資の糾合によって大規模な事...
(完全子会社・消滅会社)の役員等の責任を追及する株主代表訴訟の原告適格
1.代表訴訟制度とは株式会社と役員等との関係は委任に関する規定に従うため(会330条)、当然に善管注意義務(民644条)を負います。さらに取締役・執行役については別に忠実義務の規定(会355条・402条3項)も定められて...
東京高等裁判所平成20年5月21日判例タイムズ1281号274頁
1.事案の概要訴外A株式会社は、乳酸菌飲料等の製造販売を主たる業とする東証一部上場会社です。同社は、平成3年10月から平成10年3月までの間、投機性の高いデリバティブ取引(株価指数スワップ・オプション取引(本件デリバティ...
【質問】当社(資本金4億円)は、自社で販売する商品に使用する部品の製造を下請業者に委託しておりますが、コスト削減のため部品単価の改定を計画し、下請業者との間で現在交渉中です。そして今回、改定に合意した下請業者に対し、単価改定の合意日前に発注した部品についても改定後の単価を...
I.はじめにII.虚偽の情報開示に関する取締役の対第三者責任を定める会社法の規定
1.事実の概要(1)Y会社(被告)は、海運航空貨物取扱業、通関業、国際複合一貫輸送取扱業、梱包取扱業等を業とする株式会社です。Y会社の発行可能株式総数は40万株であり、本件で問題となった株主総会時の発行済株式は13万株で、自己株式は1700株です。X(原告)は、平成19年12月10日、Y会社の取締役に重任され、その任期は、平成21年の定時株主総会の終結の時までとされていました。また、XはY会社の株主(保...
〈質問〉私は、資本金が3000万円のY1株式会社(以下、Y1会社といいます。)の株主です。同社は3月決算の会社であり、発行済株式総数が600株で、その内の300株を私が保有し、残りの300株は兄のY2が保有しています。Y1会社は定款で株式の譲渡による取得に付き会社の承認を要する旨の定めを置いており、機関設計は取締役が2名、監査役1名というものです。私は、監査役の立場に...
Ⅰ.はじめに一昨年来、有価証券報告書等の虚偽記載により、上場廃止となった会社やその代表者に対して、投資家が損害賠償を請求する事件が、注目を集めています。本年1月には、ライブドアの第三者割当増資を引き受けたフジテレビが、ライブドア事件で同社の株価が急落して損害を受けたとして損害賠償を求めていた訴訟において、ライブドアが310億円を支払うことで和解が成立し、訴訟が終結したと報じられました。また、従来から、粉飾決算をしていた会社が破綻し、取引先等から取締役個人に...
(東京高決平20・9・12金判1301号28頁)原決定変更(旧Management Report 月刊商事法研究61号・原決定掲載)
1.事実Y(株式会社レックス・ホールディングス)の歴史は複雑です。昭和62年に国土信販株式会社という不動産賃貸会社として設立され、平成8年に外食産業に進出、主事業が外食産業に移行したのに伴い、平成10年に株式会社レインズインターナショナルに商号変更、短期間に牛角ブランドで知られる焼肉FCチェーンを日本一の規模に押し上げ、その他の外食ブランドFCを数々展開するなどし、平成12年12月には株式を店頭銘柄として日本証券業協会に登録(JASDAQ上場)を果たします...