商事法研究レポート

MJS税経システム研究所・商事法研究会の顧問・客員研究員による商事法関係の論説、重要判例研究や法律相談に関する各種リポートを掲載しています。

1.はじめに急速に高齢化の進む日本では、社会情勢の変化に対応した相続制度の見直しの必要性が問題となっています。例えば、配偶者が死亡した場合に残された他方配偶者の生活に配慮すべきであるとする声もあります。これを規律する現行相続法制は、昭和55(1980)年の改正以降実質的見直しはされて来ませんでした。そこで、法務大臣が平成27年2月に相続法制の見直しについて諮問し、それ...
1.事実の概要Y株式会社(利害関係参加人・抗告人/相手方、ジュピターテレコム)は、平成22年6月当時、その発行する普通株式(以下「本件株式」)を大阪証券取引所JASDAQスタンダード市場に上場していましたが、A株式会社(住友商事)及びB株式会社(KDDI)が合計してY社の総株主の議決権の70%以上を直接又は間接に有していました。A社及びB社は、両社でY社の株式を全部保...
はじめに近時、自動車の燃費データ不正問題などの大型の企業不祥事が相次いで発生するなか、不正防止のために企業を内部から監視し、その自浄作用を支える制度として、企業における内部通報制度の意義があらためて見直されています(注1)。企業における内部通報制度の整備・運用が進むことは、組織の...
委員会設置会社から指名委員会等設置会社への名称変更とその現状
一指名委員会等設置会社とは(1)指名委員会等設置会社への名称変更平成26年法律第90号による改正が反映された指名委員会等設置会社(平成27年5月1日施行)は、平成14年法律第44号による「株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律」(以下、「商法特例法」とします)(注1)において、「第四節委員会等設置会社に...
1事実の概要X1・X2およびX3(申立人・抗告人。以下、「X1ら」という。)は、被相続人A(女性)の長男Cの子であり、Y1およびY2(相手方。以下、「Y1ら」という。)はAの娘です。株式会社B(以下、「B社」という。)は、Aの父で同社初代社長のDが昭和24年に設立し、Aの夫であるEが2代目の社長となり、その後、EとAの長男Cが3代目社長となって経営を承継しました。B社...
1事案の概要1平成21年3月末、Z株式会社(分譲マンションの企画・販売等を業とする上場会社)は、7億5000万円の債務超過に陥り、平成22年3月末迄に解消しなければ上場廃止になるおそれがありました。同年6月、Z社の取締役会は、A社に対する新株予約権の第三者割当発行を決議し、同年8月14日、この払込金として3000万円の振込みを受けました。
1はじめに近時、わが国では、株主総会制度の改革に関する議論が活発になされるようになってきています。2016年4月21日には、経済産業省の下に設置された「株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会」(座長:尾崎安央早稲田大学法学学術院教授)から報告書(以下、本稿では、この報告書を単に『報告書』とします)が公表され、併せて、同報告書の内容を受ける形で「株主総会の招集通知...
【質問】私(X)は、仕事を通じて昭和60年頃に知り合ったEから、Eが立ち上げた個人事業を会社にするので出資してほしいと依頼されて、平成7年に、建設工事等を目的とするY会社(設立当時は有限会社、現在は非公開会社)を設立するに当たり、Y株式の33%を取得して、その取締役に就任しました。Y会社は、設立以降順調に成長を遂げ、増収増益を繰り返して、平成24年の売上高は、年商○○...
1.事実の概要(1)経緯X会社(原告・被控訴人)は、環境技術に関するコーディネートやコンサルティング等を業とする株式会社です。Y会社(被告・控訴人)は、X会社の有する放射性物質の除染技術に係る特許及びノウハウを事業化するた...
1.事実の概要高知県安芸郡東洋町は、平成23年10月25日、東洋町漁業災害対策資金貸付規則(平成23年東洋町規則第23号。本件規則)を制定しました。その内容は、同年7月の台風6号の被害を受けた漁業者(被害漁業者)の属する漁業協同組合に対し、被害漁業者の早期の施設復旧と再生産及び経営の安定を図ることを目的として、1000万円の限度で資金を貸し付けるというものです。また、...