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令和5年度税制改正~本則・簡易課税と2割特例の選択について~

2023/03/15

著者 :  西野道之助

カテゴリ:  消費税
補助項目:  税制改正

令和5年度税制改正により、インボイス発行事業者となる免税事業者の負担軽減措置として、納税額を売上税額の2割に軽減する3年間の負担軽減措置、いわゆる2割特例が講じられます。

先生方におかれましては、すでにクライアントのインボイス登録申請と同時に、簡易課税の選択届出書を提出したケースもあるのではないでしょうか。

このような場合でも、2割特例の適用を受けることは可能なのでしょうか。

また、2割特例の適用を受けようとする場合、いつまでに選択する必要があるのでしょうか。

現段階で確認できる範囲で検討していきたいと思います。

1.適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)

(1) 制度の概要

適格請求書発行事業者の令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において、免税事業者が適格請求書発行事業者となったこと又は課税事業者選択届出書を提出したことにより事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる場合には、その課税期間における課税標準額に対する消費税額から控除する金額を、当該課税標準額に対する消費税額に8割を乗じた額とすることにより、納付税額を当該課税標準額に対する消費税額の2割とすることができることとされます。

したがって、みなし仕入率が80%である場合の簡易課税制度と同様の計算方法となりますが、第1種~第6種の事業区分に係わらず、売上・収入を把握するだけで消費税の申告が可能となることから、簡易課税より事務負担も軽減されます。

また、簡易課税制度のような2年間の継続適用の縛りもありません。

(2) 適用における留意点

この2割特例は、課税期間の特例の適用を受ける課税期間及び令和5年10月1日前から課税事業者選択届出書の提出により引き続き事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる同日の属する課税期間については、適用しないこととされています。

ただし、このような場合であっても、令和5年分の申告について2割特例の適用が検討できるように、その課税期間中に課税事業者選択不適用届出書を提出したときは、その課税期間からその課税事業者選択届出書は効力を失うこととする救済措置がとられます。

この手続きを行うことにより、例えば個人事業主が令和4年12月にインボイスの登録申請書と課税事業者選択届出書を提出していた場合であっても、令和5年1月から9月の納税義務は改めて免除され、インボイス発行事業者として登録を受けた令和5年10月1日から12月31日までの期間について納税義務が生ずることになり、その期間について2割特例を適用することが可能となります。

(財務省資料)

また、基準期間における課税売上高が1,000万円を超える課税期間も2割特例の適用を受けることができません。

例えば、次の図のとおり、個人事業主で令和6年(基準期間)における課税売上高が1,000万円を超える場合には、令和8年分の申告について、2割特例は適用できないこととなります。

(財務省資料)

そして、このような場合についても簡易課税制度への移行措置が設けられます。

2割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間中に、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を納税地を所轄する税務署長に提出したときは、その提出した日の属する課税期間から簡易課税制度の適用を認めることとされます。

(財務省資料)

2.簡易課税制度選択届出書の提出をした場合、2割特例の適用を受けることはできないのか

前述のとおり、すでにインボイス登録申請書とともに、簡易課税制度選択届出書を同時に提出しているケースもあるのではないかと思います。

このように簡易課税制度の選択届出をした場合には、2割特例の適用ができないのではないかという疑問が生じます。

この点について、財務省が公表した「インボイス制度の負担軽減措置(案)のよくある質問とその回答」(令和5年1月20日時点)では、以下のような回答がされています(問6.)。

2割特例は、本則課税と簡易課税のいずれを選択している場合でも、適用が可能です。

そのため、簡易課税制度の適用を受けるための届出書を提出していたとしても、申告の際に2割特例を選択することは可能です(簡易課税制度選択届出書を取り下げる必要はありません)。

なお、2割特例の適用を受けようとする場合は、確定申告書にその旨を付記するだけで、事前の届出も不要とされています。

現段階では、申告書第1表の右下に2割特例の適用の有無について、チェックをつける欄が設けられるイメージのようです。

提供:税経システム研究所

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