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「店内飲食」も「テイクアウト」も税込価格を同額にするという考え方

2019/03/08

著者 :  西野道之助

カテゴリ:  消費税
補助項目:  税制改正

本年10月からの消費税率引上げとともに、いよいよ軽減税率制度が導入されます。

同じ飲食料品を購入した場合でも、「店内飲食(外食)」は標準税率10%、「持ち帰り販売(テイクアウト)」は軽減税率8%となり、原則として、税込価格が異なることになります。

実務の上では、店内飲食とテイクアウトの両方を行っている飲食店、ファストフード店、イートインスペースのあるコンビニエンスストアなどは、軽減税率が適用される課税売上げに該当するか否かなどについて、実務上の煩雑さやトラブルが生ずる可能性も考えなければなりません。

(1) 適用税率の判定時期と意思確認

国税庁の公表している「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編)」では、軽減税率が適用される取引か否かの判定は、事業者が課税資産の譲渡等を行う時、すなわち、飲食料品を提供する時点(取引を行う時点)で行うとしています(問11)。

更に、店内飲食とテイクアウトの両方を行っている飲食店等においては、その飲食料品を提供する時点で、「店内飲食」(標準税率)か「持ち帰り販売」(軽減税率)かを、例えば、顧客に意思確認を行うなどの方法により判定することとされています(問9)。

(2) 「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」の確認と問題点

上記(1)と同じく国税庁の公表している「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」では、イートインスペースのあるコンビニエンスストアやファストフード店での軽減税率の判定について、以下のようなQ&Aの記載があります。

(コンビニエンスストアのイートインスペースでの飲食)

問45 店内にイートインスペースを設置したコンビニエンスストアにおいて、ホットドッグ、から揚げ等のホットスナックや弁当の販売を行い、顧客に自由にイートインスペースを利用させていますが、この場合の弁当等の販売は、軽減税率の適用対象となりますか。

【答】

イートインスペースを設置しているコンビニエンスストアにおいて、例えば、トレイや返却が必要な食器に入れて飲食料品を提供する場合などは、店内のイートインスペースで飲食させる「食事の提供」であり、軽減税率の適用対象となりません(改正法附則34①一イ、軽減通達10(3))。

ところで、コンビニエンスストアでは、ご質問のようなホットスナックや弁当のように持ち帰ることも店内で飲食することも可能な商品を扱っており、このような商品について、店内で飲食させるか否かにかかわらず、持ち帰りの際に利用している容器等に入れて販売することがあります。

このような場合には、顧客に対して店内飲食か持ち帰りかの意思確認を行うなどの方法で、軽減税率の適用対象となるかならないかを判定していただくこととなります。

なお、その際、大半の商品(飲食料品)が持ち帰りであることを前提として営業しているコンビニエンスストアの場合において、全ての顧客に店内飲食か持ち帰りかを質問することを必要とするものではなく、例えば、「イートインコーナーを利用する場合はお申し出ください」等の掲示をして意思確認を行うなど、営業の実態に応じた方法で意思確認を行うこととして差し支えありません。

(ファストフードのテイクアウト)

問50 ファストフード店において、「テイクアウト」かどうかは、どのように判断するのですか。

【答】

軽減税率の適用対象とならない「食事の提供」とは、飲食店営業等を営む者が飲食設備のある場所において飲食料品を飲食させる役務の提供をいいますが、いわゆる「テイクアウト」など、「飲食料品を、持ち帰りのための容器に入れ、又は包装を施して行う譲渡」(以下「持ち帰り」といいます。)は、これに含まないものとされています(改正法附則34①一イ)。

事業者が行う飲食料品の提供が、「食事の提供」に該当するのか、又は「持ち帰り」に該当するのかは、その飲食料品の提供を行った時において、例えば、その飲食料品について、その場で飲食するのか又は持ち帰るのかを相手方に意思確認するなどの方法により判定していただくことになります(軽減通達11)。

しかし、実際の場面では、顧客は税込価格が少なくて済むように、例えばコンビニエンスストアのケースではイートインスペースを使用するにもかかわらずその利用の申出を行わず、また、ファストフード店のケースにおいても「持ち帰り」の意思表示を店員に行ったにもかかわらず、店内において飲食を行うなどの問題が生ずる可能性があります。

(3) 「店内飲食」も「テイクアウト」も税込価格を同額にするという考え方

軽減税率制度の実施に伴う価格表示については、適切な価格表示を推進し、事業者間の公正かつ自由な競争を促進するとともに、一般消費者の適正な商品又は役務の選択を確保することを目的として、関係省庁連名で、平成30年5月18日付「消費税の軽減税率制度の実施に伴う価格表示について」(消費者庁・財務省・経済産業省・中小企業庁)が公表され、同一の飲食料品の販売につき適用される消費税率が異なる場面における小売店等の価格表示の具体例等が示されています。

その中において、事業者の判断により「店内飲食」と「テイクアウト」を同一の価格に設定し、価格表示を行うことの検討がなされています。

【消費税の軽減税率制度の実施に伴う価格表示について(抜粋)】

2 事業者がどのような価格設定を行うかは事業者の任意である。そのため、軽減税率が適用されるテイクアウト等の税抜価格を標準税率が適用される店内飲食より高く設定、又は店内飲食の税抜価格を低く設定することで同一の税込価格を設定することも可能である(※)。

その場合における価格表示方法としては以下の方法が考えられる。

(※) 具体的には、

テイクアウト等の税抜価格
:102 円(8%)→ 110 円(税込価格)
店内飲食の税抜価格
:100 円(10%)→ 110 円(税込価格)

○ 一の税込価格を表示する方法

事業者の判断(※)により、テイクアウト等及び店内飲食の税込価格が同一になるようにテイクアウト等の税抜価格を高く設定、又は店内飲食の税抜価格を低く設定した上で、当該一の税込価格を表示することが考えられる。

(※) 事業者の判断の具体例としては、例えば以下のようなものが想定される。

○ テイクアウト等の税抜価格を上げる例

・「出前」について、配送料分のコストを上乗せする

・「テイクアウト」について、箸や容器包装等のコストを上乗せする

○ 店内飲食の税抜価格を下げる例

・「店内飲食」について、提供する飲食料品の品数を減らす

・「店内飲食」の需要を喚起するため

○ 従業員教育の簡素化や複数の価格を表示することに伴う客とのトラブル防止に資する

など

(具体例)… 省略(筆者)

(参考)両方の税込価格が仮に同一であったとしても、適用税率が異なることに変わりはないことを踏まえると、消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から、以下の点に留意する必要がある。

① 「全て軽減税率が適用されます」といった表示や、「消費税は8%しか頂きません」といった表示を行うことは、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(平成25 年法律第41 号。以下「消費税転嫁対策特別措置法」という。)や景品表示法により禁止されている。

② テイクアウト等の価格を店内飲食に合わせて値上げする場合には、消費者から問われた際に、先に挙げた具体例も参考にしつつ、合理的な理由を説明することが考えられる。

税込価格を同額にした場合であっても、事業者は標準税率対象である「店内飲食」と軽減税率対象である「テイクアウト」について、正確な対応を行わなければいけないことに変わりはありません。

しかし、実務上の煩雑さやトラブルを回避したい中小事業者や、場合によっては大手ファストフード・コーヒーショップなどにおいても、同一の税込価格を検討する余地があるのではないでしょうか。

提供:税経システム研究所


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