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消費税率引上時の素朴な疑問~費用収益の計上基準の相違・短期前払費用の処理について~

2018/12/14

著者 :  西野道之助

カテゴリ:  消費税
補助項目:  税制改正

国税庁は11月2日に、「平成31 年(2019 年)10 月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A【基本的な考え方編】【具体的事例編】」を公表しました。

前回の消費税率8%引上時にも、「平成26 年4 月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A」を平成25年4月に公表していますが、この時は全59問のQ&Aで構成されていました。

今回のQ&Aは、基本的には前回のものがベースとなっていますが、【基本的な考え方編】で全48問、【具体的事例編】で全34問とボリュームアップされています。

そこで前回の引上げ時において、誰もが疑問視していた

・ 事業者間で収益・費用の計上基準が異なる場合の取扱い

・ 短期前払費用として処理した場合の仕入税額控除

について、今回新たにQ&Aが追加されていますので再確認したいと思います。

(1) 事業者間で収益・費用の計上基準が異なる場合の取扱い

売主は商品を平成31年(2019年)9月30日に出荷し、出荷基準により売上げを計上している場合、適用する消費税率は8%となります。

しかし、買主はその商品について翌10月1日に納品を受け、検収基準により仕入れを同日に計上する場合、消費税率は8%と10%のどちらで認識すべきか疑問が生じます。

このようなケースについて、今回のQ&Aでは次のように記載がなされています(【基本的な考え方編】問3)。

当社(A社)では、検収基準により仕入れを計上しています。ところで、当社と取引先(B社)の収益、費用の計上基準の違いにより、当社が、10月初旬に検収基準により仕入れを計上したものであっても、取引先が出荷基準によっている場合、31年施行日(平成31年10月1日)前に出荷された商品は旧税率(8%)が適用されるので、取引先(B社)から、旧税率に基づく消費税額等が記載された請求書が送付されてくるものと考えられます。このような場合、当社の仕入控除税額の計算はどのように行えばよいですか。

【答】

31年新消費税法は、経過措置が適用される場合を除き、31年施行日以後に行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等について適用されます(改正法附則15)。

照会の事例は、B社がA社に対して、26年施行日(平成26年4月1日)から31年施行日の前日(平成31年9月30日)までの間に行った課税資産の譲渡等ですので、A社においても、31年旧消費税法の規定に基づき仕入控除税額の計算を行うこととなります。

したがって、検収基準を採用している買主側(A社)は、8%の税率を適用することになります。

(2) 短期前払費用として処理した場合の仕入税額控除

法人税の申告の際、ある契約について「短期前払費用」の規定の適用により、1年分の費用をその支払った日の属する事業年度において損金の額に算入したが、契約期間が平成31年(2019年)10月1日をまたいでいるため、消費税率をどのように適用すればよいか疑問が生じます。

このようなケースについて、今回のQ&Aでは次のように記載がなされています(【具体的事例編】問7)。

当社(3月決算法人)は、平成31年3月に、平成31年4月から平成32年3月までの1年間の保守契約を締結し、同月中に1年分の保守料金を支払いました。

この保守料金は月極めであり、契約期間が31年施行日(平成31年10月1日)をまたいでいることから、適用税率は次のとおりとなっています。

・ 平成31年4月から9月分までの保守料金には旧税率(8%)

・ 平成31年10月から平成32年3月分までの保守料金には新税率(10%)

当社は、この保守料金について平成31年3月期の法人税の申告において、法人税基本通達2‐2‐14《短期の前払費用》を適用し、その保守料金の全額をその支払った日の属する事業年度において損金の額に算入することとしています。

ところで、消費税の課税仕入れの時期についても、基通11‐3‐8《短期前払費用 》の規定により、その支出した日の属する課税期間において行ったものとして取り扱うこととされていますが、この場合、当社は平成31年3月課税期間の消費税の申告において、当該保守料金の仕入税額控除の計算はどのように行えばよいのですか。

【答】

平成31年3月課税期間に係る消費税の申告においては、

・ 平成31年4月から9月分までの保守料金(旧税率(8%)適用分)についてのみ、仕入税額控除を行い、

・ 平成31年10月から平成32年3月分までの保守料金(新税率(10%)適用分)に係る消費税等相当額については、仮払金として翌期に繰り越し、翌期の課税期間に係る消費税の申告において、新税率(10%)により、仕入税額控除を行うこととなります。

なお、1年分の保守料金について旧税率(8%)により仕入税額控除を行う場合には、翌課税期間において、新税率が適用される部分(平成31年10月分から平成32年3月分)について8%の税率による仕入対価の返還を受けたものとして処理した上で、改めて新税率(10%)により仕入税額控除を行うこととなります。

(注) 31年新消費税法の規定は、31年施行日以後の課税資産の譲渡等に適用されるものであることから、31年施行日前の課税期間に係る消費税の申告においては、新税率による申告ができないため、照会の場合においては、上記の方法により消費税の申告を行うこととなります。

上記の回答のいずれの処理を採用するにせよ、平成31年3月期の消費税の申告時には、10%の税率が存在しないことを改めて確認する必要があります。

提供:税経システム研究所


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