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消費税の納税義務判定のポイント解説(第5回)課税事業者の選択①

2020/06/10

著者 :  石井幸子

カテゴリ: 消費税

1.事業者免税点制度の原則と例外

事業者免税点制度により、基準期間における課税売上高が1,000万円以下の小規模事業者は、原則として、消費税の納税義務が免除されます(消法9①)。事業者免税点制度の全体像は、消費税の納税義務判定のポイント解説(第1回)「事業者免税点制度とは」を参照してください。

ただし、事業者が希望する場合には、届出書を提出することにより課税事業者を選択することができます。

第5回では、課税事業者を選択する理由と届出書の概要について解説をします。

2.課税事業者を選択する理由

消費税の納付税額は、売上げに対する消費税(売上代金とともに預かった消費税)から、仕入れに対する消費税(仕入代金や経費とともに支払った消費税)を差し引いて計算します。

【具体例1】

売上5,000万円、仕入・経費合計3,000万円の場合(消費税率は全て10%と仮定)

  1. 売上げに対する消費税
    5,000万円 × 10% = 500万円
  2. 仕入れに対する消費税
    3,000万円 × 10% = 300万円
  3. 納付税額
    500万円(上記(1))- 300万円(上記(2))= 200万円

【具体例1】では、課税事業者であれば200万円の申告と納付をしなければなりませんが、免税事業者であればその必要はありません。このようなケースでは、基準期間における課税売上高が1,000万円以下で免税事業者となる事業者が、あえて課税事業者を選択する必要はありません。

これに対して、次のようなケースでは、基準期間における課税売上高が1,000万円以下で免税事業者となる事業者が、あえて課税事業者を選択することがあります。

【具体例2】

売上5,000万円、仕入・経費合計6,000万円の場合(消費税率は全て10%と仮定)

  1. 売上げに対する消費税
    5,000万円 × 10% = 500万円
  2. 仕入れに対する消費税
    6,000万円 × 10% = 600万円
  3. 納付税額
    500万円(上記(1))- 600万円(上記(2))= △100万円

消費税の納付税額は、売上げに対する消費税から仕入れに対する消費税を差し引いて計算しますが、仕入れに対する消費税額のほうが大きい場合には、計算結果はマイナスになります。計算結果がマイナスになった場合には、このマイナスの金額(【具体例2】では100万円)は税務署から還付を受けることができますが、還付を受けるためには、消費税の申告をしなければなりません。

ここで注意をしなければならないのは、免税事業者は単に「納税をしないでよい」のではなく、良くも悪くも「申告をしない(できない)」という点です。

したがって、【具体例2】のように、売上げに対する消費税から仕入れに対する消費税を差し引いた結果がマイナスになり、還付を受けたい場合には、基準期間における課税売上高が1,000万円以下で免税事業者となる事業者であっても、あえて課税事業者を選択しなければなりません。

3.課税事業者選択届出書の提出

基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者が課税事業者を選択する場合には、「消費税課税事業者選択届出書」を提出しなければなりません。

この「消費税課税事業者選択届出書」は、第4回で解説した「消費税課税事業者届出書」と届出書の名称は似ていますが、提出すべき場合や提出時期などが大きく異なるものです。実務では、この2つの届出書を間違えて提出したミス事例もあるため注意が必要です。

第6回では、この「消費税課税事業者選択届出書」の提出時期や実務上の留意点を解説します。

提供:税経システム研究所


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