実務情報
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2026/09/16 税務ニュース
消費者庁「消費者に深刻な財産被害を及ぼす悪質商法に係る対策パッケージ」を公表
消費者庁は9月1日、「詐欺的な事業の破綻により多数の消費者に深刻な財産被害を及ぼす悪質商法に係る対策パッケージ」を公表した。この対策パッケージは、多数の消費者に対して高額な利益や配当が得られるとして出資を勧誘するが、最終的には事業が破綻するなどして、被害回復が困難となる悪質商法による消費者被害の未然防止、被害の拡大防止、早期救済を図るための総合対策である。これまで、悪質商法に対しては関係法令の規定に基づく行政処分、刑事摘発等を実施してきたところであるが、事業の実態把握や違法性の判断に相応の時間を要することが多くなってきている。また、近時において海外の金融商品・不動産事業等への出資やUSBメモリ等の物品の預託を始め、手口が多様化、複雑化、巧妙化していることなどから事業者の財産の把握が一層困難になってきている。今回、消費者庁が設置した「多数の消費者に深刻な財産被害を及ぼす詐欺的な悪質商法対策プロジェクトチーム」では、被害の防止を図るためには早期の対応が必要不可欠と認識しており、悪質商法に対する今後の対応について対策パッケージとして次のとおり取りまとめている。(対策1)端緒情報の複線化全国消費生活情報ネットワーク(PIO-NET)に蓄積された相談情報、国民生活センターの専門家派遣や巡回事業などで得られた情報、ウェブサイト・SNS等のインターネット上の情報の収集・分析など複線的な情報収集体制を整備する。(対策2)情報分析の高度化(従来手法+AI活用)対策1などにより得られた情報について従来のキーワード検索の手法に加えて、AIによる文脈・キーフレーズに基づく分析を行うことで、破綻の初期兆候を捉え、事業者に対する早期対応や複数事業者に共通する手口の早期把握につなげる。(対策3)情報の多様な活用等収集・分析した情報について、事案によっては直ちに調査に着手し、早期の行政処分につなげるほか、直ちに行政処分に至らない事案であっても事案の悪質性・重大性といった内容に応じて早期警戒情報を発出する。また、早期警戒情報を活用した契約前相談を実施することや関係省庁・金融機関・見守りネットワーク等への早期の情報提供、最新の被害事例等を踏まえた消費者教育と金融経済教育の実施、体制の拡充として「早期警戒準備室」の整備など情報の多様な活用等により、悪質商法の予防、早期対応を実施する。消費者庁では、この対策パッケージについて関係省庁、国民生活センターを始めとする関係機関と連携し、実効性のあるものにすることとしている。(参考)詐欺的な事業の破綻により多数の消費者に深刻な財産被害を及ぼす悪質商法に係る対策https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/measures/
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2026/09/15 税務ニュース
約束手形の利用廃止を踏まえたサプライチェーン全体での支払の適正化について
中小企業庁と公正取引委員会は9月2日、約束手形の利用廃止を踏まえたサプライチェーン全体での支払の適正化を推進するため、各事業者団体等に対して要請を行った。令和8年1月施行の中小受託取引適正化法(以下、「取適法」という。)に加え、令和9年4月からは、独占禁止法上の「製造委託等に係る代金の支払に関する特定の不公正な取引方法」(以下、「告示」という。)が施行される。告示は、取適法の対象とならない取引であっても、製造委託等を行った事業者が当該製造委託等を受けた事業者に対して、製造委託等代金を給付の受領から起算して60日の期間経過後なお支払わないことを禁止するものであり、サプライチェーン全体での支払の適正化をより一層推進するものである。また、令和9年3月末には、電子交換所における手形・小切手の利用交換が廃止されることを踏まえ、多くの金融機関が令和8年9月末を手形・小切手の最終振出期限に設定しており、取適法及び告示の対象とならない取引も含め、サプライチェーン全体でのサイト短縮の取組、サイトの短縮に取り組む事業者の資金繰りへの影響にも配慮する必要がある。各産業の業界団体に対する要請内容は以下のとおりであり、これ以外に金融機関及びそれを監督する省庁に対しても要請が行われている。取適法では、施行日以後の発注に係る製造委託等代金の支払に手形を交付することは禁止されており、電子記録債権等の現金以外の支払手段についても、物品等の受領から起算して60日以内に定められる代金の支払期日までに当該代金の満額に相当する金銭を受領することができない場合は、その使用が禁止されている。告示が施行され、取適法の対象とならない取引を含む製造委託等に係る代金について、給付を受領した日(又は役務の提供を受けた日)から60日以内に支払わなければならず、各事業者においては、委託事業者・受託事業者間で協議し、告示の内容を十分に理解した上で、適正な支払期日を設定する。取適法及び告示の対象外の取引についても、サイトを製造委託等に係る物品等の受領日から起算して60日以内に短縮する、代金の支払をできる限り現金によるものとする等、サプライチェーン全体での支払の適正化に努める。とりわけ、建設工事、大型機器の製造など発注から納品までの期間が長期にわたる取引においては、委託事業者は支払の適正化とともに、前払比率、期中払比率をできる限り高めるなど支払条件の改善に努める。(参考)「約束手形の利用廃止を踏まえたサプライチェーン全体での支払の適正化について事業者団体等に要請を行いました」https://www.meti.go.jp/press/2026/09/20260902002.html
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2026/09/14 税ワンポイント
修正申告でマイホームを売った時の特例は使えるか
マイホーム(居住用財産)を売却した場合、一定の要件の下で譲渡所得から最高3,000万円を控除できる「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例(注1)」がある。所有期間の長短を問わず適用できることから、実務上も利用頻度が高い特例である。しかし、この特例には申告手続上、見落としやすい注意点がある。既に確定申告を済ませている場合、その後の修正申告で3,000万円特別控除を新たに適用することはできないということである。租税特別措置法35条11項は、3,000万円特別控除について、その適用を受けようとする者の「その年分の確定申告書」に、特例の適用を受けようとする旨などの記載があり、かつ、譲渡所得の計算明細書等の添付がある場合に限り適用すると定めている。単に居住用財産を売却し、実体的な適用要件を満たしているだけでは足りず、確定申告書において特例の適用を求めることが必要なのである。ここで重要になるのが、期限後申告と修正申告の違いである。所得税法2条1項は、「確定申告書」(37号)、「期限後申告書」(38号)、「修正申告書」(39号)をそれぞれ別個の用語として定義しており、37号の確定申告書の定義には「当該申告書に係る期限後申告書を含む」と明記される一方、修正申告書はこの定義に含まれない。措法35条11項が要求する「確定申告書」への記載は、この所得税法上の定義に従って判断されることになる。その年分について確定申告を一切行っていなかった者が、法定申告期限後に初めて申告書を提出する場合、その申告は期限後申告書として「確定申告書」に該当する。したがって、この期限後申告において3,000万円特別控除の適用に必要な記載や書類添付を行えば、他の要件を満たす限り、申告期限を過ぎていることだけを理由に特例が否定されるものではない。一方、給与所得など総合課税の所得だけを確定申告し、分離課税となる不動産の譲渡所得を申告し忘れていた場合は事情が異なる。後日、譲渡所得を追加するために提出するものは修正申告書となるが、この修正申告書は所得税法上「確定申告書」には含まれない。そのため、この修正申告によって3,000万円特別控除を新たに適用することは認められない。なお、措法35条12項には、同条11項に定める記載や書類添付がなかった場合について、「やむを得ない事情」があると税務署長が認めるときの宥恕規定が置かれている。ただし、これは通常の申告漏れを広く救済するための規定ではない。どのような事情がこれに該当するかは個別の事実関係によって判断されるため、単なる失念などを前提として適用を期待することは避けるべきである。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2026/09/14 審査事例
一括取得した土地建物の価額の配分、「建物価額が不合理に高額だ」vs「収益を生むのは建物だ」。法定耐用年数経過後も収益性が認められる建物について、鑑定評価額による配分が認められる(一部取り消し)
【裁決のポイント】土地建物が一括売買され、土地建物の各価額がその客観的な価値と比較して著しく不合理なものである場合に、これを「当該資産の購入の代価」(所得税法施行令第126条《減価償却資産の取得価額》)としてそのまま認めれば、売買契約の際、土地と建物への代金額の割り付けを操作することで、容易に建物の減価償却費を過大に計上することができ、課税の公平を損なうこととなる。審査請求人は土地建物の一括取得を繰り返す個人の不動産賃貸業者である。税務署は物件の調査を行い、建物の取得価額について、売買契約書で売手買手が建物価額に合意した物件、売手保管の契約書上に建物価額の記載がないなど合意のない物件のいずれも、売買代金が建物価額に過剰に配分されているとして、売買代金を各固定資産税評価額の比で配分する更正処分をした。その後の再調査決定において、審査請求人提出の鑑定評価額の比による配分が認められたのは1物件のみであったため、審査請求人は不服審査請求を行った。国税不服審判所は、(建物の売買価額/土地の売買価額)の割合が、各固定資産税評価額を使った割合から大きく乖離しているから、客観的価値と比較し著しく不合理な配分である、売買価額の配分は原則として各固定資産税評価額の比、建物に収益性が認められる3物件は適正な鑑定評価額による比が合理的であると判断した事例である。(平成29年分ないし令和3年分所得税等の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分他、・一部取消し・令和6年11月14日裁決(非公開))【主な争点】本件各物件の建物等の取得価額の算定方法、具体的には、一括取得した建物土地の売買代金を合理的に各取得価額にあん分する方法。【裁決の要旨】「建物の売買価額を土地の売買価額で除した割合」と「建物の固定資産税評価額を土地の固定資産税評価額で除した割合」を比較すると、大きく乖離し、審査請求人が申告において算定したこれらの各物件の建物の取得価額は、いずれも売買代金総額から過剰に価額が配分されたというべきであり、そのような配分による土地及び建物のそれぞれの価額は、それらの客観的な価値と比較して著しく不合理なものと認められる。固定資産税評価額は、一定の基準時におけるその適正な時価を反映しているものであることからすれば、売買価額総額を土地及び建物の各固定資産税評価額の価額比によりそれぞれあん分して建物の「購入の代価」を算定することは、一般的に合理的な基準による算定であるといえる。ただし、本件各物件について、それぞれの個別事情を考慮した適正な鑑定が行われ、その結果、固定資産税評価額と異なる評価がされ、土地及び建物それぞれの価額比においても実質的な差異が生じた場合には、建物の「購入の代価」の算定に当たり固定資産税評価額による価額比を用いてあん分する合理性を肯定する根拠は失われているといえる。審査請求人から再調査審理庁に鑑定評価書の提出があった物件の「購入の代価」については、法定耐用年数経過後においても現在に至るまで継続的に利用されており、その収益性に係る経済的価値を認めることができるものであることからすると、これら各物件について、鑑定評価額あん分法により、その他の本件各物件の「購入の代価」については固定資産税評価額あん分法により、それぞれあん分して算定することとなる。固定資産税評価額あん分法は一般的に合理的な算定方法と認められることから、すべからく鑑定評価額あん分法で更正を行うべきという審査請求人の主張には理由がない。【参照条文】所得税法第49条《減価償却資産の償却費の計算及びその債却の方法》所得税法施行令第126条《減価償却資産の取得価額》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2026/09/14 税務レポート
贈与税の重要テーマ解説1(その贈与税の申告、贈与事実を確認しましたか)
【ポイント】贈与を受けた方は、受贈価額が110万円を超えた場合、期限までに申告と納税をしなければなりません。単純な贈与税の申告は難しいことではありませんが、贈与税は必ず相続税に繋がります。受贈者に対して贈与事実を明確にしておくこと等、年内にアドバイスをします。将来の禍根とならないために、基本を復習しましょう。【解説】1民法における贈与契約民法第3編第2章第2節第549条において「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」契約であるとしています。民法第3編第2章は「契約」を規定しています。財産を渡す人(贈与者)と受け取る人(受贈者)がお互いに了解の上(契約)で財産の移転が行われます。しかも、受贈者に対して対価を請求せず、無償であることが前提です。対価の授受がある場合は、もちろん譲渡となります。贈与とは、相手方に対して自己の財産を与える意思表示をする、諾成片務契約行為をいいます。つまりお互いに「この○○をあなたにあげましょう。」「はい、もらいましょう。」という了解があって初めて贈与契約が成立します。基本的に「諾成契約」ですが、下記の各契約が混在しています。「諾成契約」…契約当事者双方が合意に達すること「片務契約」…当事者の一方だけが相手方に対して何らかの債務を負っている契約のこと「無償契約」…契約当事者の一方の負担に対する対価を求めないこと「不要式契約」…要式を必要としないこと2贈与税の納税義務者贈与とは、何を指すのかは、相続税法に規定はありません。相続税法に規定のない概念は、民法によることから、贈与とは民法第549条の贈与のことを指します。贈与税の納税義務者とは誰のことをいうのでしょうか。相続税法第1条の4は贈与税を納める義務がある者(納税義務者)を規定しています。ここでは第1項及び第2項で「贈与により財産を取得した次に掲げる者」、また、第3項及び第4項で「贈与によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人」として贈与を受けた者が納税義務者であるとしています。例外と人格のない社団又は財団(相法66①)、持分の定めのない法人(相法66④)が受贈した場合に課税対象となることがありますが、贈与者が申告と納税をするのではないことを、しっかりと認識します。3贈与税申告の実態(1)原則財産の「贈与を受け」基礎控除110万円を超えた場合、贈与税の申告をしなければならないことは、常識でしょう。贈与税は、もらってうれしい税金です。現金預貯金等金融資産の受贈者は、棚からぼた餅状態で、使い道についてあれこれ想像が膨らみます。うれしいうちに申告と納税をすれば、200万円の贈与を受けても、税額が9万円ですから負担感は少ないでしょう。稀に申告を失念する人もいますが。(2)贈与者からの依頼長い間資産税に携わっていると、この贈与税の申告書は、贈与事実を確認しているだろうか、受贈者が依頼した申告書だろうか、と思う事例に数多く出会います。一端を紹介します。①贈与税の申告書を5件10件とまとめて提出する事例が多くあります。ほとんど税理士が作成し提出します。申告書をよく見ると、同一人から、配偶者子孫に対する贈与で、現金又は預貯金、金額、贈与月日が全く同じです。全く同じでも問題はありませんが、例えば、現金200万円の贈与があったとします。贈与者と住む地域がばらばらである子等に、同一日に贈与したとは考えられない。同一日に振込をしたのかもしれませんが、税理士は、贈与事実を確認したのだろうか、どうやって確認したのだろうか。もしかしたら、贈与者から依頼されてまとめて申告書を作成しているのではないか…という具合です。しかも前年も前々年も同一日に同一金額を贈与した申告事例も数多あります。贈与税の納税義務者は、受贈者です。まさか受贈者の知らないまま、贈与者の依頼に応じて贈与税の申告書を作成しているとは考えられませんが、本当に考えられないのか。納税はどうでしょう。200万円の贈与で9万円の贈与税を受贈者が、自分で納税しているでしょうか。まさか受贈者の知らないまま、贈与者が納税しているとは考えられませんが、本当に考えられないのか。そもそも、契約行為の当事者である相手方(贈与者)が、税理士に受贈者の申告依頼をして納税まですることが出来るのか、疑問に思わないかということです。例えば子、孫10人分200万円の贈与税の申告書を10年間提出したとしましょう。受贈者と称される人たちは、申告事実を知りません。知っていたとしても、受贈されたとする財産は手元にありません。合計で2億円の贈与となり、贈与税は900万円です。このような申告は、贈与者の相続が開始した時に表面化します。相続税の名義財産の認定です。受贈事実がない、贈与者が納税している、受贈財産は贈与者が一括管理している等の事実を証明すれば、相続財産として認定され追徴課税となります。その間コツコツと申告し、900万円を納税したことが水泡に帰します。②受贈者が知らないまま申告すると次のようなことが起こります。筆者の経験です。夫婦A及びBとその子2人の家族がいます。贈与税の申告書が4人分提出されました。贈与者はAの父から現金300万円でした。受贈者の整理をしていると、各人の贈与税の申告書がもう1枚ずつ出てきました。こちらはBの父から、非上場会社の株式の贈与400万円です。これも4人分です。どちらの申告書も税理士の署名があります。担当者が、Aに贈与税の申告書が2枚提出されている旨連絡します。Aは驚いて、贈与税の申告書なんか提出した覚えはない、と明確に答えます。このままでは申告書の処理ができないので、各父親に確認するよう伝えます。結果、両方の申告書を合併し、修正申告となります。税率が跳ね上がり、税額が増加します。これは、それぞれの税理士が、贈与者の意向を受け、贈与した事実を確認しないまま、受贈者に申告事実を知らせずに申告書を提出した典型例です。常識ではありえないように思われるかもしれませんが、実は何度もこのような事例に出会っています。ということは、ごく普通の状況なのかもしれません。③数年前に相続税の調査がありました。特に問題となるような案件ではなかったので、調査官に問題点は何かを尋ねました。調査官は、相続人である現社長が、平成15年に2,500万円の贈与を受け、相続時精算課税を選択して申告しているとのことでした。社長に確認したところ、贈与税の申告をした覚えは一切ない、まして相続時精算課税選択届出書(以下「選択届出書」)を提出したことはないので、申告書等の原本を見せて欲しいといいました。確認した結果、選択届出書の筆跡は社長のものではないということでした。税理士の署名がありました。平成15年に2,500万円の贈与を受けた事実はないかと社長に尋ねたところ、受贈された事実は認めたので、相続税の修正申告をして、事なきを得ました。(3)最後に贈与税は、知名度が高い割にはその実体を知らない人があまりに多いようです。税金のプロである税理士も同様です。「贈与税は申告さえしておけばいい」とのたまった税理士がいました。「申告さえしておけばいい」税目があるでしょうか。実体のない申告は、架空の申告となることを理解していないようです。参考となる裁決があります。「贈与税の申告は贈与税額を具体的に確定させる効力は有するものの、それをもって必ずしも申告の前提となる課税要件の充足(贈与事実の存否)までも明らかにするものではなく、贈与事実の存否の判断に当たって、贈与税の申告及び納税の事実は贈与事実を認定する上での一つの証拠とは認められるものの、贈与事実の存否は飽くまでも具体的な事実関係を総合勘案して判断すべきと解するのが相当である。」(裁決2007年(平成19年)6月26日TAINSF0-3-218)税金の申告は、取引の成立、申告要件の充足、納税者からの依頼、申告書の作成、納税者の了解、申告と納税の手順を踏みます。贈与事実を確認しない、納税義務者の了解を得ていない申告は、様々な問題をはらんでいます。提供:税経システム研究所
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2026/09/14 税務ニュース
厚生労働省「令和7年外国人雇用実態調査」の結果を公表
厚生労働省は8月31日、「令和7年外国人雇用実態調査」の結果を公表した。この調査は、外国人労働者を雇用する事業所における外国人労働者の雇用形態、賃金等の雇用管理の状況や当該事業所の外国人労働者の状況、入職経路、現在の雇用状況等についてその実態等を明らかにすることを目的として、令和5年から実施している。調査結果によると外国人労働者数は約204万人(前年約182万人)となっており、産業別では「製造業」が61万人(同約56万人)、「サービス業(他に分類されないもの)」が約33万人(同約32万人)、「卸売業、小売業」が約23万人(同約19万人)、「建設業」が約18万人(同約15万人)であり、上位4産業で全体の約2/3を占めている。外国人労働者の賃金については、「きまって支給する現金給与額」(※1)は292.4千円(前年274.9千円)、「所定内給与額」(※2)は258.4千円(同242.0千円)、「昨年1年間の賞与、期末手当等特別給与額」は281.1千円(同229.9千円)といずれも前年を上回る金額となっている。外国人労働者を雇用する理由については、「労働力不足の解消・緩和のため」が最も多く68.2%(前年69.0%)、次に「日本人と同等またはそれ以上の活躍を期待して」が56.2%(同54.7%)、「事業所の国際化、多様性の向上を図るため」が18.1%(同15.8%)、「日本人にはない知識、技術の活用を期待して」が14.1%(同13.2%)となっている。外国人労働者の雇用に関する課題については、「日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい」が最も多く46.2%(前年43.9%)、次に「在留資格申請等の事務負担が面倒・煩雑」が24.8%(同24.7%)、「文化、価値観、生活習慣の違いによるトラブルがある」が22.4%(同20.9%)「生活環境の整備にコストがかかる」が21.9%(同19.9%)となっている。外国人労働者の国籍・地域については、ベトナムが26.5%(前年32.4%)と最も多く、次に中国が14.7%(同14.7%)、フィリピンが10.5%(同10.5%)となっている。就労上のトラブルや困ったことの有無については「なし」が88.5%(前年86.9%)、「あり」が10.0%(同10.9%)となっており、トラブル内容については、「紹介会社の費用が高かった」が22.2%(同18.6%)、「トラブルや困ったことをどこに相談すればよいかわからなかった」が15.8%(同14.9%)、「事前の説明以上に高い日本語能力を求められた」が11.9%(同8.8%)となっている。転職又は追加就業等の希望については、「今の会社の仕事を続けたい」が最も多く81.2%、「今の会社の仕事をやめて、日本国内で別の会社の仕事に変わりたい」が6.1%、「今の会社の仕事を続けながら別の会社の仕事もしたい」が5.3%となっている。調査は、雇用保険被保険者5人以上で、外国人労働者を1人以上雇用している全国の事業所とその事業所に雇用されている外国人常用労働者を対象としており、抽出した9,016事業所のうち回答を得られた3,919事業所及び14,248人の調査結果をとりまとめている。(※1)労働契約、労働協約、就業規則等によって定められている支給条件、算定方法に基づき、毎月決まって現金で支給される給与額で、9月分として支給された現金給与額(※2)「きまって支給する現金給与額」のうち、超過労働給与額を差し引いた額で、所得税等を控除する前の額(参考)「令和7年外国人雇用実態調査」の結果を公表しますhttps://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75722.html
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2026/09/11 商事法レポート
役員および主要株主の短期売買差益提供制度と売買報告書制度について −近時のアメリカの立法による日本企業への影響も含めて
1はじめに金融商品取引法(以下、「金商法」とします)164条は、上場会社等の役員または主要株主(ここでの主要株主は、原則として「自己又は他人の名義をもって総株主等の議決権の100分の10以上の議決権を保有している株主」をいいます。金商法163条1項参照)が、当該上場会社等の特定有価証券(株券や社債券などが含まれます)等を6か月以内に売買して利益を得た場合に、その利益を当該上場会社等が自らに提供するよう請求できる旨を定めています。このような制度(以下、「短期売買差益提供制度」といいます)を金商法が定めている趣旨については、条文上の文言によれば、役員または主要株主が「その職務または地位により取得した秘密を不当に利用することを防止するため」とされており(同条1項参照)、概ねインサイダー取引の防止にあるといえます。加えて、この短期売買差益提供制度を実効的にエンフォースするべく、上場会社等の役員または主要株主が、自己の計算で特定有価証券等の買付等または売付等をした場合に、翌月の15日までに売買報告書を内閣総理大臣(実務的には財務局長となります。有価証券の取引等の規制に関する内閣府令(以下、「取引規制府令」といいます)29条2項・3項参照)に対して提出すべきとされています(金商法163条、金融商品取引法施行令43条の10第1項。以下、こうした制度を「売買報告書制度」といいます)。なお、売買を金融商品取引業者等に委託して行った場合には、当該業者を経由して売買報告書を提出することとされており(金商法163条2項)、いずれにしても行政当局が個々の役員および主要株主の取引の動向を継続して捕捉できる体制も採られています。こうした短期売買差益提供制度および売買報告書制度において、(ⅰ)売買報告書の提出義務が、インサイダー取引の疑いの有無を問わず、個々の売買等という客観的事実のみによって発生し、そして(ⅱ)利益提供義務も、取引者の主観的意図や情報の不当利用の事実の立証を要せず、6か月以内の反対売買という外形的取引パターンが捕捉されさえすれば発生するとされ、「客観的・形式的な」義務または責任として設計されているのは、この制度の母法であるアメリカの制度に倣ったものです(後述3参照)。以下、本稿では、こうした短期売買差益提供制度と売買報告書制度についてもう少し詳しくみていくとともに、近時、両制度をとりまく形でアメリカ市場に上場しているわが国の会社関係者に起こっている問題について言及したいと思います。2短期売買差益提供制度の詳細(1)役員・主要株主が支払うべき利益額の算定方法短期売買差益提供制度における1つの大きな技術的な問題は、支払われるべき利益額の算定です。この点、取引規制府令34条1項は、6か月以内に行われた売買等のうち、数量の小さい方(売買合致数量)を基準として、売付け等の価額から買付け等の価額を控除した額から、当該売買合致数量に対応する手数料相当額を差し引いた額を利益額とする旨を定めています。複数回にわたる売買等が行われた場合の組み合わせ方法についても、取引規制府令34条2項が先入先出法、すなわち、最も早い時期に行われた売買等から順次売買合致数量(売付け等の数量と特定有価証券等の買付け等の数量のうちいずれか大きくない数量をいいます。同条4項参照)に達するまで割り当てる方法を採用するとしており、同一日に複数の売買等が行われた場合については、最も単価の低い買付け等と最も単価の高い売付け等から順次組み合わせるものとしています。加えて、ある売買等のうち売買合致数量を超えた部分については別個の売買等とみなし、さらに6か月以内の間隔で行われた対応取引との組み合わせを繰り返して利益を算定していくとしています(同条3項)。このように、利益額の算定は機械的に行われますので、結果として、役員または主要株主が実際に得た経済的利益額と算定された利益額とは必ずしも一致しない可能性が高いといえます。ただ、その点は別に構わないとされています。なぜなら、短期売買差益提供制度は、内部者の短期売買とそれによる利益の獲得、そして何よりもインサイダー取引を抑止するということが目的であるためです。(2)短期売買差益提供制度のエンフォースメント次に、短期売買差益提供制度のエンフォースメントの局面における特徴として、その執行過程において行政(財務局)が能動的に関与する仕組みが採られている点が挙げられます。まず、財務局長は、売買報告書の記載内容から役員または主要株主が短期売買利益を得ていると認められる場合に、利益関係書類(写)を当該役員または主要株主に送付します(金商法164条4項)。送付を受けた役員または主要株主は、受領日から起算して20日以内に、関東財務局長に対して当該書類に記載された売買等を行っていない旨の申立てをすることができ(同条5項、取引規制府令31条)、申立てがなされた部分については、報告された売買がなかったものとみなされます(同条6項)。他方、当該役員または主要株主から申立てがなされず、かつ、発行会社への任意の利益提供がなされたことも確認できない場合、「利益関係書類(写)」が当該上場会社等に送付され(同条4項)、さらに、送付から30日以内に会社への利益提供が確認できないときは、当該書類の写しが関東財務局に備え置かれ、公衆の縦覧にも供されます(同条7項、取引規制府令32条。ただし、この縦覧はEDINETでは行われず、関東財務局での紙面の縦覧に限られます)。縦覧期間は利益取得日から2年間とされています(【図1】参照)。【図1売買報告書の提出から公衆縦覧までの流れ】財務省関東財務局理財部統括証券監査官『「役員及び主要株主の売買報告制度」と「短期売買利益の提供制度」について(注1)』16頁より上記のプロセスは、私法上の請求権(会社の役員・主要株主に対する利益提供請求権)の行使について、行政機関による確認・通知・公示という一種の準司法的な手続を介することにより、実効性を高めているといえます。なお、会社が株主からの請求後60日以内に利益提供請求権を行使しない場合、(公衆の縦覧によって事実を知った)株主は会社に代位して同請求権を行使することができるとされています(金商法164条2項)、株主代表訴訟に類似した代位請求制度も用意されています。(3)違反に対する制裁売買報告書を提出しなかったり、または虚偽の記載をした売買報告書を提出した者、そして虚偽の申立てをした者には、6か月以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金(併科可)が科されます(金商法205条19号、164条5項、165条の2第1項、第2項、第10項)。また、法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者が業務に関してこれらの違反行為を行った場合には、行為者本人に加えて当該法人にも罰金刑が科される両罰規定も置かれています(金商法207条1項6号)。もっとも、これらの罰則が対象としているのはあくまで報告義務違反または虚偽の申立てであって、短期売買それ自体を犯罪として処罰するものではありません。短期売買差益提供制度の本体である利益の提供義務は、あくまでも私法上の請求権として構成されており、その履行を確保するための情報開示や行政が関与するプロセスにおいて違反行為があった場合にのみ、刑事罰が科されるという制度設計となっています。(4)短期売買差益提供制度に関する事案これまでの短期売買差益提供制度に関する公表裁判例は多くはありません。主要株主が約2,018万円の差益を得た事案において、上場会社等の役員・主要株主がその職務または地位により取得した秘密を不当に利用したことや一般投資家に損害が発生したことは、短期売買差益提供制度を適用するための要件ではないとし、また、同制度は憲法29条に定める財産権の侵害にも当たらない旨を判示した2002年の技研興業株式会社事件(注2)と、2024年の東京機械製作所事件(注3)2件があるくらいです。東京機械製作所事件についてもう少し詳しく述べますと、この事件は、経営権取得を目的に同社の株式を40%弱買い集めた主要株主が、日本証券金融会社が貸借取引の申込停止措置により現引き(信用取引における買い建玉を決済する際に、証券会社から借り入れた資金を返済したうえ、購入代金や金利などの諸経費を全額現金で支払って、現物株式として自分の手元に引き取る方法)にかかる制度の利用が不可能であった状況の下で、保有株式の現物化のために信用取引における買い建玉を返済売りし(本件売付け)、それと同時に同数・同額の現物買い(いわゆるクロス取引)を行ったところ、本件売付けによって主要株主が短期売買による利益を得たとして、会社がその支払いを請求したという事案でした。主要株主側は、本件取引はクロス取引であって、株式の実質的な帰属が変化するものではなく、また自らは利益を得ていないとして短期売買差益提供制度の適用を否定する旨の主張をしました。こうした主張に対し、裁判所は、金商法164条9項に定められ、また、前掲平成14年最判が認められるとした解釈によって認められる類型的適用除外取引に本件取引が該当するか否かの判断においては、取引に関する個別的事情や取引主体の主観的事情(目的・動機)を考慮することは許されないとし、非任意性を客観的・一般的事情によって判定する立場を明示したうえで、主要株主側に19億4300万円余りの支払いを命じました。また、判例ではありませんが、短期売買差益提供制度を潜脱した可能性のあるケースもあります。2024年のダイドーリミテッド事件では、議決権の約32%を保有する運用会社が投資一任契約に基づいて運用していたことから、「自己の計算」による売買には当たらないと考えられ、また名義上の株主であった信託銀行も主要株主に該当しないと考えられる状況のもとで、短期売買差益提供制度に基づく請求の可否が問題とされましたが、取引規制府令24条1号が「信託業を営む者が信託財産として所有する株式」を主要株主該当性の判定の基礎となる議決権から除外していることもあり、断念されたようです。そもそも、わが国の現行制度の下では、短期売買差益提供制度および売買報告書制度の運用状況が外部から観測しにくい状況にあります。たとえば、財務局が「利益関係書類(写)」を上場会社等に送付した後、30日以内に任意に利益提供がなされない場合でなければ、同写しは公衆縦覧に付されません(前掲【図1】参照)。また、その公衆縦覧もEDINETを介する形では行われません(本章2(2)参照)。この点、後述するように、アメリカではわが国の売買報告書にあたるForm4等がEDGARを通じてすべて情報開示されているのと対照的です。また、日本では、利益の提供事案の実態を把握する手段も事実上存在していません。このように、表に出ている事案の少なさも相まって、わが国では、制度の実効性という観点から複数の問題があるといえます。3アメリカ法の状況(1)概要アメリカでは、1934年証券取引所法16条が、3つの規律を置いています。すなわち、(a)項で上場会社等の役員(officer)、取締役および10%超の株式等を保有する者らについて株式等の取引に関する報告義務を定め、(b)項で6か月以内の短期売買から得た利益の発行会社への吐出しについて定めるとともに、(c)項が、(a)項に定める者らによる空売りを禁止する旨を定めています。重要なのは、これらが独立した3つの制度ではなく、相互に関係し合っているという点です。まず、(a)項の報告は、その内容がEDGAR(アメリカにおいて上場している会社やその関係者等が、SEC(証券取引委員会)に提出が義務付けられている書類を、自動収集・確認・分類・受理等するためのシステム(注4))を通じて投資者にも開示されることになっています。また、(a)項の報告は、(b)項の吐出し請求を成り立たせる事実上の基礎にもなっています。すなわち、誰がいつ何株売り買いしたかが公開されなければ、6か月以内の対向取引を特定して利益を計算することはできません。EDGARでの開示を通じて(b)項の責任を果たさせる——この関係がアメリカの制度の幹となっているといえます。こうした構造それ自体は、上述した日本の金商法163条と164条に共通しています。なぜなら、日本の規定はもともとアメリカ法をほぼそのまま継受したものであり、報告義務が吐出し請求権の実効性を担保するという設計思想は同一のものだからです。とはいえ、以下に述べるように、両国の制度には決して小さくはない差異もみられています。(2)報告の書式(a)項が要求する報告は、以下のForm3・4・5という3つの書式に従って行われます。①Form3:いわゆる当初報告です。就任時または対象者となった時点における保有状況を報告するものであり、取引に関する記載欄は設けられていません。②Form4:制度の中核をなす書式です。報告義務者が持分証券の売買を行った場合、当該取引の執行日の翌々営業日の終了までに提出しなければなりません。SECは、提出がなされた翌営業日終了までにこれを公衆がアクセス可能なサイトに掲載する義務を負い、発行会社もまた、企業ウェブサイトを有する場合には同期限までに当該書式を掲載し、12か月以上アクセス可能な状態を維持しなければなりません。このForm4により取引主体、取引日、数量および価格が、事実上ほぼ即時に開示される仕組みとなっています。③Form5:いわゆる年次報告です。事業年度終了後45日以内に提出します。小規模な取得や既往の報告漏れを事後的に補完することを目的としています。なお、以上の16条(a)の報告義務違反に対しては、SECによる行政上のエンフォースメントが行われることがあります。2024年9月25日には、Schedule13D/GおよびForm3・4・5の遅延提出につき、23の法人・個人の責任が問われ、SECが課した制裁金総額は380万ドルを超えた旨が公表されました。また、同種のエンフォースメントは2014年、2015年、2020年、2023年にも実施されたとのことです(注5)。(3)報告義務の対象者(a)項の報告義務の対象者についてもう少し詳しくみてみますと、①12条に基づき登録された持分証券の10%超の実質的所有者、②発行会社の取締役、③役員です。加えて、後述するように、近時では、外国民間発行体(FPI)の取締役と役員も対象に加えられました。なお、「役員(officer)」は肩書きではなく機能で決まります。社長・最高財務責任者、主要部門を統括する副社長のほか、「政策決定機能を果たす(performsapolicy-makingfunction)」者が広く含まれ、親会社や子会社の役員であっても、当該発行会社のために政策決定機能を果たしている場合は役員とみなされます(注6)。こうした点は、地位によって形式的に画される日本法での「役員」(基本的には、会社法329条1項所定の取締役・会計参与・監査役、そして執行役を基礎としています)とは異なっています。また、①の「実質的所有者(beneficialowner)」については、まず、10%超か否かについての判定において1934年証券取引所法13条(d)における基準−議決権または投資権限(株式の取得、保持、売却を決定・指示できる権限)の有無−が用いられています。次に、実際に報告すべき保有数量や異動の算定については、「金銭的利益(pecuniaryinterest)」基準が用いられます(注7)。ここで、金銭的利益とは、当該証券の取引から生じる利益を得または共有する機会がある場合のことをいい、同一世帯の近親者による保有、パートナーシップにおけるゼネラル・パートナーの比例的持分、信託を通じた持分、デリバティブの行使により株式を取得する権利などをもつ場合も間接的に同利益を得ているとして「金銭的利益」を得ているとみられます。そして、わが国と決定的に異なっているのが「合算」についてです。10%超にあたるか否かの判定において、わが国におけるところの大量保有報告書制度の対象者について定める13条(d)を用いる結果、共同保有者(group)の保有分も合算されることになっています。たとえば、13条(d)(3)は、二人以上の者が、発行会社の証券を取得・保有・処分する目的で、パートナーシップ、リミテッド・パートナーシップ、シンジケートその他のグループとして行動する場合、当該グループを1個の「者」とみなすと定めています。グループの認定に際して書面の合意は要らず、共同行動の合意が事実上認められれば足りるとされています(注8)。その結果、各人の保有が単独では10%超に満たなくとも、グループとして合算した結果10%を超えれば、構成員の各人が16条各項の対象となる「主要株主」となり得ます。もっとも、わが国とアメリカの差異は、合算の有無にとどまりません。判定の物差しそのものについても違いがあります。すなわち、米国では、上述のとおり、10%超か否かの判定に13条(d)にある基準を用いており、これは大量保有報告制度と共通の物差しです。これに対し、わが国では、旧証券取引法の平成13年改正により、「主要株主」の判定基準が、それまでの持株数基準から議決権基準へと改められました。その結果、株券等保有割合を基礎とする大量保有報告制度の「保有」概念と、短期売買差益提供制度の「主要株主」概念とは、別の物差しで測られることとなり、両制度の間に乖離が生じています。とりわけ、2026年5月1日に施行された大量保有報告制度の改正により(金商法27条の23第3項3号参照)、現金決済型デリバティブに対しても従来と比較して広く同制度が適用されることとなった結果、両制度の乖離はいっそう際立つこととなりました。たとえば、短期売買差益提供制度および売買報告書制度においては、議決権基準により、エクイティ・デリバティブを用いて実質的にはいつでも10%以上の株式を取得し得る状態にある者であっても、あくまでその時点では議決権を保有していないため、制度の対象とはならないことになります。なお、一般に、アメリカでは、アクティビストの株式取得割合は10%未満にとどまるといわれていますが、その要因として、ポイズン・ピルのトリガー割合、各州の支配株主に課される法規範等、そして、16条(b)の短期売買差益提供規制の適用に対する考慮が挙げられています(注9)。4HFIAAによる適用対象の外国民間発行体への拡張−わが国への影響2025年12月18日、HoldingForeignInsidersAccountableAct(以下、「HFIAA」といいます)が成立し、同日から90日後の2026年3月18日に施行されました(注10)(なお、同法は国防授権法(NationalDefenseAuthorizationAct)の一部(第8103条)として制定されたものであり、証券規制に関わる単独の立法ではありません)。このHFIAAが証券規制に関して行った改正は、極めて限定的なものです。すなわち、同法は16条(a)項を改正し、外国民間発行体(foreignprivateissuer、以下「FPI」といいます)の取締役および役員を原則として同項の報告義務者に加えることとしました(FPIの株式等の10%超の保有者は除外されています)。これにより、簡単に言いますとアメリカの市場に上場している日本を含む外国企業の取締役等が、同項の報告義務者に加えられたことになります。他方で、HFIAAは、16条(a)(5)項を新設し、SECに対し、外国法域の法が取締役および役員、証券および取引等に対し、「実質的に類似する要件(substantiallysimilarrequirements)」を適用しているとSECが判断した場合は、規則、規制または命令によって、条件付きまたは無条件で16条(a)項の要件を免除する権限を付与しています。その後、SECは、2026年3月5日にこの権限を行使し、免除命令を発しました(注11)。同命令は、(イ)「適格法域(qualifyingjurisdiction)」において設立または組織され、かつ、(ロ)「適格規制(qualifyingregulation)」に服するFPIの取締役および役員を、16条(a)項の報告義務から免除するというものです。当初の適格法域は、カナダ、チリ、欧州経済領域(theEuropeanEconomicArea:27のEU加盟国にアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーを加えた国で構成されます)、韓国、スイスおよび英国の6法域でしたが、2026年5月20日の追加命令により、オーストラリア、インドおよびシンガポールが追加されていました(注12)。注目すべきは、SECが各法域の制度を「適格規制」と認定するにあたって用いた基準です。命令の内容を整理すると、次の5点に分解できます。対象者が、当該発行体の取締役および役員(executives)を含むこと初期保有および実質的所有の変動を、速やかに(promptly)報告すべきものとされていること報告内容に、証券の種類、取引の性質、価格および数量が含まれること当該報告が一般公衆に利用可能とされること(madeavailabletothegeneralpublic)適格規制に基づいて提出された報告が、その公表後2営業日以内に英語で一般公衆に利用可能とされること現に、韓国については、資本市場法(FinancialInvestmentServicesandCapitalMarketsAct)173条および同法施行令200条につき、SECはそれらを、取締役および執行役員が初期保有および実質的所有の変動を速やかに報告すべきこと、報告に証券の種類・取引の性質・価格および数量が含まれること、ならびに当該報告が一般公衆に利用可能とされることを要求する制度として評価しています。また、他の法域についても、カナダのNationalInstrument55-104、EUおよび英国の市場阻害行為規則(MarketAbuseRegulation)、スイス取引所の上場規則、インドのSEBIインサイダー取引禁止規則などについて、いずれも同一の基準で審査しています(注13)。他方で、日本については、本稿執筆時点において、いずれの命令においても適格法域として指定されていません(注14)。このように、日本が適格法域として認められていない理由について、SECの命令や関連する文書では明らかにはされていません。考えられるとすれば、163条に基づく売買報告書の報告が原則として財務局にとどまるものであり、提出の期限も「翌月15日まで」とされ、そして何よりも、その後の公衆縦覧が、①短期売買利益が認定され、②20日以内に否認の申立てがなく、③会社への利益提供も確認できず、④さらに30日が経過した場合に限定されるとともに、縦覧の態様も、紙面の「利益関係書類(写)」の縦覧が財務局内で行われるにとどまっていることにあるように思われます。これらがSECの要求する「2営業日以内・英語で・一般公開」という基準を満たしていないことは明らかであり、この点が考慮されたと考えるのが自然であるように思われます。この結果、2026年3月18日、三菱UFJフィナンシャル・グループ、トヨタ自動車、武田薬品工業、日本郵政、三井住友フィナンシャルグループをはじめとする日本の主要企業の取締役らは、SECのEDGARシステムに向けて、英語でForm3(保有状況報告書)を提出するに至っています。実際、筆者がEDGARを通じて確認したところ、同日から2026年7月22日までの間に、日本を拠点とする16社について、Form3が217件、Form4が220件、合計437件提出されており、会社の内訳を見てみますと、三菱UFJ93件、トヨタ83件、武田薬品64件、みずほ51件、日本郵政47件と大企業が上位を占めていました。また、16社すべてがHFIAAの施行日である3月18日にForm3を揃えて提出していました(注15)。5おわりに本稿では、金商法上の短期売買差益提供制度および売買報告書制度の趣旨、仕組みおよびエンフォースメントについて概観したうえで、その母法であるアメリカ1934年証券取引所法16条との比較、さらには2025年のHFIAAによるFPIの取締役や役員への報告義務の拡張と、それに伴うSECの適格法域指定において、わが国が除外されている状況について紹介してきました。このうち、SECによる適格法域指定においてわが国が除外されたことは、単なる立法技術上の偶然ではなく、わが国の制度が抱える構造的な課題を図らずも顕在化させたものと捉えることができるように思われます。以下では、本稿の検討から浮かび上がる課題を、太田洋弁護士による近時の論稿も踏まえながら、2点に絞って述べたいと思います。第1に、売買報告書の開示のあり方です。アメリカでは、Form3・4・5がEDGARを通じて取引の執行から最長でも3営業日というスピードで一般に公開され、これが16条(b)の利益吐出し責任を機能させる事実上の基盤となっています。これに対し、わが国では、売買報告書それ自体が公衆縦覧に付されることは原則としてなく、財務局が短期売買利益の取得を認め、20日以内に否認の申立てがなく、かつ送付から30日以内に会社への任意の利益提供もなされなかった場合に、初めて紙面としての「利益関係書類(写)」が公衆縦覧に供されるにすぎません。太田弁護士も、売買報告書制度の導入から約38年が経過しているにもかかわらず、上場会社の株価や投資家の投資判断に大きな影響を与える主要株主の変動が、売買報告書の公衆縦覧を通じて一般に開示されていない現状を不合理であると評し、少なくとも主要株主の売買報告書についてはすべて公衆縦覧の対象とすべきであると提言しています(注16)。本稿の4でみたとおり、HFIAAに基づく適格規制の認定基準は、報告が一般公衆に利用可能であること、および2営業日以内に開示されることを明示的に要求しており、わが国の現行制度がこの基準を満たし得ないことは明らかです。そのため、売買報告書の開示のあり方については、投資家保護の観点からはもとより、国際的な文脈においても、早急に見直されるべき課題であるといえます。現状では、同一の日本企業の取締役が、アメリカ市場では取引執行後2営業日以内にForm4を提出し、遅くとも3営業日以内にはEDGARで氏名・取引日・数量・価格が英語で公開される一方で、日本国内では同じ人物の同種の取引が原則として公衆縦覧の対象にすらなっていません。HFIAAの施行により、こうした非対称が現実の事象として顕在化しました(本稿4でみた437件の提出はその象徴といえます)。第2に、短期売買差益提供制度および売買報告書制度における報告義務者の範囲、とりわけ共同保有者概念の不存在です。わが国の「主要株主」概念は、大量保有報告規制とは異なり、共同保有者による保有分の合算を予定していません。実際、複数の投資主体が実質的に協働しながら、それぞれの議決権割合を10%未満にとどめることで、短期売買差益提供制度の適用を意図的に回避しているのではないかと疑われる事例が散見されます。太田弁護士の論稿によりますと、2023年のYFOグループによる東洋建設株式大量取得事例でも、共同保有者である4つのエンティティの株券等保有割合は、それぞれ9.75%、9.74%、6.24%、2.78%(合計28.51%)にとどまっていました(注17)。アメリカでは、1934年証券取引所法13条(d)の共同保有者(group)概念により、複数の者が共同して株式を取得・保有・処分する場合には合算して10%基準の該当性が判定されるため(本稿3(3)参照)、こうした潜脱は生じにくくなっています。太田弁護士は、この点についても、米国の制度と平仄を合わせるべく、わが国においても「主要株主」該当性の判定に際して共同保有者による保有分を考慮すべきであるとし、あわせて、大量保有報告書制度と整合を図るべく、平成13年改正以降用いられている議決権基準を持株数基準に戻し、「保有」概念についても大量保有報告規制のそれと揃え、さらには、エクイティ・デリバティブによるポジションの積み上げについても規制を及ぼすべきであると提言しています(注18)。私見も、この方向性には基本的に賛成です。以上の2つの課題は、実は根っこの部分でつながっています。共同保有者の保有分が合算されない結果、複数のアクティビストが協調しながら10%未満の持分にとどめて短期売買差益提供制度の適用を免れることが可能となっている一方、その取引の全容は、開示制度の不透明性ゆえに、事後的にも十分に捕捉されません。アメリカでは、アクティビストの株式取得割合が10%未満にとどまる一因として16条(b)の存在が指摘されていますが(本稿3(3)参照)、わが国では、報告義務者の範囲の狭さと開示における不透明性という2つの制度上の問題が相まって、そうした抑止機能がほとんど働いていないのではないかと思われます。近時、わが国において20%から40%程度、あるいはそれ以上の大量の株式取得を伴う非通例的な株主アクティビズムの事例が目立っていることの一因は、こうした点にも起因しているように思われます。もっとも、以上の問題については、経済産業省「公正な買収の在り方に関する研究会」でも、短期売買差益提供制度が導入から約40年もの間、実質的な改正を経ていないことに対する問題意識がすでに示されており(注19)、制度見直しの機運は徐々に高まってきているように見受けられます。今回のアメリカでのHFIAAの施行とわが国の適格法域からの除外は、こうした国内の議論を後押しする一つの契機とすべきように思います。<注釈>同資料は、https://lfb.mof.go.jp/kantou/content/000165705.pdfより入手可能です。最大判平成14年2月13日民集56巻2号331頁。東京高判令和6年7月31日金融・商事判例1705号18頁。SEC,EDGAR—SearchFilings,https://www.sec.gov/search-filings(2026年8月2日閲覧).SEC,SECLeviesMoreThan$3.8MillioninPenaltiesinSweepofLateBeneficialOwnershipandInsiderTransactionReports(PressRelease2024-148),https://www.sec.gov/newsroom/press-releases/2024-148:BarbaraBaksa,SECEnforcementofSection16Reporting(2023),https://www.naspp.com/blog/section-16-reporting-enforcement(2026年8月2日閲覧).17C.F.R.§240.16a-1(f).17C.F.R.§240.16a-1(a)(1)–(2).15U.S.C.§78m(d)(3);17C.F.R.§240.13d-5.MiraGanor,ToeholdCollaborationsBeyondInsiderTrading,14N.Y.U.J.L.&Bus.187,194,201-02(2017).また、太田洋「わが国短期売買差益提供規制の課題と改正の方向性−levelplayingfield確保の観点から」商事法務2425号(2026年)27-30頁。HoldingForeignInsidersAccountableAct,Pub.L.No.119-60,§8103(Dec.18,2025)(15U.S.C.§78p(a)を改正).OrderGrantingDirectorsandOfficersofCertainForeignPrivateIssuersanExemptionfromtheFilingRequirementsofSection16(a)oftheExchangeAct,ExchangeActReleaseNo.34-104931(Mar.5,2026).OrderGrantingAdditionalDirectorsandOfficersofCertainForeignPrivateIssuersanExemptionfromtheFilingRequirementsofSection16(a)oftheExchangeAct,ExchangeActReleaseNo.34-105517(May20,2026).SEC,HoldingForeignInsidersAccountableAct:Section16(a)ReportingRequirements,https://www.sec.gov/about/divisions-offices/division-corporation-finance/holding-foreign-insiders-accountable-act-section-16a-reporting-requirements(最終更新2026年5月20日、2026年8月2日閲覧).なお、同ページでは、承認済みの免除命令と免除が認められた法域が一覧の形で掲載されています。前掲注⑾・⑿参照。本稿における日本を拠点とし、アメリカで上場している企業等16社に関するForm3・4の提出状況についての集計は、筆者が開発したPythonツールedgar-form345を用いて、SECEDGARのSubmissionsAPI(https://www.sec.gov/search-filings/edgar-application-programming-interfaces)から機械的に取得したデータに基づいています。この点について説明するうえで、EDGARに関連する基本概念について簡単な説明を加えておきます。CIK(CentralIndexKey)とは、SECがEDGARに登録するすべての発行体・個人(役員・主要株主等)に対して付与する一意の番号であり、日本法における法人番号に類する識別子です。Form20-Fは、外国民間発行体(ForeignPrivateIssuer)が米国内国発行体のForm10-Kに相当するものとして提出する年次報告書であり、Form6-Kは、外国民間発行体が本国で開示した重要事実等を米国市場にも随時報告するための臨時報告書です。いずれも、当該発行体が米国市場において継続的に開示義務を負う存在であることを示す指標として利用可能です。以上を踏まえ、筆者が行った具体的な集計手順は次のとおりです。①まず、EDGARの企業検索機能(browse-edgar)を用いて、所在地コードM0(Japan)に該当する発行体を、Form20-Fおよび6-Kの提出履歴から列挙しました。②次に、列挙された各発行体のCIKについて、提出済み書類一覧のうちForm3・4・5(本文で述べた保有状況報告書、異動報告書および年次報告書)を、HFIAA施行日(2026年3月18日)以降に絞り込んで集計しました(集計対象は2026年7月22日時点のデータです)。なお、以上の方法についてはいくつかの限界もあると考えます。第1に、発行体の「所在地」(businessaddress)と「設立準拠法国」(stateofincorporation)は別概念であり、後者はSECのsubmissions.jsonのstateOfIncorporationフィールドの記載に依存しています。しかし、このフィールドを欠く発行体も存在します(本稿の対象では、三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、武田薬品工業、MEGACHIPSCorp、SoftBankGroupCorpの5社についてそうした欠落が確認されました)。このうち三菱UFJ、みずほおよび武田薬品の3社については、Form20-Fの提出実績により当該CIKを確認できており、日本を設立準拠法国とする外国民間発行体であることが独立に裏付けられました。他方、MEGACHIPSおよびソフトバンクの2社については、当該CIKに20-F、10-Kまたは40-Fのいずれの提出履歴も見当たりませんでしたが、両社の企業ウェブサイト(IR情報等)を確認したところ、いずれも日本法に基づいて設立された会社であることを確認しました。したがって、本稿の対象16社は、SECに提出されたデータまたは各社の公表情報のいずれかによって、すべて日本を設立準拠法国とする発行体であることが確認されています。第2に、所在地コードに基づく発行体の列挙は網羅的ではありません。Form20-Fまたは6-Kのいずれも提出履歴がない発行体(同一企業グループ内で、16条に関する報告用のCIKと年次報告書提出用のCIKとが別個に管理されている場合等)は、この方法では捕捉されない可能性があります。MEGACHIPSおよびソフトバンクの2社については、当該CIKに年次報告書の提出履歴が見当たらなかった理由は、本稿の調査の限りでは確定できておらず、今後の検証課題としたいと考えています。もっとも、この点はForm3・4・5の提出件数の集計自体には影響しないと考えます。なお、本文の情報を収集・解析するために筆者が開発したツールのソースコードおよび使用したバージョンは次の通りであり、誰でも入手可能な形で公表しています。MunehisaWada,edgar-form345:APythonToolforRetrievingandParsingSECEDGARSection16(a)OwnershipReports(Forms3,4,5),Version1.0.0(Jul.31,2026),https://doi.org/10.5281/zenodo.21718664.太田・前掲注⑼33頁。太田・前掲注⑼31頁。太田・前掲注⑼32-33頁。太田・前掲注⑼19-20頁、経済産業省「公正な買収の在り方に関する研究会」第9回(2026年2月4日)議事要旨33頁〔武井一浩委員発言〕。提供:税経システム研究所
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2026/09/11 税務レポート
消費税の納税義務判定のポイント解説(第30回) 登録の経過措置と簡易課税制度選択届出書の提出に係る特例
1.登録の経過措置とは登録の経過措置とは、免税事業者が適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録を受ける場合に、登録を受けた日(以下「登録日」といいます。)から課税事業者となることができる措置をいいます(28年改正法附則44④、消基通21ー1-1)。免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、原則として、「課税事業者選択届出書」を提出する必要があります。ただし、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に、この登録の経過措置により登録を受ける場合には、「課税事業者選択届出書」を提出する必要はなく、「適格請求書発行事業者の登録申請書」の提出のみで手続を行うことができます。2.登録の経過措置と「簡易課税制度選択届出書の提出に係る特例」の関係簡易課税制度の適用を受けようとする場合には、原則として、その適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに、「簡易課税制度選択届出書」を提出しなければなりません(消法37①)。つまり、「簡易課税制度選択届出書」は、原則として、簡易課税制度の適用を受けようとする課税期間の開始前に提出する必要があります。ただし、登録の経過措置により適格請求書発行事業者となる事業者については、「簡易課税制度選択届出書」の提出に関して特例が設けられています。具体的には、登録日の属する課税期間中に、その課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した「簡易課税制度選択届出書」を提出した場合には、その課税期間の初日の前日に届出書を提出したものとみなされます(改正令附則18)。これにより、「簡易課税制度選択届出書」は事前に提出したものとして取り扱われるため、実際に届出書を提出した課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができます。これを「簡易課税制度選択届出書の提出に係る特例」といいます。3.「簡易課税制度選択届出書の提出に係る特例」に係る令和8年度税制改正「簡易課税制度選択届出書の提出に係る特例」には、登録の経過措置により登録を受けた場合のほか、2割特例及び3割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間に簡易課税制度を適用する場合についても、特例が設けられています。令和8年度税制改正では、このうち「2割特例及び3割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間」に係る「簡易課税制度選択届出書」の提出期限が見直されました。以下、【図1】【図2】では、課税期間が1月から12月までの個人事業者を前提に解説します。(1)2割特例・3割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間2割特例及び3割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間に簡易課税制度の適用を受ける場合には、改正前は、その翌課税期間中に、「簡易課税制度選択届出書」を提出する必要がありました。これに対し、改正後は、提出期限が「翌課税期間に係る確定申告期限まで」に延長されました。これにより、翌課税期間に係る確定申告期限までに「簡易課税制度選択届出書」を提出すれば、その翌課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができることとされました(28年改正法附則51の2⑥、51の3⑤)【図1】。例えば、令和7年分(令和7年1月1日から同年12月31日までの課税期間)に2割特例の適用を受けた個人事業者が、令和8年分(令和8年1月1日から同年12月31日までの課税期間)から簡易課税制度の適用を受ける場合、改正前の提出期限は令和8年12月31日でした。これに対し、改正後は、個人事業者であれば、令和9年3月31日(令和8年分の消費税の確定申告書の提出期限)までに提出すればよいこととなります。そのため、令和8年分の確定申告書と「簡易課税制度選択届出書」を同時に提出することが可能となります。この改正は、2割特例又は3割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間が、令和8年10月1日以後に終了する課税期間である場合に適用されます(改正法附則1三、90①)。したがって、翌課税期間が令和8年9月30日以前に終了する場合には、従前の取扱いとなります。(2)登録の経過措置により登録を受けた場合の登録日の属する課税期間登録の経過措置により登録を受けた場合の、登録日の属する課税期間に係る「簡易課税制度選択届出書」の提出期限については、今回の改正による変更はありません【図2】。したがって、例えば、令和8年中に登録の経過措置により登録を受け、登録日の属する課税期間(令和8年の登録日から同年12月31日までの課税期間)から簡易課税制度の適用を受けようとする場合には、従来どおり、令和8年12月31日までに「簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。今回の改正では、「簡易課税制度選択届出書の提出に係る特例」のうち、「2割特例及び3割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間」に係る提出期限のみが見直されました。そのため、同じ「簡易課税制度選択届出書の提出に係る特例」であっても、「2割特例及び3割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間」と、「登録の経過措置により登録を受けた場合の登録日の属する課税期間」とでは、「簡易課税制度選択届出書」の提出期限が異なります。したがって、簡易課税制度の適用を受けようとする場合には、どちらの特例に該当するのかを確認し、提出期限を間違えないよう注意が必要です。提供:税経システム研究所
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2026/09/11 税務ニュース
東商「会員企業の災害・リスク対策に関するアンケート」結果公表
東京商工会議所は、8月24日、災害・リスク対策委員会で、会員企業におけるBCP策定状況や帰宅困難者対策、行政に望む災害・リスク対策施策等を把握するため標記アンケートを実施し、調査結果をとりまとめ、公表した。この調査は、2026年4月20日~5月8日に東商会員企業13,156件を対象に行われ、1,381件(回答率10.5%)の回答があった。調査結果の主なポイントは以下のとおり。1.BCP策定および災害・リスク対策全般・BCP策定率は38.2%(企業規模別では、大企業74.3%、中小企業29.9%)。防災計画・BCPいずれも未策定の中小企業は29.3%。・BCP策定済み企業の取組みとして、「見直しを行っている」(66.5%)「社内への周知を行っている」(63.7%)「訓練を行っている」(51.3%)となった。・「備えが必要だと感じるリスク」として最も回答が多かったものは「地震」で、BCP策定企業、BCP・防災計画未策定企業ともに9割を超える。・富士山噴火による影響を懸念する企業は7割超。事業継続への影響が想定される事象は「公共交通機関の麻痺」「停電」「物流の停止」が8割を超える。・サイバー攻撃の被害経験については、「取引先や委託先が被害を受け、自社業務に影響したことがある」企業は約2割となり、2024年調査より10ポイント超増加した。2.地震対策・帰宅困難者対策・【新規】感震ブレーカーを設置している企業は10.7%であり、53.5%が設置状況を把握していない。設置していない企業では、44.2%が設置を検討したことがない。・従業員向けに3日分以上の飲料水・食料を備蓄している企業は約5割。・備蓄を実施するにあたり、「保管スペースの確保」が企業規模を問わず最も大きな負担となっている。(大企業87.1%、中小企業73.7%)3.行政に望む災害・リスク対策に係る施策・行政に強化・拡充を望む災害・リスク対策は「防災・交通施設等インフラの強化・老朽化対策」(60.8%)が最多。4.その他(社会インフラの劣化等で特に不安な点や、危機事象対策全般について)・道路・橋梁・トンネル等の社会インフラの劣化を懸念する声や、発災時に、電気・通信を確保するための対策強化を求める声が複数寄せられた。(参考)「会員企業の災害・リスク対策に関するアンケート」2026年調査結果についてhttps://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1210292
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2026/09/10 会計レポート
マルチエージェントAIの設計
1.チームとして機能するマルチエージェントAI前号では、生成AIが、対話型AIから、目標に応じて自律的にタスクを遂行するAIエージェントへ、さらに、複数のAIエージェントが連携してタスクを並行処理するマルチエージェントAIへと発展していることを紹介しました。会計人材が担ってきた計算、分析、書類作成などの業務も、マルチエージェントAIによって大部分を自動化できる可能性があります。しかし、マルチエージェントAIを業務に活用すると、どのエージェントが、どのデータに基づいて、どのような判断を下したのかを把握しにくくなるという問題が生じます。判断過程が見えにくいというブラックボックス化の問題は、対話型AIにも存在していました。ただし、人間とAIが一問一答形式で対話する場合には、やり取りの履歴をたどることで、判断根拠をある程度確認できました。一方、マルチエージェントAIでは、複数のエージェントが並行して作業し、相互にやり取りしながら結論を生成します。そのため、対話型AIよりも、結論に至るプロセスを把握することが難しくなります。それでは、人間は、各エージェントの作業やエージェント間のやり取りを、どのように把握し、管理すればよいのでしょうか。この問いに答えるためには、エージェントの定義・設計と、AIによる推論過程のモニタリングという二つの論点を検討する必要があります。本稿では、まず前者であるエージェントの定義と設計を取り上げます。2.マルチエージェントAIとガバナンス一部のマルチエージェントAIでは、オーケストレーターと呼ばれる調整役のAIが、人間から与えられた目標を解釈し、目標の達成に必要なエージェントを自動的に生成して、作業を割り当てます。しかし、エージェントが自動生成されると、どのような専門性を持つエージェントが、どのような判断基準に基づいて作業したのかを事後的に検証することが難しくなります。第一の懸念は、成果物の品質が安定しないことです。エージェントの構成をオーケストレーターに委ねると、同じ業務を同じプロンプトで指示しても、その都度生成されるエージェントの数や役割分担が変わる可能性があります。どのエージェントがどの工程を担い、どの段階で検証が行われるかが実行のたびに変われば、成果物の品質も安定しません。マルチエージェントAIの失敗要因を網羅的に検討したCemrietal.(2025)は、200件を超える実行記録を分析し、失敗の多くがAIモデルの能力不足ではなく、役割定義の曖昧さや検証プロセスの設計不良に起因することを示しています。一方、要件定義、設計、実装、検証というソフトウェア開発組織の役割分担と標準業務手順をエージェントの分業構造に組み込んだHongetal.(2024)は、各エージェントの成果物を後続工程に順次引き継ぐことで、成果物の品質が大幅に向上することを示しています。これらの研究は、マルチエージェントAIの成果が、AIモデルの能力だけでなく、役割と工程の分担を定めるエージェント組織の設計にも左右されることを示しています。この点は、人間の組織とAIエージェントの組織に共通します。エージェント組織の構成をAIに自動生成させることの影響は、成果物の品質にとどまりません。より深刻なのは、内部統制上の問題です。組織構成や権限設定を十分な制約なしにAIへ委ねると、誰がどのような権限で作業し、誰が結果を検証するのかという内部統制の枠組みの一部を、統制対象であるAI自身に決めさせることになります。その場合、分析担当と検証担当の職務分離が確保されないおそれがあります。また、処理効率を優先した結果、業務上必要な範囲を超えるデータアクセス権限が付与される可能性もあります。人間の組織では、通常、担当者自身に職務分掌や権限の決定を委ねません。同様に、マルチエージェントAIを活用する際のエージェント組織の設計も、統制する側の人間が担う必要があります。3.役割の洗い出しとエージェントの定義人間が組織設計を担う場合でも、個々のエージェントの役割を直ちに定められるわけではありません。まず、エージェントに委ねる業務を複数の工程に分解し、各工程に必要な専門能力を洗い出す必要があります。月次の予算実績差異分析を例に考えます。この業務は、データの抽出、差異の計算、差異要因の分析、数値と根拠の検証、報告書の作成などの工程に分けられます。データの抽出や差異の計算には会計システムの知識が必要ですが、差異要因の分析には、数値を事業実態に即して解釈する能力が求められます。各工程に必要な知識と権限、および職務分離によって相互牽制を働かせるべき工程を整理して初めて、エージェントの数と役割分担を定められます。これは、職務記述書を作成する前に業務分掌を検討するのと同じ順序です。この工程分解を省いてエージェントを定義すると、専門領域や判断権限が曖昧になり、オーケストレーターによる自動生成と同じ問題が生じます。必要な役割を整理したら、個々のエージェントを定義します。エージェントの定義とは、役割と目的、使用できるツール、参照を許可するデータの範囲、行動規範と制約、成果物の形式と品質基準、他のエージェントや人間への引き継ぎ・報告ルールを自然言語で明文化することです。言い換えれば、AIエージェントの職務記述書を作成する作業です。この手順をまとめると、図表1のようになります。図表1エージェント定義の手順①エージェントに委ねる業務を選ぶ(例:月次の予算実績差異分析)↓②業務を工程に分解する(データの抽出/差異の計算/差異要因の分析/数値と根拠の検証/報告書の作成)↓③各工程に必要な知識と、参照を許可するデータの範囲を洗い出す↓④エージェントの役割分担を決める↓⑤エージェントごとに定義書を作成する(役割と目的/権限/行動規範と制約/成果物と品質基準/引き継ぎ・報告ルール)(出所)筆者作成前述した差異計算工程を担うエージェントは、例えば次のように定義できます。「あなたは月次の予算実績差異の計算を担う管理会計担当者である。会計システムの予算・実績データと、参照を許可された数量・単価データのみを使用する。科目別に差異額と差異率を計算し、数量・単価データを取得できる科目については、差異を数量差と単価差に分解して報告する。差異要因の解釈は行わず、成果物を後続の要因分析エージェントに引き継ぐ。データに存在しない数値を推測で補ってはならない」このように、エージェントが担う業務、参照を許可するデータ、遵守すべき規則などを明記します。項目ごとに見出しを設けると、図表2のような形式になります。Markdown形式を用いるのは、見出しと箇条書きによって項目の区切りが明確になり、AIが指示構造を誤って解釈するリスクを抑えられるためです。また、作成者も記載漏れに気づきやすくなります。記述する際には、役割と目的を職務記述書、アクセス範囲を職務権限規程、行動規範や禁止事項を倫理規程や業務マニュアルに対応づけて考えると、理解しやすくなります。図表2エージェント定義書の記述例(Markdown形式)#予算実績差異計算エージェント##役割と目的月次の予算実績差異を科目別に算出し、後続の要因分析エージェントが利用できる形式に整える。差異要因の解釈および改善策の立案は担わない。##参照できるデータ-会計システムの予算データおよび実績データ(当月分の損益計算書科目)-上記科目に対応する数量データおよび単価データ(予算・実績の両方。数量差・単価差を算定する科目に限る)-参照範囲は、分析を所管する事業部の責任範囲に対応させ、職務権限規程上、担当者に閲覧が認められた部門のデータに限定する。差異計算に不要な貸借対照表科目、人事データ、取引先マスタは参照しない。##手順対象月の予算と実績を科目別に取得し、取得件数と合計額を記録する。科目別に差異額と差異率を算出する。数量・単価データを取得できる科目について、差異を数量差と単価差に分解する(数量差=(実績数量−予算数量)×予算単価、単価差=(実績単価−予算単価)×実績数量)。分解結果の合計が総差異と一致することを検算する。##成果物-形式:科目コード、科目名、予算、実績、差異、差異率、数量差、単価差(算定可能な場合)を列とする表-単位は千円、差異率は小数第1位までとする。データ取得時刻と検算結果を末尾に付記する。##品質基準-検算の結果、分解後の差異合計が総差異と一致しない場合は、成果物を出力せず、管理会計担当者に差し戻す。-予算または実績が欠損している科目は、欠損である旨を明記する(補完しない)。##人間の判断を要する条件-科目、数量または単価データの対応関係を判別できない場合-差異率が±20%を超える科目が全科目の30%を上回る場合##禁止事項-データに存在しない数値を推測で補ってはならない。-差異要因を解釈したり、改善策を提案したりしてはならない。-参照範囲外のデータを取得してはならない。##引き継ぎ・報告-成果物と検算結果を要因分析エージェントに引き渡す。-引き継ぎ内容の要約を管理会計担当者に通知する。人間の判断を要する条件に該当した場合は、引き継ぎを行わず、管理会計担当者に報告する。(出所)筆者作成4.エージェント設計の重要性一部のマルチエージェントAIでは、人間がエージェントごとに指示しなくても、オーケストレーターが必要なエージェントを構成し、タスクを分担させることができます。ただし、自律的に動作できることと、統制上、業務を委ねてよいことは別問題です。成果物の品質と判断過程の統制可能性は、AIモデルの性能だけでなく、工程の分割、役割分担、委任する判断の範囲に左右されます。人間の組織における職務分掌や職務権限規程に相当する仕組みを、AIエージェントのチームにも整備する必要があります。もっとも、AIエージェントのチームに関する設計・統制方法は、まだ十分に確立されていません。監査領域では、仕訳テストを対象とするエージェント型監査のフレームワーク(Schreyeretal.、2024)や、スイス連邦会計検査院における実装事例(Schreyeretal.,2025)が報告されており、分業と検証を明示した実践が現れ始めています。一方、計画、予算管理、業績管理といった管理会計領域では、AIエージェントのチームに関する知見はまだ限定的です。したがって、マルチエージェントAIを会計業務に活用する際には、既存の職務設計と内部統制の延長線上で、エージェント組織の設計と統制を検討する必要があります。次回は、定義したエージェントが結論に至るまでの推論過程をどのように記録し、人間がどのようにモニタリングすべきかを検討します。参考文献Cemri,M.etal.(2025)「WhyDoMulti-AgentLLMSystemsFail?」arXiv:2503.13657.https://arxiv.org/abs/2503.13657Hong,S.etal.(2024)「MetaGPT:MetaProgrammingforaMulti-AgentCollaborativeFramework」ICLR2024.https://arxiv.org/abs/2308.00352Schreyer,M.,Gu,H.,Moffitt,K.andVasarhelyi,M.A.(2024)「ArtificialIntelligenceAgenticAuditing」SSRNWorkingPaper.https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=4909147Schreyer,M.,Mäder,T.andRuud,T.F.(2025)「EmbeddingAgenticArtificialIntelligenceinInternalAuditing」EXPERTFOCUS,2025(6).https://www.efk.admin.ch/wp-content/uploads/publikationen/fachtexte/2025_6_a_novel_digital_audit_workforce.pdf提供:税経システム研究所
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