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2025/12/19 商事法レポート
法律上、決算はいつ確定するの? − 計算書類の承認・確定について
1はじめにわが国の会社法では、計算書類(この書類には貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表が含まれます。会社法施行規則116条、会社計算規則59条1項参照(注1))、および、その附属明細書(計算書類の内容を補足する重要な事項を表示する書類です。詳細については会社計算規則117条参照)を作成し、取締役会や株主総会といった機関で承認を受け、公告等をすることとされています。そして、これらの一連の行為が「決算」と呼ばれます(注2)。本稿では、この決算のプロセスについて概観し、とりわけ『計算書類の承認・確定』の意義について考えてみたいと思います。なぜなら、わが国では、計算書類の承認を含む計算に関する事項についての株主総会決議は、会社法に関するテキストにおいても株主総会の主要な決議事項として挙げられることもある一方(注3)、後述するように、他の国では、会計・財務に関する書類について株主総会の承認決議を必要とせず、そうした書類を「確定させる」ということにそれほど重きを置いていないと思われる国もあるからです。なお、本稿では、過度に話を複雑にすることを避けるため、主に取締役会を設置している会社を念頭に置くこととし、かつ、会計参与を設置している会社については念頭に置あかずに話を進めていくことにします。2計算書類の承認・確定のプロセス計算書類等の作成は代表取締役(指名委員会等設置会社では取締役会が選定した執行役)によって行われます(注4)。そのうえで、監査役を置いている会社(定款上、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定めた会社も含みます)は、計算書類および事業報告ならびにそれらの附属明細書について監査役の監査を受けなければなりません(会社法436条1項)。また、監査等委員会設置会社では監査等委員会、指名委員会等設置会社では監査委員会が監査を行います(会社法436条2項1号)。そのうえで、会計監査人設置会社では、ある意味で当然ですが、計算関係書類(計算書類およびその附属明細書をいいます。会社法施行規則2条3項11号ロ、会社計算規則2条3項3号ロ)について会計監査人の監査も受ける必要があります(会社法436条2項)。次に、計算関係書類は事業報告、それらの附属明細書と併せて取締役会の承認を受けることになります(会社法436条3項)。ここで、上場会社については、四半期ごとに金融商品取引所を通じていわゆる決算短信を発表することになっていますが、事業年度または連結会計年度に関するいわゆる通期決算短信については、計算書類等についてこの取締役会の承認があった段階で発表され、3月決算の会社であれば、一般には5月中旬に発表されることが多いと言われています(注5)。その後、定時株主総会の招集を株主に対して通知する際には、取締役会の承認を受けた計算書類および事業報告、加えて(監査役を置く会社、監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社の場合は)監査報告および(会計監査人設置会社の場合は)会計監査報告も提供することとされています(会社法437条)。そして、計算書類、事業報告およびそれらの附属明細書(ある場合には監査報告・会計監査報告)は、株主や債権者の閲覧等に供するため、原則として定時株主総会の日の2週間前から本店に5年間、支店にはその写しを3年間備え置かなければならないとされています(会社法442条)。計算書類は、以上の手続きを経たうえで事業報告とともに定時株主総会に提出され、株主総会の承認を受けることとされています(会社法348条2項。なお、事業報告については株主総会の承認を経ることなく、その内容が報告されるに留まります。同条3項)。ここで、計算書類について株主総会の承認が求められているのは、一つの会計事実につき複数の会計処理のいずれを適用するかといった政策判断の余地があり得るから、との説明がされています(注6)。歴史的な観点から述べますと、会社法が制定される前である平成17年(2005年)改正前商法の下において、昭和56年(1981年)改正で同法284条の規定が削除されるまで、計算書類の承認決議後、2年以内に別段の決議がなければ、会社は不正の行為があった場合を除いて取締役および監査役に対しての計算書類に関する責任を解除したものとみなすとされていました。また、現行会社法が制定されるまでは、利益の処分(≒現在における「剰余金の処分」)または損失の処理に関する案は、計算書類ととともに定時株主総会における承認内容に含まれ、それらがまとめて承認対象とされていました。これに対し、現在の会社法は、剰余金の配当は計算書類の承認決議とは別の株主総会決議に基づいて行うものとされています(会社法453条、454条参照。なお、取締役の任期が1年以内である会計監査人設置会社については、定款の規定がある場合に、取締役会決議による剰余金配当も可能とされています。同法459条参照)。その結果、現在の会社法は株主総会による計算書類の承認決議に対し、「それによって計算書類を確定させる」という意味がより込められている、といえるでしょう。いずれにしても、株主総会の承認によって計算書類は確定され、当該計算書類は「最終事業年度にかかる計算書類」となり、剰余金の額や分配可能額の算定の基礎となります(会社法446条、461条2項など参照(注7))。仮に承認決議が否決された場合は、計算書類は確定できないこととなりますが、そうした場合、取締役会は必要と認める場合に計算書類を修正し、再度「定時株主総会」を招集してその承認を求めるほかないとされています(注8)。なお、承認された計算書類の内容が法令に違反していたときは、承認決議は無効確認の訴えの対象となりますし(会社法830条2項)、計算書類の内容自体に違反性はないものの、計算書類を承認する株主総会の招集手続もしくは承認決議の方法が法令・定款に違反し、または著しく不公正であった場合は、決議取消の訴えの対象となります(注9)。ところで、会計監査人設置会社については、株主総会における計算書類の承認について特則が設けられています。すなわち、計算書類が法令・定款に従って株式会社の財産・損益の状況を正しく表示しているものとして一定の要件を満たす場合、具体的には、①会計監査報告の内容として「無限定適正意見」が含まれること、②会計監査報告にかかる監査役・監査役会・監査等委員会・監査委員会の監査報告が期限内になされており、その内容として会計監査人の監査の方法または結果を相当でないと認める意見がないこと、③取締役会を設置していること、などの要件を満たしている場合(会社計算規則135条参照)、定時株主総会での承認は必要とされず、同総会への報告で足りるとされています(会社法439条)。これは、会計監査人設置会社のような会社については、会計監査人の監査によって計算書類の内容の適法性についての担保がなされていること、そうした会社の複雑な計算書類については株主総会で審査を行い、承認することは適当でない、と考えられていることによります(注10)。まとめれば、会計監査人設置会社では、会計監査人、監査役等から(会計)監査報告を受け、それら報告に特段の問題がない場合は、取締役会の承認を受けた時点で計算書類が確定することになります(注11)。とはいえ、会計監査人設置会社についてのこうした取り扱いは、あくまで「特則」という位置づけであり、会社法は、計算書類の承認については株主総会決議に依るものということがやはり本則であるといった建て付けであるように思います。いずれにしても、計算書類は以上のようにして確定されることになりますが、会社は定時株主総会後に遅滞なく貸借対照表(大会社については貸借対照表および損益計算書。なお、公告方法が官報または時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙への掲載である場合は、貸借対照表の要旨で足りるとされています)を公告することとされています(会社法440条)。ただし、金融商品取引法に基づき有価証券報告書を提出しなければならない会社については、こうした公告は行わなくてもよいとされています(会社法440条3項)。3ドイツ、イギリスおよびアメリカの状況ここで、決算のプロセスに関する他の国(ドイツ、イギリスおよびアメリカ)の状況について簡単にみてみたいと思います。⑴ドイツ上述したように、わが国では決算を「確定する」という考え方が採られていますが、これはドイツの影響を受けた可能性がありそうです。すなわち、ドイツの株式法では、監査役会が年次決算を承認した場合、取締役会および監査役会がその年次決算の確定を株主総会に委ねる旨を決議しない限り、当該年度の年次決算は確定(Feststellung)されたものとみなされるとし(同法172条1項)、取締役会および監査役会が年次決算の確定を株主総会に委ねる旨を決議した場合、あるいは監査役会が年次決算を承認しなかった場合には、株主総会が年次決算を確定する(同法173条1項)と定めています。こうした定めと関連して、わが国において株主総会を計算書類の承認機関としていることについて解説している古いコンメンタールの中には、「・・・確定(Feststellung)とは、会社の終局的な決定であって、それによりその期の計算は対内的にも対外的にも不動のものとなる。いかなる事実をもってそのような終局的な決定があったものとするかということは、株式会社における法定の機関権限の問題であり(そのことを最も明確に規定するのは、西ドイツ株式法172条・173条である)・・・(わが国では)その要件事実を定時総会の承認に求めているものと解される」としているものがあります(注12)。⑵イギリス他方で、イギリスでは、「確定」といった文言は使われていませんが、株式会社における年次計算書類(annualaccounts)は取締役会によって承認されなければならない(mustbeapproved)とされています(2006年会社法414条1項)。また、取締役たちは、年次計算書類が資産、負債、財務状況および損益を真実かつ公正に表示していない限り、当該年次計算書類を承認してはならない旨が定められています(同法393条1項)。そのうえで、公開会社(PublicCompany:株式を公募できたり、5万ポンド以上の最低資本金規制をクリアし、定款にPublicCompanyであることを定めている会社のことをいいます。これ以外の会社は(私会社PrivateCompany)と位置づけられます)については、取締役会の承認を受けた年次計算書類は、株主総会の21日前までに株主等に送付し(同法423条、424条)、株主総会において会社に提出しなければならない(mustlaybeforethecompanyingeneralmeeting)とされています(同法437条1項)。ただし、これら規定はあくまで年次計算書類が株主総会に提出されればよいとしているだけであり、株主総会での承認は特段要求されていません(なお、私会社については、上場会社でない限り、そもそも年次株主総会の開催自体が要求されていません(同法336条項))。なお、年次計算書類と各種報告書は、会計年度末から6か月以内にCompaniesHouseという会社そのものの登記と各種情報の公開を行っている政府機関に登録しなければならないとされています。また、上場会社については、CompaniesHouseへの登録に加えて、FCA(FinancialConductAuthority)が定めるDisclosureGuidanceandTransparencyRules(DTR)4.1に基づき、監査済みの計算書類を含む各種報告書等を「年次財務報告(AnnualFinancialReport)」として会計年度末から4か月以内にNationalStorageMechanismを通じて提出し、広く開示されることとされています(この年次財務報告に含まれる会計・財務関係の書類は、CompaniesHouseへ登録した計算書類と同じものとなっており、日本のように、計算書類と有価証券報告書内の財務諸表、といったような二本立てとはなっていないとのことです)。⑶アメリカアメリカでは、各州の会社法ごとに規律が異なっていますが、一般には、計算・財務に関する書類作成や承認に関する詳細な規定は設けられていません。多くの会社が設立・登録をしているデラウェア州の会社法では、帳簿(BookandRecords)の概念に過去3年分の年次財務報告が含まれるとされ、株主がそれを閲覧等できるとする規定はあるものの(デラウェア州一般会社法220条)、その年次財務報告の作成については、取締役会の一般的な権限のもとで行われると考えられているにすぎないようです。他方で、カリフォルニア州のように、具体的に貸借対照表、損益計算書およびキャッシュフロー計算書を含む年次報告書を作成すべきことや、それら報告書の一定期間内における株主への送付について定めている州もありますが(カリフォルニア州会社法1501条)、そうした州でも計算・財務に関する書類の承認や確定については詳細には定められておらず、やはりそれらは取締役会の権限のもとで適宜行われるものと考えられてきているようです。なお、上場会社については、財務報告を含む年次報告(Form10-K)の提出・開示、加えて、いわゆる株主向けの年次報告(AnnualReporttoShareholders:ARS)を株主総会前に株主に対して提供する必要があり、それらのプロセスにおいて、SECが財務報告に対する監査等について、厳格な規制を行っています。ただし、これらは主に適正かつ公正な情報開示(ディスクロージャー)とそれによる市場の高潔性(Integrity)の確保の観点からの規制であり、財務報告の承認・確定という点についてはそれほど意識がされていません。4まとめ以上を踏まえますと、計算書類等の「確定」という考え方を重視し、さらにその要件を株主総会の承認に求めるという法制を採っているわが国の法制は、他の国と比較して特徴的であるように思われます。わが国の現在の法制度が、適切であるかどうかはいろいろな見方ができるかと思います。筆者の推測ですが、おそらく、わが国ではいわゆる所有と経営があまり分離していない中小規模の株式会社が圧倒的に多く、そうした会社については、計算書類の確定に対し、株主にコミットさせた方が良いと考えられてきたのではないか、加えて、わが国の株式会社のガバナンスに関する議論では、株主総会の存在やそこでの意思決定をとくに重視してきており、そのために株主総会の権限を比較的大きく設定し、株主提案権制度等の関連制度を充実させ、適切に情報提供や議論がなされるように誘導してきたことから、計算書類等の確定もそうした株主総会に委ねた方がよい、と考えられてきたことがあるように思います(ちなみに、会社法上、合名会社、合資会社および合同会社から成る持分会社については、それらの会社に計算書類の作成義務があることが定められているのみであり、計算書類の確定を含む決算のプロセスについてはほとんど定められていません。会社法617条参照)。他方で、イギリスやアメリカの現状を踏まえますと、それらの国々ではそもそも計算・財務に関する書類の「確定」という考え方が採られていませんし、原則として、そうした書類の作成は取締役または取締役会が行うものであり、株主は、そうした書類に記載されている情報の提供を確実に受け取ることこそが重要であるとして、ある意味で受け身的な立場として位置づけられてきているように思います。現状では、わが国がいますぐ他の国に倣うべきだ、ということはありませんが、いずれにしても、決算のプロセス関する法制度、計算書類の承認・確定のあり方に関するスタンスは、株式会社制度における株主の位置づけについての考え方と密接な関連があるように思います。また、本稿ではほとんど触れませんでしたが、国ごとの会計制度、ディスクロージャー制度、さらには剰余金の配当規制との兼ね合いもあります。そうした意味で、本稿で述べたことは喫緊の課題というわけではないもののが、継続的かつ地道な研究や検討を行っていくべきテーマであるように思います。<注釈>これに対し、金融商品取引法に基づいて作成される『財務諸表』は、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書およびキャッシュ・フロー計算書ならびに附属明細表からなるとされています(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則1条1項1号参照)。江頭憲治郎『株式会社法〔第9版〕』(有斐閣、2025年)635−636頁。江頭・前掲注⑵322頁。江頭・前掲注⑵630頁。江頭・前掲注⑵659頁参照。江頭・前掲注⑵662頁。江頭憲治郎=弥永真生編『会社法コンメンタール10−計算等⑴』(商事法務、2011年)378頁〔片木晴彦〕。片木・前掲注⑺378頁。片木・前掲注⑺378頁。江頭・前掲注⑵665頁、片木・前掲注⑺379頁。片木・前掲注⑺381頁。上柳克郎ほか編『新版注釈会社法⑻会社の計算⑴』(有斐閣、1987年)76頁〔倉沢康一郎〕。提供:税経システム研究所
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2025/12/19 税務ニュース
「第4回 経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合」
政府税制調査会は11月13日、第4回経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合を開催した。議題については以下の3点となっている。1点目、「事業者のデジタル化と記帳水準の向上」については、これまでの議論における主な意見として、「記帳水準の向上は、事業者の適正申告の確保に向けた中長期的な課題であるが早急かつ着実に取組を進める必要がある」、「記帳等のデジタル化を進めるに当たっては、仕事が効率化する、生産性が向上するということが前面にあるべき。その上で、納税環境整備としてもこれに資するという順番が大切である」などが挙げられている。次に「税務執行に関する諸課題」については、国税犯則調査(査察調査)と徴収手続の二項目となっている。国税犯則調査は、刑事手続のデジタル化への対応として、各種犯則調査を所管する省庁等については、刑事手続のデジタル化実現のための法整備の状況を踏まえて、可及的速やかに法令整備を実現することとし、IT基盤の整備については、刑事手続のデジタル化との一体性に配慮し、2027年度中の一部省庁でのデジタル化試行を念頭にデジタル庁とも連携して対応を行っていくとの具体的な目標を挙げている。徴収手続は、滞納残高の推移、国税庁における滞納の未然防止に向けた取組、公売の実施状況が挙げられており、財産の差押えに関する課題として、滞納者が自己管理する暗号資産に関する具体的な事例と課題が示されている。3点目、「財産評価を巡る諸問題」については、現状として、相続税においては不動産や株式などの評価額を圧縮する租税回避等(スキーム)が広く利用され、近年ではスキームの態様が多様化している。スキームに対しては、これまで評価通達6項(この通達の定めにより難い場合の評価)に基づく課税処分を行うことなどにより個別に対応しているが、問題点として、近年、評価通達6項による評価に係る訴訟等が増加傾向にあり、こうした個別の対応について、納税者の予見可能性といった観点からの批判等があり、評価方法の明確化等が要請されている情勢などを挙げている。(参考)「第4回経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合」https://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/digital-noukan/2025/7digital-noukan4kai.html
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2025/12/18 会計レポート
生成AIを活用した財務・非財務情報の分析(8)
1.予算実績差異分析のダッシュボード化前回から、ChatGPTで経営ダッシュボードを簡単に作成する方法をご紹介してきました。ダッシュボードは、経営層や管理者がリアルタイムに業績を把握・分析し、迅速かつ適切な意思決定を行ううえで極めて有益な手段であり、すでに多くの企業で導入されるようになっています。前回は、全社および各事業の業績モニタリングを行うためのダッシュボードを作成しましたが、今回は予算実績差異分析のためのダッシュボードを作成してみたいと思います(図表1)。ダッシュボード作成のための事前準備については、前回のリポートをご参照ください。図表1予算実績差異分析のイメージ図2.予算実績差異分析ダッシュボードアプリケーションを作成する前回ご紹介させていただいた業績モニタリングのためのダッシュボードの作成と同様に、予算実績差異分析においても、ChatGPTにダッシュボードを動かすWebアプリを作成するためのプログラムを自動作成してもらうことができます。ダッシュボードの作成には、Webアプリ作成用のPythonライブラリであるStreamlit(ストリームリット)を使用します。Pythonのプログラム構造自体をご理解いただく必要は全くありませんが、Webアプリを動かすためにPythonを動かすことができるPC環境を整えておく必要があります。前回リポートをご参照いただき、Pythonの最新版をダウンロードしてください。まずはChatGPT(今回はChatGPT5を使用します)で、次(図表2)のように指示を与えて実行してみましょう。Streamlitを用いてWebアプリ上で動くダッシュボードを作成したい。今回は、ダッシュボードで予算実績差異分析を行えるようにしたい。予算値、予測値、実績値の差異が直感的に理解できるように、ウォーターフォール図を作成してほしい。予算実績差異は全製品、製品別、月別で表示できるようにしたい。予算実績差異の結果をもとに自動課題検出ができるようにしたい。図表2ChatGPTへの指示入力すると、ChatGPTが以下のようにPyhtonプログラムを作成してくれます(図表3)。これをコピーして、textファイルとして(Windowsの場合はメモ帳に)保存します(図表4)。保存の際、ファイル名を「app.py」としておきます(ファイル名の末尾に.pyをつけることで、Pythonファイルとして認識されます)。図表3作成されたPythonプログラム(一部)図表4メモ帳へのプログラム(一部)のコピー手順1:作成したプログラムファイル「app.py」を前回リポートで作成したDashboardフォルダのなかに保存する(図表5)。今回は、作成済みのプログラムと、分析用のサンプル―データを使用します。以下(注1)からダウンロードをしたうえで、ご自身のPCのDashboardフォルダに格納しています。図表5Dashboardフォルダへプログラムファイルの保存手順2:コマンドプロンプトを立ち上げる(図表6)Windowsの場合:Win+Rで「ファイル名を指定して実行」を開き、cmdと入力Macの場合:Command+Spaceで検索バーを表示し、「Terminal」または「ターミナル」と入力図表6コマンドプロンプト画面※網掛け部分は、ユーザーネームが表示されます。手順3:図表7のようにコマンドプロンプトに以下のコマンドを入力し、一つずつ実行しましょう(実行はEnterキー)。※プログラムの実行に必要なファイルがダウンロードされます。#必要なパッケージのダウンロードpipinstallstreamlitpandasnumpymatplotlibopenpyxl#Dashboardフォルダのパスを指定cd"C:\Users\t-met\Documents\Dashboard"#「app.py」プログラムの実行streamlitrunapp.py図表7コマンドプロンプト入力画面手順3を実行すると、Webブラウザが立ち上がり、図表8のような予算実績差異分析のダッシュボードが作成されます。手順1でダウンロードしていただいた、予算・実績データをWebアプリ左上の「データ読み込み」のところへアップロードすると、予算実績差異の分析結果、可視化情報、差異分析からわかる課題が表示されます。図表8作成されたダッシュボードサンプルデータでは、製品A~Dの2024年1月~12月のデータが格納されています。Webアプリ左下で分析を行いたい月や製品を選択すると、分析結果を確認することができます。試しに、2024年1月・A製品の分析結果を表示してみましょう。図表9分析結果(2024年1月のA製品の予算実績差異分析)また、差異分析の結果、どのような課題があるかについても、分析結果に応じて自動的に出力してくれます(図表10)。図表10差異分析の結果からの自動コメントダッシュボードを用いることで、これまで表計算ソフトベースで行っていた分析作業が自動化され、分析結果の検討・ディスカッションに多くの時間を割くことができるようになるのです。3.より高度な分析を実行できるプログラムに修正する分析を行う差異の種類、計算式の変更、表示方法(前期比較表示、色、グラフ形式)の修正を行いたい場合は、ChatGPTに「前期比較ができるようにしたい」「改善方法がわかる分析がしたい」のように指示をするだけで、図表3のようなプログラムを新たに出力してくれます。新たなプログラムを実行する場合も、手順1~手順3と同様ですので、この機会にいろいろと試してみましょう。<注釈>https://www.dropbox.com/scl/fo/w7xt7tzb23782ne5vuzxq/ANgTNSdDIUaEtEsiIan99Ms?rlkey=yier3ggezr10aue7gqnvc047o&dl=0Dropboxが開きます。提供:税経システム研究所
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2025/12/18 税務ニュース
国税庁 「令和7年分確定申告期の確定申告会場のお知らせ」を公表
国税庁は、このほど、「令和7年分確定申告期の確定申告会場のお知らせ」を公表した。お知らせによると令和7年分の確定申告の相談及び申告書の受付期間は、令和8年2月16日(月)から3月16日(月)までとなっており、確定申告会場での相談を希望される方は、LINEによるオンライン事前予約が必要(申告書等の提出のみの場合は不要)となっている。LINEによるオンライン事前予約方法については、国税庁ホームページの「令和7年分確定申告特集(準備編)」に掲載(QRコードも掲載)されており、手順は以下のとおりである。STEP1LINEアプリから国税庁LINE公式アカウントを友だちに追加する。※「友だち追加」ボタンをタップ、QRコードを読み込むほか、国税庁LINE公式アカウント(外部サイト)からも友だち登録が可能となる。STEP2「メインメニュー」タブの「確定申告相談の申込(個人の方)」を選択する。STEP3確定申告を行う税務署及び希望日時を選択する。STEP4申込した内容を確認した後、「申込」をタップすると申込が完了する。確定申告会場にて申込完了画面を提示して会場に入場する。確定申告会場では、自身が所有しているスマートフォンを使用して国税庁ホームページの「確定申告書作成コーナー」で申告書を作成し、e-Tax送信(申告書の提出)する指導を行っているため、スマートフォンを持っている人は持参する必要がある。また、e-Tax送信の際にはマイナンバーカードを使用するため、マイナンバーカードも持参する必要がある。各確定申告会場では、当日の予約受付も行っているが、当日の相談枠に限りがあることから、国税庁では、オンライン事前予約を行うよう呼びかけている。税務署の閉庁日(土曜・日曜・祝日等)については、相談及び申告書の受付は行っていないが、一部の会場においては、3月1日(日)に確定申告の相談及び申告書の受付を行うこととしている。なお、確定申告会場は混雑が予想されるほか、特に確定申告期限間際については大変な混雑が予想されることから、国税庁では「来場される場合はお早目にお越しください。」と呼びかけている。また、申告相談は、国税庁ホームページのチャットボット(ふたば)や確定申告コールセンター(3月1日(日)も開設)でも行っていると案内している。(参考1)令和7年分確定申告期の確定申告会場のお知らせhttps://www.nta.go.jp/information/other/data/r07/kakushin_kaijo/index.htm(参考2)令和7年分確定申告特集(準備編)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/kakushin-sonota/kakushin-kaijou.htm(参考3)令和8年3月1日(日)に確定申告の相談等を行う税務署https://www.nta.go.jp/information/other/data/r07/kakushin_kaijo/index02.htm
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2025/12/17 税務レポート
リース会計に関する会計と税務(その4) リース会計基準の改正を理解するために
1.リース取引に関する消費税の取扱い今般のリース会計基準の改正を受けた消費税については、貸手側の処理についての改正があるだけです。したがって、借手側の対処としては、特に変わるところはありませんが、ファイナンス・リース取引、オペレーティング・リース取引について、確認をしておきたいと思います。(1)ファイナンス・リース取引と消費税借手におけるファイナンス・リース取引の場合、税務上も固定資産計上をすることになり、消費税においても、固定資産計上の金額に関して仕入れ税額控除を行うことになります。このことをあらためて解説したのが消費税基本通達5-1-9です。(リース取引の実質判定)5-1-9事業者が行うリース取引が、当該リース取引の目的となる資産の譲渡若しくは貸付け又は金銭の貸付けのいずれに該当するかは、原則として、所得税又は法人税の課税所得の計算における取扱いの例により判定するものとし、この場合には、次のことに留意する。(1)所法第67条の2第1項《リース取引に係る所得の金額の計算》又は法法第64条の2第1項《リース取引に係る所得の金額の計算》の規定により売買があったものとされるリース取引については、当該リース取引の目的となる資産の引渡しの時に資産の譲渡があったこととなる。(注)この場合の資産の譲渡の対価の額は、当該リース取引に係る契約において定められたリース資産の賃貸借期間(以下9-1-31及び11-3-2の2において「リース期間」という。)中に収受すべきリース料の額の合計額となる。(2)所法第67条の2第2項又は法法第64条の2第2項の規定により金銭の貸借があったものとされるリース取引については、当該リース取引の目的となる資産に係る譲渡代金の支払の時に金銭の貸付けがあったこととなる。すなわち、法人税法、所得税法でリースであるとされる場合、すなわちリース会計基準のリース取引のうちオペレーティング・リース取引でない場合には、売買として処理をするため、資産の引き渡しのタイミングが消費税における譲渡の時点となります。通達の(2)は、いわゆるセールアンドリースバック取引であり、これは金融取引だとされることを述べています。ということで、ファイナンス・リース取引については、法人税において資産計上と減価償却の処理をするわけで、消費税での取扱いもこれに準じることになります。ただし、1つ留意するべき点が利息相当額の取扱いです。6-3-1(金融取引及び保険料を対価とする役務の提供等)法別表第二第3号《利子を対価とする貸付金等》の規定においては、おおむね次のものを対価とする資産の貸付け又は役務の提供が非課税となるのであるから留意する。(平11課消2-8、平13課消1-5、平14課消1-12、平15課消1-13、平19課消1-18、平20課消1-8、平22課消1-9により改正)(中略)(17)所法第67条の2第3項《リ-ス取引の範囲》又は法法第64条の2第3項《リ-ス取引の範囲》に規定するリース取引でその契約に係るリース料のうち、利子又は保険料相当額(契約において利子又は保険料の額として明示されている部分に限る。)したがって、利息相当額については、課税仕入れではなく非課税仕入れとして処理をしなければならないことになります。(2)オペレーティング・リース取引と消費税リース会計基準では、オペレーティング・リース取引も資産計上であり、法人税法では賃貸借処理となっています。消費税法もこの取扱いに準じることになりますので、賃貸借処理によることとなり、賃借料として支払う都度その支払金額が課税仕入となります。ここで問題は、多くの企業では会計システムにより消費税申告書を自動作成しているという点です。リース会計基準により使用権資産を計上した際には課税仕入にはせず、リース料を支払う際にはリース債務の減少と利息相当額の計上を行う部分を課税仕入にしなければならないという問題を会計システムでの運用上、どのように対処するかが実務的には課題になると思われます。そこで次節では、オペレーティング・リース取引での消費税の会計処理方法について、会計システムで消費税を自動計算する前提の下で、検討します。2.オペレーティング・リース取引での消費税の取扱い(1)オペレーティング・リース取引と消費税連載第3回までの数値例では、リース会計基準により以下のような仕訳が行われていました。前述の通り、使用権資産を計上する段階で仮払消費税がデフォルトの科目マスターにより計上されることになります。しかし、法人税法第53条に基づく仕訳は年間累計ベースで以下のようになるはずであり、消費税でも同様に考えることになります。会計システムでは、リース会計基準に基づく仕訳が起きている中、消費税申告書の作成は法人税法・消費税法ベースでの計算を行わせなければなりません。すなわち、仕入税額控除は、712,591円ではなく36,517円となるようにシステム上、登録しておく必要があります。会計システムにおいて、「仮払消費税」という科目において712,591円を取り消して、36,513円を登録するといった仕訳を入れれば、消費税の計算はできるかもしれません。しかし、科目別税区分一覧表といった消費税のチェック資料を出力した際、使用権資産に対応する仕入税額がなく、賃借料という科目に金額がなくても仕入税額があるといった形の異常点があるように見える表が出力されることになりそうです。そこで、筆者の私案にすぎませんが、期中においては賃貸借処理で仕訳入力をしておいて、期末(企業によっては四半期末ごと)において、賃貸借処理からリース会計基準に基づく会計処理に決算修正を入れると解決するのではないでしょうか。それを次節で検討します。(2)消費税計算を優先した仕訳の検討①リース契約締結時点の仕訳リース会計基準に従うならば、リース資産の計上を行うべきところですが、これを決算修正で行うという想定です。したがって、このタイミングでは<仕訳なし>が会計処理ということになります。②リース料支払い時の仕訳(1月の初回分と2月分)リース料支払時には、リース会計基準ではリース負債の減少を認識しますが、税法基準では、賃借料の計上ということになります。そこで、仕訳は以下のようになり、支払総額を賃借料として仮払消費税を認識するため、利息相当額についての支払利息の計上はしません。②-2リース料支払い時の仕訳(3月)③減価償却費の計上減価償却費の計上は、リース会計基準に基づく仕訳なので決算修正仕訳として計上します。④年間累計での仕訳(①から③の合計)以上の結果、リース契約の開始から最初の決算期までの仕訳の合計は以下のようになります。⑤リース会計基準への修正仕訳リース会計基準に基づく年間累計仕訳は以下のとおりになっていました。ただし、使用権資産の計上における仮払消費税は、「前払費用」もしくは「長期前払費用」として計上しておくことが良いのではないでしょうか。仮払消費税の科目を使ってしまうと消費税申告書の計算上、仕入税額控除が過大になる可能性があるためです。そして、これは資産に係る控除対象外消費税額等と同様のものと考えることができますので、年間の賃借料に係る消費税額分だけ取り崩していけばよいのだと考えます。この結果、修正仕訳としては以下のようになります。皆様の事務所、顧問先で利用している会計システムにおける消費税計算の仕組みが十分に理解できていない場合、上記のような工夫で期中は法人税法・消費税法に準拠した会計処理を行うことで、消費税計算の正確性を確保することができるものと考えます。なお、ファイナンス・リース取引であっても、リース料総額が300万円以下といった重要性の基準等により会計処理を賃貸借処理で行っていく場合、消費税の処理が気になるところです。また、中小企業では、中小企業の会計指針にはリース会計基準は適用されていませんので、そもそも従来通りの賃貸借処理を行うことになります。そこについては、以前より公表されている国税庁の質疑応答事例「所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃借人が賃貸借処理した場合の取扱い」により、リース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れとする処理(分割処理)を行うことが認められています。したがって、本来、リース取引開始時に使用権資産に対応する仕入税額控除をしなければならないといった問題点はありません。提供:税経システム研究所
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2025/12/17 税務ニュース
総務省 「租税特別措置等に係る政策評価の点検結果(令和7年度)」を公表
租税特別措置等は、税負担の公平の原則の例外であり、その適用の実態や効果が透明で分かりやすいものでなくてはならないことから、各行政機関は、措置の必要性や有効性等について国民への説明責任を果たしていくため、法令に基づき、政策評価を実施することが義務付けられている。政策評価の義務付け対象は、法人税(国税)、法人住民税・法人事業税(地方税)関係の措置のうち、税負担を軽減・繰延べするものとなっている。総務省行政評価局では、評価の質を向上させ、税制改正作業での活用に資するよう、毎年度、各行政機関が税制改正要望に際し行う「租税特別措置等に係る政策評価」の政策評価書において、十分な分析・説明がなされているかとの観点から点検を実施している。今般、令和8年度税制改正要望に係る40件の政策評価書を対象に点検を実施し、各行政機関及び税制当局に結果を通知・提供したので11月25日に公表した。点検に当たっては、政策目的の実現に向けた手段としての「有効性」及び「相当性」に重点を置き、点検項目として「達成目標」、「過去の適用数」、「将来の適用数」、「過去の減収額」、「将来の減収額」、「過去の効果」、「将来の効果」及び「他の政策手段」を設定し、結果は以下のとおりA~Eの5段階に分類して表している。A一定の分析・説明はされており、今後も評価水準の維持向上を図っていくべきものBデータが算定根拠とともに示されているが、それらを用いた分析・説明が十分ではないものC定量的なデータによって分析・説明されているが、その算定根拠等が不足しているものD定性的説明はされているが、定量化が不十分なものE分析・説明されていないもの点検結果について、全体の状況としては、点検プロセスにおける各行政機関の補足説明によって、各項目について分析・説明の内容に改善が見られたが、「過去の効果」及び「将来の効果」の分析・説明を中心に、十分とは言い難い状況にあった。また、客観的なデータがその算定根拠とともに示されていないなどのため点検結果がC~E段階のものは、「達成目標」は13件、「過去の適用数」は1件、「将来の適用数」6件、「過去の減収額」は5件、「将来の減収額」は10件、「過去の効果」は11件、「将来の効果」は21件であり、分析・説明がされていない項目(E段階)が残る著しく不十分な評価書も10件となっている。(参考)「租税特別措置等に係る政策評価の点検結果(令和7年度)」https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/hyouka_251125000185833.html
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2025/12/16 税務ニュース
国税庁 「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」を公表
国税庁は12月2日、「令和6事務年度法人税等の調査事績の概要」を公表した。令和6事務年度においては、AIも活用しながら、あらゆる機会を通じて収集した資料情報等や申告書の分析・検討を行うことにより、調査必要度の高い法人を的確に抽出し、実地調査を実施した結果、追徴税額(法人税・消費税)の総額は3,407億円となり、直近10年で最高値となっている。法人税・消費税調査について、実地調査の件数は5万4千件(対前年比▲7.4%)であり、申告漏れ所得金額の総額は8,198億円(同▲15.8%)、追徴税額の総額は3,407億円(同+6.6%)、調査1件当たりの追徴税額は6,342千円(同+15.4%)となっており、調査1件当たりの追徴税額は直近10年で2番目の高水準となっている。源泉所得税調査について、実地調査の件数は6万4千件(同▲6.7%)であり、非違があった件数は2万1千件(同▲5.1%)、追徴税額の総額は404億円(同+7.8%)、調査1件当たりの追徴税額は633千円(同+15.6%)となっており、追徴税額の総額は直近10年で2番目の高水準、調査1件当たりの追徴税額は直近10年で最高値となっている。また、主要な取組として、AI・データ分析の活用(税務署所管法人)、重点課題(消費税還付申告法人、海外取引法人等及び無申告法人への対応)、簡易な接触の3点を挙げている。1点目、同庁ではAIを活用した予測モデルにより調査必要度の高い法人を抽出し、予測モデルが判定した不正パターンに加え、申告書や国税組織が保有する様々な資料情報等を併せて分析・検討した後、調査官が調査実施の要否を最終的に判断しており、調査官の知見にAIの分析結果を組み合わせることにより、効率的で精度の高い調査を実施している。2点目の重点課題への対応については厳正な調査を実施し、消費税還付申告法人における追徴税額は299億円、うち不正計算に係る追徴税額は51億円となっている。海外取引法人等では、海外取引に係る申告漏れ所得は2,096億円、源泉徴収漏れ追徴税額は72億円、無申告法人では、法人税・消費税の追徴総額は355億円、うち不正計算に係る追徴税額は228億円となっている。3点目の簡易な接触は、申告内容に誤り等が想定される法人等に対して、自発的な申告内容の見直し要請などを行い、法人税・消費税の簡易な接触の件数は8万5千件(同+13.4%)、申告漏れ所得金額は565億円、追徴税額は265億円となっている。(参考)「令和6事務年度法人税等の調査事績の概要」https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/hojin_chosa/index.htm
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2025/12/15 税ワンポイント
非居住者の令和7年度税制改正対応
令和9年1月提出分から、法定調書の電子提出義務の対象が拡大される。現行では、前々年に調書を100枚以上提出した場合は、調書の電子提出が義務づけられているが、この基準が新制度では「30枚以上」に引き下げられる予定である(注1)。なお、令和8年1月提出分は現行ルールが適用される。この見直しは、税務手続のデジタル化を推進するものであり、対象となる事業者には早めの対応が求められる。電子提出の手段としては、e-Tax、光ディスク、または国税庁が認定したクラウドサービスが利用可能であり、紙提出は原則認められない。「30枚以上」の判定は、法定調書の種類ごとに判定されるため、給与所得の源泉徴収票や報酬等の支払調書ごとに、前々年の提出実績を確認する必要がある点に注意が必要である。国税庁によれば、法定調書の電子提出率は76.6%に上る(注2)。e-Taxソフト(WEB版)はインストール不要で、主要な調書の作成・送信がブラウザ上で行うことができる。Excelで管理している事業者は、国税庁の「CSVファイル等作成・分割ツール」の活用を選択肢に入れたい。光ディスク等で提出も可能ではあるが、e-Taxソフト(WEB版)では、CSVファイルを読み込んで電子署名を付与するだけで提出できる。ただし、CSV形式では、コンマ位置のズレなどにより、読み込み時にエラーが発生しやすく、実務ではベンダー製の調書作成ソフトや給与計算ソフトを利用するケースが主流である。これらのソフトでは、フォーマット整合やエラーチェックが自動で行われるため、安定した提出が可能である。また、源泉徴収票の提出手段として、eLTAX活用も挙げられる。eLTAXで市区町村への給与支払報告書を作成しながら、税務署への源泉徴収票提出も一括処理が可能な仕組みがある(注3)。義務化まで残された期間は約1年であるが、該当する事業者は、提出方法の確認やソフトウエアの見直し、体制整備など、早目の対応が求められる。<注釈>https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/hikari_gimu.pdfhttps://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/teishutsu_tirashi.pdfhttps://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/eltax.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/12/15 審査事例
和解内容を確認せよ。元勤務先が取引先から得るべきリベート等を、個人事業収入にし、支払った解決金の性格は、事業収入の返金でないから、更正の請求はできないとした事例(棄却)
【裁決のポイント】納税申告書を提出した者は、その課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えの判決(判決と同一の効力を有する和解を含む。)により、その事実が先の計算の基礎としたところと異なることが確定した場合には、後発的理由による更正の請求を行うことができる(国税通則法第23条第2項)。本件の審査請求人は、個人事業を営みながら、A社にも勤務をして取引先との交渉を任せられていたが、本来はA社が取引先から受け取るリベート等を自身の事業収入に含めて確定申告及び修正申告も行った。A社は審査請求人に対して損害賠償請求の訴訟を起こし、裁判上の和解が成立した。審査請求人は750万円の本件解決金をA社に支払ったのちに、事業収入を返金したことを理由として自身の所得税について更正の請求をした。税務署は更正すべき理由がない旨の通知処分をした。国税不服審判所は、和解の内容が、審査請求人が本件解決金を支払うことにより、A社は、今後、本件訴訟に係る損害賠償請求権を放棄するという内容にすぎず、審査請求人が取引先からリベートを得た取引に係る権利関係等に何ら変動を及ぼすものではないとして、税務署の処分は適法であると判断した事例である。(平成27年分所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対して更正すべき理由がない旨の通知処分・棄却・令和2年7月28日裁決(非公開))【主な争点】本件解決金は、平成27年分の事業所得の金額の計算上総収入金額から差し引くことができるか。【裁決の要旨】本件訴訟におけるA社の請求内容は、平成22年度から平成27年度までにおいて、本来A社が本件取引先から得るべき利益(売上金及び仕入割戻金)を、審査請求人がA社で交渉に当たっていた地位を利用して不法に取得し、A社に上記得るべき利益及び同利益に係る消費税や加算税等の額に相当する損害を与えたとして、不法行為に基づく損害賠償金の支払を求めるというものであるところ、本件訴訟は、飽くまでも審査請求人とA社との間の損害賠償請求権の存否を争うものである。本件和解の内容は、審査請求人が、A社に対し、解決金として本件解決金の支払義務があることを認め、A社がその余の請求を放棄するという内容であるから、本件解決金の支払は、審査請求人と本件取引先との取引に係る権利関係等に何ら変動を及ぼすものではないものと認められる。以上によれば、審査請求人の平成27年分の事業所得の金額の計算上、総収入金額から本件解決金を差し引くことはできない。審査請求人は、本件解決金は、本件訴訟において、審査請求人が本件取引先から受け取って審査請求人の収入としていた金員の一部がA社の収入と認められるとされたため、本件和解により、平成27年分の収入の返金として支払ったものであることから、平成27年分の事業所得の金額の計算上総収入金額から差し引くべきである旨主張する。しかしながら、本件和解は、審査請求人が収入として申告していた本件取引先から受け取った金員の一部をA社の収入と認める内容のものではないことから、審査請求人の主張は理由がない。【参照条文】国税通則法第23条《更正の請求》所得税法第27条《事業所得》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/12/15 税務ニュース
国税庁 令和6事務年度の「相互協議の状況」を公表
国税庁は、11月11日に令和6事務年度の「相互協議の状況」を公表した。相互協議とは、移転価格課税等などによる国際的な二重課税について、納税者の申立てを国税庁が受けた場合に租税条約の規定に基づき、外国税務当局との間で協議を行う手続きである。また、納税者の予見可能性を高め、移転価格税制の適正・円滑な執行を図る観点から、納税者が申し出た独立起業間価格の算定方法などについて税務当局が確認を行う事前確認に係る相互協議の手続きも実施している。令和6事務年度(令和6年7月1日~令和7年6月30日)における相互協議事案の発生件数は280件(前事務年度比32%増加)となっており、内訳は、事前確認に係るものは194件(構成比69%)、移転価格課税その他に係るものは86件(同31%)と事前確認に係るものの割合が多かった。処理件数については、242件(前事務年度比11%増加)となっており、内訳は、事前確認に係るものは194件(構成比80%)、移転価格課税その他に係るものは48件(同20%)であった。処理事案1件当たりに要した平均処理期間は、39.6か月(令和5事務年度:31.8か月)となっており、内訳は、事前確認に係るものは42.4か月(令和5事務年度:35.8か月)、移転価格課税その他に係るものは28.5か月(令和5事務年度:21.5か月)であり、いずれも前事務年度より処理期間が長くなっている。繰越件数は、773件数(令和5事務年度:735件)であり、内訳は、事前確認に係るものが595件(同:595件)、移転価格課税その他に係るものが178件(同:140件)となっている。繰越件数が増加したことについて国税庁は、令和6事務年度の発生件数が処理件数を上回ったためとしている。令和6事務年度の繰越事案の相手国・地域は、アジア・大洋州で426件、米州で211件、欧州・アフリカ136件の順となっており、アジア・大洋州が最も多い。国別では米国(25%)、次にインド(15%)、中国(13%)、韓国(12%)、ドイツ(5%)の順となっている。OECD非加盟国・地域との相互協議事案について、令和6事務年度の発生件数は112件、処理件数は104件、令和6事務年度末の繰越件数は334件であり、この件数は、令和6事務年度末の相互協議事案の繰越件数773件の約43%に当たる。処理事案1件に要した平均処理期間は、49.0か月となっており、そのうち事前確認に係るものは51.8か月、移転価格課税に係るものは36.3か月となっており、特にOECD非加盟国・地域との相互協議事案の処理は、相手国の税務当局と連携が取りにくいことから長期化の傾向にある。事前確認は、移転価格課税への対策として有効な手段と考えられるが、その処理には時間を要することから事前確認を行う企業は、長期的な視点での計画が必要である。(参考)令和6事務年度の「相互協議の状況」についてhttps://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/sogo_kyogi/sogo_kyogi.pdf
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