実務情報
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2025/07/04 税務レポート
棚卸資産の意義及び評価方法の基礎(法人税)
1.概要棚卸資産の期末評価は大体の法人で行う項目であり、実務上もありふれたものですが、中小企業の多くは法定償却方法である「最終仕入原価法による原価法」による評価がほとんどであり、他の評価方法についてはその存在自体も知らないことも多く、また実際は最終仕入原価法とは違う方法で計算しているのにも関わらず、申請等をしていないケースも見かけます。今回は法人税における棚卸資産の意義と評価方法の基本を見ていきたいと思います。(1)棚卸資産の意義及び範囲(法法2二十、法令10)法人税法においては、以下の資産(有価証券及び一定の短期売買商品等を除く。)を棚卸しすべきものとして規定しています。なお、不動産販売業者が販売目的で購入した不動産や、修理業者が修理を施し販売するために取得した固定資産も棚卸資産に含まれます。商品又は製品(副産物及び作業くずを含む。)半製品仕掛品(半成工事を含む。)主要原材料補助原材料消耗品で貯蔵中のもの※上記に掲げる資産に準ずるもの事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産(各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続してその取得事業年度の損金の額に算入している場合には、取得時の損金算入が認められます。(法基通2-2-15)(2)棚卸資産の評価方法(法令28)期末棚卸資産の評価方法として選定できる方法は大きく「原価法」と「低価法」に分けられ下記の通りとなります。棚卸資産の評価方法の選定をしない場合には、法定評価方法である「最終仕入原価法による原価法」による評価となりますが、実務上は中小企業については、特に選定をしておらず、この「最終仕入原価法による原価法」により計算をしているケースが多いと思われます。下記の通り選定できる方法は複数ありますので、会社の商品特性や事業の状況に応じて適切な選択ができれば経営にも大きく活かすことができるものと考えられます。棚卸資産の評価は、原則としてその種類、品質及び型(種類等)の異なるごとに行うのが基本となります。①原価法期末棚卸資産につき、次に掲げるいずれかの方法により算出した取得価額を期末棚卸資産の評価額とする方法をいいます。イ)個別法期末棚卸資産の全部について、その個々の取得価額をその期末評価額とする方法なお、一の取引で大量に取得され、かつ規格に応じて価額が定められているものについては選定することができません。実際の仕入れ単価を使いますので、商品の流れと棚卸資産の価格を一致させることができますが、棚卸資産の数や種類が多い場合には事務作業が煩雑となります。販売用不動産や宝飾品等個別管理できるものに適しています。ロ)先入先出法期末棚卸資産を種類等の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、期末から最も近い時に取得をした棚卸資産から順次成るものとみなして計算した取得価額を期末評価額とする方法先に仕入れた商品から先に払い出していると仮定して計算を行いますので、物価上昇時には低い原価が計上され、逆に物価下落時は高い原価が計上されることになります。ハ)総平均法期末棚卸資産を種類等の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、期首棚卸資産の取得価額の総額と期中取得棚卸資産の取得価額の総額との合計額をこれらの総数量で除して計算した価額を期末評価額とする方法計算が簡単に行えますが、期の最後の仕入まで平均単価が算出できないため、コスト把握がしづらくなります。月別総平均法、6月ごと総平均法も認められています(法基通5-2-3、5-2-3の2)ニ)移動平均法期末棚卸資産を種類等の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、棚卸資産を取得した都度、その時点の平均単価を計算し、これを期末まで繰り返していき、期末に最も近い時において算定された平均単価をその期末評価額とする方法仕入ごとに平均単価を算定していきますのでタイムリーな原価把握が可能ですが、事務作業は繁雑となります。月別移動平均法は認められますが、6月ごと移動平均法は認められません(法基通5-2-3、5-2-3の2)ホ)最終仕入原価法期末棚卸資産を種類等の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、期末に最も近い時に取得をした1単位当たりの取得価額をその期末評価額とする方法最後に仕入れた単価のみで計算するため実務事務は簡単ですが、仕入れ単価の変動が大きい時には適切な価格反映がされないことになります。上記の通り法定評価方法であり、実務上多くの中小企業で使われている方法です。へ)売価還元法期末棚卸資産をその種類等又は通常の差益の率※の異なるごとに区別し、その種類等又は通常の差益の率の同じものについて、下記算式で計算した金額をその期末評価額とする方法をいいます。なお、種類の著しく異なるものを除き、通常の差益の率がおおむね同じ棚卸資産はこれをその計算上の一区分とすることができます。(法基通5-2-5)また、製造業を営む法人が、原価計算を行わないため半製品及び仕掛品について製造工程に応じて製品売価の何割として評価する場合のその評価の方法は、売価還元法に該当するものとされます。(法基通5-2-4)多品目を扱う小売業や原価計算を行っていない製造業においてこの売価還元法が採用されているケースが多いです。税務上の売価還元法と会計上の売価還元法とは相違していますので注意が必要です。差益の率棚卸資産の通常の販売価額のうちにその通常の販売価額からその棚卸資産を取得するために通常要する価額を控除した金額の占める割合【計算式】売価還元法による評価額=期末棚卸資産の通常の販売価額の総額×原価率※「通常の販売価額の総額」は、値引き、割戻し等を行いそれを売上金額から控除しているような場合であっても、値引き、割戻し等を考慮しないところの販売価額の総額によります。(法基通5-2-7)「販売した棚卸資産の対価の総額」は、原則値引き後の金額となりますが、特定の者に対する値引きで一定要件を満たす場合は、値引き額を販売価額に加算できます。(法基通5-2-6)②低価法期末棚卸資産を種類等の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、原価法のうちいずれかの方法により算出した価額と「当該事業年度終了の時における価額」※とのうちいずれか低い価額をその評価額とする方法低価法の適用により評価損を計上した場合、翌期首に戻し入れて益金算入する必要があります。(洗替え)評価損の計上が可能ですが、原価法の計算と時価の把握の両方を行うことになりますので実務事務負担は大きいものになります。「当該事業年度終了の時における価額」とは当該事業年度終了の時においてその棚卸資産を売却するものとした場合に通常付される価額(棚卸資産の期末時価)をいいます。この棚卸資産の期末時価の算定に当たっては、通常、商品又は製品として売却するものとした場合の売却可能価額から見積追加製造原価(未完成品に限る。)及び見積販売直接経費を控除した正味売却価額によります。(法基通5-2-11)(3)棚卸資産の評価方法の選定と変更(法令29、30)①新設法人設立事業年度に係る確定申告書の提出期限までに、事業の種類ごとに、かつ、商品又は製品(副産物及び作業くずを除く。)、半製品、仕掛品(半成工事を含む。)、主要原材料及び補助原材料その他の棚卸資産の区分ごとに「棚卸資産の評価方法の届出書」を納税地の所轄税務署長に届け出なければなりません。なお、この届出書の提出がない場合には、法定評価方法である「最終仕入原価法による原価法」による評価を行うことになります。②評価方法の変更棚卸資産の評価方法を変更しようとするときは、その新たな評価方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに、その旨、変更しようとする理由その他一定の事項を記載した「棚卸資産の評価方法の変更承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出し承認を受けなければなりません。なお、申請書の提出があった場合においても、現在の評価方法を採用してから相当期間(3年)を経過していないときや変更する評価方法では所得金額の計算が適正に行われ難いと認められるときは、その申請は却下されます。(4)特別な評価方法(法令28の2)上記の原価法、低価法以外の評価方法により計算する場合には、採用しようとする評価方法の内容、その方法を採用する理由、事業の種類及び資産の区分などを記載した「棚卸資産の特別な評価方法の承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出し、承認を受ける必要があります。承認を受けた場合、承認を受けた日の属する事業年度以後の評価額の計算については、その承認を受けた評価方法を選定することができます。提供:税経システム研究所
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2025/07/04 税務ニュース
「中小企業の賃金改定に関する調査」結果
日本商工会議所ならびに東京商工会議所は、6月4日「中小企業の賃金改定に関する調査」の結果を取りまとめて公表した。厳しい人手不足に加えて物価上昇が続くなか、中小企業も積極的な賃上げを進めているが、この調査は昨年度に引き続き、雇用の7割を支える中小企業の賃上げの実態を詳細に把握し、今後の要望活動に活かしていくために実施したものである(調査期間:2025年4月14日~5月16日、回答企業数:3,042社)。調査結果によると、2025年度の賃上げ実施状況として、「賃上げを実施(予定含む)」する企業は全体で約7割(69.6%(前年度比4.7ポイント減))だった。賃上げ実施の内訳は、「業績が好調・改善しているため賃上げを実施(予定を含む)」が27.8%、「業績の改善が見られないが賃上げを実施(予定を含む)」が41.8%となっていた。一方で、価格転嫁の遅れや米国関税措置等による先行き不透明感を懸念する声もあり、「現時点では未定」は23.5%(同3.1ポイント増)となっており、「賃上げを見送る(予定や引下げる場合も含む)」は6.8%(同1.4ポイント増)となっていた。中小企業の中でも20人以下の小規模企業では、「賃上げを実施(予定含む)」する企業は57.7%(同5.6ポイント減)となっており、賃上げ実施の内訳は、「業績が好調・改善しているため賃上げを実施(予定を含む)」が21.5%、「業績の改善が見られないが賃上げを実施(予定を含む)」が36.2%となっていた。先行き不透明感の影響からか「現時点では未定」は31.9%(同2.9ポイント増)となっており、「賃上げを見送る(予定や引下げる場合も含む)」は10.4%(同2.7ポイント増)となっていた。また、「前向きな賃上げ」(業績が好調・改善しているため賃上げを実施)と「防衛的な賃上げ」(業績の改善が見られないが賃上げを実施)の割合を見ると、全体では「39.9%:60.1%」、20人以下の小規模企業では「37.2%:62.8%」だった。「防衛的な賃上げ」を実施する理由は「人材の確保・採用」、「物価上昇への対応」がともに約7割となっており、賃上げを見送る理由は「売上の低迷」と回答した企業が半数を超える(58.2%)結果となった。賃上げ実施状況を地域別に見ると地方全体では「賃上げを実施(予定)」が約7割(69.3%)となっていたが、地方・小規模企業では、「賃上げを実施(予定)」が57.1%にとどまり、全体集計と比べ、12.5ポイント低くなっており、「現時点では未定」とする割合も3割超(33.5%)となり、より慎重な姿勢が伺える状態となっていた。(参考)「中小企業の賃金改定に関する調査」の集計結果についてhttps://www.jcci.or.jp/news/research/2025/0604153019.html
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2025/07/03 会計レポート
企業が生き残るための製品・サービスの原価計算の勘所(19)
1.岡本[2000]による販売費及び一般管理費の分類前々回の(17)で、販売費及び一般管理費を分類するにあたり、一橋大学岡本清名誉教授の名著『原価計算』の最新版である六訂版[岡本,2000]による販売費及び一般管理費の分類にもとづいて、どのような観点から体系づければよいかについて検討しました。岡本[2000]では、まず、販売費及び一般管理費を、文字どおり販売費と一般管理費に分類し、さらに、販売費を注文獲得費、注文履行費、販売事務費に分けて説明していますが、一般管理費については勘定科目を例示しているものの、本文において説明はしていません。2.岡本[2000]による販売費分析の総論(1)「販売費会計」ではなく「販売費分析」という意味岡本[2000]では、第13章「営業費計算」の第4節で、「販売費の分析」について説明しています[岡本,2000,pp.700-713]。岡本[2000]では、販売費は、これを経常的に製品へ配賦されることはなく、一般管理費とともに、期間原価として当該会計期間の収益と対応して計算するので、販売費の計算では、販売費会計(marketingcostaccounting)とはいわずに、販売費分析(marketingcostanalysis)というほうが普通である[p.700]と述べています。岡本[2000]が、「営業費会計」ではなく「営業費分析」であると主張した意味を、筆者なりに吟味してみます。会計情報は、企業の経済活動に起因した資産・負債・純資産の増減や収益・費用の発生に関するデータが、財務会計システムに記録されて作成されます。財務会計システムでは、仕訳と転記によって記録しています。原価計算においても、計算した原価データは、工業簿記において、仕訳と転記により、記録されます。原価を計算しただけではなく、これを財務会計システムと結びつけなければ、計算結果を財務諸表上に反映することはできません。ということになれば、貸借対照表や損益計算書で、会計情報をそれぞれ正しく表示することはできなくなります。このことに関連して、「原価計算基準」[大蔵省企業会計審議会,1962]では、「二原価計算制度」において、原価計算を次のように定義しています。この基準において原価計算とは、制度としての原価計算をいう。原価計算制度は、財務諸表の作成、原価管理、予算統制等の異なる目的が、重点の相違はあるが相ともに達成されるべき一定の計算秩序である。かかるものとしての原価計算制度は、・・・、財務会計機構と有機的に結びつき常時継続的に行なわれる計算体系である。原価計算制度は、この意味で原価会計にほかならない。上記の「原価計算基準」[大蔵省企業会計審議会,1962]からの引用箇所でいう「財務会計機構」とは、先述した「財務会計システム」と同義であると考えてください。たんに原価を計算しただけで、財務会計機構(=財務会計システム)と結びついていなければ、常時継続的に行われる計算体系としての、原価計算制度(=原価会計)ではない、ということです。一方で、意思決定や業務管理のためには、必ずしも財務会計システムと結びついていなくても、必要に応じて経営管理のための会計情報を作成し、利用することがあります。これは、管理会計目的としての会計情報の利用法としての特徴です。財務会計システムとは結びつかない管理会計目的の会計情報について、「原価計算基準」[大蔵省企業会計審議会,1962]では、これを否定しているわけではなく、「二原価計算制度」において、「特殊原価調査」という名称で、次のように定義しています。広い意味での原価の計算には、原価計算制度以外に、経営の基本計画および予算編成における選択的事項の決定に必要な特殊の原価たとえば差額原価、機会原価、付加原価等を、随時に統計的、技術的に調査測定することも含まれる。しかしかかる特殊原価調査は、制度としての原価計算の範囲外に属するものとして、この基準には含めない。岡本[2000]は、営業費に関する原価データを、管理会計目的で作成・利用することを念頭におき、必ずしも財務会計システムに結びつけるものではなく、いわんや外部に報告する会計情報ではない、という考えのもとで「営業費会計」ではなく「営業費分析」であると主張したのではないかと、筆者は考えます。つまり、特殊原価調査の一環として営業費分析をとらえていたために、営業費会計(marketingcostaccounting)とはいわない、という説明をしているのではないか、というのが筆者の解釈です。(2)販売費のセグメント別分析岡本[2000]では、販売費分析では、販売費管理のために費目別および機能別に把握された販売費を、販売セグメント別に分析をする[p.700]と説明しています。マーケティングの領域では、販売市場を設定するにあたり、市場を細分化して検討することが多いと聞きます。管理会計目的として、収益性を検討する場合には、営業費をセグメント別に分析することで、セグメントごとの具体的な収益性を理解することに役立ちます。岡本[2000]は、一般的に行われる販売セグメント別分析として、次の5項目をあげています[p.700]。製品品種別分析販売地域別分析顧客種類別分析注文規模別分析販売経路別分析販売費分析の上記5項目については、日本商工会議所簿記検定試験のテキスト[岡本・廣本,2024a]においても、紹介しています。また、岡本[2000]は、販売セグメント別分析は、経常的分析と臨時的分析とに区分しています[p.700]。経常的分析とは、たとえば、月次の経営会議などでセグメント別の収益性を検討するときに報告されるべき情報です。岡本[2000]によると、経常的分析では、各セグメントの業績を測定し、問題点を探索するための一般的な分析であり、そのためには、実績データをセグメントごとに分析し、予算と実績を比較するというかたちをとる[p.700]といいます。これに対して、臨時的分析は、随時必要に応じて経営上の課題を検討するときに行われます。岡本[2000]では、臨時的分析は、注文規模別に分析する場合であれば、注文規模が小さい顧客との取引を継続するか否かという個別的分析となるため、実績データではなく、未来の予測データにもとづく差額原価収益分析が必要になると説明しています[pp.700-701]。参考文献伊藤嘉博・目時壮浩、2021『異論・正論管理会計』中央経済社。大蔵省企業会計審議会、1962「原価計算基準」大蔵省企業会計審議会。岡本清、2000『原価計算』六訂版、国元書房。岡本清・廣本敏郎、2024a『検定簿記講義/1級工業簿記・原価計算下巻』〔2024年度版〕中央経済社。岡本清・廣本敏郎、2024b『検定簿記講義/2級工業簿記』〔2024年度版〕中央経済社。岡本清・廣本敏郎・尾畑裕・挽文子、2008『管理会計』中央経済社。小林啓孝、1997『現代原価計算講義』第2版、中央経済社。小林啓孝・伊藤嘉博・清水孝・長谷川惠一、2017『スタンダード管理会計』第2版、東洋経済新報社。清水孝、2006『上級原価計算』第2版、中央経済社。清水孝、2014『現場で使える原価計算』中央経済社。清水孝・長谷川惠一・奥村雅史、2004『入門原価計算』第2版、中央経済社。園田智昭、2021『プラクティカル原価計算』中央経済社。谷武幸、2022『エッセンシャル管理会計』第4版、中央経済社。提供:税経システム研究所
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2025/07/03 税務ニュース
国税庁「令和6年度における再調査の請求の概要」などを公表
国税に関する法律に基づく処分についての納税者の救済制度には、処分庁(税務署長等)に対する再調査の請求や国税不服審判所長に対する審査請求という行政上の救済制度(不服申立制度)と、裁判所に対して訴訟を提起して処分の是正を求める司法上の救済制度がある。国税庁は6月20日、「再調査の請求」、「審査請求」及び「訴訟」について、令和6年度における概要を公表した。1再調査の請求発生件数は1,447件であり、前年度と比べ42.0%(1,047件)減少している。税目別では、消費税が546件で最も多く、続いて申告所得税等が499件、法人税等が214件となっている。処理件数は1,752件であり、処理件数のうち、納税者の請求が何らかの形で受け入れられた件数(認容件数)は91件(一部認容78件、全部認容13件)で、その割合は5.2%となっている。また、簡易迅速な手続により納税者の権利利益の救済を図るため、標準審理期間を3か月と定めており、3か月以内の処理件数割合は98.7%となっている。2審査請求発生件数は3,537件であり、前年度と比べ9.7%(380件)減少している。税目別では、消費税が1,483件で最も多く、続いて申告所得税等が940件、法人税等が660件となっている。なお、相続税・贈与税は133件であるが、前年度と比べ11.8%(14件)増加している。処理件数は3,872件であり、処理件数のうち、納税者の請求が何らかの形で受け入れられた件数(認容件数)は693件(一部認容522件、全部認容171件)で、その割合は17.9%となっている。また、適正かつ迅速な事件処理を通じて、納税者の正当な権利利益の救済を図るため、標準審理期間を1年と定めており、1年以内の処理件数割合は99.4%となっている。3訴訟発生件数は196件であり、前年度と比べ3.7%(7件)増加している。終結件数は、168件であり、このうち、国側が敗訴したものは8件(一部敗訴3件、全部敗訴5件)で、その割合は4.8%となっている。(参考)「令和6年度における再調査の請求の概要」https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/2024/saichosa.pdf(参考)「令和6年度における審査請求の概要」https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/2024/shinsa.pdf(参考)「令和6年度における訴訟の概要」https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/2024/sosho.pdf
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2025/07/02 税務レポート
相続と所得税 第29回 遺産分割の方法と資産の移転による所得税の取扱い その1
遺産相続は、明治時代に制定された旧民法では、家父長制度のもと、嫡子による家督相続とされていた。現在における民法のルールでは、相続人の間で、均分相続ができるようになっている。これは戦後の日本国憲法のもと、個人の尊厳を重視し、平等をベースとして定められたものである。今回は、遺産相続について、遺産分割の手続き、形式、それに伴い資産が移転したときの所得税の取扱いをみていく。1.遺産分割の実行手続き(1)遺産分割とは相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する(民法896条)。相続人が数人いるときは、相続財産は、その共有に属する(民法898条)。したがって、相続人が数人いるときは、その共同相続人について、共有に属している相続財産を、単有や新たな共有の形に移行させる手続きが行われる。この手続きを遺産分割という。(2)遺産分割の実行のしかた共同相続人の共有に属している相続財産を、単有や新たな共有の形に移行させ、最終取得者を決める遺産分割の手続きの方法には、遺言による分割、協議による分割、調停による分割、審判による分割がある。手続きは次のとおり行われる。はじめに、被相続人の遺言書の有無を確認する。無効ではない遺言書の場合、原則は、遺言書に従って遺産を分割し相続する。遺言書がない場合、遺言書が無効な場合、遺言書によるが遺産分割方法の指定がない場合などは、相続人全員で話し合いによる協議で決める。遺産分割協議が成立をしたら、遺産分割協議書に従って、遺産を分割し相続をする。遺産分割協議を行ったが協議が成立しない場合や、そもそも相続人全員が参加せず遺産分割協議を行うことができない場合などは、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てる。調停案に相続人全員が同意すれば調停は成立し、調停調書に従って、遺産を分割し相続する。遺産分割調停が成立しない場合は、家庭裁判所の審判へ移行し、審判の決定により、審判の内容に従って、遺産を分割し相続する。家庭裁判所の審判に不服がある場合には、即時抗告ができ、高等裁判所で実質的な最終の審理、判断がなされる。2.遺産分割の方法(1)遺産分割の基準民法では、「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」と遺産分割の基準を定めている(民法906条)。(2)遺産分割の型式の順序等遺産の分割の型式には、いわゆる現物分割、代償分割、換価分割、共有分割の4つがある。相続人全員による遺産分割協議や調停では、どのような遺産分割の型式によるかは、基本的に相続人全員の合意で決めることができる。相続人全員の合意が得られず、遺産分割協議や調停が成立しない場合、家庭裁判所の審判により決定されるが、それには、遺産分割の型式に優先順序がある。家庭裁判所は、民法第906条を「遺産分割の基準」とし、遺産分割の型式の優先順序は、第一に現物分割、次に必要であれば代償分割、代償分割ができない場合には換価分割が選択され、最終が共有分割である。遺産分割の型式内容現物分割いわゆる現物分割とは、それぞれの遺産をそのまま、共同相続人に分ける方法である。できる限り現物を相続人へ相続させることが望ましいため、基本的な遺産分割の方法となる。代償分割家庭裁判所の審判では、「特別の事情があると認められるときは、遺産の分割方法として、共同相続人の一人又は数人に他の共同相続人に対する債務を負担させて、現物の分割に代えることができる(家事事件手続法195条)」とされる。このいわゆる代償分割とは、相続開始時の遺産の形態を維持し、現物分割に代える方法として、現物分割の次の順序となる。換価分割家庭裁判所の審判では、「遺産の分割の審判のために必要があると認めるときは、相続人に対し、遺産の全部又は一部を競売することを命ずることができる(家事事件手続法194条1項)」とされる。また、「遺産の分割の審判をするため必要があり、かつ、相当と認めるときは、相続人の意見を聴き、相続人に対し、遺産の全部または一部について任意に売却して換価することを命ずることができる。ただし、共同相続人中に競売によるべき旨の意思を表示した者があるときは、この限りでない(家事事件手続法194条2項)」とされる。このいわゆる換価分割とは、共同相続した相続財産を直接分割の対象とはせず、換価してその対価である金銭を共同相続人間で分割する方法である。現物分割、代償分割ができない場合の方法の順序となる。共有分割共有分割とは、「物権法上の共有」とする分割である。各相続人の持分を決めて共有で分割する方法である。共有分割は問題を先送りし、紛争が生じる可能性があるため最終の順序となる。共有分割になると、民法の共有に関する規定が適用される。3.遺産分割の方法と所得税の取扱い---代償分割による資産の移転遺産分割は、それに伴い、相続人が資産を取得、資産を売却する、など資産の移転が生じる。それら資産の移転に係る所得税の取扱いをみていく。今回は、遺産分割の型式のうち、代償分割によって資産が移転したときの所得税の取扱いとする。(1)代償のために、相続人が交付する資産の移転への課税代償分割は、共同相続人の間で、現物による分割が困難なとき、土地などの細分化の防止、共同相続人のなかの特定の1人に相続させるなどの目的のために用いられる。このとき、代償分割によって現物を取得した相続人は、他の共同相続人に対して債務を負うので、債務の履行にあたり、自分が所有している資産を他の共同相続人へ移転することになる。この資産の移転に係る課税の取扱いは次のとおりである。〔所得税基本通達33-1の5〕遺産の代償分割(現物による遺産の分割に代え共同相続人の一人又は数人に他の共同相続人に対する債務を負担させる方法により行う遺産の分割をいう。)により負担した債務が資産の移転を要するものである場合において、その履行として当該資産の移転があったときは、その履行をした者は、その履行をした時においてその時の価額により当該資産を譲渡したこととなる。(下線筆者)債務を履行する相続人が、自ら所有する資産を、他の共同相続人へ交付することは、その資産を他の共同相続人が所有することになり、そこで「資産の移転」が行われる。この資産の移転は、譲渡所得として所得税が課税される。交付した相続人は、債務履行の時の資産の価額に相当する収入が実現されたこととされ、その相当額をもって、債務を消滅させる。したがって、債務履行の時の資産の価額が譲渡所得の収入金額に該当する。共同相続人へ交付される資産の種類資産の移転に対する課税金銭債務の履行が、他の共同相続人へ金銭で行われる場合は、金銭を交付した相続人への課税はない。金銭以外の資産(土地など)債務の履行が、金銭以外の資産(土地など)で行われる場合は、その資産を交付した相続人は、債務を履行した時に、その時の価額により資産を譲渡したことになり、所得税が課税される。(2)資産の取得費①他の共同相続人が、代償として取得する資産の取得費他の共同相続人は、代償という債務の履行があったとき、代償分割により債務を負担した者から、その時の価額により資産を取得することになる。代償として、他の共同相続人が取得する資産の取得費とは、以下のとおりである。〔所得税基本通達38-7〕遺産の代償分割に係る資産の取得費については、次による。(2)代償分割により債務を負担した者から当該債務の履行として取得した資産は、その履行があった時においてその時の価額により取得したこととなる。代償にて交付される資産は、他の共同相続人にとって、相続を機に取得する資産ではあるが、被相続人の遺産ではない。したがって、遺産を相続した相続人が債務を履行した時、つまり、他の共同相続人が交付を受けた資産を取得した時の価額に相当する金額が、共同相続人が所有することになる資産の取得費となる。他の共同相続人が取得する資産の種類取得する資産の取得費金銭代償資産が金銭の場合は、他の共同相続人は金銭そのものを取得することになる。金銭以外の資産(土地など)代償資産が金銭以外の資産(土地など)の場合は、他の共同相続人はその資産が交付された時に、その時の価額により資産を譲受したことになる。②代償により債務を負担した者が、相続により取得した被相続人の遺産の取得費遺産を取得するためにその相続人は、代償として他の共同相続人へ債務に相当する金額を負担する。その債務に相当する金額は、遺産の取得に伴う負担であるが、遺産の取得費となるのか、その取扱いは次のとおりである。〔所得税基本通達38-7〕遺産の代償分割に係る資産の取得費については、次による。(1)代償分割により負担した債務に相当する金額は、当該債務を負担した者が当該代償分割に係る相続により取得した資産の取得費には算入されない。これは、債務を履行する相続人の代償金、つまり債務に相当する金額の取扱いであり、この代償金は、相続税の課税価格の計算上控除されるべきもので、遺産の取得による取得費とはならない。(3)相続財産を譲渡した場合の取得費加算相続により、取得した土地などの財産を、一定期間内に譲渡した場合、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができる「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」がある(租税特別措置法39条)。代償分割により取得した相続財産を譲渡するときには、この「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」によって譲渡資産の取得費に相続税額を加算できるが、調整計算が必要になる。〔租税特別措置法通達39-7〕代償金を支払って取得した相続財産を譲渡した場合における措置法第39条の規定(「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」)により譲渡資産の取得費に加算する相続税額についは、次の算式により計算をする。(注)1「確定相続税額」とは、措置法令第25条の16第1項第1号に掲げる相続税額をいい、同条第2項に規定する場合であっては同項の規定による相続税額をいう。(注)2支払代償金については、昭和34年1月28日付直資10「相続税法基本通達の全部改正について」通達11の2-10《代償財産の価額》に定める金額によることに留意する。【参考文献】国税庁HP所得税基本通達逐条解説(一般財団法人大蔵財務協会)譲渡所得・山林所得・株式との譲渡所得等関係租税特別措置法通達逐条解説(一般財団法人大蔵財務協会)司法統計年報(最高裁判所事務総総局)ほか提供:税経システム研究所
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2025/07/02 税務ニュース
情報セキュリティ10大脅威 解説書[個人編]の公開
独立行政法人情報処理推進機構(以下「IPA」という)は、2025年6月18日、情報セキュリティ10大脅威解説書[個人編]を公開した。IPAでは、情報セキュリティ対策の普及を目的として2006年から、前年に発生した情報セキュリティ事故や攻撃の状況等を「情報セキュリティ10大脅威」として公表しており、2025年1月30日に「組織」の立場と「個人」の立場での「10大脅威」を公表している。「組織」については、順位をつけて公表しているが、個人については2023年版までは、ランクインした脅威を順位で紹介していたが、「上位の脅威=危険度が高い」と捉えないように、2024年版から順位の表記をやめ、五十音順の表記としている。なお、「個人」向けの「10大脅威」では、10個の脅威全てが2023年以降連続してランクインしており、「個人」向け脅威の攻撃手口は、古くから使われ続けているものが多くなっている。今回公表された解説書では、下記の「個人」向けの「10大脅威」・インターネット上のサービスからの個人情報の窃取・インターネット上のサービスへの不正ログイン・クレジットカード情報の不正利用・スマホ決済の不正利用・偽警告によるインターネット詐欺・ネット上の誹謗・中傷・デマ・フィッシングによる個人情報等の詐取・不正アプリによるスマートフォン利用者への被害・メールやSMS等を使った脅迫・詐欺の手口による金銭要求・ワンクリック請求等の不当請求による金銭被害についてそれぞれ<脅威と影響>、<攻撃手口>、<事例または傾向>、<対策と対応>について解説が行われており、特に「攻撃の糸口」は各脅威に共通するものが多くなっている。例えば、脆弱性を悪用する、マルウェアを使う、またはマルウェア等を使わずに情報を詐取するソーシャルエンジニアリングを使う等、技術の進歩、アプリやサービスが多様化した現在でも依然としてこれらの手口が使われている。「攻撃の糸口」に変化がない限り、「情報セキュリティ対策の基本」による効果が期待できるので、これを意識して継続的に対策を行うことで、被害に遭う可能性の低減が期待できる。また、共通対策・認証情報を適切に運用する・情報リテラシー、情報モラルを向上させる・メールの添付ファイルの開封、メールやSMSのURLリンクのクリックを安易にしない・適切な報告・連絡・相談を行う・サーバーやPC、ネットワーク機器に適切なセキュリティ対策を行う・適切なバックアップ運用を行うについても留意しておくとよい。(参考)情報セキュリティ10大脅威2025https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2025.html(参考)「情報セキュリティ10大脅威2025」を決定https://www.ipa.go.jp/pressrelease/2024/press20250130.html
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2025/07/01 税務レポート
令和6年度消費税改正④ 消費税のプラットフォーム課税・金地金等の取得
1.消費税のプラットフォーム課税の創設(1)改正の趣旨デジタルサービス市場の拡大によりプラットフォームを介して多くの国外事業者が国内市場に参入している中で、国外事業者の納めるべき消費税の捕捉や調査・徴収が課題となっています。こうした課題に対し、国内外の事業者間の競争条件の公平性や適正な課税を確保するため、国外事業者が提供するデジタルサービスを対象にプラットフォーム課税を導入することとなりました。(2)改正内容①プラットフォーム課税の概要国外事業者がデジタルプラットフォームを介して行う電気通信利用役務の提供(事業者向け電気通信利用役務の提供に該当するものを除きます。以下「消費者向け電気通信利用役務の提供」といいます。)のうち、下記②の「特定プラットフォーム事業者」を介してその対価を収受するものについては、特定プラットフォーム事業者が行ったものとみなして、特定プラットフォーム事業者が申告・納税を行います(消法15の2①、〔図表1〕参照)。なお、国税庁ホームページでは、「消費税のプラットフォーム課税に関するQ&A(プラットフォーム事業者用)令和6年7月」(以下「プラットフォーム課税Q&A」といいます。)などの資料が公表されています。〔図表1〕消費者向け電気通信利用役務の提供に係る申告納税義務者(出典:国税庁「消費税のプラットフォーム課税について」(令和6年4月))②特定プラットフォーム事業者特定プラットフォーム事業者の指定国税庁長官は、プラットフォーム事業者のその課税期間において、その提供するデジタルプラットフォームを介して国外事業者が日本国内において行う消費者向け電気通信利用役務の提供に係る対価の額のうち、そのプラットフォーム事業者を介して収受するものの合計額が50億円を超える場合には、そのプラットフォーム事業者を「特定プラットフォーム事業者」として指定します。この指定は、「特定プラットフォーム事業者の指定届出書」(以下「指定届出書」といいます。)の提出期限(その提出期限までに指定届出書の提出がない場合は、指定通知を発した日)から6か月を経過する日の属する月の翌月の初日に指定の効力が生じます(消法15の2②、プラットフォーム課税Q&A問14)。特定プラットフォーム事業者の届出上記アの「特定プラットフォーム事業者」に該当する事業者は、その課税期間に係る確定申告書の提出期限までに指定届出書を所轄税務署長を経由して国税庁長官に提出しなければなりません(消法15の2③、プラットフォーム課税Q&A問13)。特定プラットフォーム事業者の公表等国税庁長官は、特定プラットフォーム事業者を指定したときは、その特定プラットフォーム事業者に対してその旨を通知するとともに、国税庁ホームページに次の事項を公表しなければなりません(消法15の2④、消令29⑤、プラットフォーム課税Q&A問14、〔図表2〕参照)。特定プラットフォーム事業者のデジタルプラットフォームの名称特定プラットフォーム事業者の氏名・名称特定プラットフォーム事業者の指定の効力が生ずる年月日なお、通知を受けた特定プラットフォーム事業者は、対象となる国外事業者に対し、プラットフォーム課税の対象となる旨及び対象となる年月日を速やかに通知しなければなりません(消法15の2⑤、プラットフォーム課税Q&A問16)。〔図表2〕特定プラットフォーム事業者名簿特定プラットフォーム事業者の氏名又は名称(日本語)(令和6年12月6日現在)iTunes株式会社アマゾンウェブサービスジャパン合同会社グーグルアジアパシフィックプライベートリミテッド任天堂株式会社(出典:国税庁「特定プラットフォーム事業者名簿」)確定申告書への明細書添付特定プラットフォーム事業者は、プラットフォーム課税の対象となる消費者向け電気通信利用役務の提供の対価の合計額等を記載した明細書を確定申告書に添付しなければなりません(消法15の2⑮、規則11の5⑤、プラットフォーム課税Q&A問17)。(3)用語の説明①電気通信利用役務の提供電気通信利用役務の提供とは、アプリ配信のほか、電子書籍・音楽の配信などの電気通信回線(インターネット等)を介して行われる役務の提供をいいます。②デジタルプラットフォーム「デジタルプラットフォーム」とは、不特定かつ多数の者が利用することを予定して電子計算機を用いた情報処理により構築された場であって、その場を介してその場を提供する者以外の者が消費者向け電気通信利用役務の提供を行うために、その消費者向け電気通信利用役務の提供に係る情報を表示することを常態として不特定かつ多数の者に電気通信回線を介して提供されるものをいい、例えば、アプリストアや電子書籍のオンラインモールなどが該当します(消法15の2①、プラットフォーム課税Q&A問3)。(4)改正時期上記(2)の改正は、令和7年4月1日以後に国内において行われる消費者向け電気通信利用役務の提供について適用します(令和6年改正法附則13⑥)。2.金地金等を取得した場合の事業者免税点制度等の制限(1)改正の趣旨高額特定資産は、一の取引の単位の税抜金額(1,000万円以上)で判定することとされていますが、金又は白金の地金等(以下「金地金等」といいます。)の取引による特例の恣意的な潜脱を防止するため、その課税期間中の金地金等の税抜仕入金額の合計額が200万円以上である場合について、高額特定資産を取得した場合と同じく、事業者免税点制度の適用及び簡易課税制度選択届出書の提出を制限することとなりました。(2)改正内容①取扱い事業者が、消費税の確定申告を本則課税で行う課税期間中に金地金等の課税仕入れを行った場合において、その課税期間中の税抜仕入金額の合計額(12か月換算)が200万円以上であるときは、次のア及びイの取扱いがあります。金地金等の課税仕入れを行った課税期間の翌課税期間から、その課税仕入れを行った課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については、免税事業者となることはできません(消法12の4③、消令25の5④)。金地金等の課税仕入れを行った課税期間の初日から、同日以後3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までの期間については、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することができません(消法37③五)。(3)届出様式の改訂上記(2)の改正に伴い、次の届出書の様式が改訂されました。高額特定資産の取得等に係る課税事業者である旨の届出書消費税簡易課税制度選択届出書(4)改正時期上記(2)の改正は、令和6年4月1日以後に国内において事業者が行う金地金等の課税仕入れ及び保税地域から引き取られる金地金等について、適用します(平成6年改正法附則13④)。提供:税経システム研究所
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2025/07/01 税務ニュース
令和6年度 査察の概要
国税庁は6月18日、「令和6年度査察の概要」を公表した。査察制度は、悪質な脱税者に対して刑事責任を追及し、その一罰百戒の効果を通じて、適正・公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的としており、経済取引の広域化、デジタル化、国際化等による脱税の手段・方法の複雑・巧妙化など、経済社会情勢の変化に的確に対応し、悪質な脱税者に対して厳正な調査を実施している。令和6年度については、98件を検察庁に告発し、告発した査察事案に係る脱税総額は82億円であり、1件当たりの脱税額は84百万円で告発率は65.3%となっている。令和6年度においては、査察制度の目的に鑑み、特に以下の事案について重点事案として積極的に取り組んでいる。1消費税事案消費税に対する国民の関心が極めて高いことを踏まえ取り組んだ結果、29件を告発している。また、消費税の仕入税額控除制度や輸出免税制度を悪用した不正受還付事案については、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性の高い事案であることから、17件を告発している。2無申告事案納税者の自発的な申告・納税を前提とする申告納税制度の根幹を揺るがす無申告事案については13件を告発しており、そのうち、不正行為はないものの、故意に申告書を提出しないで税を免れた単純無申告ほ脱事案は8件となっている。3国際事案経済社会のグローバル化の進展に伴い、国境を越える取引が恒常的に行われ、資産の保有、運用の形態も複雑・多様化しているところ、国際取引を利用した脱税への対応が求められており、このような状況の中、海外事業における収入を除外していた事案や海外に不正資金を隠していた事案などに取り組み、20件を告発している。また、国際事案では租税条約等に基づく外国税務当局等との情報交換制度を活用している。4社会的波及効果の高い事案時流に即した事案などの社会的波及効果が高いと見込まれる事案に取り組み、事案の概要として、人気タレントが所属する芸能事務所が架空の広告宣伝費や外注費を計上する方法により、法人税及び消費税を免れていた事案などが挙げられている。査察事件の一審判決の状況について、令和6年度中の一審判決は99件であり、全てに有罪判決が言い渡されている。そのうち13人に実刑判決が出され、消費税法違反を含むものは7人となっており、実刑判決のうち最も重いものは、査察事件単独で懲役2年6月、他の犯罪と併合されたもので懲役9年となっている。(参考)「令和6年度査察の概要」https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/sasatsu/r06_sasatsu.pdf
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2025/06/30 経営レポート
昨今労務事情あれこれ(211)
1.はじめに近年、「大人の発達障害」に関する記事をマスコミやメディアで見聞きすることが多くなってきました。曰く、「職場において、他の従業員とは一風変わった言動がみられる、空気が読めない、周りと協力することができない、何度指導しても頑固に自分のやり方を変えない」などなど…。厚生労働省が5年に1度実施する障害者雇用実態調査(令和5年度調査)によれば、従業員5人以上の事業所に雇用されている障害者数約110万7000人のうち発達障害者は約9万1000人となっています。前回調査(平成30年)では約3万9000人という結果でしたので、雇用者数で言えば2倍超の増加ということになります。また、2022年12月に厚生労働省から発表された「生活のしづらさなどに関する調査」(令和4年)によると、医師から発達障害と診断された者の数(推定値)は87万2000人となっています。先述のような言動があるとしても、安易にレッテルを貼ることは慎まなければなりません。国立大学法人山梨大学事件(甲府地判.R2.2.25)では、発達障害とのレッテルを貼ったような人事課長の発言が違法であると断じられています。一方で、日本では約10人に1人の割合で発達障害の傾向のある人がいると推定されていることを踏まえると、職場に発達障害の傾向をもつ従業員がいることは特別なことではないと考えることもできます。今回は、こうした傾向をもつ従業員に対し、どのように接していけばいいのかについて考えていきます。2.発達障害とはそもそも、発達障害とはどのようなものなのでしょうか。発達障害は生まれつきの脳機能の障害の一種であり、法令(発達障害者支援法)においては以下のように定義されています。自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの一言で「発達障害」と言ってもいくつかの種類があり、それぞれに異なった特性を持っています。①自閉症スペクトラム障害(ASD)過去には「自閉症」「広汎性発達障害」「アスペルガー症候群」などとされていた障害を統合した障害。対人関係の構築や他者とのコミュニケーションが不得手、特定の物に強いこだわりを持つなどの特性を持つ。②注意欠陥多動性障害(ADHD)不注意や多動性、衝動性などの特性を持つ。単純なミスが多い、頻繁に物を失くしたり忘れ物をしたりする、順番や約束を守るのが不得手などの行動がみられる。③学習障害(LD)知的な遅れがないにもかかわらず、読み書きや計算、話す、聞くなどのうち、特定の行為が著しく苦手で、学習が困難な状態である障害。文章がスムーズに読めない、誤字脱字が多い、図形やグラフを理解できないなどの特性がみられる。定義では「低年齢において発現する」とされていますが、発達障害の症状の有無は外見からは判別困難で、日常生活でも特に支障なく生活できることも少なくありません。そのため、本人や周囲も発達障害に気づかず医師の診断も受けないまま社会人になり、職場でのコミュケーションや業務遂行上のトラブルなどで「自分は発達障害かもしれない…」と気になり受診した結果、大人になってから診断されるケースが多くなっています。また、受診をしても「傾向はあるものの診断基準を満たさない」として正式に発達障害と診断されない「発達障害グレーゾーン」の方々も存在しています。では、これらの方々が職場で直面する問題の典型例はどのようなものなのでしょうか。3.発達障害を持つ従業員にまつわる職場でのあれこれ各障害の特性にもよりますが、職場で直面する問題には、対人関係や業務の進め方に関するものが多くみられます。①あいまいな表現や抽象的な指示を理解しにくいASDの場合、「適当にやっといて」のような曖昧な指示を受けても、具体的に何を求められているのか十分に理解や推測ができないため、期待と異なる成果物を出してしまうことがあります。②優先順位付けが難しい、ケアレスミスが多いADHDの場合、業務の優先順位付けが苦手で、重要業務を後回しにしてしまう、期限を守れないなどがみられることがあります。また、不注意や細かい確認作業が苦手な結果、データ入力ミスや書類の記入漏れなどを多発させてしまうことがあります。③対人関係のトラブルASDの場合、対人関係の構築が苦手であり、また、表情や声色などの非言語的な相手のメッセージを察することが難しい場合が多いことから、上司・同僚などとコミュニケーション上の行き違いにより対人関係のトラブルにつながることがあります。これらの光景、どこかで見た…という方も多いかもしれません。では、様々な障害の特性を踏まえ、会社側はどのように接していくべきなのでしょうか。4.会社側の対応は?-ひと工夫と合理的配慮発達障害をもつ従業員(グレーゾーンを含む)が働きやすい職場とするためには、各障害の特性に即した形で、業務遂行のためのひと工夫が欠かせません。具体的には以下のような対処が考えられます。【コミュニケーション面】指示を明確かつ具体的に「適当に」「なるべく早く」といった曖昧な指示ではなく、業務内容やそのゴール地点、期限などを明確に指示する。その際、メールやグループウェアなどを用いて指示の記録を文字に残すことも効果的。丁寧なフィードバック進捗状況や、指示を出した側が意図しない方向に進んでいないかなどは定期的に確認する。【職場環境面】長時間じっとしていられないなど集中力が散漫になりやすい場合、業務を短い時間に区切る、短いタスクに区切るなどにより達成感を感じやすくする。感覚過敏なケースもあるため、周囲の音(電話の着信音や話し声など)や職場の明るさなどに対して、遮音目的のヘッドホンの使用を認める、照明の明るさを抑えるなどの配慮を行う。そもそも、企業は障害のある従業員がその特性を理由に不利益を被ることがないよう、環境整備や業務内容の調整など「合理的配慮」の提供が義務づけられています(障害者差別解消法第5条)。発達障害を持つ従業員の場合、苦手な部分を周囲がサポートすることにより、こだわりの強い分野の業務などで高い能力を発揮することがあります。細かな配慮は一見すると面倒な、後ろ向きの対処に思えるかもしれませんが、彼らだけではなく、すべての従業員にとっても働きやすい環境を作ることにつながります。本稿は法令等に準じた形で「障害」の表記にしています。提供:税経システム研究所
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2025/06/30 税ワンポイント
青色申告の承認取消しと実務
青色申告制度は、欠損金の繰越控除や少額資産の一括償却などの優遇措置を受けられる一方で、厳格な要件の遵守が求められる制度である。国税庁は「事務運営指針(注1)」に基づき、申告期限を継続して守れていない法人などを定期的に抽出し、青色申告の承認取消しの対象となり得るかを審査している。取消しの理由は多岐にわたる。例えば、税務調査において帳簿書類の提示を求められたにもかかわらず、法人がこれを拒否した場合や、仮装・隠蔽に基づく不正所得が一定以上あった場合、また、帳簿の記載内容が不備で推計によらなければ所得金額を算定できないと認められる場合なども取消しの対象となる。実務上、特に多く見られるのは、2事業年度連続して申告書が提出期限内に提出されていないケースである。実際、福岡高裁令和5年6月30日判決(注2)では、法人が2期連続で期限内申告を行わなかったとして、青色申告の承認取消処分が適法とされた。納税者は、申告遅延の原因が申告を委任した税理士にあると主張したが、裁判所では税理士は代理人に過ぎず、その過失は納税者自身に帰属すると判断した。また、帳簿管理の不備による取消事例としては、税理士本人が青色申告の承認を取り消された名古屋地裁令和3年4月22日判決(注3)がある。本件では、青色申告の取消しに加え、所得税・消費税の更正処分も行われた。取消しの理由は、帳簿に現金取引の記載がないこと、私的費用の混在、証憑の不備など、帳簿全体の真実性を著しく損なうものであったためである。なお、電子帳簿保存法の要件を満たしていない場合も、青色申告の承認取消しが検討されることがある。事務運営指針では、電磁的記録等の備付け状況、保存の程度、今後の改善の可能性などを総合的に勘案し、青色申告書を提出するにふさわしいかどうかを判断するとされている。青色申告制度の恩恵を享受するためには、期限内申告、帳簿・証憑の整備、調査協力など、制度趣旨に則った適正な運用が不可欠である。遵法意識と管理体制の確立が、制度継続の鍵となる。<注釈>https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/000703-3/01.htmhttps://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2023/pdf/13862.pdfhttps://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2021/pdf/13552.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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