実務情報
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2025/01/14 税務ニュース
令和5年分における相続税の申告事績の概要
国税庁は、令和5年分における相続税の申告事績を公表した。令和5年分の被相続人数(死亡者数)は、厚生労働省の人口動態統計によると1,576,016人で、前年対比100.4%となった。このうち、相続税の申告書を提出した被相続人数は全体のおよそ1割にあたる155,740人(同103.2%)だった。また、相続税の納税者である相続人数は339,098人(同102.9%)だった。課税価格は21兆6,335億円(同104.6%)、申告税額の総計は3兆53億円(同107.4%)といずれも増加した。なお、課税価格とは、相続財産価額に相続時精算課税適用財産価額を加え、被相続人の債務・葬式費用を控除し、さらに相続開始前3年以内の被相続人から相続人等への生前贈与財産価額を加えたものである。相続税額のある申告書データから抽出した相続財産別の金額は以下のとおりで、いずれの項目も増加し、過去10年で最高となった。・土地7兆1,425億円・家屋1兆1,452億円・有価証券3兆8,779億円・現金・預貯金等7兆9,633億円・その他2兆5,817億円国税庁は、相続税申告のe-Tax利用を推進しているが、利用率は他の税目に比べて低い状態が続いている。令和5年度の利用は8.5万件、利用率は37.1%にとどまった。相続税申告のe-Taxに関連して、相続人等の利用者識別番号が不明な場合、委任を受けた税理士が「電子申告の変更等届出書」を提出することで、税務署から利用者識別番号の有無や番号を電話で確認できる制度がある。しかし、この手続きを利用すると、相続人等のパスワードがリセットされる問題があり、使い勝手が良いものではなかった。これについて、令和6年12月から手続きが簡素化され、パスワードのリセット有無を選択できるよう改善され、また、パスワードのリセットが不要な場合には、1件の届出書で複数の相続人等の利用者識別番号の有無を確認できるようになるなど、さらなる効率化が図られた。さらに、令和7年1月からは、e-Taxマイページの「各税目に関する情報」に「贈与税関係」が新たに追加され、過去にe-Taxで提出された贈与税申告書が参照可能となるので、今後一層、e-Taxの利便性が高まると期待される。(参考)令和5年分相続税の申告事績の概要https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/sozoku_shinkoku/pdf/sozoku_shinkoku.pdf(参考)「利用者識別番号」が不明な場合はコレで確認https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/pdf/0023011-093.pdf(参考)令和7年1月からe-Taxが一層便利になりますhttps://www.e-tax.nta.go.jp/topics/2024/topics_20241025.htm
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2025/01/10 税務ニュース
令和5事務年度における相続税の調査等の状況
国税庁は、資料情報等から申告額が過少であると想定される事案や、申告義務があるにもかかわらず無申告であると想定される事案等について、相続税の実地調査を実施し、その調査結果を公表した。令和5事務年度における実地調査件数は8,556件となり、前事務年度比104.4%と増加した。このうち申告漏れ等の非違があった件数は7,200件(同102.3%)、申告漏れ課税価格は2,745億円(同104.4%)だった。さらに、重加算税賦課の対象となった課税価格は375億円に上った。追徴税額(本税と加算税の合計)は735億円(同109.8%)に達し、調査の成果が上がっていることがうかがえる。国税庁は、実地調査と並行して「簡易な接触」にも積極的に取り組んでいる。簡易な接触とは、電話や来署依頼を通じて納税者に是正を求める手法で、効果的・効率的に課税を行うものとして位置づけられている。令和5事務年度の接触件数は18,781件と大幅に増加し(同125.2%)、このうち非違があった件数は5,079件(同137.8%)だった。申告漏れ課税価格は954億円(同139.0%)、追徴税額合計は122億円(同140.8%)と、いずれも平成28事務年度以降で最高で最高値を記録した。相続税調査において国税庁が特に重点を置いているのが、無申告事案と海外資産関連事案である。無申告事案については、税の公平性を著しく損ねる問題として例年重点的に取り組んでおり、令和5事務年度における無申告事案の追徴税額は123億円に達した。この金額は、調査結果の公表が始まった平成21年度以降で最高となる。一方で、資産運用の国際化に対応するため、国税庁はCRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)や租税条約等に基づく情報交換制度などを活用し、海外取引や海外資産の把握に努めている。しかしながら、令和5事務年度の海外資産関連事案では非違件数が168件(同96.6%)、申告漏れ課税価格が62億円(同88.9%)と、いずれも前年から減少した。国税庁は、今後も実地調査と簡易な接触を組み合わせた効率的な手法を進めるとともに、無申告や海外資産関連事案の早期把握に注力する方針である。これらの調査結果を公表することで、納税者の適正申告意識の向上を図ることを目指している。(参考)令和5事務年度における相続税の調査等の状況https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/sozoku_chosa/index.htm
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2025/01/09 税務ニュース
ユネスコ無形文化遺産登録と国税庁の取組
ユネスコ無形文化遺産保護条約第19回政府間委員会において、「伝統的酒造り」の代表一覧表記載に関する審議が行われ、日本時間令和6年12月5日(現地時間令和6年12月4日)、「記載」との決議がなされた。政府は、日本酒、焼酎、泡盛などの文化資源についてユネスコ無形文化遺産への登録への取組方針を掲げており、令和3年12月2日には「伝統的酒造り」が登録無形文化財に登録された。その後、令和5年3月にユネスコ事務局へ再提出された提案書(当初は令和4年3月)が認められ、今回の登録に至ったものである。国内の酒市場は、少子高齢化や人口減少といった人口動態の変化、消費者の低価格志向、ライフスタイルの変化、嗜好の多様化などにより縮小傾向にある。また、酒類業従事者の高齢化や後継者不足、とりわけ杜氏が有する技術やノウハウの継承が喫緊の課題となっている。酒類の課税数量と課税額は密接に関係しており、酒類業界の不振は酒税の税収減に直結する。事実、課税額は平成6年のピークから減少傾向が続き、令和2年および3年に底を打った。国税庁も酒類市場の拡大や業界全体の活性化を重要視しており、今回のユネスコ無形文化遺産登録に際して、国税庁長官は次のようにコメントしている。「この登録を契機に、国内のみならず海外の方にも『伝統的酒造り』の歴史や文化の豊かさを知っていただき、海外への更なる展開も含め、酒類業の振興に取り組んでまいります。」政府は、農林水産物・食品の輸出目標として「2025年までに2兆円、2030年までに5兆円」を掲げ、清酒、ウイスキー、本格焼酎・泡盛を輸出重点品目に位置づけている。日本産酒類の輸出金額は、世界の酒類市場全体から見れば、わずか0.1%程度ではあるが、国際的な評価の高まりを背景に年々増加しており、令和5年の輸出金額は、1,344億円に達した。令和7年度の概算要求では、酒類業振興に34.8億円が計上されている。販路拡大を目指し、海外の大規模展示会での日本産酒類出展や、酒類輸出コーディネーターのプロモーションセミナーなどの企画・実施を行う。また、海外販路拡大に関する酒類事業者の主体的な取り組みを補助金により支援することとしている。(参考)酒のしおりhttps://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/shiori/2024/pdf/0001.pdf(参考)「伝統的酒造り」のユネスコ無形文化遺産登録に当たってhttps://www.nta.go.jp/taxes/sake/koujikin/pdf/comment.pdf(参考)令和7年度概算要求(酒類業振興関係)の概要https://www.nta.go.jp/taxes/sake/pdf/0024008-066.pdf
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2025/01/08 税務レポート
国外源泉所得における人的役務提供の規定は意外に奥深い
はじめに所得税法161条1項は、国内源泉所得として、6号で「人的役務提供事業の対価」(以下、「6号所得」といいます。)を、12号イで「人的役務提供に対する報酬」(以下、「12号所得」といいます。)をそれぞれ定めています。この2つを見比べていただくと、人的役務提供は全く同じですが、6号所得では「対価」と、12号所得では「報酬」という箇所が異なっています。また、6号所得には「事業」という用語が使われていますが、12号には使用されていません。これまで、多くの方から「6号所得と12号所得の違いがわからない。」というお尋ねをいただいてきました。そこで、国内源泉所得の規定を調べてみると、意外に奥が深いことがわかりました。今回は、これら2つの所得がどのように異なっているかについて、ご説明します。1.所得税法の規定内容に入る前に所得税法161条1項に規定する6号所得と12号所得の条文を確認しておきます。六国内において人的役務の提供を主たる内容とする事業で政令で定めるものを行う者が受ける当該人的役務の提供に係る対価十二次に掲げる給与、報酬又は年金イ俸給、給料、賃金、歳費、賞与又はこれらの性質を有する給与その他人的役務の提供に対する報酬のうち、国内において行う勤務その他の人的役務の提供(内国法人の役員として国外において行う勤務その他の政令で定める人的役務の提供を含む。)に基因するもの次に、6号所得にある政令(所得税法施行令282条)をご紹介します。(人的役務の提供を主たる内容とする事業の範囲)第282条法第161条第1項第6号(国内源泉所得)に規定する政令で定める事業は、次に掲げる事業とする。一映画若しくは演劇の俳優、音楽家その他の芸能人又は職業運動家の役務の提供を主たる内容とする事業二弁護士、公認会計士、建築士その他の自由職業者の役務の提供を主たる内容とする事業三科学技術、経営管理その他の分野に関する専門的知識又は特別の技能を有する者の当該知識又は技能を活用して行う役務の提供を主たる内容とする事業(機械設備の販売その他事業を行う者の主たる業務に付随して行われる場合における当該事業及び法第2条第1項第八号の四ロ(定義)に規定する建設又は据付けの工事の指揮監督の役務の提供を主たる内容とする事業を除く。)所得税法の規定を見ると、6号所得は事業所得、12号所得は給与所得のように見えます。次に、6号所得と12号所得は、ともに「国内において」とあり、これが国内に源泉を有する所得(国内源泉所得)とされ、日本で課税を受ける理由になると考えられます。あらためて条文を見ていただくと、(見る人によって異なるものの)2つの条文がある程度類似していることがわかります。2.外国芸能法人に支払う外国音楽家の渡航費等をめぐる裁判例(1)東京地裁令和4年9月14日判決の概要この事件は、イベントプロモート事業を営む内国法人Xが、平成27年2月から平成30年10月までの間、外国音楽家を国内で行われる公演に招いた際に、これらの外国音楽家の出演に関する契約をXとの間で締結するなどしてその音楽活動のマネジメントを行っていた国外芸能法人に対し、外国音楽家の出演料とは別に、同出演のために要した渡航費、機材の運送費その他の諸雑費(以下、「渡航費等」といいます)を支払った(以下、「本件各支払」といいます。)ことに原因があります。本件は、Xが、本件各支払を行った際、いずれも所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」といいます。)の源泉徴収をしなかったところ、川崎南税務署長から、本件各支払額は「国内において人的役務の提供を主たる内容とする事業で政令で定めるものを行う者が受ける当該人的役務の提供に係る対価」(所得税法161条1項6号)に該当するとの理由により、本件各支払額についての源泉所得税等の納税告知処分(以下「本件各納税告知処分」といいます。)及び不納付加算税の賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」といい、本件各納税告知処分と併せて「本件各処分」といいます。)をそれぞれ受けたため、本件各処分はいずれも所得税法の解釈及び適用を誤った違法な処分であると主張して、その各取消しを求める事案です。これをイメージ図で示すと、次のとおりです。【本件イメージ図】(出典:筆者作成)(2)人的役務提供における支払の流れ上のイメージ図に基づいて、人的役務提供の支払いの流れを確認します。まず、Xが外国芸能法人に出演料と渡航費等を支払います。これを受領した外国芸能法人は、外国音楽家に対して出演料を支払う一方、渡航費等を航空会社等に支払います。受領した金額の一部は手数料として、外国芸能法人自身が収益として計上することになるでしょう。これを別の角度から見ると、現実に人的役務提供を行った外国音楽家は、日本で源泉徴収をされていないことになります。外国音楽家は、日本のファンのために音楽を提供したのですが、その対価は外国芸能法人から受け取ります。そして、日本で外国音楽家に直接課税されてはいません。つまり、日本で課税されるのは、人的役務提供をした外国音楽家ではなく、その仲介(又はあっせん)をした外国芸能法人ということになります。これはどういうことなのでしょう。(3)人的役務提供事業の対価に出演料が含まれることここで先のイメージ図を再度確認します。Xから受領した出演料は、いずれかの時期に外国芸能法人から外国音楽家に支払われます。国内で人的役務提供をした外国音楽家は、直接日本から課税されるわけではありません。所在地国において、その国の税法により課税されることになります。上述したように、外国音楽家が国内において提供した人的役務提供に関しては、外国芸能法人に対価が支払われるときに源泉徴収されます。ということは、外国芸能法人に支払われる対価(特に、出演料)の中に、最終的に外国音楽家が受領する報酬が含まれているので、その報酬に対していわば間接的に日本で課税を行うことができている、と理解することができます。3.芸能法人への源泉徴収に外国音楽家への課税が含まれていること日本の国内源泉所得の規定は、昭和37年に整備されました。国内源泉所得の基本的な考え方は、現行法にも生きています。当時の立法者の解説を見てみると、次のように記述されています。「源泉徴収そのものを芸能法人にたいし、日本のスポンサーが支払う段階で一括源泉徴収しよう、つまり、源泉徴収の対象になるのは、芸能法人そのものの所得だけでなくて芸能法人を通じて支払われる個々の芸能を提供する非居住者にたいする報酬相当分、これも同時にスポンサーの支払い段階で源泉徴収の対象になるというところに意味があるわけです。」(国税庁「非居住者、外国法人及び外国税額控除に関する改正税法の解説(昭和37年5月1日)」15頁)立法担当者の解説では、スポンサーという用語が用いられていますが、今回の裁判例ではイベント・プロモーターXを指します。いずれにしても、当時の立法者としては、現実に役務提供を行う芸能人などの人的役務提供を行う者への課税を含めて、6号所得の課税対象を考えていたことがわかります。4.渡航費等への課税はどのように考えるべきか今回紹介した東京地判令和4年9月14日では、渡航費等への源泉徴収に不服を持ったXが出訴したものです。裁判所は、Xの主張を斥けて「渡航費等は、6号所得の対価に含むべき」と判断を下しました。理由は、対価という用語はいわゆる収入概念だからということ、昭和40年に全文改正された所得税法の趣旨目的からそのように解釈できること、などとしました。つまり、人的役務提供に付随する費用についても、人的役務提供事業の対価に含まれるという判断です。本判決は控訴されたものの、納税者の主張は棄却されたとのことです。おわりに今回は、国内源泉所得における6号所得と12号所得の文言が類似することで、差異が明らかではないという疑問について、規程の創設趣旨を確認しました。その結果、6号所得では、直接的に課税できない12号所得を含んで源泉徴収の対象とすることが明らかになりました。実務上、これら2つの区分がわかりにくいことはありますが、創設趣旨に基づいて考えることができるかもしれません。条文の創設趣旨に遡ると、当時から外国芸能法人を通じて来日していた音楽家がいることもわかりました。個人的には、税法の奥深さを確認することができ、税法の面白さが少し理解できたような気がしています。提供:税経システム研究所
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2025/01/08 税務ニュース
令和7年1月から収受日付印の押なつ廃止へ
国税庁は、納税者の利便性向上と税務行政のデジタル化推進を目的に、令和7年1月から申告書等の控えに収受日付印の押なつを廃止する。これにより、書面による提出からe-Taxを利用した提出への転換をさらに推進していく方針である。これまでも確定申告時期には、収受日付印が不要な納税者を対象に「提出ポスト」の利用促進などが試みられてきたが、制度としては十分に定着しなかった。一方で、e-Taxの普及は進んでおり、令和5年度には、所得税申告で69.3%、法人税申告で86.2%という高い利用率を達成している。このデジタル化の潮流を背景に、収受日付印の押なつ廃止が決定した。収受日付印の押なつ廃止に向けて、国税庁は十分な準備期間を設け、金融機関や行政機関などに対して事前説明を実施してきた。令和7年1月以降は、各種の事務において収受日付印の押なつされた申告書等の提出を求めないことを要請している。また、仮に、押なつ廃止後も押なつ書類の提出を求める機関を把握した場合は、国税当局が個別に説明を行うとしている。これまで、金融機関での融資や行政機関の助成金、補助金の申請、奨学金の申請などで、収受日付印が押なつされた申告書等の提出が求められてきた。今後も提出事実や提出年月日などが確認できる書類の提出が求められる場面が想定されるため、以下の方法を活用すると良いだろう。1e-Tax(電子申告)による申告・申請手続2申告書等情報取得サービスの利用(オンライン請求)3保有個人情報の開示請求(手数料有り)4税務署での申告書等の閲覧サービス5納税証明書の交付請求(手数料有り)国税庁は、収受日付印の廃止に伴う当面の対応として、窓口で交付する「リーフレット」に「収受日付」や「税務署名」を記載し、希望者に交付する方針である。また、郵送で申告書等を提出する場合は、切手を貼付した返信用の封筒を同封すると、同様のリーフレットを返送する仕組みをとる。確定申告時期には、収受日付印を求める納税者で窓口が混雑する光景が恒例となっている。この押なつ廃止を機に、書面での提出からe-Taxによる提出へ切り替えることが現実的な対応と考えられる。(参考)令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについてhttps://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/onatsu/index.htm(参考)申告書等の控えへの収受日付印の押なつの見直しに関するQ&Ahttps://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/onatsu/pdf/0023001-078.pdf(参考)当分の間交付するリーフレットhttps://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/onatsu/pdf/0023001-078.pdf#page=6
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2025/01/07 税務ニュース
会計ソフトの利用状況等の記載について
我が国においては、2021年(令和3年)9月にデジタル社会実現の司令塔としてデジタル庁が発足し、社会全体でデジタル社会の実現に向けて取り組んでいくこととされている。現在、資金決済関係ではキャッシュレス決済、企業間決済のデジタル化、手形・小切手機能の電子化、税務関係では国税の電子申告(e-Tax)の普及及び定着、電子帳簿保存法の改正、インボイス制度の導入など、デジタル化の影響から企業を取り巻く環境は急速かつ大きく変化している。国税庁が2023年(令和5年)6月に公表した「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2023」においては、事業者の取引全体のデジタル化、会計・経理全体のデジタル化等を強力に推進することは、政府全体として取り組む重要な課題の一つであることを挙げている。具体的には、事業者が日頃行う事務処理について、一貫してデジタルで完結することを可能とすることにより、事業者は単純誤りの防止による正確性の向上や事務の効率化による生産性の向上等といった大きなメリットを享受することが期待できる。経済取引と業務がデジタル化され、税務処理も含めて一貫して効率的にデジタル処理できる環境を整備することにより、事業者の正確性向上等を実現するとともに、結果として他の事業者のデジタル化も促され税務手続も業務も更なるデジタル化が進むという、“デジタル化の推進が更なるデジタル化につながる好循環”を生み出すことで、社会全体のDX推進につながり、社会全体にデジタル化のメリットが波及することが期待される。国税庁では、事業者のビジネスプロセス全体をデジタル化するという視点に立ち、取り組みの先には社会全体のDX推進にも貢献するという社会的な意義が存することも念頭に置きながら、事業者の業務のデジタル化推進に取り組んでいくとしている。国税庁においては、今後における事業者のデジタル化促進に向けた各種施策の参考に資するものとして、所得税等の確定申告書や法人税等申告に係る法人事業概況書の作成に当たっては、以下の項目のとおり事業者の会計ソフトの利用状況等の確実な記載を要請しており、現実を踏まえた適切な記載が求められる。1所得税及び復興特別所得税の確定申告書第1表の収入金額等のア~ウ欄の区分2法人税及び地方法人税の申告に係る法人事業概況書に設定している、「5PC利用状況」に係る項目(参考)「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2023-」https://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/digitaltransformation2023/index.htm(参考)「事業者のデジタル化促進」https://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/jigyousyadx.htm
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2025/01/06 税ワンポイント
暦年贈与と相続時精算課税
2024年1月から相続税・贈与税が大幅に改正された。この改正を踏まえ、節税を目的とした「駆け込み贈与」は12月末までに行う必要がある。そこで、贈与税の課税制度である「暦年贈与」と「相続時精算課税」について、基本と改正点のポイントを解説する。暦年課税とは、その年の1月1日から12月31日までに贈与された財産に課税する制度である。この制度には贈与者や受贈者に特別な制限がなく、血縁や縁戚に関係なく贈与することができる。暦年課税では、年間110万円の基礎控除が設けられており、贈与額が110万円を超えた場合にのみ、超過額に累進税率で課税される。一方、贈与額が年間110万円以下であれば、贈与税の申告義務はない(注1)。ただし、暦年贈与では、贈与者が亡くなった場合には、生前贈与された財産が相続財産に加算される制度の「持ち戻し」規定が適用される。贈与された額が相続税の対象として加算される。この加算される期間が、改正前はこの「持ち戻し」の対象期間が相続開始前3年までであったが、改正後は7年に延長された。なお、相続が開始する3年よりも前の4年間については合計100万円まで加算されない特例が設けられた(注2)。相続時精算課税は、60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子や孫に対して行われた贈与について利用できる制度である。この制度には特別控除額2,500万円が設けられており、控除額の範囲内であれば贈与時には贈与税が課されない。特別控除額を超えた場合は、超えた額に一律20%の税率で課税される。相続時には基礎控除額を控除した残額が相続財産に加算され、相続税の課税対象となる(注3)。税制改正により、相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が新たに設けられた(注2)。暦年贈与と相続時精算課税制度にはそれぞれ利点と欠点があり、贈与者と受贈者の条件に応じた選択を行うが、相続時精算課税制度の条件を満たすのであれば、毎年110万円以内の贈与を繰り返すことで非課税枠を効果的に利用して節税することを視野に入れたい。ただし、相続時精算課税制度を選択すると暦年贈与には戻れないため、慎重な判断が必要である。基礎控除110万円は、暦年課税、相続時精算課税制度ともに1月から12月までの1年間で計算されるため、今年中に贈与する場合は、12月末までに贈与の意思を示し、贈与することが必要である。できれば、贈与契約書を作成して贈与の意思を明確に示しておくと良い。令和6年が相続時精算課税制度の初年度となる場合、基礎控除以下の贈与であれば申告は不要だが、「相続時精算課税選択届出書」の提出は必須である点に注意が必要だ。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402.htmhttps://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0023006-004.pdfhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/01/06 審査事例
土地売却代金と将来の還元住戸の取得代金が相殺されても、土地売却益は引渡した事業年度に計上すると判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】法人税法上、各事業年度の益金の額に算入すべき収益の額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算すべきとされている。固定資産の譲渡による収益の額はその引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入するという法人税基本通達2-1-14の定めは、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従い、収益計上時期に権利確定主義を採用しており、法人税法の趣旨に適合すると解されている。不動産業の審査請求人は、甲社から提案を受け、所有土地を甲社に売却し、甲社が当該土地上に建築する分譲マンション内の住戸を譲り受けることに合意して、土地の売買契約並びに等価交換協定書を交わし、土地を引渡した平成29年9月期に売却益を計上した。その後、土地譲渡益の計上は、還元住戸の引渡予定日の令和2年2月28日の属する事業年度になるとして、更正の請求を行ったが、税務署は認めなかった。国税不服審判所は、契約書等の内容から、土地の売却と還元住戸の取得は別々の売買取引である、そして、土地の引渡し日に所有権移転登記と固定資産税等の精算が行われているから、土地の譲渡による収入は引渡し日において権利が確定しており、同日の属する平成29年9月期に譲渡益を計上すると判断した事例である。(平成28年10月1日から平成29年9月30日までの事業年度の法人税の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分、他・棄却・令03-04-20裁決)(非公開)【主な争点】更正の請求は認められるか。具体的には、土地の譲渡益の計上時期は、土地の引渡し時か、交換を前提とし、それぞれの代金が相殺された、還元住戸の取得の時か。【裁決の要旨】1)売買契約及び還元契約について売買契約書には、土地と住戸の交換協定が、締結に至らなかった又失効した場合であっても、その理由のいかんにかかわらず、本件売買契約に何ら影響を及ぼさない旨、交換協定書には、交換協定及び還元契約が解除等により失効した場合であっても、その理由のいかんにかかわらず、売買契約に何ら影響を及ぼさない旨がそれぞれ定められている。土地と還元住戸それぞれの売買代金を対当額につき相殺する方法により支払う旨は定められているものの、土地と還元住戸とを交換する旨は定められていない。契約当事者によって選択された法形式を否定すべき特段の事由もないことからすれば、売買契約と還元契約はそれぞれが有効に成立した別個の契約であり、それぞれの契約に基づく取引は独立した売買取引であると認められる。2)収益等の額の計上時期について売買契約書においては、土地の引渡期日は、平成29年7月31日と定めた上で、同日に所有権移転の登記が行われていること、甲社が同日以降分の固定資産税及び都市計画税の精算金を審査請求人に対して支払っていることが認められる。この事実からすれば、土地の引渡しがあった日は、平成29年7月31日であることは明らかであり、土地の譲渡によって生ずる収入については、同日において、その収入すべき権利が確定したとみるのが相当であるから、土地の譲渡による収益等の額については、同日の属する平成29年9月期の益金等の額に算入することとなる。以上のことからすれば、納付すべき税額が過大であるとは認められないから、更正の請求には、国税通則法第23条《更正の請求》第1項第1号の規定に該当する事由はない。【参照条文】国税通則法第23条《更正の請求》法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》法人税基本通達2-1-14《固定資産の譲渡による収益の帰属の時期》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/01/06 税務ニュース
国税庁 インボイスの新規開業者向けFAQ公表
国税庁は、インボイス制度特設サイトに新規開業者向けの特設ページを開設し、インボイス登録を行う事業者の多くを占める新規開業者向けに、インボイス制度等の留意点をまとめた「新たに事業を開始した方向けFAQ」を公表した。今回公表されたFAQは大きく、「インボイス発行事業者の登録を受けた方ができること・やること」「新たに事業を開始した事業者の方の登録は?」「「新たに事業を開始した」とは?」「相続により事業を承継した場合は?」「法人成りした場合は?」について解説が行われており、個人事業者向けに17問、法人向けに8問について解説が行われており、新たに事業を開始した場合の登録方法等7問が個人・法人共通のFAQとなっている。「新たに事業を開始した」とは?では、新たに事業を開始したことの意義等について解説されており、「新たに事業を開始した」とは、「国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した」ことで、「課税資産の譲渡等に係る事業を開始した」とは、「課税資産の譲渡等を開始した」ことだけでなく、当該取引を行うために必要な事務所等の賃貸借契約の締結、資材等の課税仕入れ等の準備行為を行ったことも含まれることが示されている。一度事業をやめた個人事業者が、また新たに事業を開始した場合については、事業を開始した課税期間の開始の日の前日まで2年以上にわたって課税資産の譲渡等又は課税仕入れ等がなければ、新たに事業を開始したものとして取り扱われるものとされている(個人問10)。また、「新たに事業を開始した」かどうかの判定は、業態ごとに行うものではないため、個人の免税事業者が課税期間の途中で業態を変更(コンサルタント業から動画配信業など)した場合でも、新たに事業を開始したことにならず、免税事業者として申請した登録希望日からインボイスの登録を受けることになる(個人問11)。事業開始予定については、新たに事業を開始したことに関して、インボイス発行事業者の登録を受けることができるのは事業者に限られるため、まだ事業を始めていない(将来始める予定の)場合は登録申請を行うことはできないとした(個人問12)。法人については、法人設立登記手続に時間を要し、法人の設立初年度は事業活動を全く行っておらず、2期目にインボイス発行事業者の登録申請を行ったケースについては、2期目において新たに事業を開始したものとして、登録を受けることができるとした(法人問7)。事業開始前に行った設備投資に係る仕入税額控除については、「課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日」とは、課税資産の譲渡等を開始した日のみではなく、事務所等の賃貸借契約の締結や資材等の課税仕入れ等の事業に必要な準備行為を行った日も含まれる。そのため、課税資産の譲渡等に係る事業を行うために設備投資を行った場合は、その時点で事業を開始したと考えられるとした。例えば、新たに事業を開始したものとして課税期間の初日に遡ってインボイス発行事業者の登録を受けた場合、課税期間の初日から課税事業者となるため、そうした設備投資もインボイスの保存により仕入税額控除を適用できることを示した(個人13問/法人8問)。その他、相続でインボイス発行事業者の事業を承継した場合や、個人事業者が法人成りした場合のインボイス対応等が示されているため、確認しておくとよい。(参考)新たに事業を開始した方向けインボイス制度の留意点https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_sinkijigyousha.htm
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2024/12/27 税務ニュース
「中小規模事業者における個人情報等の安全管理措置に関する実態調査」について
個人情報保護委員会(以下「委員会」という。)は11月29日、「中小規模事業者における個人情報等の安全管理措置に関する実態調査」資料を公表した。この調査は、中小規模事業者(以下「事業者」という。)における個人情報等の安全管理措置の実態を把握し、事業者の個人情報保護に対する意識の向上、体制の見直しにつなげるため、委員会における施策の検討及び今後の執務に役立てることを目的とし、従業員数100人以下の事業者を対象として実施されている(回収数3,821件・回収率22.5%)。令和6年度上半期において、委員会への個人情報等の漏えいなどの報告の約30%が不正アクセスによるものであり、不正アクセスを受けた経験のある事業者は2.1%となっている。個人情報の取扱いに関する課題については、「何をしてよいか分からない」が40.0%、「個人情報保護法等の理解不足」は26.9%となっており、事業者の個人情報対策は不十分であることが確認されている。なお、個人情報の管理に当たり参考にしているものとしては、「法律・ガイドライン」が47.5%、「弁護士や税理士、コンサルティング業者等への相談」は15.8%であり、内訳は税理士83.6%、社会保険労務士26.4%、弁護士12.7%と税理士が最も多くなっている。また、不正アクセスによる被害については、「システム等の停止」が34.1%、「クレジットカード情報等の決済情報の漏えい」は17.1%、「顧客・取引先情報の漏えい」は8.5%であり、その原因は、「システムの脆弱性」が25.6%、「フィッシングメール」は24.4%となっている。安全管理措置に関する取組みについて、実施済みの割合は「ウィルス対策ソフトウェアの導入」が41.7%、「ウィルス対策ソフトウェアの自動更新などによる最新状態の維持」は44.2%、「個人データが記録された媒体(紙・USB・パソコンなど)を復元不可能な手段で廃棄」は34.0%となっているが、全ての項目で実施済み及び実施予定の割合が5割未満に留まっている。これらの状況を踏まえ、委員会では、事業者に対しては個人情報等の安全管理措置の問題点等を広く周知し、適切な取扱いを促すために引き続き広報・啓発を実施する必要があり、周知広報に当たっては、士業の団体である日本税理士会連合会などに協力を要請していくこと等が考えられるとしている。なお、東京税理士会では、今年度から警視庁サイバーセキュリティ対策本部等による情報セキュリティに加え、委員会による研修を実施している。(参考)「中小規模事業者における個人情報等の安全管理措置に関する実態調査」資料の公表についてhttps://www.ppc.go.jp/files/pdf/R6_chuushou_anzenkanri_summary.pdf
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