新着 実務情報
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2025/06/24
職場における熱中症対策の強化について
厚生労働省は、令和7年5月30日、令和6年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)を公表した。職場における熱中症対策については、熱中症の重篤化を防止するため、労働安全衛生規則が改正され、令和7年6月1日から施行されている。この改正により、事業者には以下の措置が義務付けられる。1熱中症を生ずるおそれのある作業を行う際に、①「熱中症の自覚症状がある作業者」②「熱中症のおそれがある作業者を見つけた者」が、その旨を報告するための体制(連絡先や担当者)を事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に対して周知すること2熱中症を生ずるおそれのある作業を行う際に、①作業からの離脱②身体の冷却③必要に応じて医師の診察又は処置を受けさせること④事業場における緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先及び所在地等など、熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置に関する内容や実施手順を事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に対して周知することなお、熱中症を生ずるおそれのある作業とは、WBGT(湿球黒球温度)28度又は気温31度以上の作業場において行われる作業で、継続して1時間以上又は1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれるものをいう。公表された「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」は、職場における熱中症による死傷者数の状況(2015~2024年)、業種別発生状況(2020~2024年)、月・時間帯別発生状況(2020~2024年)、年齢別発生状況(2020~2024年)、2024年の熱中症による死亡災害の事例であり、その概要は以下のとおりである。職場における熱中症による死傷者数の状況(2015~2024年)職場での熱中症による死亡者及び休業4日以上の業務上疾病者の数(以下合わせて「死傷者数」という。)は、2024年に1,257人と、死傷者数について統計を取り始めた2005年以降、最多となっている。うち、死亡者数は31人と、死亡災害について統計を取り始めた1989年以降、当時、観測史上1位の猛暑であった平成22年の47人に次いで多くなっている。業種別発生状況(2020~2024年)2024年の死傷者数1,257人について、業種別でみると、製造業が235人、建設業が228人の順で多くなっている。死亡者数については、31人のうち建設業が10人と最も多く発生しており、次いで、製造業が5人となっている。月・時間帯別発生状況(2020~2024年)1.月別発生状況2024年の死傷者数1,257人について、月別の発生状況でみると、約8割が7月、8月の2ヶ月間に集中している。特に死亡者数については、31人のうち、1人を除き、7月又は8月に集中している。2.時間帯別発生状況2024年の死傷者数1,257人について、時間帯別の発生状況についてみると、午前中や午後3時前後の被災者数が多くなってことが窺えるが、いずれの時間帯でも発生している。死亡災害についても同様にいずれの時間帯でも発生している。年齢別発生状況(2020~2024年)2024年の死傷者数1,257人について、年齢別の発生状況についてみると、死傷者数、死亡者数ともにいずれの年齢層においても発生しており、死傷者数については、50歳代以上で全体の約56%を占めており、死亡者数については全体の約67%を占めている。(参考)職場における熱中症による死傷者数の状況(2015~2024年)https://neccyusho.mhlw.go.jp/heatstroke/#sec01_04(参考)労働安全衛生規則の一部を改正https://neccyusho.mhlw.go.jp/pdf/2025/r7_ministerial_ordinance.pdf
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2025/06/23
暗号資産の個人間取引の損失の額を立証できていないから、損失の額はなかったと推認されると判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】課税処分においては、原則として、原処分庁がその課税要件事実についての主張立証責任を負う。しかし、必要経費の金額と同様、所得の損失の金額は所得金額の計算上の減算要素で、納税者には有利な事柄である上、納税者の支配領域内の出来事で、通常、納税者の方が原処分庁よりも主張立証が容易であるから、納税者が積極的に損失の金額を主張立証しない場合には、存在しないことが事実上推認されるものと解されている。本件の審査請求人は確定申告をしていたが、暗号資産の取引からの雑所得を申告していなかった。税務署は、各暗号資産交換業者が運営する暗号資産取引所を調査し、審査請求人に係る暗号資産の取引を把握して、各年分の所得税等に係る各更正処分等をした。審査請求人は、個人間取引の損失がある、税務署は立証責任を完全に審査請求人に転嫁しているなどと主張した。国税不服審判所は、審査請求人は主張立証しないから、損失が生じたという個人間取引はなかったと推認されると判断した事例である。(平成29年分及び平成30年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却・令和5年6月15日裁決(非公開))【主な争点】税務署が算定した各年分の暗号資産取引に係る雑所得の金額に誤りがあるか。【裁決の要旨】個人間取引については、審査請求人は、証拠書類はほとんど残していないとして、税務署に提出済みのメモ以外の資料を提示していないが、当該提出メモによれば、600万円弱から1,000万円強の取引を計7回行っているところ、このような高額な取引を複数回行っているにもかかわらず、取引時のニックネームを覚えていない、スマホを買い替えたなどの理由で、これらを客観的に確認できる資料を一切残していないというのは、通常考えにくい。雑所得の金額については、原則として原処分庁がその主張立証責任を負うものであるが、審査請求人の主張する個人間取引は、損失が生じているものとされており、これを前提とすると、当該個人間取引は、審査請求人に有利な事柄である上、その取引は審査請求人の支配領域内の出来事であるから、その主張立証は、審査請求人の方が原処分庁より容易であるところ、審査請求人が積極的にこれを主張立証しているとはいい難い。審査請求人の主張する個人間取引については、立証責任が原処分庁にあることを前提にしてもなお、個人間取引はなかったと推認される。【参照条文】所得税法第35条《雑所得》、第36条《収入金額》、第37条《必要経費》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/06/23
財産債務調書と国外財産調書の提出期限は6月30日
「財産債務調書」と「国外財産調書」は、一定額以上の財産を持つ者に対し、提出が義務付けられている書類である。令和6年分については、令和7年6月30日(月)が提出期限となっている。これらの調書を正確に提出した場合には、過少申告加算税の軽減措置が適用される一方、不提出や虚偽記載がある場合には加重措置や罰則の対象となるため、非止めに要件を確認し、適切に対応する必要がある。【財産債務調書】財産債務調書は、その年の12月31日時点の財産及び債務の状況を記載し、翌年6月30日までに、所得税の納税地を所轄する税務署に提出する制度である。財産債務調書合計表を添付し、書面またはe-Taxで提出する(注1)。提出義務があるのは、以下のいずれかに該当する居住者である。その年の12月31日時点で、財産の総額が3億円以上、かつ、その年分の所得金額(退職所得を除く)の合計額が2,000万円を超える者ただし、所得税の確定申告書を提出する必要が無い者や還付申告書が提出できない者は提出が不要である。同日時点で、有価証券等の合計額が1億円以上、かつ、その年分の退職所得金額(所得を除く)の合計額が2,000万円を超える者ただし、所得税の確定申告書を提出する必要が無い者や還付申告書が提出できない者は提出が不要である。同日時点で、財産の総額が10億円以上である者この場合は、所得税の申告義務や所得金額に関係なく提出義務がある。【国外財産調書】国外財産調書は、その年の12月31日時点で、国外財産の総額が5,000万円以上である居住者(非永住者を除く)に提出義務があり、同日時点での国外財産状況を記載し、翌年6月30日までに税務署に提出する制度である。財産債務調書合計表を添付して、所得税の納税地を所轄する税務署に提出する(注2)。国外財産調書には、氏名、住所(又は居所等)、マイナンバーのほか、国外財産の種類、数量、価額、所在等を記載する。また、国外財産に係る事項については、「種類別」、「用途別」(一般用及び事業用の別)及び「所在別」に記載する必要がある。財産の価額は、その年の12月31日における「時価」または時価に準ずるものとして「見積価額」によることとされ、外貨建て財産については、同日における外国為替の売買相場による邦貨換算することとされている。これらの調書は、所得税の申告義務とは異なる基準に基づき提出が求められるため、要件該当の有無を慎重に確認し、作成もれや提出もれが無いよう注意すべきである。なお、令和6年2月7日裁決(注3)では、財産債務調書の記載が不十分であったことから納税者の主張が認められず、加重措置が適用された事例もある。調書の作成に当たっては、合計金額だけでなく、個別の銘柄ごとの明細まで正確に記載することが求められる。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7457.htmhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7456.htmhttps://www.kfs.go.jp/service/JP/134/01/index.html提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/06/23
相続土地国庫帰属制度の運用状況
法務省は5月22日、相続土地国庫帰属制度の運用状況に関する統計を同省ホームページに公開した(速報値)。相続土地国庫帰属制度とは、相続した土地が管理できないまま放置されることで、将来、「所有者不明土地」が発生することを予防するため、相続または遺贈によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とするものであり、令和5年4月27日から開始している。相続土地国庫帰属制度の運用状況に関する統計のホームページは、制度の運用状況に合わせて、順次内容を更新しているが、公開している数値はいずれも速報値であることに留意することが必要である。公開している内容は、1.申請件数、2.帰属件数、3.却下・不承認件数、4.取下げ件数となっている。1.申請件数(令和7年4月30日現在)(1)総数3,732件(2)地目別田・畑:1,431件、宅地:1,302件、山林:582件、その他:417件2.帰属件数(令和7年4月30日現在)(1)総数1,586件(2)種目別宅地:603件、農用地:497件、森林:89件、その他:397件3.却下・不承認件数(令和7年4月30日現在)(1)却下件数58件(却下の理由)・現に通路の用に供されている土地(施行令第2条第1号)に該当した:12件・現に水道用地、用悪水路又はため池の用に供されている土地(施行令第2条第4号)に該当した:1件・境界が明らかでない土地(法第2条第3項第5号)に該当した:11件・承認申請が申請の権限を有しない者の申請(法第4条第1項第1号)に該当した:6件・法第3条第1項及び施行規則第3条各号に定める添付書類の提出がなかった(法第4条第1項第2号):33件(2)不承認件数54件(不承認の理由)・崖(勾配が30度以上であり、かつ、高さが5メートル以上のもの)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの(法第5条第1項第1号)に該当した:5件・土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地(法第5条第1項第2号)に該当した:23件・除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地(法第5条第1項第3号)に該当した:2件・民法上の通行権利が現に妨げられている土地(施行令第4条第2項第1号)に該当した:2件・所有権に基づく使用又は収益が現に妨害されている土地(施行令第4条第2項第2号)に該当した:1件・災害の危険により、土地や土地周辺の人、財産に被害を生じさせるおそれを防止するための措置が必要な土地(施行令第4条第3項第1号)に該当した:3件・国による追加の整備が必要な森林(施行令第4条第3項第3号)に該当した:22件・国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地(施行令第4条第3項第4号)に該当した:6件なお、1つの事件で複数の却下の理由又は不承認の理由が認められる場合がある。4.取下げ件数(令和7年4月30日現在)604件取下げの原因の例として下記のものがある。・自治体や国の機関による土地の有効活用が決定した・隣接地所有者から土地の引き受けの申出があった・農業委員会の調整等により農地として活用される見込みとなった・審査の途中で却下、不承認相当であることが判明した(参考)相続土地国庫帰属制度の統計https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00579.html
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2025/06/20
米国関税措置の影響に関する企業ヒアリングの結果の公表
財務省は令和7年6月13日「政府系金融機関による企業ヒアリング(米国関税措置の影響)の結果」を公表した。財務省では令和7年4月22日に「米国関税措置の影響に関する企業ヒアリングの結果」と併せて「政府系金融機関による企業ヒアリング(米国関税措置の影響)の結果」を公表しており、今回の調査は事業者を取り巻く環境が変化する中、改めて5月末時点で融資先等にヒアリングを実施したものである。令和7年4月22日に行われた「米国関税措置の影響に関する企業ヒアリング」は今年4月9日~15日の期間に、全国518社(製造業317社、非製造業176社、業界団体等25社)を対象に実施したもので、ヒアリングの結果概要は、「すでに影響が出ているとの声は1割弱であり、現時点で影響がないとの声が多数」、「ただし、現時点で影響はないものの、今後の影響を懸念する声も多く聞かれた」というものであった。ヒアリング対象の政府系金融機関は、日本政策投資銀行(DBJ)【大企業・中堅企業】、日本公庫【中小企業・小規模事業者】、国際協力銀行(JBIC)【主として大企業(海外拠点を含む)】で、令和7年4月22日には、DBJは輸送用機械・はん用機械を中心に227先のヒアリングを実施し、日本公庫は、中小事業部で、製造業を中心に705先のヒアリングを実施し、国民事業部で、全国の商工会・商工会議所277先のヒアリングを実施し、農林事業部で、農業・畜産業・林業・漁業に30先のヒアリングを実施した。また、JBICでは、自動車・半導体・重工・電力・資源等165先のヒアリングを実施した。令和7年6月13日には、DBJは輸送用機械・はん用機械を中心に230先のヒアリングを実施し、日本公庫は、4月22日と同数のヒアリングを行い、JBICでは、4月22日に行った事業者を継続フォロー、アップデートを実施した。令和7年6月13日の各政府系金融機関の調査結果概要は以下のとおりである。DBJ【大企業・中堅企業】・融資先(230先)にヒアリングを実施した結果、販売量の減少や生産コストの増加など、事業全体で影響が発生しうるとの回答は全体の2割、資金繰りで影響が発生しうるとの回答は全体の1割弱と、前回(4月22日)調査から大きな変化はなかった。・輸送用機械(自動車業界)に対象を絞ると、事業全体で影響が発生しうるとの回答が5割と前回(4月22日)調査から拡大、資金繰りで影響が発生しうるとの回答が2割と前回から大きな変化はなかった。日本公庫【中小企業•小規模事業者】・中小事業部の融資先(705先)、全国の商工会・商工会議所(277先)にヒアリングを実施した結果、「現時点で影響あり」「今後影響が、発生する可能性がある」の割合が、前回(4月22日)調査から若干増加しているものの、引き続き、影響なしとの声が多数であった。JBIC【主として大企業(海外拠点を含む)】・自動車・重工・鉄鋼・資源等を継続フォローし、アップデート(海外拠点についても聴取)を行った。・不透明な状況が続き、影響は様子見であるも、関税措置による景気悪化、コスト増加、クレジットスプレッド拡大等に伴う懸念があり、具体的には、自動車における設備投資資金、販売を下支えする資金の潜在的なニーズに加え、米国・第三国間の関税による影響や、インフレの影響が懸念される分野(LNG)がある。米国向け直接輸出は代替困難な製品が多いため、影響が限定的な分野(鉄鋼)も存在するが、間接的な影響には留意が必要である。・地域別にみると、地産地消型のビジネスであり影響は軽微という声がある一方、中国など一部製造拠点を米国・東南アジアに移管する動きがある。米国への輸出減に伴い、他地域での価格競争等を懸念する声がある。(参考)政府系金融機関による企業ヒアリング(米国関税措置の影響)の結果https://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/20250613_kekka.pdf(参考)米国関税措置の影響に関する企業ヒアリングの結果https://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/20250422.html
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2025/06/19
中小企業の賃金改定に関する調査
日本商工会議所ならびに東京商工会議所は6月4日、「中小企業の賃金改定に関する調査」の結果を公表した。本調査は、昨年度に引き続き、雇用の7割を支える中小企業における賃上げの実態を詳細に把握し、今後の要望活動に活かすことを目的として、本年4月から5月にかけて全国47都道府県の会員企業3,042社を対象に実施されたものである。回答の集計・分析に当たっては、以下のように分類して行われた。・従業員規模別:全体(3,042社)、小規模企業(従業員20人以下、1,612社)・地域別:都市部(東京23区・政令指定都市490社)、地方(2,552社、うち小規模企業1,363社)・雇用形態別:正社員、パート・アルバイト等1従業員規模別の賃上げ実施状況2025年度の賃上げについて、「賃上げを実施する(予定を含む。)」企業は、全体で69.6%(前年比▲4.7ポイント)、小規模企業では57.7%(同▲5.6ポイント)となった。「現時点で未定」とする企業は、全体で23.5%(同+3.1ポイント)、小規模企業では31.9%(同+2.9ポイント)であり、価格転嫁の遅れや米国の関税措置などによる先行きの不透明感から、慎重な姿勢を取る企業が増加している。なお、「賃上げを実施する(予定を含む。)」と回答した企業のうち、「業績の改善が見られないが賃上げを実施する(予定を含む。)」とする防衛的な賃上げを行う企業は、全体で60.1%(同+1.0ポイント)、小規模企業では62.8%(同▲1.3ポイント)となっている。主な理由としては、「人材の確保・採用」が71.5%、「物価上昇への対応」が69.4%となっている。2地域別の賃上げ実施状況「賃上げを実施する(予定を含む。)」企業の割合は、都市部で71.4%、地方で69.3%となっている。一方で、地方・小規模企業では57.1%と全体より12.5ポイント低く、「現時点で未定」との回答も33.5%に達しており、賃上げに対してより慎重な姿勢が見られるとしている。3雇用形態別の賃上げ実施状況正社員(月給)の賃上げについて、全体では賃上げ額11,074円、賃上げ率4.03%(同+0.41ポイント)、小規模企業では賃上げ額9,568円、賃上げ率3.54%(同+0.20ポイント)となっている。地域別では、都市部は賃上げ額12,857円、賃上げ率4.37%(同+0.48ポイント)、地方は賃上げ額10,627円、賃上げ率3.94%(同+0.41ポイント)、地方・小規模企業では賃上げ額9,269円、賃上げ率3.55%(同+0.34ポイント)となっており、都市部・地方ともに前年を上回る賃上げが実施されているが、地方の小規模企業においては賃上げ幅が相対的に小さい傾向にあるとしている。(参考)「中小企業の賃金改定に関する調査」https://www.jcci.or.jp/news/research/2025/0604153019.html
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2025/06/18 所得税国際税務
国外財産調書の10年
はじめに居住者の方(非永住者の方を除きます。)で、その年の12月31日においてその価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する場合には、その国外財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載した国外財産調書を、その年の翌年の6月30日までに、住所地等の所轄税務署に提出しなければなりません。そして、国外財産調書の提出が提出期限内にない場合又は提出期限内に提出された国外財産調書に記載すべき国外財産の記載がない場合などに、その国外財産に関して所得税・相続税の申告漏れ(死亡した方に係るものを除きます。)が生じたときは、その国外財産に係る過少申告加算税等が5%加重されます。本稿は、国外財産調書の10年と題して国税庁公表資料を題材として、その提出状況と筆者が考える問題点について述べていきたいと思います。1.国外財産調書の提出状況(1)国外財産調書に基づく国外財産の状況国外財産調書の提出が始まったのは2013年12月31日現在の国外財産からです。執筆日現在、2023年12月31日現在の国外財産の提出状況まで公表されています。これら合計11年分の資料のうち、国外財産の提出状況を図表1にまとめました。【図表1:国外財産調書の提出状況】(出典:国税庁資料に基づいて筆者作成)図表1をご覧いただくと、国外財産調書の提出枚数と国外財産金額が順調に増加していることがわかります。提出枚数は2013年5,539件が2023年には13,243件に、国外財産の合計は2013年2.51兆円が2023年6.49兆円にそれぞれ増加しています。(2)加算税の加重措置件数と増差所得金額の状況国外財産調書制度は、富裕層と呼ばれる納税者が「自主的に」提出することになっています。ただし、富裕層が全員国外財産調書を提出するとは限りません。そこで、国外財産調書を適切に提出した場合加算税の減額措置がある一方で、その逆(国外財産調書を提出しない又は重要な財産を記載していない)には、加算税を加重することとされています。これについて、図表2で加重措置件数と増差所得金額をお示しします。【図表2:加算税の加重措置件数と増差所得金額(単位:億円)】(出典:国税庁資料に基づいて筆者作成)2.国外財産調書の問題点(1)最近の円安をどのように考えるかご案内のように、ロシアによるウクライナ侵攻により、それまで1米ドル=115円程度だった円は大幅に円安になりました。一時は1米ドル=160円を超えるなどして、日本政府は為替介入を行いました。為替については、第2次トランプ政権の関税政策により円高方向ではありますが、引き続き140円台となっています。国外財産調書は円貨で計算することになっているので、円高の時には金額が少なくなる一方、円安の場合は多く表示されます。これを図表1に当てはめてみると、2013年は1米ドル=97.75円、2014年は109.45円でしたが、2022年は144.81円、2023年は141.84円となっています。2013年と2023年を比べると、1.45倍になっています。そうなると、国外財産調書の金額も為替を考慮した方がいいと思います。(2)国際的な株高を考えなくてもいいのか図表1には表示していませんが、国外財産調書のうち有価証券の割合が毎年50%を超えています。具体的は2013年では2.51兆円のうち1.56兆円が有価証券でした。2023年も6.39兆円のうち4.1兆円が有価証券です。2013年に比べると2023年では2.6倍に増えました。有価証券ということは、株式や国債、投資信託などが含まれます。このうち、外国の国債は国外財産に含まれます。これ以外は外国に所在する証券会社等と契約したものが国外財産になります。ちなみに、新NISAで外国株式やオルカン(オールカントリーという投資信託)に投資している方は増えましたが、こちらは国内の証券会社との契約ですので国内財産になります。ここで、米国の代表的指標であるS&P500指数を調べてみました。それによると、2013年は1681だったのが2023年は4769と2.84倍に上昇しました。もちろん、国外財産調書に記載された有価証券がすべてS&Pに投資されたわけではありませんが、海外の金融市場は新型コロナの影響を受けつつも順調に上昇していることはご存知のとおりです。こうなると、国外財産調書の有価証券の金額が2.6倍になったとしても、米国S&Pの伸びと比較すると、ほとんど変わりません。ということは、国外財産調書の提出枚数は順調に増加したものの、(ちょっと乱暴ではありますが)海外金融市場における上昇幅と比較するとそれほど増えているわけではないと言っても過言ではないようです。(3)加算税の加重措置件数は高止まりしている図表2をご覧いただくと、加算税の加重措置件数は2019年には450件ほどでしたが、ここ4年ほどは300件程度です。国外財産調書の提出枚数は順調に増加しているにもかかわらず、加算税の加重措置件数は高止まりしていると考えられます。このことは、制度開始から10年以上経過しているにもかかわらず、未だに国外財産調書を提出していない又は重要な情報を記載していない富裕層が相変わらず一定数いるということです。ここ数年は新型コロナの影響で税務調査は比較的困難な状況にあったことを考えると、引き続き一定の富裕層は国外財産調書を提出していないのではないかと考えられます。もっとも、上述したように最近の海外金融市場における上昇と円安の影響を直接受けて、急に国外財産が5000万円を超えることになった納税者はいるかもしれません。しかし、一般の納税者の感覚からすると、外国の証券会社に一定以上の有価証券を寄託することができる人は、まさに富裕層だからこそ、と思われます。いずれにしても、合計で13,243枚(2023年)しか提出されていない国外財産調書に関して、加重措置件数が300件程度というのでは国外財産調書を真面目に提出している方とそうでない方との公平性が担保できていないのではないでしょうか。まとめ本稿は、国外財産調書の10年と題して、同制度に関する国税庁公表資料を紹介するとともに、その問題点を記載してみました。図表1を見ていただくと、国外財産調書の提出枚数と金額は順調に増加してきました。一方、加算税の加重措置件数は高止まりしているといってもいい状況です。富裕層は相当前から海外のプライベートバンクを利用しています。富裕層は所得金額が高く、納税額も多額になることから、どうしても税金を払いたくないという誘惑にかられます。このような状況下、富裕層に対する適正な課税、特に真面目に国外財産調書を提出している方とそうでない方との公平性を確保することが求められると思います。提供:税経システム研究所
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2025/06/18
令和7年度税制改正(基礎控除の見直し関係)Q&Aを公表
国税庁は、令和7年度税制改正により行われた所得税の「基礎控除」、「給与所得控除」に関する見直しや「特定親族特別控除」の創設などに伴う、源泉徴収事務の変更点をまとめたQ&Aを特設サイトにおいて5月30日に公表した。今回のQ&Aは、改正後の令和7年分年末調整事務および令和8年1月以後の源泉徴収事務を中心に、以下の7項目で構成されている。・改正の概要・令和7年分年末調整関係書類の記載事項・特定親族特別申告書・令和7年分年末調整における年税額の計算・令和8年分以後の給与の源泉徴収事務・公的年金等に係る令和7年度税制改正・令和7年分の所得税に係る準確定申告書等なかでも注意すべき点は、令和7年分の給与に関する源泉徴収事務の手続きである。税制改正による基礎控除の見直し等は令和7年12月1日から適用されるため、それ以前の令和7年11月末までに支払われる給与については、従来通りの源泉徴収事務を行うこととなる。そして、12月以後に支払う給与および年末調整から改正後の取扱いが適用される(「1-1改正の概要」参照)。このため、令和7年12月に実施する年末調整では、改正後の基礎控除額や給与所得控除に基づいて年間の所得税額を計算し、改正前の「源泉徴収税額表」によって計算した源泉徴収税額との精算を行うことになる(「1-1改正の概要」参照)。もし、年の最後の給与が11月30日以前に支払われた場合は、年末調整では改正後の控除等は適用されず、確定申告で適用されることとなる(「1-12令和7年12月1日以後居住者として給与の支払を受けていない人」参照)。特に注意が必要なのは、令和7年11月30日以前に令和7年分の準確定申告の提出を行う場合、一旦、改正前の税額計算による準確定申告書を提出し、12月1日以後に、改めて更正の請求を行うことで改正後の制度の適用を受けることとなる(「7-1令和7年11月30日以前に準確定申告書を提出する場合の基礎控除等」参照)。なお、令和8年1月1日以降は、改正後の「源泉徴収税額表」に基づき源泉徴収事務を行うことになる(「5-1令和8年分以後の給与の源泉徴収事務の改正」参照)。改正後の源泉徴収事務に必要な用紙等について、「特定親族特別控除申告書」、「給与所得の源泉徴収票」、「令和8年分給与所得に対する源泉徴収簿」は令和7年6月末頃、「令和7年分年末調整のしかた」、「令和8年分源泉徴収税額表」は令和7年8月末頃に国税庁ホームページに掲載予定である。(参考)令和7年度税制改正(基礎控除の見直し等関係)Q&Ahttps://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0025005-051.pdf(参考)令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等についてhttps://www.nta.go.jp/users/gensen/2025kiso/index.htm
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2025/06/17
「令和6年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」
国税庁は5月30日、「令和6年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」を公表した。1申告所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)の申告状況申告人員は2,339万人(対前年比+0.6%)と、平成27年分以降ほぼ横ばいで推移しており、申告納税額がある納税人員は517万人(同▲22.6%)、その所得金額は51兆1,604億円(同+3.2%)、申告納税額は4兆3,989億円(同+8.6%)となっている。(1)土地等の譲渡所得(総合譲渡を含む。)の申告状況申告人員は58万人(同+4.3%)であり、所得金額がある有所得人員は39万人(同+3.4%)、その所得金額は6兆4,993億円(同+6.8%)となっている。(2)株式等の譲渡所得の申告状況申告人員は118万人(同+2.3%)であり、所得金額がある有所得人員は74万人(同+13.4%)、その所得金額は8兆854億円(同+42.7%)となっている。(3)e-Taxの利用状況等(トピックス1)e-Taxの利用による所得税等の申告人員は1,732万人(同+7.9%)、前年分から127万人増加し、申告人員全体2,339万人のうち、74.0%がe-Taxで申告している。(4)自宅からのe-Taxの利用状況等(トピックス2)自宅からe-Taxで申告した人員は824万人(同+19.4%)、前年分から134万人増加し、申告人員全体のうち35.2%となっている。また、自宅からスマホを利用してe-Taxで申告した人員は408万人(同+29.0%)、前年分から92万人増加し、自宅からe-Taxで申告した人員の約半数を占めている。他方、確定申告会場において申告した人員は、前年分から19万人減少し、251万人と申告人員全体の約1割となっている。(5)書かない確定申告の推進(トピックス3)同庁では、マイナポータル連携を利用した「日本版記入済み申告書(書かない確定申告)」を推進しているが、マイナポータル連携の利用者は310万人(同+62.4%)、前年分から119万人増加している。2個人事業者の消費税の申告状況申告件数は212万件(同+7.5%)、申告納税額については8,004億円(同+16.8%)となっている。3贈与税の申告状況申告人員は47万人(同▲7.0%)、申告納税額がある納税人員は33万人(同▲11.4%)、その申告納税額は3,935億円(同+10.9%)となっている。なお、同庁では、平成15年分の確定申告以降、休日の相談対応(「閉庁日対応」)を行ってきたが、e-Tax利用者の増加と閉庁日の来場者数の減少を踏まえ、閉庁日対応のあり方について見直しを行っており、段階的な縮小・廃止の検討を進めていくとしている。(参考)「令和6年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」https://www.nta.go.jp/topics/pdf/0025005-063.pdf
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2025/06/16
課税事業者から免税事業者になった場合の棚卸資産に係る消費税額の調整の対象であると判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】消費税法第36条《納税義務の免除を受けないこととなった場合等の棚卸資産に係る消費税額の調整》第5項は、課税事業者(原則課税の適用中)が免税事業者となった場合、免税事業者となる課税期間の直前課税期間の課税仕入れである棚卸資産を有しているときは、その棚卸資産の仕入れに係る消費税額は、その直前課税期間の仕入れ税額控除の計算の基礎に含めない(控除できない)という調整を行うことを規定している。ただし、消費税法は棚卸資産とは商品、製品、半製品といった種類を掲げるにとどまり、それらの具体的な内容を定義していない。本件の審査請求人は、不動産管理や飲食業経営などを定款で事業目的に掲げる2月決算の合同会社で、2月28日にJ社から金地金67kg(本件金地金)を523,638,500円(税込)で取得し、資産の部の「その他の投資等」に計上、消費税額を仕入れ税額控除の計算に含めて確定申告した。そして、免税事業者になった翌期早々の3月3日にJ社へ本件金地金を524,744,000円(税込)で売却した(あわせて本件金地金取引)。税務署は、本件金地金は消費税法上の棚卸資産に該当するから、法第36条第5項の適用があるとして更正処分を行った。審査請求人は、金地金取引は定款の事業目的外の取引で、審査請求人の営業に当たらず、「棚卸資産」に該当しないなどと主張した。国税不服審判所は、金地金の売買が審査請求人の事業目的から離れたところで行われたものとはいえないなどとして、当該金地金は「棚卸資産」に該当すると判断した事例である。(令和3年3月1日から令和4年2月28日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却・令和6年4月25日裁決)【主な争点】本件金地金は、消費税法第36条第5項に規定する「棚卸資産」に該当するか。【裁決の要旨】消費税法第36条第5項に規定する「棚卸資産」に該当するか否かについては、会計処理のみにより形式的に判断するのではなく、判断の対象とされている資産と事業者の属性及び事業目的との関係、当該資産の取得時の使用・収益・処分に係る方針等といった客観的な事実に基づき、事業者が、通常の営業過程、すなわち、その事業目的に係る業務の過程において売却することを目的として保有する資産に当たるといえるかどうかにより実質的に判断するのが相当である。審査請求人が行う金地金の売買に係る取引額が審査請求人の事業規模に照らして大きく、事業に及ぼす影響が大きいことからすると、審査請求人における金地金の売買は、補助ないし付随的な活動とはいえず、定款に明示的に掲げられた事業目的そのものではないとしても、事業目的から離れたところで行われているものとはいえない。本件金地金は、審査請求人の事業目的に係る取引の客体にほかならない。また、本件金地金の取得から売却に至る経緯(購入した金地金を受取る前に買取り用の郵送キットを請求済み)及び本件金地金を取得するための借入金を返済するためには本件金地金を売却する必要があったこと等からすると、審査請求人は、本件金地金を取得した時点において、将来、これを売却する方針を有していたと認められる。これらの事実に基づけば、審査請求人は、その事業目的に係る業務の過程において売却することを目的として本件金地金を保有していたものと認められるから、本件金地金は消費税法第36条第5項に規定する「棚卸資産」に該当する。【参照条文】消費税法第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》、第30条《仕入れに係る消費税額の控除》、第36条《納税義務の免除を受けないこととなった場合等の棚卸資産に係る消費税額の調整》消費税法施行令第4条《棚卸資産の範囲》棚卸資産会計基準第3項本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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