新着 実務情報
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2025/06/17
「令和6年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」
国税庁は5月30日、「令和6年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」を公表した。1申告所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)の申告状況申告人員は2,339万人(対前年比+0.6%)と、平成27年分以降ほぼ横ばいで推移しており、申告納税額がある納税人員は517万人(同▲22.6%)、その所得金額は51兆1,604億円(同+3.2%)、申告納税額は4兆3,989億円(同+8.6%)となっている。(1)土地等の譲渡所得(総合譲渡を含む。)の申告状況申告人員は58万人(同+4.3%)であり、所得金額がある有所得人員は39万人(同+3.4%)、その所得金額は6兆4,993億円(同+6.8%)となっている。(2)株式等の譲渡所得の申告状況申告人員は118万人(同+2.3%)であり、所得金額がある有所得人員は74万人(同+13.4%)、その所得金額は8兆854億円(同+42.7%)となっている。(3)e-Taxの利用状況等(トピックス1)e-Taxの利用による所得税等の申告人員は1,732万人(同+7.9%)、前年分から127万人増加し、申告人員全体2,339万人のうち、74.0%がe-Taxで申告している。(4)自宅からのe-Taxの利用状況等(トピックス2)自宅からe-Taxで申告した人員は824万人(同+19.4%)、前年分から134万人増加し、申告人員全体のうち35.2%となっている。また、自宅からスマホを利用してe-Taxで申告した人員は408万人(同+29.0%)、前年分から92万人増加し、自宅からe-Taxで申告した人員の約半数を占めている。他方、確定申告会場において申告した人員は、前年分から19万人減少し、251万人と申告人員全体の約1割となっている。(5)書かない確定申告の推進(トピックス3)同庁では、マイナポータル連携を利用した「日本版記入済み申告書(書かない確定申告)」を推進しているが、マイナポータル連携の利用者は310万人(同+62.4%)、前年分から119万人増加している。2個人事業者の消費税の申告状況申告件数は212万件(同+7.5%)、申告納税額については8,004億円(同+16.8%)となっている。3贈与税の申告状況申告人員は47万人(同▲7.0%)、申告納税額がある納税人員は33万人(同▲11.4%)、その申告納税額は3,935億円(同+10.9%)となっている。なお、同庁では、平成15年分の確定申告以降、休日の相談対応(「閉庁日対応」)を行ってきたが、e-Tax利用者の増加と閉庁日の来場者数の減少を踏まえ、閉庁日対応のあり方について見直しを行っており、段階的な縮小・廃止の検討を進めていくとしている。(参考)「令和6年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」https://www.nta.go.jp/topics/pdf/0025005-063.pdf
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2025/06/16
役員貸付金と退職金相殺のリスク
中小企業では、法人が役員等の私的費用を立て替えたり、証拠書類の不備による支出を貸付金として処理する例が少なくない。こうした貸付金は、たとえ1件ごとの金額が小さくても、累積すると多額となり、会社の資金繰りや信用に影響を及ぼす可能性がある。金融機関からの評価が下がり、融資に支障が生じることもあるため、早期処理が望まれる。貸付金を役員報酬の増額によって相殺する方法は良く用いられるが、貸付金残高が多い場合は数年にわたる対応が必要になり、その間も利息が発生し続ける。こうした事情から、役員退職慰労金との相殺によって処理する手法が検討されることがある。この方法は、資金移動を伴わずに帳簿上で処理を完結できる上に、退職金は分離課税であり、退職所得控除も適用されることから、税務上有利に見える。しかし、形式が整っていても実態が伴わなければ、税務上のリスクが高いことを忘れてはならない。平成30年8月30日の東京地裁判決(税務訴訟資料第268号‐75)では、一般社団法人が理事長に対する貸付金相当額を退職給付資産から支給し、後日返済を受けた処理が問題となった(注1)。法人側は「貸付金は退職慰労金の前貸しとして帳簿上付け替えたに過ぎない」と主張したが、裁判所は、退職の事実がないにもかかわらず在任中に支給されていた点や、貸付金を通常とは異なる勘定(退職給付資産)を用いて計上していた点を問題視し、その支給は「賞与」に該当すると判断した。退職金を利用した貸付金相殺は、退職の事実が明確であること、金額が社会通念上妥当であること、そして、就業規則や退職金規程との整合性が保たれていることが前提となる。これらが欠けた処理は、法人税法上の損金不算入や源泉所得税の追加徴収などのリスクを招く。さらに、大口の役員貸付金や退職金支給は、国税庁の調査選定システム上も注目されやすく、法人税調査に加えて資産税調査(贈与税や相続税)に発展する可能性もある。適正な決議(取締役会や株主総会)と議事録の整備を怠らず、法務・税務の両面から慎重に進めることが求められる。<注釈>https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2018/pdf/13180.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/06/16
課税事業者から免税事業者になった場合の棚卸資産に係る消費税額の調整の対象であると判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】消費税法第36条《納税義務の免除を受けないこととなった場合等の棚卸資産に係る消費税額の調整》第5項は、課税事業者(原則課税の適用中)が免税事業者となった場合、免税事業者となる課税期間の直前課税期間の課税仕入れである棚卸資産を有しているときは、その棚卸資産の仕入れに係る消費税額は、その直前課税期間の仕入れ税額控除の計算の基礎に含めない(控除できない)という調整を行うことを規定している。ただし、消費税法は棚卸資産とは商品、製品、半製品といった種類を掲げるにとどまり、それらの具体的な内容を定義していない。本件の審査請求人は、不動産管理や飲食業経営などを定款で事業目的に掲げる2月決算の合同会社で、2月28日にJ社から金地金67kg(本件金地金)を523,638,500円(税込)で取得し、資産の部の「その他の投資等」に計上、消費税額を仕入れ税額控除の計算に含めて確定申告した。そして、免税事業者になった翌期早々の3月3日にJ社へ本件金地金を524,744,000円(税込)で売却した(あわせて本件金地金取引)。税務署は、本件金地金は消費税法上の棚卸資産に該当するから、法第36条第5項の適用があるとして更正処分を行った。審査請求人は、金地金取引は定款の事業目的外の取引で、審査請求人の営業に当たらず、「棚卸資産」に該当しないなどと主張した。国税不服審判所は、金地金の売買が審査請求人の事業目的から離れたところで行われたものとはいえないなどとして、当該金地金は「棚卸資産」に該当すると判断した事例である。(令和3年3月1日から令和4年2月28日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却・令和6年4月25日裁決)【主な争点】本件金地金は、消費税法第36条第5項に規定する「棚卸資産」に該当するか。【裁決の要旨】消費税法第36条第5項に規定する「棚卸資産」に該当するか否かについては、会計処理のみにより形式的に判断するのではなく、判断の対象とされている資産と事業者の属性及び事業目的との関係、当該資産の取得時の使用・収益・処分に係る方針等といった客観的な事実に基づき、事業者が、通常の営業過程、すなわち、その事業目的に係る業務の過程において売却することを目的として保有する資産に当たるといえるかどうかにより実質的に判断するのが相当である。審査請求人が行う金地金の売買に係る取引額が審査請求人の事業規模に照らして大きく、事業に及ぼす影響が大きいことからすると、審査請求人における金地金の売買は、補助ないし付随的な活動とはいえず、定款に明示的に掲げられた事業目的そのものではないとしても、事業目的から離れたところで行われているものとはいえない。本件金地金は、審査請求人の事業目的に係る取引の客体にほかならない。また、本件金地金の取得から売却に至る経緯(購入した金地金を受取る前に買取り用の郵送キットを請求済み)及び本件金地金を取得するための借入金を返済するためには本件金地金を売却する必要があったこと等からすると、審査請求人は、本件金地金を取得した時点において、将来、これを売却する方針を有していたと認められる。これらの事実に基づけば、審査請求人は、その事業目的に係る業務の過程において売却することを目的として本件金地金を保有していたものと認められるから、本件金地金は消費税法第36条第5項に規定する「棚卸資産」に該当する。【参照条文】消費税法第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》、第30条《仕入れに係る消費税額の控除》、第36条《納税義務の免除を受けないこととなった場合等の棚卸資産に係る消費税額の調整》消費税法施行令第4条《棚卸資産の範囲》棚卸資産会計基準第3項本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/06/16
「国税スマートフォン決済専用サイト」のメンテナンス
国税庁は、令和7年6月6日「「国税スマートフォン決済専用サイト」のメンテナンス(令和7年6月16日)のお知らせ」を公表した。メンテナンス中は、スマホアプリ納付の手続が利用できないため、注意が必要である。メンテナンス日時:2025年6月16日(月)午前2時00分~午前6時00分スマホアプリ納付とは、e-Taxで申告等データを送信した後などに、国税庁長官が指定した納付受託者(GMOペイメントゲートウェイ株式会社)が運営するスマートフォン決済専用のWebサイト(国税スマートフォン決済専用サイト)から、「○○Pay」といったスマホ決済アプリを使用して納付する方法で、申告税額等が30万円以下の場合に利用できる方法である。納付可能な税目は、申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税、法人税(グループ通算、連結納税を含む)等であり、本税に加えて、附帯税(加算税、延滞税等)の納付も可能となっている(附帯税のみの納付も可能)。また、所得税徴収高計算書の提出が必要となる「源泉所得税及び復興特別所得税」の納付についても、e-Tax(国税電子申告・納税システム)において、所得税徴収高計算書データを送信した後、メッセージボックスに格納される受信通知から「国税スマートフォン決済専用サイト」へアクセスする方法により、納付することができる。※1「国税スマートフォン決済専用サイト」は、これまで複数あったアクセス方法を令和7年2月1日からe-Taxを経由する方法に集約したもので、スマホアプリ納付を行う場合には、スマートフォンまたはパソコンからe-Taxにより申告等の手続を行った上で、e-Taxを経由して「国税スマートフォン決済専用サイト」を利用することになる。令和7年1月6日から確定申告書等作成コーナーで申告書を書面で作成した際に出力されるQRコードについては、上記の集約化に伴い、出力されなくなっている。国税庁では、スマホアプリ納付について下記の注意を行っている。・アカウント残高を利用した支払方法のみ利用可能なため、事前に利用するPay払いへのアカウント登録及び残高へのチャージが必要。・全ての税目が納付可能だが、印紙を貼り付けて納付する場合等、利用ができない税目がある。・納付しようとする金額が30万円以下の場合に利用することができるが、利用するPay払いで設定された上限金額により、利用可能な金額が制限される場合がある。・30万円を超える納付税額について、複数回に分けて納付することは控えてほしい。・領収書は発行されない。・決済手数料は発生しない。スマホアプリ納付利用の詳細については、「スマホアプリ納付Q&A」を参考にするとよい。※2(参考)スマホアプリ納付の手続https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/smartphone_nofu/index.htm※1https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/smartphone_nofu/smartphone_qa.htm#a2-13※2https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/smartphone_nofu/smartphone.htm
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2025/06/13
「公益法人等に財産を寄附した場合における譲渡所得等の特例のあらまし」を公表
令和7年度税制改正に伴い、公益法人等に対する財産の寄附に係る譲渡所得等の非課税制度が一部改正された。国税庁は、パンフレット「公益法人等に財産を寄附した場合における譲渡所得等の非課税の特例のあらまし」を公表した。個人が土地や建物、株式などの財産を法人に寄附した場合、通常は寄附時の時価で譲渡があったものとみなされ、取得時から寄附時までの値上がり益に対して所得税が課税される。ただし、これらの財産を公益法人等に寄附し、一定の要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたときは、非課税となる特例がある。この特例には、「一般特例」と「承認特例」の2種類がある。「一般特例」は、公益の増進に著しく寄与する寄附について承認を受けた場合に非課税となるものである。「承認特例」は、承認特例対象法人に寄附した場合で、寄附者が寄附を受けた法人の役員等に該当しないことなどの要件を満たせば、非課税となるものである。なお、「一般特例」は、非課税承認された場合、承認の通知が行われるが、「承認特例」については承認があったとみなされる「自動承認」の仕組みが設けられている。いずれも非課税承認を受けるためには、財産が寄附から2年以内に公益目的の事業に直接使われるなどの要件を満たす必要があり、所轄の税務署を経由して国税庁長官に承認申請書を提出する。もし、寄附日から2年以内に公益目的の事業に使用されなかった場合や、使用を途中でやめた場合は承認が取り消され、譲渡所得として所得税が課されることになる。今回の改正では、「承認特例」の対象範囲に公益信託の受託者に対するその信託財産とするための贈与等で一定のもののうち、その贈与等に係る財産が一定の基金に組み入れられるものが加えられた(※)。新しい公益信託制度は、今夏をめどに新公益信託法施行に必要な法令等が作成されることとなっており、当該改正の施行は令和8年4月1日となる見込みである。※https://www.nta.go.jp/publication/pamph/joto-sanrin/r07aramashi.pdf(参考)公益法人等に財産を寄附した場合における譲渡所得等の非課税の特例のあらましhttps://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0020006-125.pdf
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2025/06/12
「『Society5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会』報告書」を公表
経済産業省では、今後のデジタル人材育成の在り方を議論するため、「Society5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会」及び「デジタル人材のスキル・学習の在り方ワーキンググループ」を開催し、有識者とともに議論を重ねてきた。今回、その内容を「『Society5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会』報告書:スキルベースの人材育成を目指して」(以下「本報告書」という。)として、5月23日に公表した。背景として、現在の労働市場では、スキルを身につけた人が必ずしも評価されず、また、企業における処遇の予見可能性も低く、結果として個人の学習やスキル習得のモチベーションが高まらない状況があり、一方、AI時代に向けては、変化をいとわず学び続ける必要があることから、スキル習得の努力が報われ、キャリア設計を個人に取り戻すため、スキルベースの人材育成に向けた環境整備が必要である。具体的には、デジタル人材育成を支えるスキル情報基盤を通じて、諸外国と同様にスキルベースの人材育成を実現することが期待されており、こうしたことから、同省ではスキルベースのデジタル人材育成の在り方について議論を重ね、本報告書を取りまとめたものである。本報告書では、全体の背景として、企業は人材投資せず、個人も学ぼうとしない日本において、足下でスキルギャップが顕在化しており、生成AIがもたらす技術革新の加速、構造的な人手不足といった課題に向き合いながら、いかにデジタル人材育成を加速させるかとの問題提起を行っている。まず、第1章「デジタル人材育成をとりまく現状とこれまでの取組」では、デジタル人材育成を取り巻く現状など課題を示し、次に第2章「スキルベースの人材育成に向けた取組の現状と方向性」では、スキル可視化、スキルベース組織などについて概観し、人材育成に向けた方向性について論点整理を行っている。これを受けて、第3章「デジタル人材育成を支えるスキル情報基盤の在り方」では、スキル情報を広く労働市場で活用するためのスキル情報基盤の在り方などについて検討している。最後に第4章「デジタル人材のスキル・学習の在り方」では、デジタル人材のスキルなどを概観した上で、Society5.0時代に向けたデジタル人材育成の体系として、「ビジネス」、「エンジニアリング」、「デジタルリテラシー」の3領域を設定して、最新のデジタルスキル標準に基づき官民で人材育成体系を形成することを示し、その上で変革のマインドセットを具現化する6分野の人材スキルの可視化や育成の方法などについて、デジタルスキル標準の改訂や試験区分の新設も含めて検討を深めることを示している。今後、本報告書を起点として、各専門スキルやデジタルリテラシー別に各論点をより詳細に議論する場としてタスクフォースを順次立ち上げた上で、議論を重ねていく予定としている。(参考)「『Society5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会』報告書」を公表https://www.meti.go.jp/press/2025/05/20250523005/20250523005.html
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2025/06/11 相続・贈与税税制改正
相続時精算課税に係る基礎控除の創設と期限後申告における相続時精算課税の適用の可否
1相続時精算課税に係る基礎控除の創設令和5年度税制改正において、相続時精算課税について暦年課税とは別に110万円の基礎控除が創設され(相法21の11の2①、措法70の3の2①)、まず、この基礎控除額を控除した後に、従来の限度額2,500万円の特別控除額を控除することとされました。すでに、令和6年1月1日以後に贈与により取得した財産について適用されています。なお、同一年中に2人以上の特定贈与者からの贈与により財産を取得した場合の基礎控除額110万円は、特定贈与者ごとの贈与税の課税価格で按分することになります(相法21の11の2②)。また、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算される令和6年1月1日以後に贈与により取得した財産の価額は、基礎控除額を控除した後の残額とされているため(相法21の15①)、相続税の計算の際、基礎控除額部分は対象外となります。【国税庁資料】2相続時精算課税の申告及び届出の確認令和6年1月1日以後に贈与により財産を取得し、新たに相続時精算課税制度の適用を受けようとする受贈者で、この基礎控除後の課税価格がある場合には、贈与を受けた財産に係る申告書の提出期限までに、相続時精算課税選択届出書及び受贈者や特定贈与者の戸籍謄本や抄本など、一定の書類を申告書に添付して提出する必要があります。なお、基礎控除後の課税価格がない場合には、申告義務がないことから、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、相続時精算課税選択届出書、一定の書類を単独で提出しなければなりません(相法21の9②)。相続時精算課税選択届出書(令和6年分以降用)には、3欄に次のような記載欄があります。また、相続時精算課税選択届出書をその提出期限までに提出しなかった場合には、相続時精算課税の適用を受けることはできず、その場合における宥恕規定は設けられていないので注意が必要です(相基通21の9‐3)。3期限後申告における相続時精算課税の適用の可否国税庁は昨年11月27日に、この改正に関係する「質疑応答事例」を3題追加しました。その中に、「相続時精算課税選択届出書を単独で提出した後に贈与税の期限後申告書を提出する場合の相続時精算課税の適用の可否(令和6年1月1日以後の贈与の場合)」というものがあります。照会内容は、期限内に選択届出書は提出しているが、当初は贈与を受けた株式の価額を100万円、つまり相続時精算課税に係る基礎控除額以下と認識していたため、贈与税の申告書は提出していなかったというケースについてです。その後、その株式の価額について評価誤りがあり、正しくは500万円であったことが判明し、基礎控除額を超えたために期限後申告書を提出することとなった場合、相続時精算課税を適用して贈与税額を計算できるかというものです。これに対し、選択届出書を期限内に提出していることから、期限後申告であっても相続時精算課税の適用を受けることは可能ですが、期限内に贈与税の申告書の提出がなかったために、限度額2,500万円の特別控除の適用は受けられないという回答がなされています。相続税法基本通達21の9-3(注)2では、「相続時精算課税選択届出書のみをその提出期限までに提出した場合には、相続時精算課税の適用を受けることができることから、例えば、贈与により財産を取得した者が当該規定に基づいてその提出期限までに相続時精算課税選択届出書のみを提出していた場合において、当該贈与を受けた年分に係る贈与税についての期限後申告書を提出することとなった場合でも、引き続き相続時精算課税の適用を受けることができることに留意する。」とされています。一方で特別控除については、期限内申告書に控除を受ける金額、基礎控除額、前年以前にこの特別控除を適用し控除した金額等の記載がある場合に限り適用されることとなっています(相法21の12②、措規12)。結果として、期限後申告では500万円から基礎控除額110万円を控除した390万円の20%、78万円を納税することになります。提供:税経システム研究所
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2025/06/11
日商、「知的財産政策に関する意見」を手交
日本商工会議所等は、4月に知的財産政策について、中小企業のニーズや実態を踏まえ意見を取りまとめ公表した。今回、本意見・要望が反映されるよう実現を働きかけるため、関係機関等に対して意見書を手交し、要望事項を伝えるとともに、意見交換では引き続き官民が連携して取り組んでいくという認識を共有したとしている。意見書の要旨については、以下のとおりである。政府が掲げる「賃上げと投資がけん引する成長型経済」の実現に向けては、国内経済を支える中小企業のイノベーション創出・付加価値拡大による原資の持続的確保が不可欠である。その源泉となる「稼ぐ力の種」こそ知財であり、中小企業等において、知財の重要性の認識が定着することが重要、そのうえで、知財を活用した経営(知財経営)に関する知識や能力、すなわち「知財経営リテラシー」の向上を軸に、知財の活用と保護を車の両輪として取り組むことが、「稼ぐ力」の原動力となる。このような考えのもと、5つの要望項目を掲げ、これらに沿った施策の展開により、知財経営を推進するよう提言している。1知財経営リテラシーの向上・中小企業、支援機関、国・地方自治体における、知財の重要性に関する普及啓発・知財取引適正化に向けた、秘密保持契約締結・不当な契約見直し等の法務支援強化・自社の技術・ノウハウ・データ等を安易に開示しないための周知・指導体制強化2中小企業における知財の創造・活用促進・中小企業における「知的財産の活用・保護推進アクションプラン(仮称)」の策定・知財活用の普及・促進に向けた各種支援施策の拡充(クリアランス調査の実施の働きかけ等)・知財の価値評価に基づく資金調達の円滑化・税財政面の支援拡充3取引適正化・侵害抑止に向けた知財保護の強化・知財保護の強化に向けた実態調査・指針策定・制度策定の検討・企業の共存共栄に向けた知財の取引適正化の推進・技術・ノウハウ等の情報流出防止に向けた支援強化4日本のコンテンツ関連産業の拡大および加速するデジタル市場への対応・コンテンツ関連産業の保護・育成に向けた環境整備・生成AIの活用に向けた環境整備・拡大するデジタル市場に対応するための環境整備5地方創生に資する地域および中小・中堅企業の知財活用に向けた体制整備・地域経済の持続的成長に向けた地方自治体の支援体制強化・知財の積極活用による観光・地域振興・地域の持続的なイノベーション創出を支える人材育成・産学連携(参考)「知的財産政策に関する意見」を手交https://www.jcci.or.jp/news/news/2025/0516170007.html
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2025/06/10
第六世代税理士用電子証明書への対応等
国税庁は、令和7年5月26日「税理士用電子証明書をご利用の税理士の方へ」として、日本税理士会連合会が令和7年8月以降に発行予定の第六世代税理士用電子証明書の運用開始に先立ち、令和7年5月26日(月)から、国税庁が提供する各種ソフト等において、第六世代税理士用電子証明書に対応したことを公表した。この対応に伴い、認証局選択画面に「日税連税理士用電子証明書(第六世代)」を追加するとともに、今まで「日税連税理士用電子証明書」と表示していたところ、「日税連税理士用電子証明書(第五世代)」に変更が行われた。認証局選択画面に「日税連税理士用電子証明書(第六世代)」はされているが、この証明書は、第六世代税理士用電子証明書の運用が開始される令和7年8月1日(金)までは利用できないため、同日までは、選択を行わないように注意することが必要となる。令和7年7月31日(木)までの間に「日税連税理士用電子証明書(第六世代)」を選択した場合、「ICカードが認識できませんでした・・・」という、エラーメッセージが表示される。エラーメッセージが表示された場合、第五世代税理士用電子証明書を利用している場合には、認証局選択画面で「日税連税理士用電子証明書(第六世代)」ではなく、「日税連税理士用電子証明書(第五世代)」を選択することで対応することができる。対象となる国税庁のソフトは、e-Taxソフト、e-Taxソフト(WEB版)、電子的控除証明書等作成ソフト、NISAコーナー、FATCAコーナー、多国籍企業情報の報告コーナー、CRS報告コーナーである。なお、令和7年8月1日(金)以降に現在利用している電子証明書を第六世代税理士用電子証明書に変更する場合、e-Taxに再度電子証明書を登録することが必要となるのでこの点にも注意が必要である。電子証明書の登録変更方法は、国税庁よくある質問の「更新した電子証明書を、e-Taxソフト(WEB版)を利用して再登録するには、どうすればいいですか。」(※1)を確認するとよい。国税庁は、令和7年5月26日「税理士の方が関与先納税者のマイページ情報を参照できるようになりました」として、令和7年5月26日(月)から、e-Tax上で納税者と「委任関係の登録」を行った税理士については、納税者のマイページで確認できる「各税目に関する情報」をはじめとする情報が参照可能になったことも公表した。(※2)具体的には、e-Tax(WEB版)の関与先一覧→該当関与先名を選択→追加認証を行うという手順となる。この参照を行う際には、税理士用電子証明書やマイナンバーカード等の電子証明書による認証が必要となる点には注意が必要である。また、令和7年5月時点では、電子通知を希望した通知書等など、参照できない情報がある点にも留意しておきたい。なお、既に「委任関係の登録」を行っている税理士は、改めて「委任関係の登録」を行うことなく参照することができる。(参考)税理士用電子証明書をご利用の税理士の方へhttps://www.e-tax.nta.go.jp/topics/2025/topics_20250526_zeirishicard.htm※1https://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/e-taxweb/38.htm※2https://www.e-tax.nta.go.jp/topics/2025/topics_20250526_mypage.htm
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2025/06/09
役員報酬の決定と損金性
役員報酬は、法人税法上の要件を満たす場合に限り損金算入が認められる。形式や実態に不備があれば、たとえ業務に従事していたとしても、損金算入は認められない。まず、会社法第361条により、役員報酬の支給には、定款の定めもしくは株主総会の決議により決定される必要がある。適切な手続を欠く場合、支給そのものが無効とされ、会社からの返還請求や株主間の争いに発展することもある。税務上は、法人税法34条に基づき、「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」のいずれかに該当する場合のみ損金算入が認められる(注1)。とりわけ中小企業に多い「定期同額給与」は、毎月同額を同時期に継続して支給することが要件とされ、期中での増減は原則として損金算入が認められない。新設法人においては、設立後3ヶ月以内に役員報酬の額を確定しなければ、初年度の損金算入が認められない可能性がある。また、役員賞与を支給する場合は、提出期限までに「事前確定届出給与に関する届出書」を所轄税務署に提出する必要がある。これを失念すると、支給額の全額が損金不算入となる。また、報酬金額が勤務実態や会社の規模に照らして著しく高額である場合は「過大役員報酬」として一部否認される可能性がある。平成31年2月13日神戸地裁判決(税務訴訟資料第269号‐17(順号13240))(注2)では、医療法人の理事長が妻や子に支給した役員報酬について、理事会等の正式な手続が存在せず、勤務実態も乏しいことや、理事長が通帳や印鑑を一元管理していることから、裁判所はこれを「仮装経理」と認定し、家族に支払われた報酬をすべて理事長本人への役員給与とみなし損金不算入とした。役員報酬は、「誰が」「どのように」決定したかが問われる。恣意的な金額設定は、経営の私物化と受け取られ、信用低下や資金繰りの悪化に繋がるおそれもある。税務・ガバナンス上、法的手続と業務実態の両面で適正に扱うことが重要である。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5211.htmhttps://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2019/pdf/13240.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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