新着 実務情報
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2025/05/14 相続・贈与税
相続税の重要テーマポイント解説26(暦年課税と精算課税がある場合の相続税の課税価格の加算)
QA及びBは相続開始前7年以内に300万円を被相続人から贈与を受け、暦年課税で申告した。3年後1,000万円の贈与を受けたので相続時精算課税で申告した。なお、Aは相続財産を取得したが、Bは取得していない。相続財産の加算はどうすればいいか。【ポイント】被相続人から生前に贈与を受け、受贈金額が110万円を超えた場合、暦年課税の贈与税の申告と納税をします。贈与を受けた財産の価額をとめどもなく加算することは、実務的に大変困難です。そこで、相続開始前7年以内(以下「加算対象期間」といいます。)の贈与財産の価額(以下「加算対象贈与財産」といいます。)及び相続時精算課税の適用を受けた価額を加算することにしています。加算するのは、贈与を受けた時の価額です。【解説】1原則加算対象財産の価額は、暦年課税で申告している場合、相続財産の取得の有無に応じて加算の態様が異なります。適用の概要は次の通りです。課税方式相続財産の取得の有無課税価格に加算の有無2024年以後相法暦年課税有加算する相続開始前3年を超え前7年以内については、合計額から100万円を控除する19①無加算しない-相続時精算課税有加算する各年分の贈与について110万円の基礎控除がある21の15①無加算する21の16①2相続時精算課税適用者が、相続開始前7年以内の贈与財産がある場合(1)加算対象期間内の贈与財産があり、相続財産を取得している場合相続時精算課税適用者であっても、適用を受ける以前に贈与を受けた財産が加算対象期間内に取得した財産に該当する場合は、相続財産に加算します。相続開始前3年を超え前7年以内の期間に贈与を受けた金額の合計額から100万円を控除した金額を加算します。贈与税の申告の有無には関係がありません。基礎控除以下であっても加算となることに留意します(相基通19-1)。(2)加算対象期間内の贈与財産があり、相続財産を取得していない場合相続開始前7年以内の贈与加算は、相続又は遺贈により相続財産を取得した者に適用されます(相法19)。相続時精算課税の適用を受けた財産は、相続税の課税価格に加算する若しくは相続等により取得したものとみなされることから、相続時精算課税適用者が、適用を受ける前に贈与により取得し、加算対象期間内に該当する財産は、特定贈与者の相続税の課税価格に加算する必要があります。3相続時精算課税の適用を受けた財産が基礎控除以下の場合相続時精算課税適用者が特定贈与者からの贈与により取得した相続時精算課税の適用を受ける財産が、相続税法第21条の16第3項第2号の規定の適用により相続税の課税価格に算入する金額がない場合(基礎控除110万円を適用した場合)においても、加算対象期間内に贈与により取得した財産があるときは、加算対象期間の贈与財産を加算します(相基通19-11)。この取扱いは、相続時精算課税を選択した場合、その後の贈与は全て相続時精算課税となり、受贈財産価額が110万円以下で特定贈与者の相続財産に加算する金額がなくても、すべて相続時精算課税の適用を受けることとなります。そのため相続時精算課税適用前の加算対象期間内の贈与財産は相続税の課税価格に加算することになります。4事例の回答相続時精算課税適用者は特定贈与者の相続財産の取得の有無にかかわらず、相続財産を取得したとされます。相続開始前7年以内の暦年課税適用財産についても加算の対象となります。提供:税経システム研究所
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2025/05/14
令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(改正の概要)
国税庁は4月25日、令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について改正の概要、令和7年分の年末調整、令和8年以後の給与の源泉徴収事務、よくある質問等を公表した。この改正は、原則として、令和7年分以後の所得税について適用され、令和7年11月までの給与及び公的年金等の源泉徴収事務に変更は生じない。改正の概要は、以下のとおり。1基礎控除の見直し(1)次のとおり、合計所得金額に応じて、基礎控除額が改正された。合計所得金額132万円以下:95万円(改正前:48万円)合計所得金額132万円超336万円以下:88万円(令和9年分以後は58万円)(改正前:48万円)合計所得金額336万円超489万円以下:68万円(令和9年分以後は58万円)(改正前:48万円)合計所得金額489万円超655万円以下:63万円(令和9年分以後は58万円)(改正前:48万円)合計所得金額655万円超2,350万円以下:58万円(改正前:48万円)(2)基礎控除額の改正に伴い、令和8年分以後の「源泉徴収税額表」及び公的年金等に係る源泉徴収税額の計算における控除額について、所要の改正が行われた。2給与所得控除の見直し(1)給与所得控除について、55万円の最低保障額が65万円に引き上げられた。(2)給与所得控除の改正に伴い、令和7年分以後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」及び令和8年分以後の「源泉徴収税額表」が改正された。3特定親族特別控除の創設(1)居住者が特定親族を有する場合には、その居住者の総所得金額等から、その特定親族1人につき、その特定親族の合計所得金額に応じて最高63万円を控除する特定親族特別控除が創設された。ここで、「特定親族」とは、居住者と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族(配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除く。)で合計所得金額が58万円超123万円以下の人をいう。 親族には児童福祉法の規定により養育を委託された、いわゆる里子を含む。(2)令和8年1月以後に支払うべき給与及び公的年金等について、それぞれ次の場合に、特定親族特別控除が各月(日)の源泉徴収の際に適用されることとなった。給与:親族の合計所得金額が58万円超100万円以下である場合公的年金等:親族の合計所得金額が58万円超85万円以下である場合4扶養親族等の所得要件の改正上記1(1)の基礎控除の改正に伴い、次のとおり、扶養控除等の対象となる扶養親族等の所得要件が改正された。扶養親族及び同一生計配偶者の合計所得金額の要件:58万円以下(改正前:48万円以下)ひとり親の生計を一にする子の総所得金額等の合計額の要件:58万円以下(改正前:48万円以下)勤労学生の合計所得金額の要件:85万円以下(改正前:75万円以下)また、上記2(1)の給与所得控除の改正に伴い、家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例について、必要経費に算入する金額の最低保障額が65万円(改正前:55万円)に引き上げられた。(参考)令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等についてhttps://www.nta.go.jp/users/gensen/2025kiso/index.htm
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2025/05/13
戸籍にフリガナが記載されます
令和5年6月2日、戸籍法の一部改正を含む「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律」(以下「改正法」という。)が成立し、同月9日に公布された。従前は、氏名の振り仮名(フリガナ)は戸籍上公証されていなかったが、この改正法の施行により、戸籍の記載事項に新たに氏名のフリガナが追加されることとなった。改正法は、令和7年5月26日に施行される。改正法施行後の流れは以下のとおりである。(1)本籍地の市区町村長からの通知を確認住民票において市区町村が事務処理の用に供するため便宜上保有する情報等を参考に、本籍地の市区町村長から、戸籍に記載される予定の氏名のフリガナが通知される。この通知は、改正法の施行日(令和7年5月26日)から遅滞なく送付することとされているため、受け取ったら内容を確認し、もし認識と違うフリガナが記載されていた場合は、(2)の届出を行うこととなる。届出をしない場合、令和8年5月26日以降に、その通知に記載されたフリガナがそのまま戸籍に記載されることになる。(2)氏名のフリガナの届出改正法の施行日(令和7年5月26日)後1年以内に限り、氏名のフリガナの届出をすることができ、この届出が受理されれば、届け出た氏名のフリガナが戸籍に記載されることになる。(1)の通知のフリガナが正しい場合、届出をしなくても、令和8年5月26日以降に、通知に記載されたフリガナがそのまま戸籍に記載されることになるが、早期の戸籍への記載を希望する場合は、フリガナの届出をすることができる。(3)市区町村長による氏名のフリガナの記載(2)の届出がなかった場合には、本籍地の市区町村長が管轄法務局長等の許可を得て、改正法の施行日(令和7年5月26日)から1年を経過した日以降に、(1)の通知のフリガナが戸籍に記載されることになる。(2)の届出がなかった場合に戸籍に記載されたフリガナは、一度に限り、家庭裁判所の許可を得ずに変更をすることができるが、(2)の届出を行った後に氏名のフリガナを変更する場合は家庭裁判所の許可が必要となる。氏名のフリガナを届け出るには、以下の点に留意することが必要となる。(1)届出をすることができる者について氏名のフリガナの届出については、氏のフリガナの届出と名のフリガナの届出を行う必要があり、それぞれ届出をすることができる者が異なるため注意が必要である。(2)届出方法について氏名のフリガナの届出は、マイナポータルを利用してオンラインで行うことができ、市区町村窓口での届出や郵送による届出も可能となっている。(3)戸籍に記載する氏名のフリガナについて戸籍に記載する氏名のフリガナについては、「氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているもの」に限られることとされているが、一定の場合に氏名のフリガナとみなす扱いとすることとされており、一般の読み方以外の氏の読み方又は名の読み方を示す文字を届け出る場合には、当該読み方が通用していることを証する書面を提出することが必要となる。(参考)戸籍にフリガナが記載されますhttps://www.moj.go.jp/MINJI/furigana/index.html
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2025/05/12
新機械の購入契約の対価に、翌期に行われた旧機械の搬出費用は含まれていないから、新機械の検査合格引渡し日が課税仕入れの日と判断された事例(全部取消し)
【裁決のポイント】消費税法上の課税仕入れは、取引の相手方においては課税資産の譲渡等に該当することとなるもので、消費税が免除されるもの以外のものに限られる。そして、消費税法上の資産の譲渡等とは、原則として、対価を得て行われるものであるから、無償で行われるものは、資産の譲渡等及び課税資産の譲渡等に該当せず(家事消費や法人役員への贈与は例外)、取引の相手方においては課税仕入れに当たらない。対価性があるかは、消費税課税の入り口にある判断ポイントである。3月決算法人の審査請求人は、A社と変圧器交換の契約を結び、新機械は3月下旬に納入され完了検査に合格したことから、税込54,864,000円を平成29年3月期の課税仕入れに含めて消費税申告をした。税務署は、取外した旧機械が翌期4月上旬にA社によって撤去・搬出されていたことから、課税仕入れの日は、契約がすべて履行された翌期4月とする更正処分、仮装行為があるとして重加算税賦課決定処分をした。国税不服審判所は、審査請求人とA社の契約は、対価を得て行われる新機械の納入と、無償で行われる不用品の引取りの2つから構成され、3月30日の検査合格をもって対価を得て行われる役務の提供をすべて受けたと判断し、処分を全て取り消した事例である。(平成28年2月から平成29年3月課税期間の消費税等に係る更正処分及び重加算税の賦課決定処分・全部取消し・令和1年6月10日裁決(非公開))【主な争点】新変圧器の支払い対価の額が課税仕入れに含まれるのは、新機械が検査合格して引き渡された平成29年3月期か、取外した旧機械が搬出された翌期か。【裁決の要旨】本件契約は、対価を得て行われる請負契約等と、無償で行われる発生品(不用品)等の引取りからなるものであり、旧変圧器の搬出が、契約上、対価を得て行われる役務の提供か、無償で行われる役務の提供かによって、消費税法上の課税仕入れに該当するか否かが異なることとなる。仕様書において、A社が無償で引き取る発生品等は、取り外した部品及び作業に伴い生じる発生品(履行に伴って発生する不用品)であるとされている。契約書等において、取り外された旧変圧器が発生品等に当たるか否かについての明確な記載はないものの、旧変圧器は、金属くずとして廃棄処分されていることからすると、作業に伴い生じる発生品に含まれるものと認められる。この点、審査請求人がA社から運搬終了後に産業廃棄物管理票の写しの送付を受けた事実は認められないことからすると、旧変圧器の搬出は、A社が、本件契約における発生品等の無償引取りに基づき履行したものと認められ、対価性がないことから、本件支払対価の額には旧変圧器の搬出に係る費用が含まれていないと認められる。本件条項において、契約書記載の物品が完了検査に合格したときに、物品の所有権はA社から審査請求人に引き渡されたものとするとされているから、完了検査を実施し合格とした平成29年3月30日、審査請求人は、A社が対価を得て行った役務の提供の全てを受けたものとなり、旧変圧器の搬出に係る費用が含まれていない本件支払対価の額は、同日の属する本件課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に含まれることとなる。【参照条文】消費税法第2条《定義》、第30条《仕入れに係る消費税額の控除》廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/05/12
交際費と祝儀の経理処理
企業が創立記念や周年行事を開催し、取引先や関係者を招いて式典やパーティーを行うことは少なくない。これらの行事に係る費用は、通常、交際費として処理されるが、来賓等から祝儀を受け取った場合は、経理処理に注意が必要である。結論として、式典費用の支出(開催者の交際費)と祝儀の受領(参加者の交際費)は、それぞれ独立した経済取引であり、式典費用の総額から祝儀を控除して処理することはできない。式典費用は全額を「交際費」として計上し、受け取った祝儀は「雑収入」として処理する必要がある。例えば、国税庁タックスアンサーでは、宴会費(1人当たり1万円を超えるもの)、交通費、記念品代を含む総額が1,000万円、受け取った祝儀が100万円という事例が紹介されている。この場合、交際費として1,000万円、雑収入として100万円をそれぞれ計上することが適切である(注1)。なお、令和6年4月1日以降は、飲食に係る費用のうち、「1人あたり1万円以下」の金額は交際費等に含まれない取扱いとなっている(注2)。この1人あたりの金額は、「飲食等の費用の総額÷参加者数」により判定する。複数の法人が共同で式典を開催し費用を分担した場合も、合計費用を参加者数で除して判定する。ただし、分担または負担した法人側にその費用の総額の通知が無く総額が把握できない場合で、かつ、飲食等に要する1人あたりの金額がおおむね1万円程度と見込まれる場合には、その見込額により判定することができる。消費税の仕入税額控除についても、交際費の支出額は祝儀などの受領を差し引かず、総額で計上しなければならない。祝儀は不課税取引であり、これを控除して交際費を計上すると、実際の支出額と一致せず、消費税の控除額の計算に誤りが生じるおそれがあるためである。また、式典が社長の就任や退任によるものであった場合、得意先からの祝儀を会社の収入とすべきか、社長個人の収入にすべきかという論点が生ずる。祝儀を贈る側は、「(借方)交際費/(貸方)現金」と処理していることが多く、業務上の関係に基づくものであると考えられる。したがって、受領する会社側でも雑収入として計上するのが妥当である。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5261_qa.htm?utm_source=chatgpt.comhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/05/12
電子契約と印紙税
電子契約の普及により、契約書を電磁的記録で作成・保存する企業が増えている。電子契約では電子印鑑が押印されることが多く、これが朱色で表示されるため、PDF形式の契約書を見て、「印紙税の対象では?」と疑問を抱く方も少なくない。しかし、印紙税法では、紙により作成された「課税文書」に対して課税する仕組みであり、電子印鑑が押されたものであっても、それが電磁的記録(電子データ)である限り、印紙税の課税対象とはならない。印紙税法基本通達第44条では、「作成」の意義が書かれているが、電子ファイル(PDFやWordファイルなど)を「送信」する行為は「作成」に該当しないとされている。このため、契約書を電子データで作成し、メール等で送受信した場合には、印紙を貼付する必要はない(注1)。一方で、電子契約で締結した契約書であっても、それを紙に出力して交付した場合や、契約内容の変更に伴い変更契約書を紙で作成した場合には、印紙税の課税対象となるため注意が必要である(注2)。たとえば、当初の契約金額が90万円で、変更契約書に変更後の金額110万円が記載されている場合、その差額である20万円が「記載金額」となり、印紙税が課されることになる。一方で、変更契約書に変更後の金額のみが記載されており、変更前の契約金額が明らかでない場合は、その記載された金額全額が課税対象となる(注3)。電子契約の導入は、印紙税のコスト削減や契約業務の効率化に大きく寄与する。導入に際しては、契約締結後の変更対応や書面化の有無などについても十分に検討し、印紙税の課税リスクを回避するための社内体制を整備することが重要である。さらに、電子契約に関連して注意すべき法令に「電子帳簿保存法」があり、同法では契約書などの国税関係書類を電子データで保存する場合、真実性や可視性を確保するための要件が求められる。印紙税の課税対象外であっても、保存方法が電帳法の要件を満たしていない場合は、税務上の問題となる可能性があるため、電子契約書の保存体制についても十分に整備しておく必要がある。<注釈>https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/02/10.htmhttps://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/02/11.htmhttps://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/02/12.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/05/12
税務署が一方的に告げた功績倍率に基づき役員退職給与は一部損金不算入、過少申告加算税賦課決定処分は適法と判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】法人が支給した役員退職給与の額のうち、法人税法第34条《役員給与の損金不算入》及び法人税法施行令第70条《過大な役員給与の額》に規定する「不相当に高額な部分の金額」の有無の判断には、いわゆる、功績倍率法(最終月額報酬×勤続年数×功績倍率)による算定金額が参考にされる。功績倍率には、同業類似法人の平均功績倍率、最高功績倍率があるが、いずれも法令の中に規定された数値ではない。平均功績倍率は、東京地裁昭和55年5月26日判決が示した「全上場1,603社の実態調査の結果から算出される功績倍率の平均が社長3.0、専務2.4、常務2.2、平取締役1.8、監査役1.6」が一つの相場とされているものの、より大きい数値も認めた判決も、より低い値をデータ提供している書籍等もある。審査請求人は、前代表者へ支給した役員退職給与を全額損金に算入したところ、税務署が平均功績倍率法(500万円×30年×平均功績倍率2.04)を用いて、相当であると認められる額3億600万円を算定し、それを超える部分は「不相当に高額な部分の金額」で損金算入を認めない更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を行ったことから、税務署の算定方法は合理的でない、功績倍率を一方的に告げられ、過少申告加算税が課されることは納税者に甚だ酷で、課されない「正当な理由があると認められる」と主張した。国税不服審判所は、功績倍率を市販の書籍から調べることもできたとして、課税庁の処分を適法と判断した事例である。(平成30年2月期の法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分、他・棄却・令和3年8月4日裁決(非公開))【主な争点】審査請求人は、過少申告加算税が課されない「正当な理由があると認められる」場合に該当するか。【裁決の要旨】例外的に過少申告加算税が課されない場合として国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項第1号にいう「正当な理由があると認められる」場合とは、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である(最高裁平成18年10月24日判決)。確かに、功績倍率は、同業類似法人の役員に対する退職給与の支給の状況等を比較する場合の方法の一つである功績倍率法に不可欠な係数であるものの、法令等に定められたものではなく、審査請求人の主張するように課税当局において納税者にあらかじめ明示されているものではない。しかしながら、申告納税制度の下における法人税及び地方法人税の確定申告は、納税者自身の判断と責任においてなされるべきであり、功績倍率があらかじめ納税者に明示されていないことを理由に、納税者が適正申告すべき義務を免れるものではない。そして、功績倍率については、業種別の功績倍率を記載した書籍が市販されているなど、審査請求人は、自らこのような書籍等から調べることも可能であったにもかかわらず、自らの判断と責任においてそれを行わず、本件退職給与の全額を損金の額に算入して申告をしたのであるから、審査請求人の主張する諸事情は、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情とはいえず、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合に当たるということはできない。【参照条文】国税通則法第65条《過少申告加算税》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/05/12
「中小企業活性化協議会を通じた再チャレンジ事例集」を公表
中小企業庁は4月21日、中小企業活性化協議会(以下「活性協」という。)における再チャレンジ支援を受けた中小企業者の事例を取りまとめた「中小企業活性化協議会を通じた再チャレンジ事例集」を作成し、公表した。活性協は、中小企業の活性化を支援する「公的機関」として、すべての都道府県に設置され、公正・中立な立場から、収益力改善支援、再生支援などを通じて中小企業の経営改善及び事業再生を支援しており、専門家との相談を無料で受けることが可能となっている。他方では、様々な要因から事業再生にも着手することができず、活性協に相談した時点では、もはや事業再生が困難な状態に陥っている事業者も多い。活性協では、そのような事業再生が難しい企業に対しても、再チャレンジ支援を実施しており、支援に当たっては、私的整理手続、事業譲渡などを用いたいわゆる「円滑な廃業」や破産になる場合であっても、その影響を最小限に留める軟着陸的な破産などに向けた支援を行うとともに、当該企業の保証人に対しては保証債務整理を通じた個人破産回避の支援を行っている。また、廃業や破産が避けられない場合であっても、早期に決断すればその傷は浅く済み、その後の経営者や従業員の円滑な再チャレンジにつながることがあり、早期の段階での相談を呼び掛けている。本事例集は、実際に活性協の再チャレンジ支援を受けた事例(成功・失敗)及び当該事例の成功要因などを紹介することにより、再チャレンジ支援を受けることについて検討している中小企業者などの判断を手助けし、活性協への早期相談を促すことを目的としている。一般にイメージされる「破産」や「廃業」では、事業が完全になくなり、経営者も全ての財産を失うと思われがちであるが、「破産」や「廃業」には様々なバリエーションがあり、中には企業が破産しつつも事業については継続できるケースや、経営者の破産を回避できるケースもある。本事例集に挙げられている事例を通じ、再チャレンジ支援を受けたことで実際にどのようなことが実現できたのかについて確認することができるとしている。(参考)「中小企業活性化協議会を通じた再チャレンジ事例集」を公表https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/2025/250418.html
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2025/05/09
地域経済の好循環を支える中小企業・小規模事業者の「稼ぐ力」の強化に向けて
日本商工会議所は4月17日、地域経済の好循環を支える中小企業・小規模事業者の「稼ぐ力」の強化に向けて、全国の商工会議所から寄せられた現場の声や要望等を取りまとめ、公表した。コロナ禍から経済が正常化し、30年ぶりの高水準の賃上げや設備投資等、日本経済は成長型経済への移行、経済の好循環を実現する好機を迎えている。好循環実現の原動力は、雇用の約7割(3大都市圏を除くと約9割)を担う「中小企業・小規模事業者の収益改善、従業員等の所得向上」と、疲弊する「地域経済の再活性化」である。一方、地域中小企業の多くは人手不足に起因する労務費増、円安を背景とした賃上げを上回るコストプッシュインフレ、金利上昇、消費低迷等に直面し、業況の二極化が顕在化している。賃上げや投資の原資確保に向けた生産性向上、付加価値拡大への支援強化と、適正利潤が得られる価格転嫁など取引適正化に向けたビジネス環境の整備が急務である。こうした状況を踏まえ、政府に対し、以下に掲げる政策や支援の強化・拡充とビジネス環境整備を求めて行く。また、今般の米国における関税措置は、国内外の経済や金融市場への悪影響が懸念されることから、サプライチェーン全体の中小企業・小規模事業者へのきめ細かな支援など、各地域の産業や雇用を守るために万全を期すよう要望していくとしている。今回の取りまとめでは、地域経済好循環の構築への視点とし三点が挙げられている。1人手不足等に直面する中小企業等の付加価値拡大への挑戦支援(1)中小企業の付加価値創出・拡大への支援成長志向型の中小企業等への支援など(2)中小企業の人手不足対策と業務効率化中小企業の人材確保・定着・育成支援など2価格転嫁など、取引適正化に向けたビジネス環境整備(1)適正利潤を得られる取引環境の整備(2)社会全体の価格転嫁の商習慣の定着3地域への投資拡大など、地域経済の再活性化支援(1)地域に人と投資を呼び込む支援の強化民間主導・公民共創まちづくり体制の強化など(2)地域経済を牽引する中堅・中小企業の成長支援中堅・中小企業による投資促進、地域経済への波及拡大への支援など(参考)「地域経済の好循環を支える中小企業・小規模事業者の「稼ぐ力」の強化に向けて」https://www.jcci.or.jp/news/recommendations/2025/0417170000.html
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2025/05/08
国税庁「特定個人情報保護評価書(全項目評価書)(案)」に対する意見募集
国税庁は、4月14日国税関係事務について特定個人情報保護評価書(全項目評価書)を公表し、意見募集を行った。特定個人情報保護評価とは、特定個人情報ファイル(個人番号(マイナンバー)をその内容に含む個人情報ファイル)を保有しようとする又は保有する国の行政機関や地方公共団体等が、個人のプライバシー等の権利利益に与える影響を予測した上で特定個人情報の漏えいその他の事態を発生させるリスクを分析し、そのようなリスクを軽減するための適切な措置を講ずることを宣言するもので、個人のプライバシー等への権利利益に与える影響が小さいと考えられる特定個人情報ファイルを取り扱う事務の対象人数が1,000人未満の場合等を除いて、公表が義務付けられているものである。(※)特定個人情報保護評価書(全項目評価書)の記載事項は、下記のようになっている。Ⅰ基本情報(別添1)事務の内容Ⅱ特定個人情報ファイルの概要1.名称2.基本情報3.特定個人情報の入手・使用4.特定個人情報ファイルの取扱いの委託5.特定個人情報の提供・移転(委託に伴うものを除く。)6.特定個人情報の保管・消去7.備考(別添2)特定個人情報ファイル記録項目Ⅲ特定個人情報ファイルの取扱いプロセスにおけるリスク対策1.特定個人情報ファイル名2.特定個人情報の入手3.特定個人情報の使用4.特定個人情報ファイルの取扱いの委託5.特定個人情報の提供・移転6.情報提供ネットワークシステムとの接続7.特定個人情報の保管・消去Ⅳその他のリスク対策1.監査2.従業者に対する教育・啓発3.その他のリスク対策Ⅴ開示請求、問合せ1.特定個人情報の開示・訂正・利用停止請求2.特定個人情報ファイルの取扱いに関する問合せⅥ評価実施手続申告書類等の情報には、個人番号(マイナンバー)が含まれているため、この評価書の内容を確認することで、申告書類等がどのように取り扱われているかの概要を把握することができる。具体的には、租税に関する法律の規定に基づく犯則事件の調査のために保有する特定個人情報ファイルを取り扱う事務に係るものであるときは、その全部又は一部を公表としないことができるとされているため、上記の一部は非公表とされているが、Ⅰ基本情報(別添1)事務の内容、Ⅱ特定個人情報ファイルの概要(別添2)特定個人情報ファイル記録項目の内容を確認することで、令和8年度から更新される国税総合管理システム(KSK2)の概要や主な機能の内容、賦課・徴収の事務の流れを知ることができる。また、Ⅱ特定個人情報ファイルの概要6.特定個人情報の保管・消去からは、申告書類等の保管・消去方法、Ⅲ特定個人情報ファイルの取扱いプロセスにおけるリスク対策からは、申告署書類等の入手から保管・消去までの管理状況を知ることができ、過去3年以内に個人情報に関する重大な事故が発生したかどうかも確認することができる。国税庁内部での情報の取り扱いについて把握することができるため、機会があれば、確認しておくとよい。(参考)「特定個人情報保護評価書(全項目評価書)(案)」に対する意見募集についてhttps://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=410070015&Mode=0(※)https://www.ppc.go.jp/legal/assessment/
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