商事法研究レポート

MJS税経システム研究所・商事法研究会の顧問・客員研究員による商事法関係の論説、重要判例研究や法律相談に関する各種リポートを掲載しています。

Ⅰはじめに会社法が施行された平成18年5月1日以前の商法は、子会社につき、「他の株式会社の総株主の議決権の過半数または他の有限会社の総社員の議決権の過半数を有する会社(以下親会社と称す)の株式は、左の場合を除く他、その株式会社または有限会社(以下子会社と称す)これを取得することを得ず」(改正前商211条ノ2第1項)と規定していました。つまり親子会社の判断基準としては、「総株主の議決権の過半数」という形式...
1.はじめに近時、ビジネスのグローバル化の進行、第4次産業革命のもとにおけるイノベーションの進展等、日本企業の経営環境が大きく変化を遂げる中、企業が直面する法的リスクは、これまで以上に多様化し、複雑化・高度化が進んでいます。企業において法的リスクに対応する部門は法務部門ですが、かねてより日本企業の法務部門は、米国企業に比べて脆弱であることが指摘されてきました。これを踏まえ、経済産業省は、2018年1月に...
1はじめに2021年3月頃から(株)東北新社や(株)フジ・メディア・ホールディングスにおいて、外国人等の議決権の割合が法律違反の状態にあるのではないかとの報道がされています(注1)。これらの報道の多くは行政の怠慢の指摘が中心である為、本稿では外国人等の議決権上限規制等について解説・検討していきます。株主の資格制限は、公序良俗に反するもの(民90条)でない限り、定款に...
1はじめに上場会社の株主総会の季節を迎えようとしています。株主が会場に集まり開催される株主総会(以下「リアル総会」といいます)は、密閉空間、密接場所及び密接場面のいわゆる三密の要件を満たすこととなるため、昨年に引き続き、本年も、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対策が必要となります。株主が株主総会の会場に来場せず、インターネット等を利用してバーチャル参加又は出席する、いわゆるバーチャル株主総...
1取締役報酬に関する令和元年改正取締役の報酬等に関する会社法361条は、令和元(2019)年に改正され、令和3年3月1日に施行されました。以下では、まず同改正の内容を一通り紹介した上で、取締役の報酬に関するこれまでの議論や改正を概観して、今回の改正の意味を検討します。令和元年改正前の会社法361条1項は、指名委員会等設置会社以外の株式会社においては、取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社...
【質問】令和元年の会社法改正では、株式交付制度が導入されました。会社法においては、すでに株式交換および株式移転という制度が導入されていますが、これら三者の違いがよく分かりません。株式交換・株式移転と比較しつつ、株式交付制度について教えてください。【回答】1.はじめに平成9年の独占禁止法改正では、それまで同法9条...
1はじめに令和元(2019)年改正会社法は、同年12月4日に成立し同月11日に公布されましたが、関係する法令等の改正が必要であったため、施行されたのは、令和3(2021)年3月1日からです。改正された会社法施行規則・会社計算規則等も、一部(株主総会資料の電子提供制度の創設等に対応する改正規則)を除いて、同日から施行されています。令和元年改正会社法(以下令和元年改正前を「旧○○」といいます)と会社法施行規...
1.はじめにA会社の従業員Bがセールスをする際に、客Cに脅迫行為を行いました。Bの脅迫によりCが精神的なダメージを受けた場合、被害者であるCはBに対して損害賠償を請求することができます(民法709条)。これに加えて、Cは、B(被用者)を使用して利得を得ているA会社(使用者)に対して損害賠償を求めることもできます(民法715条)。このA会社の責任を使用者責任といいます。これが認められるのは、Bを使用するA...
1.はじめに会社法は、取締役会の招集に際し、取締役会の日の1週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各取締役及び各監査役(注2)に対してその通知を発しなければならないと定めています(会368条1項)が、その方法や内容については特に規定を設けていません。他方、取締役会の決議については、株主総会決議と異なり、瑕疵ある決議について特別の訴訟...
1地球温暖化の問題地球は太陽光の影響を受け温められますが、宇宙への放射熱によって冷やされます。地球を取り巻く大気はその絶妙な調節を行っており、もし、大気ないしオゾン層が殆どなければ人間にとって有害な紫外線や必要以上の可視光線や赤外線が地表に到達することになります。また、温暖化ガス(含む温室効果ガス)(注1)がなければ地表の殆どの場所の温度は放射熱によって毎日マイナス...