政府税制調査会が11月17日に開催した納税環境整備に関する専門家会合において提出されたこれまでの議論の報告(案)によると、個人事業者の記帳水準向上・適正申告を行うための今後の議論の方向性として、帳簿の不保存・不提示や記帳不備に対して適正化を促す措置や、既存のけん制措置では必ずしも対応できていない特に悪質な納税者への有効な対応策の検討を行うことが明記されている。

記帳の状況などに関する税務執行上の課題について、これまで国税庁から専門家会合に提出された資料によると、(1)後出し的な簿外経費の主張として、事後的に大量の領収書を提出した場合でも、当局側が多大な事務量を投下してその真偽を確認する必要があった、(2)無記帳の者に対しても、推計課税時には同業者と同程度の必要経費が認容され、記帳や帳簿保存義務を果たさなくても「仮装隠蔽」に該当せず重加算税の賦課が困難。

さらに、(3)犯則事件として着手したが、簿外経費がないことの立証が困難として、法人税法違反での告発を断念、(4)連年事業を行うも無記帳無申告の者に対する推計課税、(5)暗号資産売買により多額の利益があるにも関わらず無申告、などが適正な記帳等が行われていない事例として紹介されている。個人については、記帳義務や書類保存義務がない所得もあり、無申告に対する重加算税賦課がさらに困難な場合も存在する。

これを受け専門家会合では、記帳水準向上のための施策等として、帳簿不備・不提示について、(1)後出し的な簿外経費の主張事例については、そもそも税務調査の段階で、納税者側から経費の真正性を裏付ける証拠の提出が必要であると考えるべき、(2)記帳義務や書類保存義務がない所得もあり、無申告に対する重加算税賦課がさらに困難な場合も存在することは法律でクリアしていくべき課題、などの意見が出された。

報告(案)には、記帳水準向上・適正申告を図るための今後の議論の方向性が示されており、帳簿不保存・記帳不備への対応として、適正な記帳や帳簿保存が行われていない納税者については、真実の所得把握にかかる執行コストが多大で、ペナルティ適用上の立証も困難。記帳義務不履行に対する不利益がない中で、記帳の動機に乏しい場合も存在していると指摘し、適正化を促す措置の検討を行うとしている。

また、特に悪質な納税者への対応として、課税の公平性を確保するため、税務調査時に簿外経費を主張する納税者、虚偽の書類を提出する等調査妨害的な対応を行う納税者や、調査等の働きかけに応じない納税者、到底当初より申告の意図を有していたとは思われない納税者等、既存のけん制措置では必ずしも対応できていない悪質な納税者への有効な対応策の検討を行うとしている。

納税環境整備に関する専門家会合の議論の報告(案)は↓

www.cao.go.jp/zei-cho/content/3noukan7kai1.pdf

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