会計検査院は11日、国税庁に対し、合規性、有効性等の観点から、所得税の申告において、倒産防止共済特例の適用に係る個人の納税者の適切な申告を担保するための措置が執られておらず、返戻金額の収入計上に係る審査を適切に行うことができるような審査体制が整備されていないことから、これらの改善の処置を要求したことを明らかにした。倒産防止共済特例は、共済契約に係る掛金納付額の経費計上を認めている。

特例適用のためには、確定申告書等に金額の経費計上に関する明細書の添付が必要とされており、これは、租税特別措置の意義等を踏まえて、申告時における納税者の意思表示が必要との趣旨によるものだ。ところが、検査院が調査した結果、所得税の申告において、特例適用に関する納税者の意思表示に必要な記載項目を示した明細書の様式が定められておらず、納税者の適切な申告を担保するための措置を執っていなかったことが判明した。

検査院が2018年の個人の掛金納付者1567人について、書類における特例適用額の記載の有無等を確認したところ、特例適用の旨の記載はあるが、特例適用額の記載がなかったり、いずれの記載も確認できなかったりしていて、適用の意思表示が明確でないのに倒産防止共済特例を適用していると思われるものが、約6割に当たる906人(掛金納付額計5億9457万余円)見受けられたという。

また、共済契約を解約した場合には、解約者に対して返戻金が支給され、倒産防止共済特例適用の場合には、返戻金額を総収入金額又は益金の額に算入する(「収入計上」)こととなっている。ところが、国税庁は、納税者に対し収入計上を具体的に周知していなかったことが判明。検査院が、返戻金額の収入計上の有無を確認したところ、189人(返戻金額計3億2640万余円)について、収入計上が適切に行われていないなどの疑義が認められたという。

これらの事態に係る検査院の指摘を受けて、国税庁は、個人の納税者の適切な申告を担保するために必要となる措置として、2021年6月に法令解釈通達を改正し、納税者の意思表示に必要な記載項目を示した明細書の様式を定めるとともに、定めた様式及び記載要領を同庁のウェブサイトに掲載して納税者等に周知した。加えて、検査院は、今後、返戻金額の収入計上が適切に行われていない申告の発生を可能な限り防止することも求めている。

この件については↓
https://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/3/pdf/31011_zenbun.pdf

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