中小企業は、地域の経済や雇用を支える存在であり、ものづくりに関する高い技術力を持っている企業が多い。しかし、「後継者問題」が深刻化しており、近年は後継者が見つからないことで事業が黒字でも廃業を選択せざるを得ない企業がある。
今回、帝国データバンクでは、約27万社における「後継者の決定状況」などの分析結果を公表した(2023年に続き11回目)。
後継者が「いない」、または「未定」とした企業は14.2万社、後継者不在率は52.1%であり、前年から▲1.8ポイント、7年連続で前年を下回っている。また、コロナ前の2019年に比べると▲13.1ポイントとなり、調査開始以降で最低値となったが、改善ペースは鈍化している。年代別では、「70代」以上の高齢層で減少が続く一方、「50代」は3年ぶり、「60代」では連続した比較が可能な2016年以降で初めて悪化に転じている。
都道府県別では、「三重県」が34.1%と4年連続で全国最低水準となっている。最も高いのは「秋田県」で、全国平均を大幅に上回る72.3%となっており、不在率が70%を超えたのは同県と2023年に全国で最も高かった「鳥取県」(70.6%)の2県、不在率が全国平均(52.1%)を下回る都道府県は23に上っている。
業種別では、不在率が最も高かったのは「建設業」(59.3%)であるが、改善傾向が続いている。最も低いのは「製造業」(43.8%)で、製造業では自動車産業をはじめ、サプライチェーン(供給網)を構成する企業の事業承継問題が全体の供給網に影響を及ぼしかねないとの認識が広がっており、重点的な支援が行われてきたことも、改善に大きな役割を果たしたとみられている。
事業承継動向については、血縁関係によらない役員・社員を登用した「内部昇格」によるものが36.4%に達し、「同族承継」(32.2%)を上回っている。また、買収や出向を中心にした「M&Aほか」(20.5%)、社外の第三者を代表として迎える「外部招聘」(7.5%)も増加傾向が続いており、これまで最も多かった身内の登用など親族間承継から社内外の第三者へと経営権を移譲する「脱ファミリー化」の動きが加速している。
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」が目前に迫るなか、代表者が70代の後継者不在率は依然として約3割に近い水準で推移している。事業承継には、準備期間が必要とされるなかで、代表者の病気・死亡により後継者育成に支障をきたすリスクは非常に高い。代表者が高齢で後継者がいない、円滑な事業承継が進まない企業を中心に、後継者難倒産が今後も発生する可能性が高いとしている。
(参考)全国「後継者不在率」動向調査(2024年)
https://www.tdb.co.jp/report/economic/succession2024/