社会保険料や税金など、「公租公課」の滞納が要因となった企業の倒産が増加している。帝国データバンクが発表した「公租公課滞納倒産動向調査」結果によると、消費税や固定資産税、厚生年金保険などの「公租公課」を納付できない、または滞納による差押さえで経営に行き詰まった「公租公課滞納」倒産は、2023年度に138件判明。月次ベースでは、2024年1月(14件)以降、2月(16件)、3月(20件)と過去最多を更新し続けている。

多額にのぼる公租公課の滞納や延滞金の未納により、自社の預金口座や土地などの資産を差し押さえられ、経営に行き詰まった「公租公課滞納」倒産は、2020~2023年度の4年間で334件判明した。このうち、2023年度は138件で過去最多となり、全体の41.3%を占めた。2022年度の97件から1.4倍に増加したほか、支払いが猶予されていたコロナ禍の2020年度(46件)からは3倍に増えた。

2020~23年度に発生した334件を業種別にみると、最も多いのは「サービス業」の86件で、ソフトウェア開発などの業種で多く発生した。トラック運送などの「運輸・通信業」(64 件)や「建設業」(55 件)、「製造業」(48 件)などが続いた。態様別では、ほとんどのケースで破産となり「清算型」の倒産が多かった。累計334件のうち、清算型が314 件・94.0%を占め、再生型は民事再生法を中心に20件にとどまった。

日本年金機構によると、厚生年金保険を含む社会保険料を滞納している事業所は、2022年度末時点で14万811事業所にのぼり、適用事業所全体に占める割合は5.2%を占めた。前年度に比べて滞納事業所数は減少したものの、依然として多くの企業が納付に苦慮する状態が続いている。社会保険料や各種税金の納付は、社会保障制度を維持するために企業が公平に負う義務である。

差押さえ等で事業継続に行き詰まる企業の増加を年金事務所等の責任にすることはできない。一方で、コロナ禍での特例措置や支援策の縮小、物価高などの影響も重なり、社会保険料の支払い催促に対して弁済可能な資金を有する中小企業は決して多くない。帝国データバンクは、「社保や税金滞納分の支払い見込みが立たず、事業継続を断念するケースは今後さらに増えていく」と予想している。

同調査結果は↓
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p240412.pdf

提供:株式会社タックス・コム