法人がその役員や使用人の海外渡航に際して支給する旅費(仕度金を含む)は、その海外渡航がその法人の業務の遂行上必要なものであり、かつ、その渡航のため通常必要と認められる部分の金額に限り、旅費としての法人の経理が認められている。したがって、法人の業務の遂行上必要と認められる海外渡航であっても、その旅費の額のうち通常必要と認められる金額を超える部分の金額は、原則、その役員や使用人に対する給与となる。

その海外渡航が旅行期間のおおむね全期間を通じ、明らかに法人の業務の遂行上必要と認められるものである場合には、その海外渡航のために支給する旅費は、社会通念上合理的な基準によって計算されているなど不当に多額でないと認められる限り、その全額を旅費として経理することができる。そこでポイントとなるのは、法人の役員や使用人の海外渡航が法人の業務の遂行上必要なものであるかどうかの判定となる。

具体的には、その旅行の目的、旅行先、旅行経路、旅行期間等を総合勘案して実質的に判定することになるが、法人税基本通達では、原則として法人の業務の遂行上必要な海外渡航に該当しない旅行を示している。それは、(1)観光渡航の許可を得て行う旅行、(2)旅行あっせんを行う者等が行う団体旅行に応募してする旅行、(3)同業者団体その他これに準ずる団体が主催して行う団体旅行で主として観光目的と認められるものだ。

ただし、上記(1)から(3)に掲げる旅行に該当する場合であっても、その海外渡航の旅行期間内における旅行先、行った仕事の内容等からみて法人の業務にとって直接関連のあるものがあると認められるときは、法人の支給するその海外渡航に要する旅費のうち、法人の業務にとって直接関連のある部分の旅行について直接要した費用の額は、旅費として損金の額に算入されるとしている。

なお、法人の役員や使用人が海外渡航をした場合に、その海外渡航の旅行期間にわたり法人の業務の遂行上必要と認められる旅行と認められない旅行とを併せて行ったものであるときは、その海外渡航に際して支給する旅費を法人の業務の遂行上必要と認められる旅行の期間と認められない旅行の期間との比等で按分し、法人の業務の遂行上必要と認められない旅行に係る部分の金額については、その役員や使用人に対する給与となる。

ただし、海外渡航の直接の動機が特定の取引先との商談、契約の締結等法人の業務の遂行のためであり、その海外渡航を機会に観光を併せて行うものである場合には、その往復の旅費は、法人の業務の遂行上必要と認められるものとして、その海外渡航に際して支給する旅費の額から控除した残額につき、この「業務の遂行上必要と認められる旅行と認められない旅行とを併せて行った場合の旅費」の規定が適用される。

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