東京商工会議所が発表した「中小企業の事業承継に関する実態調査」結果(有効回答数1661社)によると、中小企業の事業承継の現状は、後継者(候補含む)がいる企業は約5割(53.5%)だったが、これらの企業の26.4%が法人版事業承継税制特例措置を「利用・検討したことがある」ことが分かった。内訳は、「事業承継税制の適用を受けている」が3.1%、「特例承認計画を提出したが、猶予はまだ受けていない」が4.4%など。

一方で、「事業承継税制を知らない」と回答した企業が4割(39.6%)あった。これらの企業の事業承継の課題(複数回答)は、「借入金・債務保証の引継ぎ」が39.9%で最も多く、次いで「後継者への株式の移転」(34.7%)、「自社株の評価額の高さ」(16.1%)などが続いた。自社株評価の実施状況をみると、「事業承継税制を知らない」企業の42.8%が「評価したことがない」と回答している。

事業承継税制の利用・検討状況を自社株評価額別にみると、自社株評価額が高い企業ほど、税制を知っている割合が高いことがうかがえる。例えば、評価額1千万円以下の企業で「税制を利用・検討した」割合は21.1%で「税制を知っている」割合は46.5%だが、評価額10億円超の企業では、46.6%が「税制を利用・検討」、「税制を知っている」は89.0%だった。税制を利用・検討したことがある割合は、評価額1億円を境に増加する傾向にある。

また、後継者(候補含む)がいて、特例承認計画の提出を検討中の企業(11.7%)においても、「特例承認計画を提出する目途がついていない」企業が55.2%と半数を超えた。これらの企業が税制を検討する中での制度上の障壁(複数回答)は、「適用期限(2027年12月)までに事業承継が完了できない」が30.2%、自社の障壁では、「後継者候補はいるが、経営者としての人材育成が終わっていない」が53.5%でともに最多だった。

事業承継税制の10年間限定の特例(2018年1月~2027年12月)は、自社株の全てを納税猶予の対象とすることができ、承継時の自社株に係る贈与税・相続税の現金負担がゼロになる。また、経営の実情に合わせて、親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への適用ができる。特例を活用するには、「特例承認計画」を都道府県に提出する必要があるが、2024年度税制改正で提出期限が2026年3月へ延長される予定だ。

同調査結果は↓
https://tokyo-cci.meclib.jp/jigyoshoukei_survey2024/book/

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