2023年度税制改正においてパーシャルスピンオフ税制が1年の時限措置として創設されたが、2024年度税制改正においては、スタートアップ創出促進の観点から、2023年度税制改正により創設された親法人の持分を一部残すスピンオフを適格株式分配とする制度について、認定計画の公表時期を見直すとともに、計画の認定要件の見直しを行った上、適用期限を2027年度末まで4年延長する。

スピンオフは、企業が特定の部門を分離して新会社として独立させることだが、パーシャルスピンオフ税制は、元親会社に一部持分を残すパーシャルスピンオフ(株式分配に限る)について、一定の要件を満たせば再編時の譲渡損益課税を繰延べ、株主のみなし配当に対する課税を対象外とする特例措置。一般的に、スピンオフによる効果として、経営の独立、資本の独立、上場の独立による企業価値の向上が期待される。

パーシャルスピンオフは、事業切り出し時点で完全に資本関係を解消することが難しい企業にもスピンオフの選択肢を与えるものであり、事業の切り出しを促進する上で意義がある。事業環境が急激に変化し、機動的な事業再編が求められるなか、大企業発のスタートアップ創出や企業の事業ポートフォリオの最適化を実現するためにも、パーシャルスピンオフの促進は重要となる。

2024年度税制改正におけるパーシャルスピンオフ税制の見直しは、(1)主務大臣による認定事業再編計画の内容の公表時期について、その認定の日からその認定事業再編計画に記載された事業再編の実施時期の開始の日まで(現行:認定の日)とすること、及び(2)認定株式分配が適格株式分配に該当するための要件に、その認定株式分配に係る完全子法人が主要な事業として新たな事業活動を行っていることとの要件を加える。

経済産業省によると、2022年末の2023年度税制改正大綱決定以降の短期間で、4社がスピンオフの検討を正式に公表。パーシャルスピンオフが時限措置とはいえ可能となったことは、企業によるスピンオフ検討の重要な契機となっている。スピンオフは事業ポートフォリオの見直しのために用いられることが多いが、加えて自社内で新たに育ってきた事業を更に成長させるためにスピンオフを活用する事例も出ている。

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