国税庁では、税務調査以外にも様々な取組みを実施し、納税者の税務コンプライアンスの維持・向上を図っている。自発的な適正申告が期待できる大企業(調査課所管法人)に対しては、協力的手法(税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組み・申告書の自主点検と税務上の自主監査のための確認表の活用)を通じて、税務コンプライアンスの維持・向上を促しているが、このほど2022年事務度における取組状況をまとめ公表した。

上記の協力的手法とは、大企業との協働関係を築いた上で自発的な税務コンプライアンスの維持・向上に導くことをいい、また、税務に関するコーポレートガバナンス(税務CG)とは、税務について経営責任者等が自ら適正申告の確保に積極的に関与し、必要な内部体制を整備することをいう。企業の税務コンプライアンスの維持・向上のためには、税務CGを充実させていくことが重要かつ効果的とみている。

金融商品取引法において内部統制報告書の提出義務がある上場企業や、会社法において内部統制システムの整備が義務付けられている企業は、コーポレートガバナンスの取組みと同様に、税務CGの充実が期待される企業と考えられる。それ以外の企業であっても、売上金額、従業員数、事業所数、関係会社数等の事業規模が一定程度ある場合には、税務CGの充実を通じて税務コンプライアンスの維持・向上を図ることが効果的と考えられる。

取組みの現状をみると、調査部特別国税調査官所掌法人(特官所掌法人)に対する税務調査の機会に企業の税務CGの状況を確認・判定するとともに、国税局調査部長等が企業の経営責任者等と面談し、評価結果の伝達(評価結果の根拠も含む)や要改善事項等に対する意見交換を行っている。2022事務年度の特官所掌法人の税務調査においては、138法人の税務CGの状況の確認・判定を行い、88%の企業が「概ね良好+良好」との評価結果だった。

評価結果の確認項目別の内訳をみると、「経営責任者等の関与・指導」(「概ね良好+良好」99%)や「帳簿書類等の保存状況」(同93%)、「税務に関する情報周知」(同89%)、「税務調査への的確な対応」(同86%)などの評価結果が高くなっている。一方で、「税務に関する内部牽制の体制」(同62%)や「税務調査での指摘事項等に係る再発防止策」(同64%)の評価結果が低い。

なお、国税庁では、特官所掌法人以外の法人であっても、税務CGの充実を通じて税務コンプライアンスの維持・向上を図ることが効果的であると考えられることから、特官所掌法人に対する取組状況を踏まえつつ、税務CGの充実に向けた取組みの対象法人拡大や対象法人の実情に応じた実施方法など、今後の方向性について検討しているという。

この件については↓
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/shinkoku/hojin/sanko/pdf/0023012-203.pdf

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