日本国内の会社に勤めている給与所得者が1年以上の予定で海外の支店などに転勤すると、一般的には、日本国内に住所を有しない者と推定され、所得税法上の非居住者となる。このように海外勤務等により非居住者となる人が、国内にある不動産の貸付けによる所得や国内にある資産の譲渡による所得などの、日本国内で生じた所得(源泉分離課税となるものを除く)があるときは、日本で確定申告が必要になる場合がある。

所得控除は、(1)医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除または地震保険料控除の額は、居住者期間内に支払った金額を基に計算する。(2)配偶者(特別)控除、扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除または勤労学生控除の適用については、海外に出発する日までに納税管理人の届出をした場合は、その年の12月31日、納税管理人の届出をしないで出国した場合は、その出国の日で判定する。

さらに、(3)雑損控除、寄附金控除及び基礎控除は、1年を通じて控除額を計算するが、非居住者期間内の雑損控除は、国内にある資産から生じた損失のみが対象となる。また、(4)配当控除及び外国税額控除の適用を受けられる場合には、この控除を行い、控除後の所得税を計算する。(5)住宅ローン控除については、引き続き居住が要件のひとつだが、転勤等のやむを得ない事情がある場合には一定の要件を満たせば適用を受けることができる。

なお、確定申告が必要となる場合には、納税管理人を定め、「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を、その人の納税地を所轄する税務署長に提出しなければならない。納税管理人とは、確定申告書の提出や税金の納付などを非居住者に代わってする人のことで、法人でも個人でも構わない。また、申告等の方法は、出国の時までに納税管理人を指定した場合と納税管理人を指定しないで出国する場合とで異なる。

出国の時までに納税管理人を指定した場合は、その年1月1日から出国する日までの間(「居住者期間」)に生じたすべての所得と、出国した日の翌日からその年12月31日までの間(「非居住者期間」)に生じた国内源泉所得の合計額について、翌年2月16日から3月15日までの間に納税管理人を通じて確定申告及び納税をする必要がある。

また、納税管理人を指定しないで出国する場合は、居住者期間に生じたすべての所得について、出国の日までに確定申告(準確定申告)をする必要がある。そして、この準確定申告をしたとしても、非居住者期間に国内源泉所得が生じる場合には、居住者期間に生じたすべての所得と非居住者期間に生じた国内源泉所得との合計額について、納税管理人を通じるなどして、翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告及び納税をする必要がある。

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