経済のグローバル化に伴い、企業や個人の海外取引や海外資産の保有・運用形態が複雑・多様化するなか、国税庁では、CRS(共通報告基準)に基づく非居住者金融口座情報(CRS情報)やCbCR(国別報告事項)の自動的情報交換、租税条約等の規定に基づく外国税務当局との情報交換を積極的に実施している。わが国の情報交換ネットワークも、2024年1月1日現在で85条約等(154ヵ国・地域に適用)まで拡大している。

国税庁が公表した昨年6月までの1年間(2022事務年度)における租税条約等に基づく情報交換事績の概要によると、CRS情報の自動的情報交換において、外国居住者の金融口座情報約53万件(口座残高約5.1兆円)を78ヵ国・地域に提供した一方、日本の居住者の金融口座情報約253万件(同16.4兆円)を95ヵ国・地域から受領。これらの情報は、富裕層による海外資産隠しなどの税務調査に生かす。

受領したCRS情報の活用例をみると、受領したCRS情報から、複数の国内外法人の役員を務める個人Aが、X国にある金融口座に多額の資金を保有していることを把握。口座残高が前年から大幅に増加しており、申告に反映されていない収入があることが想定されたため、調査に着手。調査において、当該口座の資金原資の解明を行った結果、個人Aが利子・配当等を含む多額の投資所得を得ていた事実を把握している。

また、国税庁から日本に最終親会社等がある866グループのCbCRを61ヵ国・地域に提供した一方、外国税務当局から2237グループのCbCRを53ヵ国・地域から受領した。CbCRの自動的情報交換は、OECD のBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの勧告(行動13「多国籍企業情報の文書化」)に基づくもの。受領したCbCRは、移転価格リスク評価その他のBEPS に関連するリスク評価及び統計に使用することとしている。

そのほか、2022事務年度に国税庁から外国税務当局に発した「要請に基づく情報交換」の要請件数は641件(前事務年度639件)。他方、外国税務当局から国税庁に寄せられた要請件数は252件(同128件)となった。また、「自発的情報交換」については、2022事務年度に国税庁から外国税務当局に提供した件数は131件(同73件)。他方、外国税務当局から国税庁に提供されたのは812件(同448件)と大幅に増加している。

2022事務年度の租税条約等に基づく情報交換事績の概要は↓
https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0023001-009.pdf

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