給与所得者が1年以上の予定で海外の支店などに転勤すると、一般的には、日本国内に住所を有しない者と推定され、所得税法上の非居住者となる。非居住者の場合、国内源泉所得(例えば、国内不動産の賃貸料収入など)のみが課税対象とされ、日本の法人の役員の場合を除き、たとえその給与が日本にある本社から支払われていても、海外勤務に基づき支給される給与は原則として課税されない。

しかし、非居住者に該当していた海外勤務者が、日本に帰国した後は居住者となるので、居住者となる帰国後は国内源泉所得に限らずすべての所得が課税の対象となる。また、帰国後の勤務に対する給与については年末調整の対象になる。したがって、帰国した年分の確定申告は、帰国前の国内源泉所得(源泉分離課税となるものを除く)と帰国後のすべての所得を合計して計算することになる。

確定申告に際して適用する各種所得控除については注意点がある。それは、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除の各控除の額は、居住者期間(帰国後)に支払ったこれらの金額を基として計算すること、また、配偶者(特別)控除、扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除及び勤労学生控除の各控除の額は、その年の12月31日の現況により判定したところで計算することだ。

なお、非居住者の課税関係については、日本の法人の役員として勤務する場合には、同じく海外支店などに勤務する人であってもその受け取る給与について取扱いが異なる。内国法人(本店または主な事務所が日本国内にある法人をいう)の役員として国外で勤務した場合には、その給与は、日本国内で生じたものとして、支払を受ける際に20.42%(所得税20%、復興特別所得税0.42%)の税率で源泉徴収される。

ただし、役員であっても、その内国法人の使用人として常時海外において勤務を行う場合には、その勤務に対する給与について源泉徴収の必要はない。例えば、内国法人の取締役が海外支店の支店長など使用人として常時勤務している場合がこれに当たる。

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