2024年度税制改正の特徴は、所得・法人課税において減税措置が実施される一方で、中長期的には防衛増税や扶養控除廃止などの増税措置が示唆された点にある。さらに与党税制改正大綱では、税制措置の実効性を高める「メリハリ付け」として、賃上げや投資に消極的な企業に大胆な改革を促し、減税措置の実効性を高める観点からも、「今後、法人税率の引上げも視野に入れた検討が必要」と明記したことである。

与党税制改正大綱は、「近年の累次の法人税改革は意図した成果を上げてこなかったと言わざるを得ない」として、これまでの法人減税路線を否定。わが国の法人税率は、これまで約40年間にわたって段階的に引き下げられ、現在の法人税率は、最高時より20%ポイント程度低い23.2%(実効税率ベースでは29.74%)となっている中で、わが国の法人税収は、緩やかな伸びとなっており、法人税の税収力が低下している状況にある。

2016年度税制改正では、稼ぐ力のある企業の税負担を軽減し、前向きな投資や継続的・積極的な賃上げが可能な体質への転換を促す観点から、法人税率20%台の実現を目指し、2015年度から2018年度にかけて実効税率ベースで4.88%の税率引下げが行われることとなった。これにより、企業経営者がマインドを変え、内部留保を活用して投資拡大や賃上げに取り組むことが期待された。

しかしながら、わが国においては、長引くデフレの中での「コストカット型経済」の下で、賃金や国内投資は低迷してきた。賃金水準は実質的に見て30年間横ばいと他の先進国と比して低迷し、国内設備投資も海外設備投資と比して大きく伸び悩んできた。その結果、労働の価値、モノの価値、企業の価値で見ても、いわゆる「安いニッポン」が指摘されるような事態に陥っている。

こうしたことから、与党税制改正大綱は、「近年の累次の法人税改革は意図した成果を上げてこなかったと言わざるを得ない」と指摘し、わが国が、「コストカット型経済」から転換しデフレの完全脱却には、企業が収益を現預金等として保有し続けるのではなく、賃金の引上げや前向きな投資、人への投資に積極的に振り向けるなど、企業のチャレンジと改革を大胆に後押ししていく必要があるとした。

他の主要国では、大型の投資減税など企業行動の変容を促す減税措置を講ずる一方で、米国インフレ抑制法による大企業への15%の最低課税や、英国における法人税本則税率の引上げなど、しっかりとしたメリハリ付けや財源確保の取組みが行われているところ、わが国でも、賃上げや投資に消極的な企業に大胆な改革を促し、減税措置の実効性を高める観点からも、「今後、中長期的な法人税率引上げが必要」としている。

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