国税庁が昨年公表した法人税等の調査事績によると、昨年6月までの1年間(2022事務年度)に、あらゆる資料情報と提出された申告書等の分析・検討を行った結果、大口・悪質な不正計算等が想定される法人など、調査必要度の高い法人6万2千件(前事務年度比52.3%増)を実地調査した。その結果、申告漏れ所得金額は7801億円(同29.4%増)、法人税と消費税の追徴税額は3225億円(同39.8%増)だった。

この追徴税額3225億円は2010事務年度以降で最高となった。この背景には、新型コロナウイルス感染症の影響での調査抑止が緩和され調査件数が増えたこともあるが、何よりも近年、税務当局が税務においてデジタルの活用に力を入れていることがある。2022年度内に申告した法人は、前年度比2.0%増の312万8千法人だったが、この膨大な法人に対処するためには、課税・徴収事務の効率化・高度化が求められる。

そのカギを握るのが、税務行政のデジタル・トランスフォーメーション(DX)である。DXの柱には、「納税者の利便性の向上」、「課税・徴収事務の効率化・高度化等」、「事業者のデジタル化促進」の3つがある。柱の一つ「課税・徴収事務の効率化・高度化等」では、AI・データ分析の活用が注目される。AIも活用しながら幅広いデータを分析することにより、申告漏れの可能性が高い納税者等を判定し、調査を効率化させているわけだ。

税務署等が収集した様々なデータを、BAツール・プログラミング言語を用いて統計分析・機械学習等の手法で分析し、申告漏れの可能性が高い納税者等を判定し、その分析結果を活用して、効率的な調査・行政指導を実施し、調査必要度の高い納税者には深度ある調査を行う取組みを進めている。BAツールとは、蓄積された大量データから統計分析・機械学習等の高度な分析手法を用いて、法則性を発見し、将来の予測を行うものだ。

また、BAツール・プログラミング言語を用いて、滞納者の過去の接触事績、申告書データ等を基に、滞納者ごとに接触できる可能性の高い方法(電話催告、臨場催告、文書催告)を予測し、効率的な滞納整理を実施。集中電話催告センター室では、滞納者の情報や過去の架電履歴等を分析し、曜日・時間帯ごとの応答予測モデルを構築した上で、応答予測の観点を追加したAIコールリストに基づき架電する等により、応答率の向上を図っている。

なお、「納税者の利便性の向上」では、日常使い慣れたデジタルツール(スマートフォン、タブレット、パソコンなど)から簡単・便利に手続きを行うことができる環境構築を目指すなど、これまで以上に“納税者目線”を大切に、各種施策を講じる。また、「事業者の業務のデジタル化の促進」によって、経済取引のデジタル化につながることで、事業者が日頃行う事務処理の一貫したデジタル処理を可能とし、生産性の向上等を図る。

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