10月からインボイス制度がスタートしたが、東京商工リサーチが国税庁の適格請求書発行事業者サイトの公表データを基に集計・分析した結果、10月単月の登録件数は過去最多の29万1875件で、累計では406万5616件に達した。10月の登録件数は法人が前月に比べて減少したものの、個人事業主が月間最多の22万6346件となり、全体を押し上げた。9月までに駆込み申請した個人事業主の登録手続きが進捗した結果とみられる。

個人事業主は課税売上高1000万円未満で、消費税の納付義務のない「免税事業者」が多い。インボイス登録すると、消費税の納付義務が生じることから、登録件数が伸び悩んでいた。法人は個人事業主と比べて登録ペースが速く、2022年11月には月間最多を記録し、以降は登録件数が落ち着いていた。個人事業主の登録件数の推移をみると、2023年3月に月間18万835件と急増したが、7月は7万403件まで落ち込むなど乱高下していた。

しかし、8月以降は10月1日の制度開始が迫り、登録ペースが急ピッチで進捗。取引先からの登録要請や制度の浸透などが登録増加の背景にある。9月は月間登録件数が16万4424件と過去2番目の高水準に達した。制度開始の10月は、駆込みで申請した個人事業主の登録手続きが進み、22万6346件と過去最多を更新。一方で、法人は2023年5月以降、6ヵ月連続で月間10万件を下回った。登録予定法人の大半は登録完了したとみられる。

インボイス制度が始まり、初めての月末が過ぎた。請求書発行や領収書の処理が本番を迎えたが、一部では混乱も聞かれる。なかでも、領収書や請求書が要件を満たさなかったり、会計システム上の想定外のエラー、11月から課税事業者の登録による免税・課税の両方で処理が必要など、経理担当者の気苦労は絶えない。また、飲食店やタクシー、貸駐車場などの利用を巡って困惑も生まれている。

一時的なサービス利用後に登録事業者ではないことがわかり、経費の精算などで制度開始前は必要なかった手間が発生しているようだ。一方で、「インボイス登録済」を積極的にPRする事業者も多く、「付加価値」の側面すら帯びている。

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