いよいよこの10月からインボイス制度が始まった。制度導入前であれば消費税が含まれる支払いが、制度導入後は支払先が適格請求書発行事業者以外だと消費税が含まれないことになる。ただし経過措置として、導入直後の3年間は、適格請求書発行事業者以外への支払であっても、導入前であれば含まれていたはずの消費税額の8割相当額が含まれているものとして処理することとなっている。

そして、さらに3年経過後の2026年10月以降の3年間は8割が5割になって、合計6年経過した2029年10月以降は原則通りになる。そこで疑問が生じるのは、税抜経理をしている事業者が、含まれないこととなる消費税額を会計上どのように処理をするのかということだ。結論としては、含まれないこととなる消費税額は仮払消費税ではなく本来の支払額の一部となる。

例えば、適格請求書発行事業者ではない飲食店で取引先との飲食代を総額2万2000円支払ったとする。その場合、制度導入前であれば交際費が2万円、仮払消費税が2000円だった。それが、制度導入後の3年間は交際費2万400円、仮払消費税1600円という経理処理になる。ということは交際費の年間800万円という限度額に届くかどうかという時には注意が必要になるわけだ。

ほかにも固定資産として計上しなければならない金額かそうでないかの判断をする場合にも注意が必要となる。これまでは税抜で10万円未満は全額費用計上して問題ないという認識だったので、税込11万円未満かどうかという見方をしていたが、制度導入後は税込11万円未満であっても支払先が免税事業者だったら、税抜価格で10万円以上になってしまう可能性があるから注意が必要ということになる。

10万円未満というのもそうだが、一括償却資産の20万円未満、少額減価償却資産の30万円未満、繰延資産の20万円未満、修繕費の60万円未満、飲食代の1人あたり5000円以下など、法人税法や所得税法では様々な金額ラインがあるので、税抜経理をしている事業者がそれらの金額ラインに基づいて判断するに当たっては、支払先が適格請求書発行事業者かどうかを確認する必要がある。

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