10月から始まったインボイス制度下では、一定の事項が記載された帳簿と適格請求書等の保存が、仕入税額控除の適用を受けるための要件になるが、ここで経費を立替払いしてもらう場合の請求書等の保存が問題となる。経費の支払先(請求書発行者)から立替払いをした会社宛に交付された適格請求書をそのまま受領したとしても、これをもって請求書発行者から交付された適格請求書とすることはできない点に留意する必要がある。

取引先が資産の譲渡や役務の提供を受けた場合、本来その対価は直接その取引先が支払うものだ。そのため、本来取引先が負担すべき対価を立替払いした際には、その取引を立替払いとして他の取引と明確に区分していれば、その立替払いは課税仕入れに該当しないし、立替金額の受取りも課税対象とはならない。ただし、立替金額に仲介料を上乗せして代金を受け取る場合は、単なる立替えとは異なるので、その全額が課税の対象となる。

そこで、インボイス制度が本格的に始まった場合の対応として、インボイス制度における立替払いの適格請求書に関しては、立替えを受けた側は、立替払いされた適格請求書と、立替払いを行った側が発行した「立替金精算書」といった、立替経費が立替えを受けた側の課税仕入れであることを証明する内容の書類を保存することで適格請求書の保存要件を満たすことになる。

そのため、立替払いした際に受け取った適格請求書と立替払いした側が作成した立替金精算書等を一緒に取引先に交付するといった対応となる。そうすれば、取引先はその立替えを受けた経費について仕入税額控除ができる。だが、立替払いした際に受け取った領収書などが適格請求書でなければ、立替金精算書等を発行した事業者が適格請求書の発行事業者だったとしても、立替えを受けた側は仕入税額控除できないことになる。

逆に、立替金精算書等を交付した事業者が免税事業者でも、立替払いの領収書などが適格請求書であれば、立替えを受ける側は仕入税額控除できる。つまり、その立替払いした領収書などが適格請求書かどうかで判断するということになる。そもそも、立替えを受ける側がどのような処理をしているかは判断できないので、立替払いをした際には全ての取引先について、上記の書類を交付するほうが最善の対応となろう。

ちなみに、立替えを受ける側が消費税の計算方法として簡易課税制度やインボイス制度の2割特例を採用している場合であったり、免税事業者だった場合にはそもそも適格請求書の保存は不要となる。

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