国税庁は10月6日、マンションの相続税評価額が実勢価格の平均4割程度にとどまることから、その評価額の低さを利用したマンション節税、いわゆる「タワマン節税」を抑止するため、評価額の新算定ルールを定めた通達を公表した。本通達は、7月21日から8月20日まで意見公募が行われたが、原案で示された評価方法から特段の変更はない。新たな算定ルールは、2024年1月1日以後の相続、遺贈又は贈与から適用される。

相続税・贈与税における財産の価額は、相続税法の規定により、「財産の取得の時における時価」とされており、国税庁では財産評価基本通達に各種財産の具体的な評価方法を定めている。その評価方法については、相続税法の時価主義の下、より適正なものとなるよう見直しを行っている中で、居住用の区分所有財産(いわゆるマンション)の「相続税評価額」は、「時価(市場売買価格)」との大きな乖離が生じているケースも確認されている。

また、2023年度与党税制改正大綱に、「マンションについては、市場での売買価格と通達に基づく相続税評価額とが大きく乖離しているケースが見られる。現状を放置すれば、マンションの相続税評価額が個別に判断されることもあり、納税者の予見可能性を確保する必要もある。このため、相続税におけるマンションの評価方法については、相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する」旨が記載された。

そこで、国税庁が設置した有識者会議において、居住用の区分所有財産の相続税評価額について、実勢価格との乖離の実態を踏まえた上で適正化が検討された結果、居住用の区分所有財産の評価を新設して評価することとされた。まず、一室の区分所有権等に係る敷地利用権の価額は、「自用地としての価額」に、一定の区分所有補正率を乗じて計算した価額を、その「自用地としての価額」とみなして評価することとする。

具体的には、「築年数」、「総階数指数」、「所在階」、「敷地持分狭小度」の4指数に基づいて評価乖離率を求め、1を乖離率で除した評価水準が0.6未満の場合、従来の評価額に評価乖離率と0.6を掛けて補正し、評価水準が1を超える場合、従来の評価額に評価乖離率のみを掛けて補正。区分所有者が、一棟の区分所有建物に存する全ての専有部分、一棟の区分所有建物の敷地のいずれも単独で所有している場合は、「区分所有補正率」は1を下限とする。

次に、一室の区分所有権等に係る区分所有権の価額については、「自用家屋としての価額」に、上記と同様の補正率を乗じて計算した価額をその「自用家屋としての価額」とみなして評価する。なお、国税庁では、これらの居住用の区分所有財産の評価について、納税者が簡易に計算するためのツールを用意する予定としている。

「居住用の区分所有財産の評価について(法令解釈通達)」は↓
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hyoka/231004/index.htm

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