国税不服審判所はこのほど、2022年4月から6月分の裁決事例を同審判所ホームページ上にある「公表裁決事例要旨」及び「公表裁決事例」に追加し公表した。今回公表された裁決事例は、5事例(国税通則法関係4件、所得税法関係1件)と少なめだった。今回は、国税通則法関係の4事例全てにおいて、重加算税の賦課決定処分を一部取り消しており、実務家にとっても参考となると思われる。

ここでは、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例を紹介する。同事例は、申告漏れ株式について、申告書提出前後の請求人の行為や言動に鑑みると、その銘柄、株式数等を記載したノート等を関与税理士に提出しなかったことから、国税通則法に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとみることは困難で、また、その事実につき過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動に該当するものとも認められないとしたもの。

原処分庁は、請求人自らが銘柄、株式数及び配当金額等を2冊のノートに記載しながら、被相続人の相続税の申告書に計上されなかった被相続人名義等の株式を、被相続人の相続財産である旨十分認識していたが、関与税理士に各ノートを含む株式に係る資料等を渡さずに税理士をして株式を計上しない申告書を作成、提出させたのだから、請求人には、国税通則法に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があった旨主張した。

しかし裁決は、請求人は、税理士から株式については証券会社から残高証明書等を取得して提出するよう指示を受け、証券会社から残高証明書等を取得して提出していたため、株式も申告書に計上されていると思い込んでいた可能性があり、また、各ノートは、その記載状況からみて、請求人の単なる備忘メモ的なものとしての使用と考えられ、請求人が、税理士を含む第三者への提出目的で各ノートを作成したものではないと推認できると指摘した。

さらに、請求人は、相続税の調査の際に、原処分庁所属の調査担当職員に自ら各ノートを提出したことなどに鑑みると、各ノート等の資料を税理士に提出しなかった行為について、隠ぺいの行為そのものとか、当初から過少申告を意図した上で、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動に該当するものと認めるに足る事情はないから、「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実はないといわざるを得ないと判断している。

2022年4月から6月分の裁決事例は↓
https://www.kfs.go.jp/service/JP/idx/127.html

提供:株式会社タックス・コム