事業を行っているにもかかわらず申告をしていない法人を放置しておくことは、納税者の公平感を著しく損なうものであることから、国税庁では、こうした稼働無申告法人に対する調査に重点的に取り組んでいる。今年6月までの1年間(2021事務年度)においては、事業を行っていると見込まれる無申告法人1482件(前年対比4.7%増)に対し実地調査を実施し、法人税90億6100万円(同76.2%増)を追徴課税した。

また、消費税については1223件(前年対比3.8%増)を実地調査した結果、消費税82億3100万円(同▲25.4%)を追徴課税。法人税と合わせると172億9200万円(同6.9%増)を追徴課税している。このうち、稼働している実態を隠し、意図的に無申告であった法人税326件(同17.3%増)及び消費税267件(同16.6%増)の法人に対し、法人税63億2200万円(同91.1%増)、消費税36億3800万円(同▲40.9%)を追徴課税した。

無申告事案では、代表者名義の預金口座に売上代金を振り込ませることで取引を隠ぺいしていたA社のものがある。A社は、人材派遣事業を行い収入を得ていたが、申告義務があることを分かっていながら、「申告すれば税金を払わなければいけないし、自分の口座に振り込ませれば税務署にはバレないだろ」と考えて、代表者名義の預金口座に売上代金を振り込ませることで取引を隠ぺいし、申告を一切せずに納税を免れていた。

A社に対しては重加算税を含む約9000万円が追徴課税されている。そのほか、不動産業で得た収入について、取引に係る書類を破棄することで取引を隠ぺいして、申告をしなかったB法人もある。B法人に対しては、重加算税を含む約4000万円が追徴課税されている。国税庁では、無申告は、申告納税制度の根幹を揺るがすことになるため、資料情報の更なる収集・活用を図り、積極的に調査を実施する方針だ。

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