個人事業者に対する消費税の実地調査の件数は、回復傾向にあるが、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として低水準である一方、無申告等の調査を重点的に実施したほか、輸出物品販売場制度の悪用事案に対する調査に新たに積極的に取り組み、追徴税額の総額は、新型コロナウイルス感染症影響前の水準に近づいている。また、文書等による接触方法を積極的に組み合わせることにより、簡易な接触による追徴税額は増加した。

今年6月までの1年間(2021事務年度)における実地調査の件数は、特別調査・一般調査が1万4千件(前事務年度9千件)、着眼調査が3千件(同2千件)であり、合計1万7千件(同1万1千件)、このほか、簡易な接触の件数は6万8千件(同7万5千件)だった。これらの調査等の合計件数は8万5千件(同8万7千件)であり、そのうち申告漏れ等の非違があった件数は約65%に当たる5万5千件(同4万9千件)となっている。

この結果、追徴税額は 実地調査によるものは、241億円(前事務年度133億円)で、そのうち特別調査・一般調査によるものは228億円(同127億円)、着眼調査によるものは13億円(同5億円)とともに大きく増加。実地調査による追徴税額を1件当たりでみると、143万円(同120万円)で、前事務年度に比べ約19%増加。簡易な接触による追徴税額は71億円(同48億円)で、調査等合計では312億円(同180億円)だった。

また、2021事務年度は消費税の輸出物品販売場制度を悪用し免税購入した物品を国内転売するような事案についても新たに積極的に調査を実施。消費税の輸出物品販売場制度を悪用した者に対する調査状況(即時徴収事案)は、2021事務年度においては、30件(前事務年度2件)実地調査を実施。即時徴収の対象となった税額の総額は12億円にのぼり、1件当たりの追徴税額は、4143万円となっている。

調査事例では、輸出物品販売場で大量・高額の商品を免税購入した者に対して消費税を賦課決定した事例がある。非居住者(外国人で入国から6ヵ月を経過していない者など)Aが複数の輸出物品販売場で免税購入した大量・高額の商品を、居住者となる日までに輸出していないことが判明したため、免除に係る消費税を賦課決定したものだ。Aに対しては、消費税の免税購入額約14億4500万円について、約1億4400万円を賦課決定した。

輸出物品販売場制度における即時徴収とは、輸出物品販売場において免税対象物品を購入した非居住者が、その免税対象物品をその者が出国する日又は居住者となる日(基本的に入国後6ヵ月以内)までに輸出しない(国外に持ち出さない)ときに、免除に係る消費税相当額を直ちに徴収すること、また、輸出物品販売場で購入した免税対象物品を、非居住者が譲渡したときに、税務署長が、免除に係る消費税相当額を直ちに徴収することをいう。

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