国税庁は、2022年度税制改正において、2023年分以降の「財産債務調書」の提出義務者や提出期限などが見直されたことを受けて、その周知を図っている。現行の同制度の提出義務者は、その年分の所得が2000万円を超え、かつ、その年の12月31日において、その価額の合計額が3億円以上の財産又はその価額の合計額が1億円以上の有価証券等国外転出特例対象財産を有する場合に、税務署長に提出しなければならないとされている。

現行では、その年分の退職所得を除く各種所得の合計額が2000万円以下の者は財産債務調書の提出義務者の範囲から外れるため、仮に高額の資産を保有していてもその年分の所得が低いもしくはゼロであれば、調書の提出義務はなく、資産の移動状況の把握が不十分になる。そこで、見直しでは、提出義務者に所得要件を設けずに、その年の12月31日において、財産の価額の合計額が10億円以上の者を加える。

一方で、提出期限が緩和され、現行の提出期限であるその年の翌年の3月15日から「その年の翌年の6月30日」とする。国外財産調書についても同様となる。また、財産債務調書への記載を運用上簡略化できる家庭用動産や事業用の未収入金などの取得価額の基準が300万円未満(現行:100万円未満)に引き上げられる。これらの改正は、2023年分以後の財産債務調書又は国外財産調書について適用される。

所在別に区分することなく、件数及び総額で記載することができる範囲が、事業又は業務の用に供する借入金や未払金(支払手形を含む)、その他の債務は、用途を問わず、その年の12月31日における金額が300万円未満(現行:100万円未満)のものに広がる。さらに、その年の12月31日における預入高(一口)が50万円未満の預貯金については、その預入高の記載を省略することができるようになる。

預入高の記載を省略する場合は、財産債務調書の「所在」欄又は「備考」欄に口座番号を記載する必要がある。そのほか、青色申告決算書又は収支内訳書の「減価償却費の計算」欄に記載された減価償却資産については、資産ごとに区分して記載することを省略できる。その場合、財産債務調書に総額で記載することができるようになる。この改正は、国外財産調書についても同様となる。

財産債務調書制度等の見直しについては↓
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/zaisan_saimu/pdf/zaisan_leaflet.pdf

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