製造業者などが、一定期間内に多額の取引をした得意先に対し「売上割戻し」を行うケースは少なくない。売上割戻しとは、一定期間に多額又は多量の取引をした得意先に対し、売上高等を基準として割戻しを行うことをいい、売上高から控除する。売上割戻しは、一般的には金銭で行われるが、得意先への接待・サービスとして行われた場合、交際費として処理されることがあるので注意が必要だ。

売上割戻しを、売上高の一定額ごとに「金銭」で行う場合は、交際費に該当しない。この金銭は、売上割戻しを受ける側では収益として計上され課税されるので、支払側は損金算入することが認められている。しかし、金銭の代わりに「物品」で行った場合は、交際費課税は避けられない。それは、「金銭」による売上割戻しが「売上代金の返戻」とみられるのに対し、「物品」では「取引の謝礼としての贈答」と判断されるためだ。

そこで、売上割戻しを商品券で行った場合はどうなるだろうか。商品券といっても、デパートなどの金券的な性格のものからビール券やおこめ券など特定物品とひも付き関係にあるものもある。金銭での売上割戻しが交際費に該当しないことから、デパートなどの金券も同様と思われようが、この金券的な商品券は、金額の多寡にかかわらず、交際費として取り扱われることになっている。

物品で売上割戻しを行えば、原則、交際費に含めなければならないわけだ。ただし、交付した物品がおおむね3000円以下の少額物品である場合には、その贈答費用は交際費から除外することができるとされている。したがって、ビール券やおこめ券など特定物品とひも付き関係にある商品券も、物品の割戻しと同様に、その商品引換券の1枚の券面額が少額であれば交際費から除かれるということになる。

ところで、商品券は購入しただけでは交際費とはならないので注意が必要だ。商品券は、取引先に渡したときに初めて交際費となる。例えば、決算でかなりの利益が見込まれる企業が、取引先に謝礼として渡す商品券を購入し、交際費として一定枠まで今期の損金に計上しても、購入するだけでは節税とはならないのだ。決算日までに取引先に渡していない商品券は、資産科目である貯蔵品勘定で処理する必要がある。

さらに購入した商品券を、いつ誰に渡したかを管理する必要がある。商品券をいつ誰に渡したかをきちんと記録していないと、会社で買った商品券を代表者や役員が私的に懐に入れているのではないか、また、会社が商品券をチケットショップで換金して、裏金を作っているのではないか、と税務調査で疑われかねないことになる。同様に、取引先や従業員に渡すタクシーチケットも管理が必要だろう。

提供:株式会社タックス・コム