日本証券業協会はこのほど、岸田文雄首相が掲げる資産所得倍増プランの実現に向けた提言を公表した。提言では、(1)投資家の裾野拡大のため、NISAの抜本的な拡充と実践的な投資教育の推進、(2)職域を通じた投資家の裾野の拡大、(3)海外を中心とする投資収益の従業員等への適切な分配の確保、(4)確定拠出年金制度(企業型DC、iDeCo)、(5)高齢者の資産活用とその子供世代の資産形成、などを掲げた。

(1)では、NISAは投資を始めるきっかけとしての役割を果たしており、制度の抜本的な拡充を通じ、その役割を更に強化する必要があるが、それでも踏み出せない人のために、公的に実践的な投資教育を行うことで、投資教育の機会の格差を是正することも必要とした。具体的には、NISA制度の改善及び実践的な投資教育を推進する官民の体制と施策を体系化し、根拠法となるNISA法(仮称)と一体として法制化することを提言した。

NISA制度の改善としては、制度の見直しとして、制度恒久化とNISA法(仮称)の制定や、制度簡素化として、つみたてNISAと一般NISAの併用可能化、非課税保有期間の無期限化又は大幅延長、利便性向上のため、年齢要件撤廃や対象商品拡大、非課税投資枠の拡大、さらに制度利用促進策として、職場つみたてNISAの奨励金非課税措置や給付型の資産形成支援措置(つみたてNISA×マイナポイントなど)を挙げている。

(2)では、持ち株会への加入拡大を後押しするため、従業員持株会等への税制優遇措置として、奨励金非課税、拠出金所得控除、配当金非課税を、従業員持株会の制度改善のために拡大従業員持株会の範囲拡大を挙げている。また、(3)では、株式報酬の付与などによる従業員等への海外投資収益の適切な分配が重要として、株式報酬制度(主にRS)の活用を促進するための制度改善に、開示規制・インサイダー取引規制の緩和などを挙げた。

(4)の確定拠出年金制度については、老後の私的年金水準の実質的な確保のため、生涯拠出枠と自由度の高い年間拠出限度額の導入や退職準備世代に対して追加の拠出枠(キャッチアップ拠出)を設けること、iDeCo等の拠出限度額の引上げを、また、より多くの国民が私的年金に加入するための仕組みとして、拠出可能額をねんきん定期便等に見える化や自動加入・オプトアウトの仕組みを挙げた。

さらに、高年齢者就業確保措置等を踏まえた環境整備(iDeCoの加入可能年齢を65歳から70歳へ)、iDeCoの加入拡大に向けた事務手続きの簡素化を、具体的な施策として提言している。そのほか、(5)では、NISAの年齢要件を撤廃、高齢者の資産を子供世代が代理人として運用する「家族サポート口座」(仮称)の導入などを提言している。

日本証券業協会の提言の概要は↓
https://www.jsda.or.jp/about/teigen/shotokubaizouplan/gaiyou_shotokubaizouplan.pdf

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