給与支払報告書とは、従業員の住民税を適切に計算するために、従業員を雇用している企業・個人事業主が各市区町村に提出することが義務付けられている書類だ。給与支払報告書は、給与を支払っている会社(または個人事業主)が各市区町村に提出する。2021年の情報を提出する場合であれば、2022年1月31日までに、2022年1月1日現在で従業員の現住所のある各市区町村に提出しなければならない。

ところで、従業員の中に現住所と住民票の住所が違う者がいた場合は、どちらの住所で給与支払報告書を提出したらいいのか悩むところだ。住民票を現住所に移しておらず、扶養控除申告書などは現住所で記載されており、そのまま年末調整まで完了していて、今後も住民票を移す予定はないというケースへの対応だ。結論をいうと、給与支払報告書は現住所で提出することになる。

現住所で提出すれば、住民票のある市区町村から課税される心配はない。地方税法では、住民税を課税できるのは「住所を有するもの」と定められている。「住所を有する」とは基本的には住民票がある(住民基本台帳に記録されている)ことを指すが、これだけで判断されるのではなく、実態のほうを優先する。また、他の市区町村で住民税を課税されている場合、住民票があっても課税できないことになっている。

実家から住民票を動かしていない、引越しが多くてどこまで手続きをしたかわからない、などといったケースも少なくない。実態に即した住民票が必要なこともあるので、なるべくなら住民票は移動させておくべきだ。ちなみに、給与支払報告書は1月1日時点での住所地に基づいて提出するから、年末年始に引越しを検討していた、という従業員がいれば注意が必要だろう。通勤交通費の精算などから引越しが判明、などといったこともある。

なお、給与支払報告書の提出では、(1)マイナンバーの記載が必須、(2)電子申告が義務の場合、(3)特別徴収と普通徴収を分類する必要、に注意したい。(2)は、2021年1月より制度が変更され、前々年の源泉徴収票の提出枚数が100枚以上の場合はeLTAXまたは電子媒体利用の給与支払報告書の提出が義務付けられた。(3)は、原則、特別徴収は義務だが、普通徴収とする場合、「普通徴収切替理由書兼仕切書」の提出が必要な場合がある。

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