2022年度税制改正では、納税環境整備の一環として、記帳義務の不履行及び特に悪質な納税者への対応を行う。適正な記帳や帳簿保存が行われていない納税者については、真実の所得把握に係る税務当局の執行コストが多大であり、行政制裁等を適用する際の立証に困難を伴う場合も存在する。記帳義務の不履行や税務調査時の簿外経費の主張等に対する不利益がない中では、悪質な納税者を利するような事例も生じているところだ。

さらに、個人事業者の場合、正規の簿記の原則に従った記帳を行っている者は約3割にとどまっており、簡易簿記での申告者の3分の1超が10 年以上簡易簿記による記帳を続けている状況にある。そこで、複式簿記による記帳を更に普及・一般化させる方向で、納税者側での対応可能性も十分踏まえつつ、所得税の青色申告制度の見直しを含めた個人事業者の記帳水準向上等に向けた検討を行うとした。

大綱によると、記帳義務及び申告義務を適正に履行する納税者との公平性の観点に鑑み、帳簿の不保存・不提示や記帳不備に対し、意図しない記帳誤りや帳簿の作成能力に配慮した上で、その記帳義務の不履行の程度に応じて、通常課される過少申告加算税の額又は無申告加算税の額にその申告漏れ等に係る所得税、法人税又は消費税の10%に相当する金額を加算するなど、過少申告加算税等を加重する仕組みを設けることとしている。

具体的には、国税庁等の職員に帳簿の提示若しくは提出をしなかった場合又は職員にその提示若しくは提出がされた帳簿に記載すべき事項のうち、売上金額や業務に係る収入金額の記載が著しく不十分(2分の1以上が記載されていない)な場合は10%の加算、収入金額の記載が不十分(3分の1以上が記載されていない)な場合は5%の加算となる。この改正は、2024年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用する。

また、納税者が、事実の仮装・隠蔽行為に基づき確定申告書を提出した年分又は無申告の年分において主張する簿外経費の存在が帳簿書類等から明らかでなく、税務当局による反面調査によってもその取引が行われたと認められない場合には、その簿外経費は必要経費・損金に不算入とする措置が講じられる。この改正は、2023年分以後の所得税について適用される。

提供:株式会社タックス・コム