2021年度税制改正では、民間におけるデジタル化の促進の一環として、研究開発税制を見直した上で適用期限を2年延長する。企業のDXを促進する観点からは、ソフトウェア分野における研究開発の支援も重要なため、クラウド環境で適用するソフトウェアなどの自社利用ソフトウェアの普及が拡大していることを踏まえ、自社利用ソフトウェアの取得価額を構成する試験研究に要した費用を対象に追加する。

試験研究費の総額に係る税額控除制度については、税額控除率を、(1)増減試験研究費割合が9.4%超は「10.145%+(増減試験研究費割合-9.4%)×0.35」、(2) 増減試験研究費割合が9.4%以下は「10.145%-(9.4%-増減試験研究費割合)×0.175」に見直し、その下限を2%(現行:6%)に引き下げた上、その上限を14%(現行:10%)とする特例の適用期限を2年延長する。

さらに、売上が一定程度減少したにもかかわらず、研究開発費を増加させた企業には、控除上限を25%から30%に引き上げる特例が設けられる。2021年4月1日から2023年3月31日までの間に開始する各事業年度のうち基準年度比売上金額減少割合が2%以上であり、かつ、試験研究費の額が基準年度試験研究費の額を超える事業年度の控除税額の上限に当期の法人税額の5%を上乗せし30%とする。

このように、控除上限を引き上げることでコロナ禍でも投資意欲を損なわないようにする。上記の「基準年度比売上金額減少割合」とは、当期の売上金額が2020年2月1日前に最後に終了した事業年度の売上金額に満たない場合のその満たない部分の金額のその最後に終了した事業年度の売上金額に対する割合をいう。また、上記の「基準年度試験研究費の額」とは、2020年2月1日前に最後に終了した事業年度の試験研究費の額をいう。

なお、試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合における税額控除率の特例及び控除税額の上限の上乗せ特例の適用期限は2年延長される。以上のように、研究開発税は、現行制度よりも試験研究費の増加に合わせて税額控除率が高くなる仕組みとし、インセンティヴを効かせる見直しとなっている。また、新型コロナの影響で売上高が一定程度減った企業の投資意欲を損なわない措置も特徴的だ。

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