企業等の事業、投資活動のグローバル化が進展するなか、海外取引を行っている法人の中には、海外の取引先への手数料を水増し計上するなどの不正計算を行うものが見受けられる。国税庁は、このような海外取引法人等に対し、国外送金等調書や租税条約等に基づく情報交換制度を積極的に活用するなど、深度ある調査に取り組んでいる。2019事務年度は、海外取引法人等に係る実地調査を1万3116件(前年度比▲16.2%)実施した。

前年度と比べて調査件数等が減少しているのは、新型コロナウイルス感染症の影響のため。この結果、海外取引等に係る非違があったものが3636件(前年度比▲16.7%)把握された。非違があった件数は前事務年度に比べて減少し、海外取引等に係る申告漏れ所得金額も▲65.4%と大幅減少の2411億円となった。非違があったうちの497件(同▲23.1%)は不正計算があったもので不正所得金額は183億円(同▲19.4%)だった。

一方、国税庁では、海外取引に係る脱税や租税回避を防ぐために各国の税務当局と金融口座情報を交換する新制度(CRS)を積極的に活用している。2019事務年度においても、外国税務当局から受領した金融口座情報を端緒に取引の全貌を解明し、外国子会社合算税制の適用回避等を把握した事案が明らかになっている。広島国税局が調査したのは、機械製品の販売を営む法人甲だった。

金融口座情報を交換する新制度(CRS)に基づく非居住者金融口座情報によると、軽課税国に所在する海外子会社Aの関連口座に多額の蓄積があるものの、申告書に適正に反映されておらず、外国子会社合算税制上の問題があるものと想定された。このため、実地調査を行うべく通知を行ったところ、実地調査開始前に海外子会社Aが外国子会社合算税制の対象になるとして修正申告書が提出された。

実地調査により関係書類をさらに検討したところ、新たに軽課税国に所在する海外子会社Bを把握するなど、法人甲に係る外国子会社合算税制の適用誤りを把握した。法人甲に対しては、法人税1年分の申告漏れ所得金額5億7800万円について追徴税額4億7900万円を課している。なお、CRS情報については、2019事務年度において、日本の居住者に係る金融口座情報約205万件を86ヵ国・地域から受領している。

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