オンラインショッピングやネット広告などインターネット取引はすっかり定着しており、なかには年間1億円を超す売上があるネット業者も珍しくない。しかし、多額の利益を上げながら、ネット上の売上は国税当局には把握されまいと考え、無申告・過少申告する業者が後を絶たない。ネット取引は、無店舗による事業形態となるため、その把握は困難だが、国税当局は、あらゆる有効な資料情報を収集・分析して適正な課税に努めている。

国税庁によると、今年6月までの1年間(2019事務年度)において、ネット取引を行っている個人事業者などを対象に1877件(前事務年度2127件)を実地調査(特別・一般)した結果、1件当たり平均1264万円(同1243万円)の申告漏れ所得金額を把握。この申告漏れ額は、同時期の実地調査(同)全体での1件平均1190万円を上回る。申告漏れ所得金額の総額237億円(同264億円)に対し65億円(同58億円)を追徴した。

調査事例では、ライブイベントで販売される音楽メディア等をネット販売することにより多額の利益を得ていたものの申告せず、その利益で運営した暗号資産の利益も一部しか申告しなかったAに対して課税したものがある。Aは、部内資料から、複数のネット販売サイトでの販売が想定されたものの、連年無申告だったことから、調査に着手。その結果、A本人の預金口座にネット販売業者からの多額の入金があることを把握した。

Aは、自らの所得を認識し、申告の必要性も分かっていながら、ネット取引という匿名性が高い取引であることから税務当局にはバレないと考えて、納税を免れるため、申告に必要な領収書などを破棄するとともに、ネット販売サイトで使っていたIDを削除するなどの隠ぺい行為を行った上で、故意に申告しなかった。Aに対しては、所得税6年分の申告漏れ所得金額約4600万円について追徴税額(重加算税含む)約1900万円が課されている。

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