無申告は、申告納税制度の下で自発的に適正な納税をしている納税者に強い不公平感をもたらすことになるため、的確かつ厳格な対応が求められる。無申告者は、その存在自体の把握が難しいことから、国税当局は、有効な資料情報の収集や活用を図り、積極的に調査を実施している。国税庁が今年6月までの1年間(2019事務年度)に実施した高額・悪質と見込まれた無申告者に対する実地調査は7328件(前事務年度8147件)行われた。

実地調査(特別・一般)の結果、申告漏れ所得金額の総額は1583億円(前事務年度1658億円)把握。追徴税額は、総額で174億円(同197億円)、1件当たりでは237万円(同242万円)だった。2019事務年度は実地調査(特別・一般)全体が4万2601件行われているから、全体の約17%が無申告者に対する調査に充てられ、実地調査(同)全体の申告漏れ所得金額5068億円の約31%が無申告者に係るものだったことになる。

1件当たりの申告漏れ所得金額は2160万円となり、前事務年度の2035万円からは6.1%増加し、実地調査(特別・一般)全体の1件当たり申告漏れ所得金額1190万円の約1.7倍と高額だ。それも、前事務年度に比べ調査件数はコロナ禍の影響で10.1%減少した中での数字だ。こうした調査結果からいえることは、結構高額な所得がありながら、国税当局にはばれまいと高をくくって申告しない納税者がいかに多いかということだろう。

また、消費税の無申告者に対しては、2019事務年度において実地調査(特別・一般)8329件(前事務年度9631件)が行われた結果、追徴税額は160億円、1件当たりでは192万円と、2011事務年度以降、過去最高となった。同事務年度の消費税に係る実地調査(同)全体は2万3837件行われており、全体の約35%が無申告者に対する調査に充てられ、消費税の実地調査(同)全体の追徴税額265億円の約60%が無申告者に係るものだった。

調査事例では、売上先の税務調査の際に、受託加工業者Aが外注費の支払いを受けている事実が把握されたが、事業所得が無申告だったものがある。調査の結果、Aは、事業に係る売上金額を所在地と異なる他県の金融機関の支店窓口で現金化し、預金口座に残高が残らないようして申告しなかった。Aに対しては、所得税7年分の申告漏れ所得金額約7900万円について、追徴税額約2300万円、消費税3年分の追徴税額約600万円が課された。

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