会計検査院はこのほど「2019年度決算検査報告の特徴的な案件」を公表し、その中で、原則として課税対象外とされる完全子法人株式等及び関連法人株式等に係る配当等の額に対して源泉徴収を行っていることによって、多額の還付金及び還付加算金並びに税務署における源泉所得税事務及び還付事務等が発生していると指摘した。検査院は、財務省・国税庁に対し、配当等に係る源泉徴収制度の在り方の検討を求めた。

法人税法においては、内国法人が他の内国法人から支払いを受ける配当等は保有する株式等の区分に応じて、一定の配当等の額を益金の額に算入しない制度が設けられている。また、内国法人において、所得に対する法人税額がない又は控除すべき源泉所得税額が法人税額を上回り、納付した税額の還付を求めた場合、税務署長は還付金を還付し、還付金に一定割合を乗じた還付加算金を支払うこととされている。

検査院が検査の対象とした2017年度から2019年度における完全子法人株式等又は関連法人株式等を保有する法人は1667法人で、所得税額控除の額は計1兆1345億1974万円。このうち、その配当等に対する所得税額控除の額は計9934億1336万円にのぼり、ほとんどが完全子法人株式等及び関連法人株式等に係る受取配当等の額に対するもので、原則として課税対象外とされている配当等に対して徴収された源泉所得税相当額だった。

これによって、企業グループ内における納税に係る一時的な資金負担や税務署での源泉所得税事務が生じていた。上記1667法人のうち、完全子法人株式等及び関連法人株式等に係る受取配当等に対する源泉所得税相当額について所得税額控除を適用したことで還付金が生じていた法人延べ1262法人に支払われた還付金は計8898億6092万円で、うち還付加算金が生じていた888法人に支払われていた還付加算金は計3億6563万円に達した。

原則として全額に法人税が課されていない完全子法人株式等及び関連法人株式等に係る配当等の額に対して源泉徴収を行っているため、ムダな還付金及び還付加算金、これらに係る税務署の還付事務が生じていた。検査院は、「財務省(国税庁)において、源泉徴収義務者による源泉徴収事務の便宜を考慮した上で、配当等に係る源泉徴収制度の在り方について、様々な観点から効率性、有効性等を高める検討を行っていくことが肝要」と指摘している。

この件については↓
https://www.jbaudit.go.jp/report/new/summary01/pdf/fy01_tokutyou_08.pdf

提供:株式会社タックス・コム