日本病院会ほか四病院団体協議会では先ごろ、「新型コロナウイルス感染症対策にかかる緊急税制改正要望」を取りまとめ加藤厚生労働大臣に提出している。新型コロナウイルス感染症の蔓延とその長期化により、医療機関では財政難及び人材の確保で困窮して倒産に追い込まれるところも出ているなか、医療機関の経営破綻を防ぎ、医療体制を維持・確保するためには、税制を含めた各種の支援措置が不可欠との認識がある。

緊急税制改正要望では、まず新型コロナ感染症の拡大に伴う外来・入院患者の大幅な減少により、医療機関の経営状態並びに財政状態は著しく悪化していることを挙げ、地域医療の崩壊を防ぎ医療提供体制を維持・確保するため、財政的補助の実効性を担保する観点から医療機関に給付される補助金等を非課税とするとともに、既に給付された補助金等についても遡って非課税とするよう求めている。

また、新型コロナ感染症に立ち向かった医療機関に対して、国民や企業から現物を含めて寄附が寄せられているが、この寄附が課税となった場合、寄附者の意図が減じてしまうと同時に、受領した医療機関側で課税が生じると寄附を受領できないケースも発生しかねない。このような事態を回避するため、医療機関への寄附について税制優遇を求めるとともに、既になされた寄附についても税制優遇を要望している。

一方、医療機関では新型コロナ感染症対策として、(1)人工心肺装置等の設備投資、(2)マスクや防護具、消毒薬等の支出が増加。これらは、事前に計画された投資ではなく、新型コロナ感染症対策として喫緊の必要性に迫られて購入したものであり、資金的裏付けのないまま購入している。このような設備投資については、即時償却又は税額控除、償却資産税の全額減免、消費税相当額の補助等の税制上の優遇措置を図るべきとした。

そのほか、新型コロナ感染症の影響により、税金等を一時に納付できない場合、税務署等への申請により、原則1年以内の期間に限り、税金や社会保険料の納付の猶予が認められるが、この納付猶予期間を1年以上とすることや、欠損金の繰戻還付制度の適用対象法人の制限を撤廃し、全ての法人が制度の利用を可能とするとともに、遡って還付請求ができる期間を5年程度に大幅に拡大することなども、要望書に盛り込まれている。

「新型コロナウイルス感染症対策にかかる緊急税制改正要望」は↓
http://www.hospital.or.jp/pdf/06_20200819_02.pdf

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